研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第1 章 自分だけの職業

8話 ヒロトシ絡まれる

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 次の朝、陽の暖かい感じが頬にあたり、ヒロトシは目を覚ました。ヒロトシの腕には何かに固定されて動かなかった。

「うーん……」

「んんっ……そんなとこ触っちゃ……」

「な、なんだあぁ」

 ヒロトシの腕は、マインとアイのふとももに挟まれて抱きつかれていた。

「ちょ、ちょっと二人とも起きて……」

 ヒロトシは何とか抜け出そうとしたが、二人から抱き枕にされていて身動きが取れなかった。

「いや……そんなところを」
「あうっ……」

「おい!二人ともはやく起きろやばいから!」

 そして、ようやくマインとアイの二人は目覚めたのだった。

「あっ……ご主人様おはようございます……」
「ふわぁ~~~。まだ眠いよう……」

「何で二人とも、こっちのベットに入っているんだよ」

「ご主人様と、一緒に寝たかったからに決まっているじゃないですか」
「そうですよ。女奴隷が二人もいるのに、本当に奉仕なしに寝ちゃうんですから……」

「そういうのはいいからって言っただろ……って、どこを見ている」

「ご主人様ったら……そんな事言ってやる気ビンビンじゃないですか……」
「ホント子供とは思えないくらいグレイト……」

「ば、馬鹿!これは生理現象だ!」

 ヒロトシは、急いでトイレに駆け込んだ。ヒロトシは久しぶりに朝○ちに感動していた。

「俺も若いころはこんな感じだったなあ……ってか、もう一度人生のやり直しか……これも、ミレーヌさんに感謝だな」

 3人は、すぐに食堂に降りて朝食を食べていた。

「あんた、奴隷に一日2食ご飯を与えるのかい?」

「そりゃ一日の始まりは、しっかり食べなきゃ元気が出ないだろ?」

「そりゃそうかもしれないけど、ここを長い事やっているけど、あんたみたいなお客様は初めて見たよ」

「まあ、いいじゃないか」

「ああ。あんたみたいな上客はありがたいよ」

 朝ご飯は、贅沢に白パンに野菜とチーキンの肉を挟んだサンドウィッチだった。白パンは柔らかくチーキン(ロックバードの肉)がジューシーで肉汁溢れる逸品だった。それと、サラダとゆで卵がついて350ゴールドである。

 食事がすんで、ヒロトシ達は町にくりだした。宿の鍵は外出の際預ける事になる。貴重品は宿屋で預けるか、自分で持ち歩くかしないといけない。
 ヒロトシは自分の持ち物は全部、インベントリに収納できるから問題はなかった。

「ご主人様、今日はどこに行くのですか?」

「今日は二人の服を買わないとな」

「「えええ!服まで頂けるのですか?」」

「そりゃそんな服じゃ寒いだろ?今は、まだいいが冬が来たら大変じゃないか」

「私達は獣人だし、寒さには強い方だと」

「駄目だ!油断して風邪を引いたらどうするつもりだ。薬代の方が高くつくだろ?」

「そうなれば、捨てるのが普通だと……」

「はぁあ?それこそありえないだろ?やっぱりなしだな」

「何がですか?」

「昨日二人に、この世界の常識を聞いただろ?」

「「はい」」

「それを聞いて、そのほとんどは俺の非常識だったよ。それと弱いものが犠牲になるのはあまりに悲劇だ。俺は俺のやりたいようにやる」

「ですが……」

「マインとアイも、もういちいち気を遣うなよ?俺がやりたいことは受け入れろ」

 ヒロトシは、この世界の常識がほとほと嫌になっていた。その為、これから先嫌なものは嫌だと言って、誰にも遠慮などせず生活することを決めたのだった。

「とりあえず、君達の服を買いに行くぞ。その後、商人ギルドに行く」

「わ、分かりました」

 ヒロトシの私服は、この世界に来たときミレーヌが、インベントリに入れておいてくれていた。その為、買う必要はなかった。
 マインとアイには、3着づつと部屋着を2着づつ買った。下着は5着づつ購入した。それらを入れる鞄は一番小さい収納のマジックバックを買ってあげた。
 一番小さい収納バックは、腰に巻き付けるポーチと言ったらいいだろうか、邪魔にはならず便利である。10万ゴールドと冒険者にはお買い得だが、一般家庭では高い逸品だ。
 この収納バックは、当然時間停止などついておらず、大きさは50cm四方高さ150cmほどの、縦長のロッカー程の大きさの空間があり、服を入れておくのに便利な収納バックなのだ。

 服屋の店主は、大量に購入してくれて大喜びで、またのお越しをと笑顔で見送ってくれた。

 マインとアイは、奴隷服を脱ぎ買ってもらったばかりの服を着て楽しそうにしていた。

「何で奴隷服を捨てないんだ?もう服があるだろ?」

「いえ、奴隷服もまだ着る事が出来ます。捨てるだなんて勿体ないですよ」
 アイもそれに同調する様に首を振っていた。

「まあ、いいけど……今着ている服が古くなったら、新しいの何時でも買うから古い服は処分しろよ」

「なっ!そんな勿体ない!この服は一生きます」

「何を言ってんだよ。マインもアイも、これから成長したら、その服では小さくなって着れなくなるかもしれないだろ?」

「わたし達が成長?そんことがあるわけないじゃないですか。もうわたしは16歳ですよ。今更成長するとは……」

 たしかに、二人は年齢の割に背は小さい方だった。しかし、それは栄養が取れていないだけであり、ここ数日、ヒロトシと会ってお腹いっぱいご飯を食べていたのは初めての事だった。
 それまでは小さいころから、お腹はいつも減っている状態で生活していただけだったのだ。

「わからないだろ?まあ、大きくならなくとも同じ服ばかりでは飽きてくるから、新しいのを買うからいつでも言ってくれ」

 ヒロトシは、そう言って日用雑貨も買い与えていた。

「後はもう大丈夫だな?」

「「はい!本当にありがとうございます」」

 二人のポーチの中には個人用品でいっぱいになって、日常生活で不都合な事はなくなった。そして、昼になったので食事をとることにした。

「ご主人様?お昼も食べるのですか?」

「ああ、お腹がすいただろ?」

「しかし、1日3食も頂けるのですか?」

「俺が腹が減ったからな。何かいいものはないかな?」

「それなら屋台の肉串とかはどうですか?ミトンの町の名物です」

「それはいいな!」

「屋台は町の広場に行けば、たくさん色んな出店が出ていると思いますよ」

「じゃあ、お昼は肉串と行こう!」

「「はい!」」

 ミトンの町は、本当に色んな種族がいて賑わっていた。これも領主のおかげと言っていいだろう。人が多く行商も毎日のように来るので色んな食材がこの町にある。
 この為、マインやアイのような尻尾がいくつもある変異種も、人の目を気にせずいられるのだ。この町は差別が少ないので、ハーフエルフも多く住んでいるのである。

 町の広場にやってくるとより賑やかだった。店の前を歩くと、屋台の店主が声をかけてくる。

「兄ちゃん!うちのモロコシは甘くて美味いよ」

「うちの肉詰めはどうだ?食感が新しいよ?」

 ヒロトシは、声をかけられた方を見るとソーセージのようだった。

 そして、ひときわ賑わっているところは、ミトンの町の名物である肉串だった。

「おっちゃん!肉串おくれ!」

「はいよ!1本10ゴールドだ」

「おっちゃんの肉串は美味いけど、値段はどうにかならないのか?ちょっと高いぜ」

「わりぃな。うちのタレは高級調味料が使われているんだよ」

「分かってるよ。砂糖だろ?」

「わかってんじゃねえか。だから、この値段でもギリギリなんだぜ。我慢してくれよ」

「もうちょっと安かったら、もっと気軽食えるんだがな」

 そんな感じのやり取りが聞こえてきた。そして、ヒロトシもその屋台に並んで肉串を頼んだ。

「おっちゃん、俺にも肉串おくれ!」

「坊主、見たことのない奴だな。金はちゃんと払えるのか?」

「ああ、この町には昨日着いたばかりなんだ。1本10ゴールドなんだろ?じゃあこれで」

 ヒロトシは、銅貨6枚を店主の親父に出した。

「おいおい。坊主一人で6本も食うのか?」

「そんなわけないだろ?この子たちの分で2本づつに決まっているじゃないか?」

「はっ?坊主、その子たちは奴隷じゃないのか?」

「奴隷が食べたらダメって事ないだろ?」

「まあ、そりゃそうだが、お前さんみたいな豪気な客は初めてだよ。まあ、俺としては儲かるからいいんだけどな。ほらよ、待たせたな!6本だ」

 周りにいた客は、ヒロトシを見てポカンとしていた。肉串は屋台としては高価である。一般客でも特別な日に買いに来るぐらいなのに、奴隷に2本も分け与えるヒロトシにびっくりするのは当たり前の事だった。

