44 / 73
四十三冊目
しおりを挟む
僕と沙耶がバイトになった結果の、バイトさんが二人も増えたね祭りなのだからと、沙耶を地下に連れてきて、肉を焼く。
最初は良かったが後半にゆくに連れ、油で胃が辛くなってゆく。
しかし、そこは古本屋最大戦力の九尾苑さんが大活躍した。
沙耶も負けじと食べていたが、油による胃の破壊よりも、満腹度の方が強敵だったようだ。
食事とその片付けを終え、部屋に戻る。
当然歯も磨いて風呂に入ってからだ。
部屋に戻ると、沙耶が僕と入れ替わるように風呂に入る。
お湯は、人と同じ湯に入って気持ち良いわけが無い、という九尾苑さんの謎の拘りによって、全員一番風呂のようなものだ。
部屋に新しく引かれたもう一セットの布団を横目に流し、僕は自分の布団に潜る。
暫くすると、部屋の扉が開く音がする。
沙耶だろう。
沙耶は僕が寝ているものだと思ったのか、全く気にしていないのか、服を着替え始めた。
服を脱ぐ際の布切れ音一つが部屋に響き渡る。
寝巻きに着替え終えたのか、沙耶も僕と同じように自分の布団に潜り込む。
沙耶は直ぐに眠り、部屋の中に響く音は布切れ音から寝息へと切り替わる。
小さな寝息が、時計の秒針のように一定のリズムで鳴り続ける。
人と同室というのは初めての経験で緊張したが、早く眠り明日に備えねばと思いながら息を吐き、布団を被り直す。
その後、僕が眠れたのは十一時頃だった。
夜を抱くように眠り込んだ僕が目を覚ましたのはそれから五時間後だった。
この日から、毎日のように一日中訓練をする日々が続いた。
僕は妖力の操作速度の上昇と、火吹きの左腕を使いこなす訓練。
荒木寺さんはその僕の訓練に付き合ってくれており、沙耶はひたすら猫宮さんと手合わせしている。
九尾苑さんは自室に篭もる時間が多くなり、何をしているのかよく分からない状態だ。
「おい、気が抜けてるぞ坊主」
「すいません!」
今は妖力の制御の訓練中だ。
火吹きの左腕を発動した状態で荒木寺さんとの手合わせをして、少しでも集中が途切れれば火吹きの左腕は消えてしまい、そちらに集中し過ぎれば荒木寺さんの攻撃は避けられない。
現在は火吹きの左腕を使いこなすための訓練なため羽団扇は使えないが、覚えた技や技術が完全に使えないわけじゃない。
「火走り五連!」
そう言って、火吹きの左腕を纏って腕の全ての指で床を引っ掻くようにして触れる。
すると、指で引っ掻いた箇所から炎の線が五本伸びる。
そう、これは猫宮さんとの手合わせで初披露した技の火吹きの左腕版だ。
今回の訓練期間中に、羽団扇で使う技が幾つかこちらでも使えると判明したのだ。
荒木寺さんに炎の線が近づき足元まで伸び切った瞬間、全ての線が爆発した。
しかし、荒木寺さんは体制を崩すどころか、先程から一歩も歩いていない。
「タイミングは良い、今回悪いのは相性だ。
「今程度の爆発なら、俺は自分の爆発で相殺できる。
「相手の持ち技と自分の相性を常に考えながら戦え」
「はい!」
短く一つ返事をして、一度距離を取る。
助走をつけ、再度突撃。
「三の指、獄壁」
言って、中指を勢いよく横に一閃する。
指が通った位置からは燃え盛る炎の壁が発生、荒木寺さんの視界を制限し、自らの身を隠す。
以前やったように壁を貫通して殴ろうものならば、即座にその腕は炎に包まれ、数秒後にはその炎が全身を包むだろう。
壁の向こう側では幾つか爆発音がする。
壁の強度を確かめているのだろう。
僕は壁に向かい、親指を振るう。
そして自分にだけ聞こえるような小さな声で言うのだ。
「一の指、火遊び」
瞬間、親指で線を引いた位置から炎の玉が飛び出し、獄壁の炎を吸収し、荒木寺さんに向かう。
炎の玉で獄壁を吸収した影響で視界は僕と荒木寺さん、双方とも良好となる。
荒木寺さんはこちらに掌を向け、爆発で炎の玉を掻き消すつまりだろう。
しかし、この術の真骨頂はここからだ。
親指を縦に振るうと、炎の玉こ進行方向はそれぞれ曲がり、次の瞬間に起きた爆発を回避する。
そう、この術の真骨頂とは、数でも威力でもない、操作性の高さなのだ。
炎の玉、全弾命中だ。
しかし、荒木寺さんに傷はついていない。
「本当なんですね、あの妖具の効果」
そう、最近訓練に実装された新しい妖具。
その効果のおかげで、いくら攻撃をしようと、互いに傷を負わないらしい。
名は乖離玉と言うらしく、傷を負わない原理としては、一定の範囲にいる者の体をこの世界から切り離し干渉を途絶えさせるらしい。
しかし、壁は通り抜けられないし、命中時爆発する攻撃なんかは触れた瞬間きちんと爆発する。
未だ謎の多い妖具らしいが、一応危険性はないらしい。
そんなことを考えていると、荒木寺さんから声がかかる。
「続きだ、始めるぞ」
「はい!」
最初は良かったが後半にゆくに連れ、油で胃が辛くなってゆく。
しかし、そこは古本屋最大戦力の九尾苑さんが大活躍した。
沙耶も負けじと食べていたが、油による胃の破壊よりも、満腹度の方が強敵だったようだ。
食事とその片付けを終え、部屋に戻る。
