研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第1 章 自分だけの職業

5話 家の購入

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 ヒロトシは酒場での絡んできた男が、ギルドマスターだという事に驚き、顔を忘れない様にしようと思っていた。

「ご主人様、どうかしたのですか?」

「あ、いやな……あの男性が、ギルドマスターって事に驚いていただけだよ」

「たしかに、あんな絡んでくるような男が、ギルドマスターって事にビックリしました」

 アイは、普段あまりマインのようにしゃべる事はしないが、自分の主人が絡まれた事に憤慨していたようだった。

「まあ、そんなに怒ってやるな」

「ですが!」

「ああいう男は不器用なんだよ。若い人間が心配だが、どう接して良いのか分からないんだよ。実際、俺達の事を心配していただろ?」

「ご主人様は優しすぎるんですよ」
「わたしもそう思います」

「まあ、そういってやるな。俺にも経験があるから、あの男の気持ちはよくわかるんだよ」

「「ご主人様が?」」

「さっき、話しただろ?一人で仕事していたことを」

「「はい」」

「一人で仕事していたと言っても、同じように仕事をしてた人間はいたんだ。だけど、俺は若い子の仕事の段取りを見てるとどうしても、口を出したくなってな。その時だよ、どう接して良いのか分からなくてな。多分、あの時は若い子はうざかったと思うよ」

「「そ、そんな……」」
「ご主人様は、その若い子に仕事を教えてあげたかったんでしょ?」

「それだよ。どう接して良いのか分からなかったんだ。あのギルドマスターと一緒だと思わないか?俺も、そのころの経験があるから分かるだけなんだよ」

「なるほど……」

「今なら、俺ももっとうまく話しかけれるとは思うけど、こればかりはその時にならないと分からないからな……」

「ご主人様なら大丈夫ですよ」

 アイは、首を縦に振っていた。

「まあ、とにかくあのギルドマスターはいい人って事だよ」

「ご主人様が、そう言うのならそれでいいですけど……」

「さて、飲み物も無くなったし、そろそろ商人ギルドに行く事にしようか」

「「はい」」

 ヒロトシ達は、冒険者ギルドの酒場を後にした。酒場を出る時には、注文を取ってくれた女性店員から謝罪を受けたのはいう間でもなかった。
 その時に、商人ギルドの場所も聞いて驚かれはしたが、又ここに食事に来てくれと言われたのだった。



 そして、商人ギルドの前にやってきたヒロトシは、門をくぐり受付の前にやってきた。

「いらっしゃいませ。今日はどのような御用ですか?」

 名札には、ランファーとあり、とても綺麗で笑顔が可愛いくスタイルが抜群な女性だった。他の受付嬢も綺麗どころを選んでいるのかという程、綺麗な女性達ばかりだった。

「ギルド登録に来たのですがよろしいですか?」

「えっと、身分証明書としてギルドカードをお作りになるのでしょうか?」

「いや、この町で商売がしたいんだ」

「あのどのような商売を?貴方のような子供は、まず生産ギルドで修業をして、それから独立するというのが常識だと思うのですが……」

 ランファーの言う事は当たり前だった。ヒロトシは12歳で成人前の男の子である。商売するにしても師匠についてノウハウを教えてもらうのが常識だったのだ。
 例えば、鍛冶ならばロングソードを作り、売れるぐらいの高品質の商品を製作出来なければ、話にならないからである。

 成人前の男の子であるヒロトシに、そんな経験があるとは普通誰は思わないからだ。

 そして、そういった弟子の期間でお金も貯めて開業資金にするのだ。

「そういった風にどこかの弟子にならないと、店は開く事はできないのでしょうか?」

「そういうわけではありませんが、店舗はどうするおつもりですか?お金が無いと買う事も出来ないのですよ?それに、例えば鍛冶で生計を立てるとして、貴方の商品はどれほどの出来栄えになるのですか?高品質ですら普通の値段で、ノーマルなら買いたたかれるのですよ?」

「それなら大丈夫ですよ。お金ならこの通りありますので」

 ヒロトシは、インベントリからミスリル貨を10枚取り出した。ミスリル貨1枚で一千万ゴールドの価値があり、受付に10枚も出した事でランファーに驚かれた。

「申し訳ございません。貴族様に色々失礼な事を!」

 ランファーがいきなり謝罪したのも無理はなかった。ミスリル貨なんて、王族か貴族しか扱わない貨幣である。また、ヒロトシは貴族と間違われただった。当然、マインとアイも目を皿のようにして驚いていた。

「いや、俺は貴族じゃないよ。だから、謝らなくても大丈夫だよ」

「で、ですが、ミスリル貨だなんて」

「まあ、城門でも間違われたから無理もないけど、俺は貴族じゃないのはたしかだよ。だから、俺はこの町で商売がしたいから登録をお願いします」

「どんな商売をするか分かりませんが、本当に大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ」

「それでは商人ギルドの登録をさせていただきます。この石板に両手を置いて下さい」

 ヒロトシは、ランファーの言う通り手を置くと、側にある魔道具が作動しカードが出たのだ。

「このカードはミスリル製で作られています。とても高価なものなので無くさない様にしてくださいね。再発行の場合50万ゴールドと高額になるので注意してください」

「結構高いんだな」

「そりゃそうですよ!ギルドの技術を結集させて作り上げた魔道具なんですから」

 受付嬢のランファーは、その豊満な胸をそらせてドヤ顔をしていた。

「それで、ギルドの説明をしてもらっていいか?」

「はい!ギルド構成員は、年間の納税分によりランクが上がっていきます」

「それってどんな感じに値段が決まっているんだ?」

「年間の売り上げの一割を、ギルドに収めていただきます」

「一割だと?」

「それが決まりですので、申し訳ないですがよろしくお願いします」

「くううう……ぼったくりかよ……」

「だから、大丈夫かと聞いたのですよ」

「分かったよ。納税さえすれば好きに出来るという事だな」

「そういう事です」

 そう言って、ランファーは説明を続けた。ランクは下からFランクで、年間売り上げの10%の1000ゴールドを収めたら大丈夫とのこと。
 しかし、売り上げが無くてもFランクは1000ゴールドを納めなくてはならず、払えなければ追放され3年間は所属が出来なくなるらしい。
 厳しいと思うだろうが、独立した人間にとって1000ゴールドは余裕で払える額である。

Fランク  1000ゴールド
Eランク  5千ゴールド
Dランク  1万ゴールド
Cランク  5万ゴールド
Bランク  10万ゴールド
Aランク  50万ゴールド
Sランク  100万ゴールド
EXランク 1千万ゴールド

 Eランクになると、年間売り上げの10%で5千ゴールドを納めればよいのだ。つまり、Eランクのお店は年間売り上げが5万ゴールドという訳だ。
 そして、お店をやる限りそんな低収入ではやる意味が無いのが普通であり、所属する商人の殆どは、すぐにCランクに上がり、BやAランクが普通なのである。

「商人の条件はそれだけです。犯罪以外どんなことをしても、ギルドにお金を収めてください。しかし、犯罪をしたら永久追放になるので、絶対にやったらだめです」

「犯罪はするつもりはないけどさ……」

「ならば頑張ってください」

「それで、ヒロトシさんはお金持ちですし、店舗はどのような感じで考えていますか?」

 ランファーは、店舗兼家の資料を見せてきた。ランファーも売り上げ次第ではボーナスが支給されるので、一生懸命に働いていた。ヒロトシが商人として成功すれば、所属させたランファーの功績となるのである。
 ミスリル貨を10枚を持っているヒロトシは、相当広い店を持てる事になり、家や店舗が一緒になったものや、同じ敷地に、住居や工場がある家など見せてくれた。

 その中で、紹介してもらった見取り図で、同じ敷地に住居と店舗と工場の便利の言い物件があった。大通りからは少し離れてはいるが、冒険者ギルドとは目と鼻の先にある家だった。
 値段は8千万ゴールドと高い物件だったが、即決で払ってくれるなら、6千500万ゴールドにまけてくれるらしい。現場を見せてくれとヒロトシは頼み、家の場所まで案内してもらった。

