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僕は今、散歩中に自分を吸い込んだ店の座敷でこの店の店長と二人で茶を啜っている。
「あのーそろそろ僕がここに吸い込まれた理由を説明してもらっても……」
「ああ、悪かったね、お茶に夢中で忘れてたんだ、先ずは何を話すにしろ自己紹介からだ、私は九尾苑と言う、よろしくね」
九尾苑と名乗った男は妙に上機嫌だ、語尾にハートマークが付いていてもおかしくない程度にはテンションが高い。
「さて、天狗攫いについてだったね。
「天狗攫いってのは言っちゃえば神隠しみたいなものだよ。
「まあ妖版の誘拐とでも思ってくれればそれでいい。
「ただやっぱり妖版だ、人間のそれとは少し違う。
「天狗攫いは天狗が子供を連れて色々な場所を連れ回されるなんてよく聞くが君の場合は違ったみたいだ。
「残念だったね、富士山とか行けなくて。
「今回は別の場所に送るだけ送って後は放置、勝手で自由で迷惑な天狗だよ。
「迷惑って言うのは君だけじゃないんだよ。
「こちらとしても君が突然現れて驚いているんだ。
「驚愕して仰天しているんだ
「まあ私がどれ程驚いたかなんてどうでもいい。
「話を天狗攫いに戻そうじゃないか。
「めでたく天狗攫いの被害者になった君だが残念な事にしばらく家には帰れないと思ったほうがいい。
「親御さん達は焦るだろうがそれは私にはどうにも出来ないんだ。
「まあ一生帰れないなんてことは先ずないから安心するといい」
言うと九尾苑さんはお茶を一口啜り一気に喋り乾いた口に潤いを取り戻す。
「大丈夫です、俺は一人暮らしなのでしばらくは田舎の両親は気づかないですよ」
嘘を言った、田舎の両親など存在しない。
両親は去年交通事故で帰らぬ人となった。
僕はそれを内心まだ認め切れていなかったのか咄嗟に田舎に両親がいるなどと言う嘘を言ってしまった。
しかし九尾苑さんは納得したようだ。
次の瞬間、九尾苑さんの様子が変わる。
先程まで茶を持っていた手には九尾苑さんの直ぐ側に置かれていた杖が握られている。
「運がいい、この事件唯一の加害者さんが自分からおいでなさった」
言うと店の扉がガタガタと音を鳴らして震え出す
ガタガタガタガタ、台風でも吹き荒れているような、そう、風が吹き荒れているときになる音だ。
僕は今思い出した、そういえば天狗と言えばあの団扇を持っていたではないか、人心、炎、雨、風、雷、其れ等全てを自由自在に操る団扇、羽団扇を。
風に耐えきれず店の扉が吹き飛んだ。
「ここだったか、儂が飛ばした餌の居場所は」
扉の向こうから現れた存在は日本人ならば誰もが知る天狗の風貌と完璧に一致していた。
天狗は壊した入り口をくぐり店に入ると残酷な笑みを浮かべ天狗は言う。
「どうだった儂の作った入口は、さぞかし通りやすかったじゃろ
「それこそ、そこの小狐の結界など人間が触れれば一度で壊れる程度にはのう」
天狗は九尾苑さんを睨みながら言うと、強く握った羽団扇をこちらに向けて振るう。
「暖まるじゃろう、山をも灰燼と帰す業火だ、寝床を追われた小狐如き、骨も残らなかろうよ」
天狗は笑いながら言う、しかし何故だろう、嘗見たことのない量の炎に包まれて尚、僕は焼ける痛みどころか息苦しさすら感じていない。
「私達が焦げているかどうかも嗅ぎ分けられないその長鼻、飾りかい」
次の瞬間、突如現れた紫の炎の玉が僕達を包む炎を全て吸収する。
「ほう——狐火か、小狐の遊び道具には過ぎた術じゃ」
「そうでもないさ、この火は僕によく馴染み動かしやすい、サイズも小狐にはちょうどいいしね」
九尾苑さんは言い終えると杖の持ち手を握り引っこ抜く。
ただの杖ではなかった、鞘から抜かれて裸となった刀を構える事なく九尾苑さんは言う
「実は仕込み杖なんだ、カッコいいでしょ、浪漫溢れるこの刀で今から君を切る、余所見すんじゃないよ、天狗」
「刀を抜いて強気になるなよ、たかが小狐如きの太刀筋で儂を切れると思うたか」
天狗は声を荒立てて言う、しかし九尾苑さんの態度は毅然として変わらずそれが天狗の精神を逆撫でしてるようだった。
「すまない、訂正しよう、もう切ったと言うべきだったね」
「我が先祖の呪い、その身で受け止めろ」
言い終えると天狗の体は忽ち石と化す。
「そうか、其の刀、かの災害と共に消え去ったと思って居れば、貴様が隠し持っておったのか
「次会うときは、其れも狙うとしようかのう」
天狗は最後に負け惜しみののうな言葉を残して完全な石の塊となった。
僕が未だ目の前で起きた奇奇怪怪な出来事に呆然としていると九尾苑さんが僕に向かって何かを投げる。
「ほれ、持っておくといい」
僕が咄嗟に受け止めた物は天狗の持っていた羽団扇其の物であった。
僕は九尾苑さんが守ってくれていたおかげで怪我一つなかったがそれでもこの団扇の危険性は目の当たりにしている。
僕は暴風や業火を自由自在に操る危険物を慌てて九尾苑さんに返そうとするが受け取ってはくれない。
「君が今回天狗に狙われたのは偶然じゃない、理由がある
「其れを解決するまでは君はまだこちらに居るべきだ
「君も不都合はないらしいしね
「どうだろう、君の狙われたのは原因は私にも関係がありそうでね
「先ずは私は住処の提供と自分の身を守る手段を提供しよう」
羽団扇どころか住み込みまで押し付けられてしまいそうだ。
本来断りたいところだがまた今回のように攫われたら今度は運良く助かるとも限らない。
この人は未だ僕に二度しか選択肢を与えていないと言うのに両方に断ると言う選択肢を付けちゃくれないようだ。
「期間は分かりませんがこれからどうぞよろしくお願いします」
僕の毎日夕方に散歩するような日常はどうやら今日で終わりそうだ。
「あのーそろそろ僕がここに吸い込まれた理由を説明してもらっても……」
「ああ、悪かったね、お茶に夢中で忘れてたんだ、先ずは何を話すにしろ自己紹介からだ、私は九尾苑と言う、よろしくね」
九尾苑と名乗った男は妙に上機嫌だ、語尾にハートマークが付いていてもおかしくない程度にはテンションが高い。
「さて、天狗攫いについてだったね。
「天狗攫いってのは言っちゃえば神隠しみたいなものだよ。
「まあ妖版の誘拐とでも思ってくれればそれでいい。
「ただやっぱり妖版だ、人間のそれとは少し違う。
「天狗攫いは天狗が子供を連れて色々な場所を連れ回されるなんてよく聞くが君の場合は違ったみたいだ。
「残念だったね、富士山とか行けなくて。
「今回は別の場所に送るだけ送って後は放置、勝手で自由で迷惑な天狗だよ。
「迷惑って言うのは君だけじゃないんだよ。
「こちらとしても君が突然現れて驚いているんだ。
「驚愕して仰天しているんだ
「まあ私がどれ程驚いたかなんてどうでもいい。
「話を天狗攫いに戻そうじゃないか。
「めでたく天狗攫いの被害者になった君だが残念な事にしばらく家には帰れないと思ったほうがいい。
「親御さん達は焦るだろうがそれは私にはどうにも出来ないんだ。
「まあ一生帰れないなんてことは先ずないから安心するといい」
言うと九尾苑さんはお茶を一口啜り一気に喋り乾いた口に潤いを取り戻す。
「大丈夫です、俺は一人暮らしなのでしばらくは田舎の両親は気づかないですよ」
嘘を言った、田舎の両親など存在しない。
両親は去年交通事故で帰らぬ人となった。
僕はそれを内心まだ認め切れていなかったのか咄嗟に田舎に両親がいるなどと言う嘘を言ってしまった。
しかし九尾苑さんは納得したようだ。
