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17、紅生姜(前)
しおりを挟む今回、空蝉が手にしていた本は、『砂漠を旅した昆布人間』というかなりシュールなタイトルの話だった。眉一つ動かさずに、彼はページを捲り続ける。
「それ、面白い?」
思わずそう尋ねてみると、空蝉は「さあ。」と返事をした。その紅の瞳は一切揺らぐことがない。
「でも、なかなか哲学的だと思う。」
「そうなんだ。」
奇妙に捻れた文字で真っ黒に埋まっているページをすっと撫でると、空蝉は「それに。」とポツリと呟いた。
「子育ての難しさがよく分かるよ。」
「そのタイトルで?」
「このタイトルで。」
「…………。」
「…………。」
不思議だな、と思った。例えサンタクロースが見つからなくても、空蝉は一冊一冊の本を大切に扱う。
愛おしそうに。丁寧に。赤子を揺り籠から抱き上げる父親のように慎重に、ページを捲る。
いつまでも、彼のそういう姿を見ていたかった。
いつまでも。
……いつまでも。
♢
……灰色の、つくし。
珍しいな、と思って手に取る。秋カカシの森では、基本的に秋の植物ばかりが生えている。けれども、たまに川辺でよもぎの群生を見つけたり、土の上にたんぽぽの綿毛の残骸を発見したりする。
しかし、灰色のつくしとなると前代未聞だ。私はほんの僅かに険しい顔する。ひらひらとそばを飛ぶ青鶴ちゃんが、私の心を介して問いかけた。
《—————ねえ、これは何かしら?》
「灰色のつくしんぼだね。」
《—————うん。でも、なんか気に入らないわ。》
「そう?」
《—————だって、綺麗なんだもん。だから、好きじゃないの。》
「………。」
一本だけ、秋の落ち葉に囲まれて今にもポッキリ折れそうな細い茎だった。お世辞にも綺麗だとは言えない気がする。少なくとも、植物としての生命の強さ、というものを美しさの尺度としてみるならばだが。
確かに、底知れなく儚い美しさを纏っているような気が、しなくもないのだが。
私は薄気味が悪くなって、そのつくしから手を離した。
サラーダと話をした昨日の昼から、私は青鶴ちゃんとどのように接すればいいのかわからなくなっていた。少々どころではなく、かなり気まずい。しかし、彼女を無碍にするわけにもいかない。もはや心から信用することの出来ない相手。スパイだと断言された魔法の紙の生き物。
無垢な羽根を広げて舞い踊る青鶴ちゃんとの微妙な距離感を模索しながら、私は森を散策していた。
「栗拾いしたいんだけど、手伝ってくれる?」
《——————うん。中身が腐ってたら教えるね。》
「ありがとう。」
《——————まずは来た道戻んなきゃね。栗林は小屋の方だから。》
「うん。」
サラーダの言った通り、私は今日という日を出来るだけいつも通りに過ごすようにしていた。こうして散歩に出て、意味もなく木の実を集めるなどしている。
栗。拾ったら殻を剥いて、アク抜きをしよう。何度も茹でて、真っ黒に染まる煮え汁を捨て続け、甘露煮にしたりそのまま食べたりするのだ。
……と、そこまで考えた時、大事なことに思い至った。今日の昼も、サラーダと会う約束がある。それを守るためには、のんびり栗など茹でている場合ではない。下ごしらえに時間がかかりすぎる。もっと簡単に食べられるものにしなければと、私は慌てて頭を巡らせた。例えば、柿。これなら捥いですぐ食べられる。私がホッとして「ねえ、青鶴ちゃん。」と呼びかけた時だった。
「訂正するよ。やっぱりオヤツは柿に……」
「新種の植物、はっけーん!!」
「え?」
タカターン!と何か大きな塊が飛び出してきた。青鶴ちゃんが風に煽られてファサファサッと飛び立つ。
……オバケだった。
後ろ姿だけが私がよく知る里の人間に酷似した、けれど確実に性格は別人のような双子だ。と、そう瞬時に認識できるくらいには、私は既にこの世界に適応を終えているようだった。
ザザザッと目の前に現れたのは、背の高い大人の女性。化粧なしの卵色のすっぴん顔に巨大なクリクリのどんぐり眼。灰桜色のトレンチコートに、鮮やかな蘇芳のベレー帽。セルリアンブルーの丸縁眼鏡が良い意味で噛み合わない、奇抜な格好の主。
「あなたは、」
「ゴシップの匂いよ。」
勢いに任せて、その女性は鼻息荒く高らかに宣言した。
そして、首に下げたカメラを構えて私に向ける。そして何の躊躇いもなくシャッターを切った。かしゃり、とレトロチックな機械音が響く。
ひょ?!と私の心の中の声が裏返る。完全に、今まで何を考えていたのか忘れてしまった。
