社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依

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27話 Sランク冒険者

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 それから、一週間ほどしてモーレンの村には冒険者が各地から集まって来ていた。結局、ギルドの判断で国には報告しなかったのだ。
 モーレンの村から、二日の距離にあるローディスの町のギルドは、できたばかりのダンジョンだと侮っていたようで、マニュアル通りの対応をしたようだった。
 しかし、Bランクの冒険者が犠牲になったと報告をした事で、集まって来た冒険者はAランク以上ばかりだった。

「今回のダンジョンは厄介らしいな?」
「ああ!聞いた聞いた。何でもスタンピードが起こる手前らしいぞ」
「俺も聞いたぞ。大群ではなくランクの高い魔物がダンジョンから輩出されるとかなんとか」
「そうなのか?俺の情報となんか違うな。俺はオーガの大群が出てきそうになっていて、そのボスがブラッディーオーガだと聞いたぞ?」

 こうして、マサルのダンジョンの情報はちゃんと伝わっていなくて、結局のところなんかやばいという事だけが独り歩きしていた。

 そして、今回はAランク以上の冒険者が集まっていたが、Sランクの冒険者が率先してダンジョンに侵入していくのだった。



「マスター、またダンジョン前に冒険者の集団がいます」

 その中には、ルナもよく知っている顔があった。

「あ!あの人達は!」

「なんだい?ルナは知っている人なのか?」

「冒険者なら誰でも知っている人達よ」

「冒険者ギルドも本気で僕を捕らえにきたのかな?」

「ご主人様、多分もうその段階じゃないのかも……」

「ソフィアどういう事?」

「予想でしか話せませんが、Sランクパーティーの人間がこんなにも集まっているという事は、このダンジョンを早く攻略しないといけないものと認識したんじゃないのかなと思います。つまり、ご主人様を捕らえる為ではなく、ダンジョンからのスタンピードの阻止なのかもしれないですね」

「それってどういう事?」

「ダンジョンの攻略ですよ。ご主人様は前回、冒険者を大量に処分してしまいました。それも一階層にある罠だけでです」

「うん」

「その為、このダンジョンは難攻不落のダンジョンとして、できたばかりのうちに攻略しないと後々手出しできなくなると思い、Sランクの冒険者を集めたのかもしれません」

「なるほど……でも、ソフィア?」

「なんでしょうか?」

「それなら冒険者でなく、国の騎士団が来てもおかしくないんじゃないか?」

「多分ですが、ギルドは国を動かすほどの、説得材料がなかったんじゃないのかと思います」

「説得材料?」

「つまり、国に報告を上げる時、それなりに納得できるような証拠がいるんですよ。このダンジョンは出来たばかりだと認知されているのに、証拠不十分で騎士団を動かしたとなると……ギルドは、責任を取らされる事になるのですよ」

「だが、前回冒険者に多大な犠牲者が出たはずだよね?」

「それはそうですが、前回入手したDPからしたら、Aランク以上の冒険者は助かっていると判断します。つまり、その多くはBランク冒険者だったのではないかと」

「なるほど……Bランク冒険者だけでは、国に報告してそれが間違っていた場合をギルドは恐れたというわけか」

「そういうことです。今回集まったSランク冒険者でダンジョン攻略が出来ればよし。出来なかった場合、国へ報告しても説得できる材料があるという事だと思います」

「なるほどなあ。よくわかったよ」

「マスター、もうダンジョンは強化完了しております。大船に乗ったつもりで安心してください」

「ちょっと!オーブ。それはご主人様が、貴方に言うセリフじゃない!強化したのはご主人様であって、守られているのはオーブの方なんだよ?」

「そんなのわかってますよ。ちょっと言ってみただけじゃない」

「まあまあ、ルナもオーブも抑えて抑えて。確かに、この最深部まで来れる人間はもういないと思うけど、仲間同士で喧嘩したら、何が起こるか分からないから仲良くしよう」

「「はーい……」」

 オーブも又、なんか人間らしく会話できるようになっていた。オーブが、自分が強化したように自信満々で言ったのは、マサルも分かる気がしていた。
 最深部まで来れるとは思わなかったので、安全が確保できた安心感の為、舞い上がってしまったのだろう。
 