「ここなら、ギルドも近いしどういった商売をするか分かりませんが、冒険者の目に入りやすいと思いますよ」

「たしかに、ここなら冒険者達から目立ちやすいかもな」

「ご主人様。ちょっとお待ちください。こんな大きな屋敷を購入してどうするおつもりですか?それに、冒険者は関係ないじゃありませんか?」

「ちょっと、奴隷は口出ししないでください。これはギルドとの取引なんですよ?」

「ですが……こんな大きな屋敷を購入しても管理が大変じゃないですか?わたし達だけじゃ、とてもじゃありませんが、管理するのは無理だと言っているのです」

「確かに、それもそうだな……」

「そうですよね?」

「ちょ、ちょっと貴方達!」

 せっかく売れそうと思っていたランファーは、購入を断られると思い焦り出していた。

「ここは立地もいいですし、お買い得だと思いますよ。やっぱり、お客が来なければ売り上げも落ちる事になりますし……」

「確かにそりゃそうだ」

「で、でしょ?」

「ご、ご主人様!ダメですってば。よく考えてください。ご主人様一人でこの屋敷に住むというのですか?」

「何言ってんだ?マインとアイも一緒に決まっているだろ?」

「「えっ?」」

「えってなんだよ?じゃ二人は野宿でもする気だったのか?」

「いえ……そうではなく、わたし達は奴隷です。納屋みたいなところで十分ですよ」

「何を馬鹿な事言ってんだ。そんな事絶対認めんからな。二人にもちゃんと部屋を用意してベットで寝てもらう」

「「そ、そんな!わたし達にそんな贅沢な事は!」」

「ランファーさん。この家で決めたよ!」

「ありがとうございます!」
「「ご主人様!」」

 ランファーはニコニコ顔で、急いでギルドに帰って、ヒロトシが気が変わらないうちに、手続きをしようとしたのだった。この時、ランファーはさすがお子様だと思い、ヒロトシを完全に舐め切っていた。

「屋敷の受け渡しは、1週間後となります。その時に、お金と家の鍵を交換と言う事になりますので、よろしくお願いします」

「手付金とか入らないのか?」

「大丈夫です。この後、ギルドカードに登録していますので、誰かに売る事は絶対ありません」

「なるほどなあ。ギルドカードって便利なもんだ」

「当然です!ギルドの技術が結集した魔道具ですからね」

「ところで話は変わるが、この屋敷には風呂までついていただろ?それが原因で、この家は長い間売れなかったんだよな?」

「えっ?何でそれを?」

「そりゃわかるよ。この辺りで、風呂に入るのは貴族ぐらいだ」 

「ですが、それが原因で一般商人に売れないとは……言いきれないんじゃ」

「風呂はいちいち水を汲んで、魔道具を使って沸かさないといけないが、それが面倒だろ?使用人や魔術が使える人を雇わないといけない。そこまで人を雇おうと思ったら、相当儲けの出ている商会の店じゃないと、この家は買えないよな?」

「でも、貴族様からは人気の屋敷で……」

「貴族様なら、店舗や工場のある屋敷なんか買わないだろ。という訳で、あの家は売れ残っていた。ちがうか?」

 ヒロトシの言う事に、言葉が出なくなってしまったランファーだった。

「そ、そうよ。でも買うって言ったじゃない。今更、買わないっていうのは卑怯よ」

「そこで相談だ?ギルドがあの家をずっと持っていたのは、解体するのもお金がかかるからだよな?」

「そうよ。冒険者ギルドが近くにあるし、立地としては良い場所だけど、解体するとなると周りに防護を張ったり、色んなことをしないと解体出来なかったからよ」

「じゃあ、購入はするからもっとまけてくれよ。俺が買わなかったら、まだまだ売れない期間が延びるとギルドも大変だと思うんだが……」

「なっ!そんなの卑怯よ!」

「いやいや……これが商売って言うもんだろ?弱みを見せたらそりゃ足元を見られるよ。だけど、いきなり6500万まで値下げしたのは、不味かったとおもうよ?」

「なんでよ!」

「そりゃそうだろ?いきなり1500万も値引きをしたら裏があるようなもんだろ?ギルドとしては、早く売りたい物件だというのがよく分かるよ」

「ぬぐぐぐ!お子様だと思って油断した……」

「で、どうだい?4000万でどうだ?」

「なっ⁉そんな半額じゃないですか?そんな値段で売ったらこちらが損します!今までの維持費とかもあるんですから」

「あっそう。じゃあ、もっとお手軽な3人で住めるような、こっちの店舗でもいいかな?」

「そんな!買うって言ったじゃないですか?」

「だけど、まだ契約してないし……俺は、こっちの家でも構わないんだけど」

「ぐっ……じゃあ、5000万でいかがですか?」

「話にならないな。4200万!」

「それじゃ、ギルドが損しちゃうって言っているでしょ?4800万」

「じゃあ、こっちの家の方が住みやすそうだな。4400万」

「もう無理です……4500万で購入してください」

 ランファーはとうとうヒロトシに泣きついてしまったのだ。ヒロトシは神眼で家の価値を見ていたのだった。それ故にこうして、交渉していたのだった。
 あのまま言い値で購入していたら大損するところだった。

「了解!4500万で手を打つよ」

 ランファーは、12歳の子供に負けてガックリ俯いてしまった。すると、いきなり受付カウンターの奥から笑い声が聞こえてきたのだった。

 ヒロトシはその笑い声に驚き、ギルドの奥を見るとおばあさんが笑っていたのだった。


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