魔王を"封印"した聖女の生まれ変わりはまた聖女でした!

此花チリエージョ

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銀髪と緋色の瞳の聖女と仲間達

フィルの手紙と宰相②

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 ガルジェダ宰相が女性の仕草で紅茶をゆっくり飲んで、

「いつからわたくしのこと気づいていらっしゃったの?」

 俺に微笑みながら問う。

からだ」
「…そう。から気づいていらっしゃったのね」

 ガルジェダ宰相が目の前のテーブルに両手を置いて前屈みになる。ガリジェダ宰相の顔が俺に近づく。

「だから第二王子フィルシアール殿下からわたくしを遠ざけたのね」
「さぁ、どうだろうな」
「まぁ、誤魔化さなくてもよろしいではありませんか。殿下がお住まいだった離宮の警備を陛下以上に強めておいて」
「………………」

「……そのおかげで、わたくしあの方に近づくことも出来なくて苦労しましたもの。現在いまもですけれど」
「………………」

 ガルジェダ宰相は俺を睨んだあと、俺から離れギシッとソファーに身体を沈めてから、紅茶に口をつけた。

「貴女の名前は?」
わたくしの名前ですか」

 名前を聞かれたことが意外だったのか、ガルジェダ宰相は怪訝な表情で俺を見つめる。

「女性相手に「ガルジェダ宰相」と呼ぶのも、違和感あるだろう。……貴女の本当の名前を教えて欲しいんだ」
「……わたくしの…名前。そうですわね。わたくしのことは「ロサ」とお呼びくださいませ」

 熟考してから「ロサ」と名乗ったところをみると、偽名だろう。

「ではロサ。貴女の目的はなんだ?」
わたくしの目的ですか。3年前もおっしゃったではありませんか?」
「3年前?」
「あら?ああ、そうだったわ。別の方だったわね」

 一瞬だけロサは話を通じない俺に不思議がっていた。熟考して自分の勘違いに気づいたようだった。

わたくしはあの方を……愛するひとを取り戻したいだけですわ」

 …ー愛するひとか。

「そのひとの名前を教えてくれないか?」
「何故、教える必要があるのでしょう?」
「ロサの力になれるかもしれないだろう」

 ロサは紅茶をテーブルの上へ置くと、自身の胸元に手をあてて、

「…ーそれは無理ですわ。

 俺はロサの言葉で愛するひとが誰かを理解する。

「そうか、ロサの目的はか。阻止するしかないな」
「そうでしょう」

 ロサも俺が味方にならないことを理解しているのか、頷きながら肯定する。

「もうひとつ質問してもいいか?」

 俺は腕を組ながらロサに問いかける。

「どうぞ」
「ガルジェダ宰相をしてくれないか?」
「それは……わたくしにこのガルジェダ宰相からだから出ていけと?」
「ああ。どうしたら解放してくれる?」

 ロサは俺を見つめる。

「……そうですわね。わたくしが提示する条件を満たす新しい身体を用意して下されば、直ぐにでも解放いたしますわ」
「…………既に故人の身体なら可能だが」

 故人の身体を差し出すのも非道だが、生きてる人間を差し出すよりは、まだ正気ましか。

「故人では意味がありませんわ。子が成せませんもの」

『子が成せませんもの』その言葉を聞いた俺は吐き気を感じて、口許に右手を添える。

「健康な女の身体を差し出すのも無理だな」

 …ー気持ち悪い。

「……このまま話しても無意味ですわね。下がらせていただいてもよろしくて?」
「ああ。もう下がれ」

 ロサはソファーから立ち上がり、俺を見下ろして、

わたくし達は同じひとを思っておりますのに、相容れられないのは悲しいですわね」

 ロサは一礼をして部屋をあとにした。廊下のロサの足音が遠ざかり、聞こえなくなる。

「はぁぁぁぁぁぁぁ」

 俺は盛大な溜め息をついた。


わたくし達は同じひとを思っておりますのに、相容れられないのは悲しいですわね』

 ロサの最後の言葉を思い出す。そして、フィルの手紙に書かれた最後の一文を思い出す。


 僕はハルのことを女性として愛してしまいました。

 前世で大切な人々を不幸にしたイグニーアの記憶を持つ僕が誰かを愛せるとは思っていなかったので、正直驚いていますが、この思いは決して彼女には告げないでしょう。

 最後に兄上にお願いがあります。
 全てが終わって僕が死んだら、彼女のことをよろしくお願いいたします。


「はぁぁぁぁぁぁぁ」

 俺はまた盛大な溜め息をついて、ソファーから立ち上がり、壁にある本棚へむかう。

 赤い分厚い本を奥へ押すと、ガチャンと金属音が鳴り、本棚が横へスライドして隠し通路が現れる。
 俺は通路の中へ入って、上から垂れてる紐を引っ張ると、本棚は元の位置に戻る。

 俺は隠し通路の奥へ進み、階段を下りる。

 この隠し通路の先にある【陽炎の間】と、聖女召喚を行う【召喚の間】と、歴代の国王陛下しか閲覧出来ない【禁書の間】は【獅子】の時代から存在ある、空間魔法を施された部屋だ。

 年に1度、王宮の守りを強めるという理由のもと【召喚の間】で空間魔法を使用する。
 その本来の目的は【召喚の間】【陽炎の間】【禁書の間】に施された空間魔法を強化するためだった。

 下へ続く階段が終わり、目の前に"桃の花と実"の模様が施された古びた鉄の扉が現れる。
 ギギギッと鉄の扉を開いて【陽炎の間】の中へ入る。

【陽炎の間】の中心の円形の真っ白な柔らかい敷布をひかれたベットの上に、ひとりのが居る。

 俺は名前も知らない少女の元へ近づいて、少女の頬に触れる。

 今日は眠っているのか。

 俺はベットに収まりきらない、少女の綺麗な長い黒髪に触れて、口づける。

「…ん。……だぁれ?」
「すまない。起こしてしまったか」
「……千夏ちなつ?ううん、違う。じゃないし」
「俺はアイルダだ」
「あい……るだ。……ああ、そうだった。
 …………

 少女の黒い瞳から大量の涙が溢れ出す。

 俺は少女の泣き声を聞きながら、ベットに備え付けられてるモニターを見る。そこには少女のステータスが表示されている。


 ーーーー

 カゲロウ  Lv9,899

 HP 101/10,000
 MP ーー/ーー

 魔法スキル
 聖女召喚 Lvーー

 ユニークスキル
 不老長寿 Lvーー


 ーーーー


 そう表示されていた。この【陽炎の間】は【召喚の間】の真下に位置していた。

 そしてカゲロウの101あったHPが100に減り、Lvが1上がり、Lv9,900 になった。
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