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小鬼ッ?!ゴォブリンィ!!!!編
第參噺 -決意-
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吾輩は小鬼である。名前は未だ無い。
人里近くの洞窟にて、同胞の者達と切磋琢磨して育って来た。
友と良く遊び、良く学び、時には若気の至りとも言うべき無茶もして来た。
小鬼は「集」を重んじる。
其れは、人間程度の浅い繋がりでは決して無い。
我々がか弱く在るからこそ、産まれた習性なのかも知れぬ。然し、我々に其の様な事は、最早関係無い。
手を取り合って生きる。
これこそ。この強固な紐帯こそ、我々が在るべき姿なのだ。
──だからこそ、余計に度し難い。
其れは忘れもしない。或る日の出来事であった。
友や、父上や母上や、兄上や姉上や、妹や弟や、果ては親切にしてくれている隣人に到るまで。
其の日、我々から尋常なる言霊は消えた。
不明の原因によって、一斉に。
吾輩自身、喉から出る声に違和感が有ったが、其れは他者の声を聴けばはっきりした。
皆が、吼えている──。
聴いただけで鼓膜を劈く悲鳴怒号が、洞窟内に反芻する。
洞窟内だけでは無い。
森の鳥達や、熊等の獣共。
声帯を持たぬ筈のスライムや、羽搏く事しか脳の無い虫けら共迄、吼えていた。
其の時、吾輩の脳裏に或る一つの予感が、まるで電流が如く疾走る。
吾輩は森を駆けた。全速力で。
吾輩は小鬼に珍しく、余り運動能力に秀でていない。
寧ろ頭脳面に於いては、其処等の下手な人間よりも賢いと自負している。
其れでも、疾走らねばなるまい。
此れは然う言う時なのだ。
草木の根を掻き分けて、吼え群がる野獣共を迂回し、すっ転んでも歯を喰い縛って立ち上がる。
泥だらけに成って迄、必死に成って迄に辿り着いたのは、仇の拠点とも言うべき場──人里であった。
然し。
遺していた淡い期待も、がらりと音を立てて崩れ去った。
人が、何十の人が、何百の人が吼えていた。
正しく、地獄絵図と言えよう。
其の事態に対して、己が何の疑問も持たぬのを、同じく何の疑問も持たぬ人々を観て気が付いたと言うのだから、笑えた話だ。
何処も然うなのか?
最早、此の世界から正常なる言語は喪われてしまったのだろうか?
吾輩は、何とも言えぬ喪失感に苛まれた。
……が、絶望は直ぐに希望へと変換される事となる。
数日後、或る人間は誠しやかにささめいた。
村人A?!「勇者ィァァアッ様ァンッが召! 喚! されたらしいぞおおぉおぉぉおォォオオオォオォォホォトツゥゥウウウウッッッッッッッッウ?!?!?!!!!!つー!!?!!!」
村人B?!「ヌァァァヌィイゥウイィィィイッッッツ?!?!!?!?!!!!」
吾輩の頭に、衝撃が疾走った。
天啓とも言えよう。
時期の一致。勇者と言う強大な存在。
然う考える理由は幾らか有ったけれど、一番大きな理由は、勘でしかなかった。
けれども矢張り、行動せずには居られ無かった。
ーー
ーーーー
区切りィィィィイィイイイイイイイイッッッッッッィッッッッムッッッッッッッッ?!?!!!?!!!?!!!!!?!!
ーーーー
ーー
策戦は直ぐ様成功した。
偶然にも、我等が洞を現れる事に成った勇者一行へ、吾輩は潜入した。
彼等が本物の莫迦で助かった。
吾輩が此れから自らが斃さんとする小鬼である事に、一切の疑念を抱かない。実にやり易い。正直、拍子抜けである。
一先ず、景気付けに村長を咬んだ吾輩は、元凶(暫定的ではあるが)たる勇者一行と、行動を共にする事とした。
然し、無策で彼等に潜入する吾輩では無い。
憎き勇者──其の往く先には魔術で編まれた地雷が……!
勇者?!「?!?!??!!!!?????!!!!! 今なんかされた気がするゾォオオオオオッッッデッツツワ??!!?!!?!!?!! まあいっかァァァァァァァアッッッッツッッツツッッ?!?!!!!?!!!?!?」
裏切るゴブリン?!「ゴブツッッッッッツゥゥゥゥウッッッッツッ!!!!!?!!、!!?!?!!!!?!!」
何ッ!?
思わず、吼えてしまう。
一切の魔術を使う動作無く、術式を祓い除けた……だとッ!?!?
此奴……そうか、理解した。此奴の正体が今、ほんの少しだけ、摑めた気がした。
──全身が、吼えているッ!!
魂がッ、魂魄が叫んでいるッ!!!!
勇者は全身から概念的、形而上的に咆哮しているのだ!
ツヨツヨゴブリン四銃士が現れた。
然して無惨に殺された。
嗚呼、此の世に神は居ないのか?
居るとして、何故彼の勇者の味方をするのか?
