ギフトで復讐![完結]

れぷ

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末路編

呪術師ジャハールの末路

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呪術師ジャハールは神国一の呪術師として教皇に重宝されていた。

ジャハールは呪術師の家系の生まれで、幼少期から他者に呪術をかけイタズラばかりしている男だった。そのおかげで教皇直属の呪術師にまで成れたのだが、その分他者からの恨みをかっていた。

ジャハールはいつもの様に教皇から呪いの仕事を与えられた。
今回のターゲットは神国の南にある王国の王女だ。
王女は国王唯一の子である、その王女にかける呪術は【ゾンビの呪い】という呪術の中で最も悪質な部類なのだ。
ジャハールもこの呪術を使うのは久しぶりだ。確か現教皇がまだ教皇候補だった時に他の教皇候補に対して使ったのが最後だったはずだ。

王女へ呪いをかけるにはターゲットの私物や髪の毛などの身近なものが必要だ。しかし教皇には専属の闇部隊がおり、王女の髪の毛を闇部隊が独自のルートから入手していた。
実は王国内に教皇の闇部隊の一部が潜伏しているのだ。

そしてジャハールは王女の髪を触媒に呪術を発動させた。
【ゾンビの呪い】はとても強力な呪術なので魔力と精神力をガリガリ削られるのでジャハールは疲労困憊ひろうこんぱいだ。

一仕事終えたジャハールは教皇に報告した後、自室にて寛いでいた。

しばらく休んでいると、ふと何かを察知したジャハールはスッと立ち上がり窓を見た。
すると窓の隙間から黒いモヤが入ってきた。ジャハールはアレを知っている。【呪い】だ。

他人から、特に同業者からの恨みをかっているジャハールにとって黒いモヤは見慣れたものだった。

ジャハールはそれを見て鼻で笑った。
呪術師同士の呪いは格上にとって簡単に呪い返しが出来るのだ。
つまりこの国随一の呪術師であるジャハールにとっては何の驚異も無い。
むしろ「まだ俺を呪おうとする馬鹿が居たのか」と呆れているのであった。

「ふん、馬鹿め!」
ジャハールは呪い返しの呪術を発動させる。

しかし呪いのモヤは呪い返しを全く受け付けずジャハールを取り巻く。
「なっ!?何故だ!!?俺より強い呪術師など居ない・・・はず・・・は、腹が!腹が痛い!!」

ジャハールは突然の腹痛、それも体験したこと無いような激痛に襲われだした。


数時間後げっそりしたジャハールは再び教皇に呼ばれた。
もう出る物が無いのでトイレに駆け込む必要は無いが、足腰が立たなくなり必死に壁を伝いながら教皇の執務室まで歩いていくのだった。

「きょ、教皇様・・・御用でしょう・・・か」

ほんの数時間で別人の様にヤツレたジャハールを見て教皇は驚いたが、「変なものでも食って腹を下したのだろう」と深く突っ込まなかった。

「次のターゲットだ、はぁはぁ。」
教皇は指をパチンと鳴らそうとしたが、全身脂ぎっているのでヌルッっと指を滑らせただけだった。

すると横からいつもの使用人が資料と触媒を持ってきた。
触媒は切った爪でターゲットは東の国の大きな商会の会頭のようだ。
呪いの種類は【金欠】。
これは金運を下げる呪いで、金を持っているほど効果の大きい呪いである。
一般の中流家庭程度の収入ならば財布を無くしたり高価な魔道具が壊れたりする。
金持ちがこの呪いをかけられると、破産したり凄い額の借金が発生する。
貴族や商人にとってはとても恐ろしい呪いだが、対策もされており大抵の国ではその国の呪術師ギルドが【金欠の呪いよけ】のお守りを販売していて大きな商会や貴族は皆買って対策しているのである。

だがジャハールほどの呪術師ならばお守りを突破して呪いをかけられるのだ。
ヘロヘロになっているジャハールだが、仕事は仕事なので早速【金欠】の呪いを発動する。・・・しかし呪いは何故かジャハールに戻ってきてジャハール本人を呪ってしまった!

