雨×晴=虹 〜心友からゲイだと告白されたあと気になって気になって意識していたら好きになってしまっていたノンケの話〜

がぶ

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午後にかけて雨足は強まり、ところにより雷が発生するでしょう

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自室のベッドが壊れるくらい乱暴に横になり、スマホ片手に文字を打ち込む。

【親友にキスをしてしまった。どうしたら良い?】

AIが出した長い長い回答に嫌気が差しつつも、その文字列に目を動かす。

_親友は、あなたに恋愛感情を抱いていた可能性があります。あるいは、お酒の勢い、場の雰囲気、あるいは単なる衝動だったかもしれません。_

これは【された側】の回答だろうが、頭を掻きむしりたくなった。
場の雰囲気。単なる衝動。
多分それが当てはまっている。
ダサイ格好でダサイ姿見せて落ち込んでるところに、ヤナから褒められて俺は有頂天になってしまった。今まで女から「かっこいい」だの「大きい」だの言われても、あそこまで嬉しかったことはない。

あの時、ヤナから唇を離して俺は自分の仕出かしたことに呆然と立ち尽くした。それからすぐに顔からサーッと血の気が引き青ざめる。ヤナは逆に耳まで赤くして目に涙を溜めていた。
お互いそのまま無言で固まっていたら、試合が終わった先輩たちがどやどやと入って来てしまい、ヤナがそれを合図に走り去って行った。
呼び止めようとしたが、先輩たちの「打ち上げ行くぞ~」の応酬に俺の声と行動は掻き消された。

いいや、これも言い訳だ。
もし、先輩たちが入って来ずヤナが走り去っていたら、俺は呼び止めたり追い掛けることが出来たのか?もし、それが出来たとしてヤナにどう弁解してたのか。

弁解…。
あの口付けは衝動から来たもので、決して他意があったわけではないと弁解出来たか?

_本人の同意がなかった場合、わいせつ罪に問われることも_ 

AIの衝撃的な言葉に、頭を殴られたような気がした。

同意なんてもちろん無かった。つまり俺は心友のヤナを強姦したってことになる。

俺、そんなつもりじゃ…。

そうは思っても、こればかりは受け止める側の問題だ。
実際、物凄いスピードで立ち去るヤナの目からは涙が散っていた。

_親友が不機嫌になったり、距離を置こうとしたりする場合、あなたの行動が不快に受け止められた可能性が高いです。 逆に、照れたり、あなたに近寄ってきたりする場合は、好意を抱いている可能性があります_

あの日以来、ヤナを大学で見かけなくなった。

俺が見かけてないだけで、来ているかもしれない。でも、同じ授業のときに入口の前で待っていても来なかったし、学食でも見当たらない。同級生に訊いても「え?わかんねぇ。来てんじゃないの?」って曖昧な応えが返ってくる。
バイト先の近くで待ち伏せしようとも思ったけど、さすがに不審者過ぎるからやめておいた。
LiNe はもちろん既読すら付かない。

_早急なコミュニケーションが重要です。放置せず、迅速な修復を心掛けましょう_

「くそっ…!」

あの日からもう一週間も経ってしまった。
謝らなくちゃ。とにかく会って謝るべきだ。
悪気は無かったんだと。ふざけてした訳でもないと。
怒られてもいい、蹴って殴ってもらってもいい、学食もずっと奢るから、頼むから絶交だけは勘弁してほしいと。

そうと決まればヤナの一人暮らししている部屋に行かなければ。まだ一度も遊びに行ったことはないが、場所は知っている。
まだ13時だし、バイトに行く時間でもないだろう。最悪出かけていたなら待ち伏せすればいい。
上着を羽織って携帯と財布だけ持って部屋を飛び出す。

「しまった、鍵!」

父さんは出張、母さんは社員旅行で今日から3日間留守を任されていたんだった。慌てて鍵を掴み取り、階段を駆け下りる。その途中で ピンポーン と、チャイムが鳴った。
俺は階段を駆け下りる勢いのままインターホンには出ず、乱雑に置いていたスニーカーに足を突っかけて玄関のドアを開けた。

「はい?」

どちらさん?と言った声色で。俺いま急いでるんですよね!と言った感じに不機嫌な表情で。

そこにまさか、想い人、ヤナが立っているとは思わず。

「っ…!」

マジで心臓が一瞬止まった。俺の不機嫌な表情は変面師並に驚愕の顔に変わり、そこから嬉しさで笑顔になりそうなのを必死に堪えた。
ヤナは俯いていて、オーバーサイズのパーカーの裾をギュッと握り締めている。可愛い。

「ぅ…」
「家、」
「え?」
「お邪魔して、い?」

上目遣いで見られて心臓が跳ねる。

「…もっ!もちろんもちろんっ!」
「でもどっか行こうとしてたんじゃねぇの?」
「いや、大丈夫!あっ雨も降ってきたし、中止!さ、あがってあがって!」
「…おじゃまします」

やっぱりちょっと怒ってるような感じはするけど、普通に喋ってくれる。もうそれだけで充分だと思いながら、勝手知ってるなんとやら俺の部屋に向かうヤナの後を着いて行く。
俺の部屋のドアを開けて一瞬立ち止まるも、ヤナはそのままスタスタと歩いてテーブルの前にとすんと正座した。
俺も向かいに同じように正座する。

謝るなら今だ。正座もしてるし。

「…ヤナ!あ
「部屋」
「え?」
「なんか違う…」
「え…、ああ!模様替えしたんだ!大学生になったし、大人な雰囲気目指して…」
「ふ~ん…」

高校までは色んな物をごちゃごちゃに置いてて、好きな映画のポスターとか壁や天井に貼ってたから騒がしい部屋だったもんな。寝具なんて真っ赤だったし。
今は全部取っ払って寝具も濃紺に変えた。
あ、だからさっきヤナ一瞬立ち止まったのか。

そんなことより謝らなきゃ!と、思い、頭を下げるためにテーブルに両手を置こうとしたら、ヤナがテーブルをスイッと横に動かした。
思わずそのまま前のめりになりそうになるのをグッと堪えて、姿勢を立て直す。

「ヤナ?」

ヤナは少し逡巡して、それから意を決したかのように四つん這いになると俺ににじり寄ってきた。

「え、ちょ、ヤナ…っ」

思わず後ずさるも俺の後ろはベッドで、すぐに背が当たってしまう。
開いた俺の脚の間に入ってきて、膝立ちになったヤナが俺を見下ろす。
ヤナの手が、俺の頬に触れる。
ヤナの顔が、ゆっくり近付いてくる。

「っ…」

俺がした、触れただけのキスとは違う。
ちゃんと深く重なり合うようなキスをされて、俺は目を見開いた。

窓も開けていないのに、雨音がすぐ近くで聴こえるような気がした。


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