「え?ちょ、私は違います……っていうか、勝手に撮らないで下さい!」
「今のは練習。後で消すわよ。」
正体不明の女性は全く悪びれることなくカメラから手を離す。腰に手を当てると、辺りをキョロキョロと見回し始めた。
「ねえ、そこのあなた?名前は何て言うの?」
「ゆ、柚子です。」
「ん、柚子胡椒ちゃん?」
「柚子です!」
「まあいいわ。面倒臭い。あなた、ねえ、灰色のつくしってどこにあるの?」
「………そこです。」
またもや独特なオバケに遭遇してしまったな、と私は思った。私は、彼女の双子のことはよく知っている。しかし、このエレーの神の世において、一方からもう片方の性格や性質を読み取ることがいかにナンセンスなことか。
私はこの異様に元気な女性を前にして、深々とため息をついた。
彼女の、人間界における双子。それは『林檎お婆ちゃん』で間違いない。彼女はのっぺらぼうのお春の双子、夏樹兄さんの母親だ。夏樹兄さんを産んだだけあり、彼女も繊細で不思議な感性を持つ優しい人だった。
しかし「なるほど!灰色のつくしは初めて見たわ!」などと言いながら写真を何十枚も撮っている彼女を見ながら、私は思う。本当に今更だが、この世界において、やっぱり血縁関係というものは全く意味のないものらしい。
「……あのう。新種の植物がお好きなんですか?」
私がおずおずと話しかけると、女性は「ん?」と顔を上げた。
「そうでもないわよ。」
「でも、随分熱心ですよね?」
「あー、私ったらね、新聞記者なのよ。ほらあれよ、あれ。紅生姜新聞。」
丸縁眼鏡を押し上げ、魚眼レンズのような効果で膨れて見える目がギョロリと私の方を向いた。
「記者、編集者、出版。ぜーんぶ私、このろくろ首、ピッカピッカな紅生姜!が担当してる不定期発行のヤツ。ねえ、知らない?」
「知らないです。」
「ガーン!!」
沈んだ。ズズーン、と。漫画の効果音が浮かびそうなほど見事に、紅生姜と名乗った女性は地面に手をついて落ち込んだ。そして首が伸びた。あっという間に三メートルは首が伸びて、ドーンと転がった。あまりの有様に、私は驚きを通り越して大いに困惑してしまった。
「……あの、私は引っ越して来たばっかりの新参者です。紅生姜さん?が作ってる新聞の知名度の高さが、私が知ってるかどうかで測れるとは思わないんですけれど……。」
「でもぉー、私の新聞、購読してる人に一人しか会ったことないんだもんー。」
「そ、そうですか。」
懸命に励まそうとするも、効果はない。私が途方に暮れた時、ソレが喋った。
「—————ふん。気にすんな。ベニーはこういう奴だ。」
突然聞こえたしゃがれ声。その声の発生源を探して目をキョロキョロさせた時、私はとあるものを発見してギョッとのけぞった。
紅生姜が被っていた、蘇芳のベレー帽。それは鱗のような紋様に覆われ———否、まさに爬虫類特有の鱗の紋様そのものが埋め尽くしている。そしてそこに、二つの輝く眼が光っている。そう。帽子だと思ったものは、生き物だった。何かが蛇のとぐろのようにぐるぐると渦巻いて、それが帽子を形作っていたのだった。
「蛇……?」
「失礼だな。俺は蛇トカゲ。その蛇トカゲの中でも最も美しく、爬虫類の皇帝と名高い猩々緋ロードという種族のものだぞ。」
私はまじまじとその生き物を見つめた。誇り高く、荘厳とした居姿。威厳と神々しさすら感じられるその爬虫類は、様々な意味で私の興味を引いた。
(……普通の双子じゃない。)
少なくとも、人間の双子ではない。そう、考えられるとすれば——————猫。
確か、林檎お婆ちゃんは家でワインレッド色のふわふわ毛並みの猫を飼っていた……気がする。だが、それがオバケ?のようなものとなって人語を喋っているというのは、なかなか奇妙で衝撃的な事実だった。そうこうしているうちにも、その蛇トカゲはしゃがれた声で私にガアガア喋りかける。
「どうした?小娘。挨拶くらいしたらどうだ。」
「……は、はい。人間の柚子です。よろしくお願いします、蛇トカゲさん。」
「俺の名前はツクツクボウシだ。」
「えっと、帽子?」
「ツクツクボウシだ。失礼なばかりか、生意気な小娘だと見える。」
「へえ……。」
私は目をパチクリした。本当によく喋るトカゲだ、という感想を抱いて。
「……あの。ツクツクボウシさん?」
「なんだ小娘。」
「その、新聞を買える場所さえ教えてくれれば、私も喜んで購読します。……本当に、こんな小さな里に新聞があることを知らなかっただけなので。」
「だってさベニー。」
「ほ、本当!?」
落ち込むのが早かった紅生姜は、立ち直るのも早かった。バッと顔を上げ、シュルシュルと伸び切ってしまっていた首を回収する。