未だ叫び続ける同胞の死骸を観て、吾輩は悟った。
──この男は、殺さねばなるまい──と。
必ずや、殺してみせる。
此の世に、正常なる言霊を取り戻す為。
散って逝った彼等を弔う為。
人里近くの洞窟にて、同胞の者達と切磋琢磨して育って来た。
友と良く遊び、良く学び、時には若気の至りとも言うべき無茶もして来た。
小鬼は「集」を重んじる。
其れは、人間程度の浅い繋がりでは決して無い。
我々がか弱く在るからこそ、産まれた習性なのかも知れぬ。然し、我々に其の様な事は、最早関係無い。
手を取り合って生きる。
これこそ。この強固な紐帯こそ、我々が在るべき姿なのだ。
──だからこそ、余計に度し難い。
其れは忘れもしない。或る日の出来事であった。
友や、父上や母上や、兄上や姉上や、妹や弟や、果ては親切にしてくれている隣人に到るまで。
其の日、我々から尋常なる言霊は消えた。
不明の原因によって、一斉に。
吾輩自身、喉から出る声に違和感が有ったが、其れは他者の声を聴けばはっきりした。
皆が、吼えている──。
聴いただけで鼓膜を劈く悲鳴怒号が、洞窟内に反芻する。
洞窟内だけでは無い。
森の鳥達や、熊等の獣共。
声帯を持たぬ筈のスライムや、羽搏く事しか脳の無い虫けら共迄、吼えていた。
其の時、吾輩の脳裏に或る一つの予感が、まるで電流が如く疾走る。
吾輩は森を駆けた。全速力で。
吾輩は小鬼に珍しく、余り運動能力に秀でていない。
寧ろ頭脳面に於いては、其処等の下手な人間よりも賢いと自負している。
其れでも、疾走らねばなるまい。
此れは然う言う時なのだ。
草木の根を掻き分けて、吼え群がる野獣共を迂回し、すっ転んでも歯を喰い縛って立ち上がる。
泥だらけに成って迄、必死に成って迄に辿り着いたのは、仇の拠点とも言うべき場──人里であった。
然し。
遺していた淡い期待も、がらりと音を立てて崩れ去った。
人が、何十の人が、何百の人が吼えていた。
正しく、地獄絵図と言えよう。
其の事態に対して、己が何の疑問も持たぬのを、同じく何の疑問も持たぬ人々を観て気が付いたと言うのだから、笑えた話だ。
何処も然うなのか?
最早、此の世界から正常なる言語は喪われてしまったのだろうか?
吾輩は、何とも言えぬ喪失感に苛まれた。
……が、絶望は直ぐに希望へと変換される事となる。
数日後、或る人間は誠しやかにささめいた。
村人A?!「勇者ィァァアッ様ァンッが召! 喚! されたらしいぞおおぉおぉぉおォォオオオォオォォホォトツゥゥウウウウッッッッッッッッウ?!?!?!!!!!つー!!?!!!」
村人B?!「ヌァァァヌィイゥウイィィィイッッッツ?!?!!?!?!!!!」
吾輩の頭に、衝撃が疾走った。
天啓とも言えよう。
時期の一致。勇者と言う強大な存在。
然う考える理由は幾らか有ったけれど、一番大きな理由は、勘でしかなかった。
けれども矢張り、行動せずには居られ無かった。
ーー
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区切りィィィィイィイイイイイイイイッッッッッッィッッッッムッッッッッッッッ?!?!!!?!!!?!!!!!?!!
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策戦は直ぐ様成功した。
偶然にも、我等が洞を現れる事に成った勇者一行へ、吾輩は潜入した。
彼等が本物の莫迦で助かった。
吾輩が此れから自らが斃さんとする小鬼である事に、一切の疑念を抱かない。実にやり易い。正直、拍子抜けである。
一先ず、景気付けに村長を咬んだ吾輩は、元凶(暫定的ではあるが)たる勇者一行と、行動を共にする事とした。
然し、無策で彼等に潜入する吾輩では無い。
憎き勇者──其の往く先には魔術で編まれた地雷が……!
勇者?!「?!?!??!!!!?????!!!!! 今なんかされた気がするゾォオオオオオッッッデッツツワ??!!?!!?!!?!! まあいっかァァァァァァァアッッッッツッッツツッッ?!?!!!!?!!!?!?」
裏切るゴブリン?!「ゴブツッッッッッツゥゥゥゥウッッッッツッ!!!!!?!!、!!?!?!!!!?!!」
何ッ!?
思わず、吼えてしまう。
一切の魔術を使う動作無く、術式を祓い除けた……だとッ!?!?
此奴……そうか、理解した。此奴の正体が今、ほんの少しだけ、摑めた気がした。
──全身が、吼えているッ!!
魂がッ、魂魄が叫んでいるッ!!!!
勇者は全身から概念的、形而上的に咆哮しているのだ!
ツヨツヨゴブリン四銃士が現れた。
然して無惨に殺された。
嗚呼、此の世に神は居ないのか?
居るとして、何故彼の勇者の味方をするのか?
未だ叫び続ける同胞の死骸を観て、吾輩は悟った。
──この男は、殺さねばなるまい──と。
必ずや、殺してみせる。
此の世に、正常なる言霊を取り戻す為。
散って逝った彼等を弔う為。
応援ありがとうございます!
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