当然歯も磨いて風呂に入ってからだ。
部屋に戻ると、沙耶が僕と入れ替わるように風呂に入る。
お湯は、人と同じ湯に入って気持ち良いわけが無い、という九尾苑さんの謎の拘りによって、全員一番風呂のようなものだ。
部屋に新しく引かれたもう一セットの布団を横目に流し、僕は自分の布団に潜る。
暫くすると、部屋の扉が開く音がする。
沙耶だろう。
沙耶は僕が寝ているものだと思ったのか、全く気にしていないのか、服を着替え始めた。
服を脱ぐ際の布切れ音一つが部屋に響き渡る。
寝巻きに着替え終えたのか、沙耶も僕と同じように自分の布団に潜り込む。
沙耶は直ぐに眠り、部屋の中に響く音は布切れ音から寝息へと切り替わる。
小さな寝息が、時計の秒針のように一定のリズムで鳴り続ける。
人と同室というのは初めての経験で緊張したが、早く眠り明日に備えねばと思いながら息を吐き、布団を被り直す。
その後、僕が眠れたのは十一時頃だった。
夜を抱くように眠り込んだ僕が目を覚ましたのはそれから五時間後だった。
この日から、毎日のように一日中訓練をする日々が続いた。
僕は妖力の操作速度の上昇と、火吹きの左腕を使いこなす訓練。
荒木寺さんはその僕の訓練に付き合ってくれており、沙耶はひたすら猫宮さんと手合わせしている。
九尾苑さんは自室に篭もる時間が多くなり、何をしているのかよく分からない状態だ。
「おい、気が抜けてるぞ坊主」
「すいません!」
今は妖力の制御の訓練中だ。
火吹きの左腕を発動した状態で荒木寺さんとの手合わせをして、少しでも集中が途切れれば火吹きの左腕は消えてしまい、そちらに集中し過ぎれば荒木寺さんの攻撃は避けられない。
現在は火吹きの左腕を使いこなすための訓練なため羽団扇は使えないが、覚えた技や技術が完全に使えないわけじゃない。
「火走り五連!」
そう言って、火吹きの左腕を纏って腕の全ての指で床を引っ掻くようにして触れる。
すると、指で引っ掻いた箇所から炎の線が五本伸びる。
そう、これは猫宮さんとの手合わせで初披露した技の火吹きの左腕版だ。
今回の訓練期間中に、羽団扇で使う技が幾つかこちらでも使えると判明したのだ。
荒木寺さんに炎の線が近づき足元まで伸び切った瞬間、全ての線が爆発した。
しかし、荒木寺さんは体制を崩すどころか、先程から一歩も歩いていない。
「タイミングは良い、今回悪いのは相性だ。
「今程度の爆発なら、俺は自分の爆発で相殺できる。
「相手の持ち技と自分の相性を常に考えながら戦え」
「はい!」
短く一つ返事をして、一度距離を取る。
助走をつけ、再度突撃。
「三の指、獄壁」
言って、中指を勢いよく横に一閃する。
指が通った位置からは燃え盛る炎の壁が発生、荒木寺さんの視界を制限し、自らの身を隠す。
以前やったように壁を貫通して殴ろうものならば、即座にその腕は炎に包まれ、数秒後にはその炎が全身を包むだろう。
壁の向こう側では幾つか爆発音がする。
壁の強度を確かめているのだろう。
僕は壁に向かい、親指を振るう。
そして自分にだけ聞こえるような小さな声で言うのだ。
「一の指、火遊び」
瞬間、親指で線を引いた位置から炎の玉が飛び出し、獄壁の炎を吸収し、荒木寺さんに向かう。
炎の玉で獄壁を吸収した影響で視界は僕と荒木寺さん、双方とも良好となる。
荒木寺さんはこちらに掌を向け、爆発で炎の玉を掻き消すつまりだろう。
しかし、この術の真骨頂はここからだ。
親指を縦に振るうと、炎の玉こ進行方向はそれぞれ曲がり、次の瞬間に起きた爆発を回避する。
そう、この術の真骨頂とは、数でも威力でもない、操作性の高さなのだ。
炎の玉、全弾命中だ。
しかし、荒木寺さんに傷はついていない。
「本当なんですね、あの妖具の効果」
そう、最近訓練に実装された新しい妖具。
その効果のおかげで、いくら攻撃をしようと、互いに傷を負わないらしい。
名は乖離玉と言うらしく、傷を負わない原理としては、一定の範囲にいる者の体をこの世界から切り離し干渉を途絶えさせるらしい。
しかし、壁は通り抜けられないし、命中時爆発する攻撃なんかは触れた瞬間きちんと爆発する。
未だ謎の多い妖具らしいが、一応危険性はないらしい。
そんなことを考えていると、荒木寺さんから声がかかる。
「続きだ、始めるぞ」
「はい!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!
↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
となりのソータロー
daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。
彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた…
という噂を聞く。
そこは、ある事件のあった廃屋だった~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる