氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

24話 商人ギルドがたいへん

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 生産ギルドの方でも寝耳に水だった。今までポーションは需要がある物だったのにそれがまったく売れなくなってしまったのだ。
 生産ギルドは、冒険者ギルドに薬草採取の依頼を出し、POT錬成師に製作を出し、完成したポーションを商人ギルドに卸していた。そして、そのポーションを冒険者が使用するのである。しかし、その流れを止めたのが新しく開発されたポーションが直接冒険者ギルドに卸された物だった。

「一体誰なんだ?生産ギルドに集められた錬成師はこれで全部なのか?」
「は、はい!生産ギルド所属のメンバーです」
「何があったんだよ?俺達だって忙しいんだ」
「そうだ。納期までに100本なんだぜ・・・ギリギリなんだぜ」
「ほんと勘弁してほしいぜ・・・」
「それでなにがあったんだ?」
「お前達の誰かがポーションを冒険者ギルドに直接卸した者がいる」
「「「「「「「はぁあ!?」」」」」」」
「バカ言え!そんな余裕が何処にある?」
「「「「「「「そうだそうだ!」」」」」」」
「確かにポーションは需要があるが供給が伴ってねぇんだ。俺にそんな余裕ねぇよ!」
「だよな!俺だってギルドから言われて無理をしているんだ。本当ならもう少し減らしたいぐらいだわ!」

 POT錬成師から不満が続出するのだった。生産ギルドも職人の不満は本当の事だとおもいこれ以上の詮索は出来なかったのだ。
 なぜこんなにも不満が続出するかと言うと、本当に供給が追いついていないからだ。つまり、終わりのないゴールが続いているのだ。POT錬成師の生活は、乳鉢で薬草を擦り潰す作業で大半を要する。擦り潰しながら水を少し足し、その擦り潰した物を布で濾すのだ。しかし、あまりに時間に追われその工程で手を抜く錬成師がでてきていた。
 手を抜くと養分が抽出しきれず回復量が低いポーションが出来る。また、味も最悪で苦味と刳味が残る。そうなると飲めたものではないが飲まないわけにはいかないというジレンマに襲われる。
 その抽出作業を楽にしようとして、薬草3本のところ5本に増やし製作する者もいた。そうすればあまり擦り潰さなくても養分を確保できるが単価があがる。その為、商人ギルドには高額で卸さなくてはならず、冒険者に届く際には更に高額になるのだ。
 その最中に、冒険者ギルドからポーションの効果と値段が合わないと交渉されたわけである。

「誰かがポーションの新開発に成功したのは確かなんだ!一体だれなんだ?」
「だから知らねぇて!」
「そうだ!俺達は今の納期で精一杯なんだ」

 そこに、生産ギルド職員が息を切らして慌てて飛び込んでくる。

「部長!やっと手に入れました。これが出回っているヒールポーションです」
「な、なんだこれは!?」
「「「「「「これが新しいポーションなのか?」」」」」」

 そこにいる人間全てが目を見開き息を飲む。自分達が製作したポーションとは見た目から全然違うからだ。こんな透き通った抽出技術があるのかと自分の目を疑った。当然、これだけ透き通ったポーションだと薬草の繊維かないのだから、苦味や刳味は無いのだろう。しかも、回復効果も段違いに高いと聞く。

「情けないがこのポーションは俺には作れねぇ・・・」
「「「「「俺もだ・・・」」」」」

 そこにいる全員が自分には作れないと落胆してしまう。その様子をみた部長は言葉を失った。そこに新たな職員が飛び込んでくる。

「部長大変です!」
「今度はなんだ?」
「新しいポーションの値段が更に値下げされたようなんです。冒険者ギルドから従来のポーションは1個150ゴルドなら購入させて貰うとの事です」
「ば、馬鹿な!そんな事になってみろ。商人ギルドに卸し値は100ゴルド程になるぞ!」
「「「「「「そんな!じゃ俺たちは?」」」」」」
「50ゴルド程にしなければ儲けがでない事になる」

 それを聞いた錬成師達は憤慨する。当然である。最下級のヒールポーションで生活出来ていたのに、これからは作れば作る程赤字になるのだ。ただし、これは錬成師達の作る工程が悪いからで、薬草30本で45ゴルドで買い取りをしているという事は1本1.5ゴルドとなる。薬草3本と水だけで作れるヒールポーションなら十分の売上だからだ。しかし、長年の怠慢で値上げを繰り返しぼったくり価格で生活をしている職人にその事実は受け入れられないものとなっていた。

「こんなのやってられねぇや!」
「おれもだぜ!」
「多分、今度の納期は遅れるか、違うポーションを買い取ってもらうからよろしくな」

 錬成師の職人達はブチブチ文句を言いながら、生産ギルドを出ていこうとする。

「待つんだ!そんな事をされれば我々が困る!」
「そんな事知った事か!ヒールポーションで生活出来ていたから無理もできたんだ。だか、50ゴルドでは生活は出来ないからな」
「そうだな・・・俺ならミドルヒールポーションも出来るからそっちを作らせてもらうぜ」
「だよな。ヒールポーションは誰かわからない錬成師に任せればいいよな」
「ハッ。そうか・・・そうだな・・・何も我々が困る事はないじゃないか」
「ただ、ミドルヒールポーションは失敗確率があるのが難点だし、購入するのは駆け出し冒険者はないからな・・・」
「そうだな・・・そこが問題だ」

 生産スキルはその人のレベルに依存する。戦闘スキルは、その人のレベルが上がればアクティブスキルが発生するが、生産スキルにそれがない。つまり、レベルが上がれば失敗確率が減り、素材を無駄にせず製作ができるのである。
 ここはショウも同じ条件であり、ショウもミドルヒールポーションやハイヒールポーションを製作すれば失敗確率がある事になる。
 しかも、ミドルヒールポーションのレシピは薬草と水だけではなく、青茸というキノコが必要になるのだ。その分回復量は上がり駆け出し冒険者から卒業した冒険者の必需品のアイテムだ。

「わかった。商人ギルドには私から説明し、ヒールポーションの納品は出来ないと伝えよう」
「ぶ、部長!本当によろしいのですか?」
「しょうがないだろう。その値で誰が製作出来るというのだ?商人ギルドが今までの値段で買い取ってくれるなら考えてもいいと言え!」

 この決定で困るのは商人ギルドとなる。このマートンの町はダンジョンで潤っている町だ。冒険者のポーション使用率が3割と高いのである。その売り上げがゴソッとなくなるのだ。

「ベックさんこれはどういう事なんだ!ヒールポーションは冒険者の必需品じゃないのか?」
「そうですね。確かに商人ギルドのポーションに助けられてきましたよ」
「だったら!」
「しかしですね。我々を馬鹿にするのもいい加減にしてほしい」

 冒険者ギルドのギルドマスターベックは、テーブルをダンと勢いよく叩いた。

「なっ・・・」
「ヒールポーションはあんな高額で今まで俺達に売りつけていた事にびっくりしたよ」
「それは、こちらとしても供給が追いつかない状況で人件費に払う金が必要だったんだ・・・我々商人ギルドが悪いわけではない」
「納得はできないが、そちらの事情はわかったよ。だったら今の状況も商人ギルドには飲んでもらおう。従来のポーションは効果が低い。今出回っているポーションは安いし効果も高いから仕入れても売れないから価格を落とせと言っているんだ」
「そんな事!」
「つまりだな。俺達はあんたに営業努力をしろと言っているんだ。生産ギルドにポーションの開発を、いやもっと丁寧に製作しろと言ってくれ!」
「どういう事ですか?なんで冒険者ギルドが・・・あっ!」
「気づきましたか?今冒険者ギルドにポーションを卸している人物が教えてくれた事ですよ。商人ギルドのポーションがなんで効果が低い理由をね」
「だ、誰だ!冒険者ギルドに知恵を授けたのは!」
「聞いたら後悔しますよ。あんた達商人ギルドは怒らせてはいけないドラゴンの逆鱗に触れたんだよ」
「はぁあ?ドラゴンの逆鱗だと?」
「あんた達の部長は大変な事をしたようで愚かだと言うしかない」
「部長が?」
「今、就任したばかりのじゃない。前任のベラ部長だよ」
「ま、まさか・・・ドラゴンは魔導士様の事か?」
「そうだ。その魔導士様は最初ヒールポーションを600で買い取ってもらうはずだったんだ。そうすれば従来のポーションの差別化でポーションが売れなくならないと言ってね」
「な、なんで・・・」
「ベラ部長が謝罪をブッチし全ての責任を元受付嬢のアリサに押し付けトカゲの尻尾切りをしたからだとよ。その結果、ヒールポーションは300ゴルドで販売をする事が決定されたんだ」
「そ、そんな・・・」
「魔導士様はこうもおっしゃっていたぞ。俺のレベルが上がればミドルヒールポーションも今の価格を見直させると言っていたぞ」
「ば、馬鹿な!」
「この状況をなんとかしたいなら、ベラだったか?そいつを魔導士様の前に差し出すんだな。ひょっとしたら価格を元に戻してくれるかも・・しれないぜ」

 商人ギルドの営業課長は慌てて、冒険者ギルドを出ていくのだった。そして、その事をギルドに報告し大騒ぎになる。
 この事は、商人ギルド本部にすぐ報告されたのだった。
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