そしてキラリン、と目を輝かせ、ニッコリ満面の笑みを私にずいと近づけた。
「ほ、本当に購読してくれるの?」
「はい。えっと、その、私に払える代金だったら、ですけれど……。」
「ふっふっふ。お代はお金じゃないわ。取材協力よ。」
「……え?」
紅生姜は格好つけるように手を腰に当て、首から下げたカメラについた土をパッパッと払った。そしてまたしても不敵に笑う。
「心配しなくていいわよ。想像してるような意味じゃないから。私はね、購読者にインタビューして根掘り葉掘り私生活を暴いたりなんてしない。ただ、これから私のアシスタントとしてちょっとした仕事を分担してくれればいい。簡単でしょ?」
「いや、それでもちょっと……。」
「え、もしかして予定とか入っちゃってる?」
「じ、実はそうなんです。今日の午後は予定で潰れてて、夕方以降はそもそも外出禁止の時間帯ですから……。」
「助かるわ!じゃあ明日からなら協力してくれるのね!」
「えっ……?」
嵐のようだった。怒涛の展開で、私はあれよあれよという間に、明日彼女と一緒に取材へ行くことを約束させられてしまった。戸惑ったし、圧倒された。しかし意外なことに、不快な感覚ではなかった。押し込み強盗のような紅生姜の態度は、一方で豪快であり、清々しかった。
彼女は魅力的な人だ。きっとプライドの高そうなツクツクボウシが付き従っているのも、彼女の人柄に惹かれてのことだろうと、そう思わせるような何かがあった。むしろ、そんな彼女がこれだけ熱心に勧誘していて、これで購読者が今まで一人しかいなかったということが不思議で仕方ない。
彼女はきっと生まれながらの新聞記者なのだろう、と私は思った。そして、それを彼女に伝えた。……しかし。
「うーん、そんなこともないと思うわよ?」
そう言って、紅生姜は首を傾げた。
「え?」
「いやだって。私ったらやんちゃすぎて、何の仕事も出来ないだろうって思ってたもん。」
「そ、そうなんですか……?」
「そうよ。だけど、私には長い首がある。だから、困った時は首を伸ばして、遠くから自分を見下ろしてみるの。他人にアドバイスするような気持ちでね、あなたは何出来るのかなって考える。そうしたらまあ、記者だったら出来るかなって。ふっとそんなことを思ったわけよ。」
ニマッと、眼鏡の奥の目を輝かせて笑う。ふと、私は想像してしまった。カラリと晴れた青空の下。高い高い木の上に伸ばした首を引っ掛け、地べたで体育座りをする自分の体を見下ろしている紅生姜の頭。うーんうーんと悩む、まだまだ幼い紅生姜。私はふっと笑って、そして同じようにアハハと笑っている紅生姜に向き直った。
「とてもお似合いの職業だと思いますよ。」
「えへへ。照れるなぁ。」
私にとっても、今の会話は有意義だった。私は、また一つ、オバケの職業選びの物語を手に入れたのだから。まだ、そう—————まだだ。まだ、私が何になりたいのかはわからない。けれど、私の魂の中に、少しずつ大事なものが溜まっていくような気がする。それが一杯になった時、きっと私は次のステージに立つことが出来る。
そんな、気がする。
「それじゃあね。柚子ちゃん。」
「はい。さようなら。」
私は笑顔を浮かべながら握手をして、さよならのお辞儀をする。その時。私はふと、別れる前に気になったことを聞いてみようと声を上げた。
「あっ。」
「ん、何?」
「……そういえば。ちなみに紅生姜さんは、いったいどうやって灰色のつくしの存在を見つけたんですか?」
紅生姜はくるりと振り向き、「ん?そりゃあ、ツクツクボウシの鼻に頼るのよ。」と、何でもないことのように首を傾げた。決まってるじゃない、とでも言うような表情。ちょいと眼鏡を押し上げる彼女は、格好良かった。
そこにボソリと、蛇トカゲのしゃがれ声が付け加わる。
「俺はゴシップの匂いを嗅ぎつけるからな。」
「へえ……。」
「ま、俺は灰色のツクシなどという低俗な副産物ではなく、真に重要なものを追って来たつもりだったがな。」
「重要なものって、何ですか?」
「企業機密だ。気軽にこんなちんちくりんの小娘に教えてなるもんか。」
「あっはい。」
相変わらず、偉そうに紅生姜の頭の上に陣取っているツクツクボウシ。
とある蝉の名を冠した、夏の蝉のようにうるさく喋る蛇トカゲ。その蘇芳のように鮮やかに赤く美しい彼に少し微笑ましさを抱きながら、私は別れのお辞儀をした。
そして、天に輝く黄色い太陽を見上げる。
……そろそろ、サラーダとの約束の時間だった。
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