「な、なんだと?!この俺が失敗?!あ、ありえん!!」

ジャハールは何度も【金欠】の呪いを発動するが全て本人に返って来てしまった。
【金欠】の呪いを自身に5重掛けしてしまったジャハールを見た教皇は「調子が悪いようだな、はぁはぁ。おい!他の呪術師を呼べ!はぁはぁ。」

「ま、待って下さい!教皇様の呪術師は私一人で十分です!次こそは成功させます!!」
他の呪術師を使われたら、もしかしたらもう自分は用無しになってしまうのでは?と考えたジャハールは慌てて教皇を止めようとするが、教皇は脂ぎった手でシッシッとやると複数の使用人が来てジャハールを連れて行き神殿から追い出してしまった。

「く、くそっ!・・・もしかしてあの腹痛になる呪い呪術が返ってくる呪いも籠もっていたのか?!」
基本的に呪術は使用者が死ぬか回復魔法で解呪するしかない。
つまり【金欠】は自身では解けないのだ。

「そうだ!王国には聖女が居るんだったな!!さっさと解呪してしまおう!!」

ジャハールが家に帰ると、家は空き巣に入られていた。
現金を全て家においていたジャハールは絶望した。
【金欠】5重掛けとはいえ、ここまで早く全財産を無くすとは・・・

しかしジャハールの絶望はまだまだ序の口だったのだ。

ドンドンドン!

「呪術師のジャハールさん、居るかい?」
玄関ドアを激しくノックして入ってきたのは柄の悪い大男だった。

「誰だ?」

「俺は金貸しのシャークってんだ。まぁ借金の取り立てをしに来たって言やぁ分かるか?」
大男は借金取りだという。しかしジャハールは借金などしたことは無い。

「人違いじゃないか?俺は確かにジャハールだが・・・借金などしたこと無いぞ。」
腹痛からくる足の震えに耐えながらなんとか立って反論する。きっと舐められたら存在しない借金を取ろうとするに違いない。そうジャハールは思った。

「あぁ、お前のお袋さんがな。返済は息子のジャハールが払うからって金貨1万枚借りたんだよ。ほれ、これが契約書だ。『息子は教皇様の専属呪術師で年間金貨1万枚稼いでいるからすぐ返せるはずだ』と言ってな。ちなみに利子が金貨2万枚つくぜ?合計金貨3万枚だ。んだから今日は1/3の金貨1万枚を返済してもらおうと思って来たんだ。」

あのババア!なにしてやがる!!それに金利が暴利すぎるだろ!!
ジャハールは母と借金取りに対して激しく怒るが、今はコイツを追い返す事を考えよう。

「そ、そうか・・・残念ながら今は持ち合わせが無い。明日来てくれ!明日なら払えるぞ!」

「そうかぁ?見た所お前さんの家、空き巣に入られて金目のもん根こそぎ持って行かれてるじゃねぇか?払えないからって逃げるつもりだろ?俺もプロなんでな嘘つきは眼を見ればわかっちまうぜ?」
そう言うと大男はジャハールの襟を掴み上げた。

「や、やめろっ!何をする!!」

「お?中々良い服だな。このアクセサリーも値打ちもんだ!よし、金貨100枚分くらいにはなりそうだな。んじゃこの【マーカー】の魔道具をつけてっと。」
【マーカー】の魔道具とは手錠のような形をした魔道具で、装着者の居場所が親機の【レーダー】で探す事が出来る物だ。高価な物と違って居る方向しかわからないのが欠点だが、その分探せる距離は長い。

「んじゃぁまた来るからよ!金用意しとけよ?」
ジャハールの身ぐるみを剥いだ大男はノッシノッシと帰っていく。

「く・・・そっ!殺してやる!!」
ジャハールは怒りで事など忘れ、大男に【即死】の呪いを掛けたのだった。
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