「でも、こうなるとあたしやソフィアの出番はもうないようなものね」

「ルナ、お前とソフィアは、最終防衛線の要だと言ったじゃないか?気を抜いたらダメだよ?」

「だけど、2階層にいるカグヤ達で片が付きそうじゃないですか」

「そうなれば、そうなったらいいじゃないか?相手はSランク冒険者達だよ。まあ、大丈夫だと思うけど相手の事を想うと不憫だよね」

「やっぱり、ご主人様も楽勝と思っているじゃないですか?」

「そりゃそうだよ。カグヤの能力を見たら、まず普通の人間達に勝ち目はないよ」

 マサル達は、ダンジョンに集まっていた冒険者を見て話していた。


 そして、準備が整ったのか冒険者がダンジョンに侵入してきたのだった。1階層は洞窟が枝分かれして、色んな部屋がある。
 その中の一本だけが2階へと通じるボス部屋に辿り着く迷路になっている。しかし、さすがSランク冒険者で、1階にいる魔物をどんどん仕留めていった。

「しかし、なんだこのダンジョンは?一階層で、Aランクの魔物がうじゃうじゃいるじゃないか?」

「ハンス!この部屋はやめておこう」

「なんでだ?」

「この部屋には、テレポーターの罠が張ってある。経験上、浅い層のテレポーターは危険があるだけだ」

「わかった!この部屋は後回しだ。下の階に通じる部屋が無ければ、ここに戻ってくることにしよう」

 Sランクパーティーは、どんどん1階層の全体図を攻略していくのだった。そして、とうとう2階層へと続く階段を見つけた。



「マスター、冒険者達が2階層へと降りました」

「まあ、想定内の事だよ。そんなに焦る事はないよ」

「ですが、こんなに早く2階層に来るなんて……」

「まあ、見てなよ。ここからが本番みたいなものだよ」

「本当に大丈夫でしょうか?2階層は罠もそんなにある訳じゃないし……」

「罠はないけど、今度の相手はカグヤだからな……Sランク冒険者達も、1階層で他のパーティーを待ってればよかったのにな……」

 マサルは、一番乗りをはたしたパーティーの行く末を哀れに思った。



 1番乗りで2階層への切符を取った、Sランクのパーティーは【ドラゴンの咆哮】と言うパーティーだった。

「ダン!俺達が一番乗りだがこのまま進むのか?」

「ああ!少しでも攻略を進めた方がいいだろう。魔物もAランクだったしな。2階層から魔物のランクが上がる事もないだろうしな?」

 パーティーリーダーのダンは、今までの経験から一階層降りたぐらいで、魔物のランクは上がらないと判断した。

「何だこの部屋は、薄暗いな……アイリーン、ライトを唱えてくれ」

 パーティーの魔法使いであるアイリーンは、辺りを照らす魔法を唱えた。すると、ライトは確かに辺りを照らしたのだが、すぐに暗くなってしまった。

「アイリーン、これはどういう事だ?これでは5mも周りが見えないじゃないか?」

「あたしに文句言わないでよ。これはダークゾーンよ」

 ダークゾーンとは、ダンジョンでは厄介な空間であり、ライトの魔法を撃ち消してしまう空間のことである。一切のひかりが無い空間ではなく、5m先が見えないくらいだが戦闘になれば、普通の人間では厄介なことこの上ない空間である。
 すると、斥侯員であるエンダーが、すぐにランタンに火をともした。

「こいつで代用するしかないな……」

「さすがエンダーだ。準備がぬかりないな」

 この辺りは、さすがと言っていいだろう。Sランクパーティーだけあって色んなことに対応できるのは、人生経験が豊富と言うしかなかった。
 ダークゾーンは光属性のライトを打ち消す為、こういう時は魔法力を使わないランタンや松明で行動するのが常識である。