次の瞬間、九尾苑さんの様子が変わる。
先程まで茶を持っていた手には九尾苑さんの直ぐ側に置かれていた杖が握られている。
「運がいい、この事件唯一の加害者さんが自分からおいでなさった」
言うと店の扉がガタガタと音を鳴らして震え出す
ガタガタガタガタ、台風でも吹き荒れているような、そう、風が吹き荒れているときになる音だ。
僕は今思い出した、そういえば天狗と言えばあの団扇を持っていたではないか、人心、炎、雨、風、雷、其れ等全てを自由自在に操る団扇、羽団扇を。
風に耐えきれず店の扉が吹き飛んだ。
「ここだったか、儂が飛ばした餌の居場所は」
扉の向こうから現れた存在は日本人ならば誰もが知る天狗の風貌と完璧に一致していた。
天狗は壊した入り口をくぐり店に入ると残酷な笑みを浮かべ天狗は言う。
「どうだった儂の作った入口は、さぞかし通りやすかったじゃろ
「それこそ、そこの小狐の結界など人間が触れれば一度で壊れる程度にはのう」
天狗は九尾苑さんを睨みながら言うと、強く握った羽団扇をこちらに向けて振るう。
「暖まるじゃろう、山をも灰燼と帰す業火だ、寝床を追われた小狐如き、骨も残らなかろうよ」
天狗は笑いながら言う、しかし何故だろう、嘗見たことのない量の炎に包まれて尚、僕は焼ける痛みどころか息苦しさすら感じていない。
「私達が焦げているかどうかも嗅ぎ分けられないその長鼻、飾りかい」
次の瞬間、突如現れた紫の炎の玉が僕達を包む炎を全て吸収する。
「ほう——狐火か、小狐の遊び道具には過ぎた術じゃ」
「そうでもないさ、この火は僕によく馴染み動かしやすい、サイズも小狐にはちょうどいいしね」
九尾苑さんは言い終えると杖の持ち手を握り引っこ抜く。
ただの杖ではなかった、鞘から抜かれて裸となった刀を構える事なく九尾苑さんは言う
「実は仕込み杖なんだ、カッコいいでしょ、浪漫溢れるこの刀で今から君を切る、余所見すんじゃないよ、天狗」
「刀を抜いて強気になるなよ、たかが小狐如きの太刀筋で儂を切れると思うたか」
天狗は声を荒立てて言う、しかし九尾苑さんの態度は毅然として変わらずそれが天狗の精神を逆撫でしてるようだった。
「すまない、訂正しよう、もう切ったと言うべきだったね」
「我が先祖の呪い、その身で受け止めろ」
言い終えると天狗の体は忽ち石と化す。
「そうか、其の刀、かの災害と共に消え去ったと思って居れば、貴様が隠し持っておったのか
「次会うときは、其れも狙うとしようかのう」
天狗は最後に負け惜しみののうな言葉を残して完全な石の塊となった。
僕が未だ目の前で起きた奇奇怪怪な出来事に呆然としていると九尾苑さんが僕に向かって何かを投げる。
「ほれ、持っておくといい」
僕が咄嗟に受け止めた物は天狗の持っていた羽団扇其の物であった。
僕は九尾苑さんが守ってくれていたおかげで怪我一つなかったがそれでもこの団扇の危険性は目の当たりにしている。
僕は暴風や業火を自由自在に操る危険物を慌てて九尾苑さんに返そうとするが受け取ってはくれない。
「君が今回天狗に狙われたのは偶然じゃない、理由がある
「其れを解決するまでは君はまだこちらに居るべきだ
「君も不都合はないらしいしね
「どうだろう、君の狙われたのは原因は私にも関係がありそうでね
「先ずは私は住処の提供と自分の身を守る手段を提供しよう」
羽団扇どころか住み込みまで押し付けられてしまいそうだ。
本来断りたいところだがまた今回のように攫われたら今度は運良く助かるとも限らない。
この人は未だ僕に二度しか選択肢を与えていないと言うのに両方に断ると言う選択肢を付けちゃくれないようだ。
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