「これは!ホント美味いなあ」

「本当です!こんなおいしい肉があったなんて」
「うまうま!」

「これは何の肉なんだ?」

「これは、ウォーターモウモですよ」

「ウォーターモウモ?」

「野生の動物で、巨大な体格でモウモウと鳴き、水辺にいるんですよ」

 ヒロトシは、マインの説明で水牛と思ったのだった。

「なるほど……なんとなくわかったよ」

 そして、広場で楽しく食べていたヒロトシの前に立つ人物があった。

「よう!坊主。奴隷にまで肉串を与えるなんて、えらい羽振りがいいじゃねえか?」

 ヒロトシの前に、ゴロツキ5人が絡んできたのだった。

「おかげさまでな」

「ちょっと俺達にも金を貸してくれよ。そんなだけ、羽振りがいいなら金持ってんだろ?」

「金はあるが、お前達に分ける金はないよ。他を当たってくれ」

「おいおい、子供がそんなに突っ張んじゃねえよ。怪我したいわけじゃないだろ?」

 そういってゴロツキの一人は、ヒロトシにナイフをちらつかせた。その様子を見て、周りにいた人間はそそくさと離れて行ったのだ。

「あーあ、あの坊主早速、たちの悪い奴に絡まれていやがる……奴隷になんかに、肉串なんか食わせるからだ……まあ、俺には関係ないがな」

 マインとアイも、心配そうにヒロトシを見つめる事しか出来ないでいた。

「なあ、そんなものを向けるって事は、俺を殺すつもりなのか?」

「殺されたくなければ金を出せ!」

「殺されたくはないし金を出すのはいやだな。怪我をしないうちに引いた方が身のためだぞ?」

「ぎゃはははははは!小僧が調子に乗るな!」

 ごろつきは、そのナイフを振り上げ、ヒロトシに振り下ろした。

「「ご主人様ぁ~~~~~~!」」

「いでぇ~~~~~!」

 ヒロトシは、そのナイフを軽やかに避けて、食べ終わった竹串をごろつきの鼻に突き立てたのだった。

「だから言っただろ?怪我をしないうちに身を引けって!」

 竹串を鼻に刺された男は、その場でのた打ち回っていた。

「「「「てめえええ!」」」」
「俺達を誰だと思ってんだ!そんな事をして、タダで済むと思ってのか!」

「ご託はいいからかかってこいよ」

 数分後、ヒロトシに絡んだごろつきが5人広場に倒れていた。

「なんだ?あの坊主むっちゃつええじゃねえか……」
「す、すげえ……」
「いままで、あいつ等に誰も手出しできなかったのに」
「これでこの広場に平和が戻って来るかも……」

 その時、向こうからようやく町の衛兵がとんできたのだった。

「暴れている奴は誰だ!」

「そこに倒れている5人です」

「はっ?これは誰がやったんだ?」

「そこいる子供が、そいつらに絡まれていたんだ。そしたら5人とも返り討ちになったんだよ」

「馬鹿な事を!こいつ等はBランク冒険者だろ?」

「だから、今まで誰も手出しが出来なかったんだが、その子供がやったのは確かだぜ」

 衛兵達は、周りの人間に聞いて回ったら全員が同じ証言をした。今までの事もあって、全員が証言してやると息巻いているほどだった。
 そして、衛兵達はその5人を逮捕して、牢屋にぶち込んだのだった。当然、ヒロトシには何のお咎めは無しになった。

「ご、ご主人様あまり無茶な事はしないでくださいよ」
「そうですよ。わたしは心臓が止まるかと思いましたよ」

「あんな奴らに、俺が負けるわけないだろ?」

「でも、5人であんな大きな男だったんですよ」

「あれなら、オークの方が強いんじゃないか?」

「馬鹿な事を言わないでください!」

「あの、ご主人様……やっぱり、わたし達奴隷に贅沢は止めた方が……今みたいに絡まれる事が起こるし……」

「だったら、今みたいに返り討ちにするから大丈夫だよ」

「「そんな……」」

「とにかく、俺達は俺達だ。絡んでくる奴の方が悪いんだから気にするな!」

「「わ、わかりました」」

 この事件で、後日冒険者ギルドから、謝罪があったのは言うまでもなかった。

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