「しかし、このダークゾーンを早く抜けるに限るな……これでは、いつでも襲ってくださいと言っているようなものだ」

 ドラゴンの咆哮は、出来るだけ早く、そして慎重に行動した。

「みんな注意しろ。この先に何かいるぞ」

「こんな広い空間で何かいるだと?」

 エンダーは、パーティーメンバーに危険を報せた。この空間には罠がなかった。ダークゾーンが、罠と言えば罠だが、先が見えないというだけのものである。しかし、この空間で魔物に襲われれば、こちらとしては不利には違いないのである。

「貴方達!ここから先に行くというのなら命の保証はしないわ。今なら見逃してあげるから引き返しなさい!」

「だ、誰だ!」

「ここはダンジョンマスターである、わたしの主様のダンジョンです!勝手に潜入しないでもらいたいですわ」

 エンダーは、声のする方にランタンを向けてみた。すると、エンダーの前方に真っ黒なレース素材のようなドレスに身を包んだ女性がこちらを睨んでいたのだった。

「貴様は誰だ!なぜこんなところに?」

 ドラゴンの咆哮のメンバーは、何故だか彼女から異様な威圧を受けて嫌な予感しかしなかった。こんな危険なダンジョンに、女性が一人でそれもドレスを着ているのだ。

「わたしの事はどうでもいい!早く引き返しなさい。今なら見逃してあげると言っているのですよ」

 そこに待ち構えていたのは、当然カグヤである。マサルの言いつけで、冒険者がおとなしく引き返すのなら、襲わなくてもいいと言われていた。
 その為、カグヤは冒険者に引き返すようにと注意勧告していたのである。

「引き返せれるわけないだろ!貴様も、人間ならこのダンジョンの事は知っているはずだ」

「あはははは!わたしが人間?貴方達のような、下等生物と一緒にしないでいただきたいわ」

「下等生物だと……」

「ふふふ。いっぱしに下等生物の存在で頭にきたのかしら?」

 カグヤは、ドラゴンの咆哮を挑発する様に笑みをこぼしたのだった。

「貴様!いったい何者だ?」

「何回も同じことを聞かないの。わたしは貴方達に引き返してもらえたらそれだけでいいだけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ。それともそんな簡単な事も応じて貰えないのかしら?それなら襲わせていただきますがよろしいのですか?」

「やれるものならやってみろ!」

「それならお言葉に甘えさせていただきますわ」

 エンダーが、カグヤの澄ましたしゃべりにムカつき怒鳴ったのだった。すると、一番後方にいたプリーストのアンナに黒い影が襲い掛かったのだ。

「きゃああああああああ!」

 アンナの悲鳴に、メンバーは振り返ると、アンナの首筋に噛みついていた魔物がいた。その目は真っ赤に光り、背中には蝙蝠の羽根を生やしていたバンパイアが、アンナを襲っていたのだった。

「「「「バ、バンパイア!」」」」」

「と言う事は、あいつはバンパイアクイーンか!」

 ドラゴンの咆哮のリーダー、ダンはその女性の正体をバンパイアクイーンと思ったのだった。パーティーメンバーはクイーンと聞き冷や汗を流した。
 まさか2階層の入り口で、いきなりSランクモンスターであるクイーンが襲ってくるとは思いもしなかったのだ。

「み、みんな逃げて……上を……」

 アンナは、最後の気力を振り絞り、仲間にこの空間の天井を指さしたのだ。エンダーはそれを聞き、ランタンを上に向けた。すると、そこには逆さまににぶら下がったバンパイアの軍勢が、赤く光る目玉でこちらを睨んでいたのだった。

「こ、こんな事が……」

「だから言ったのに。あの時、素直に帰っていれば人間の短い一生を過ごせたのにね。クスクス」

 カグヤは、微笑みながら指を鳴らした。その瞬間、ドラゴンの咆哮は何百というバンパイアに襲われ、闇の中に消えたのだった。


  
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