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第12話 はい、追加料金になりますが

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「はい、追加料金になりますが」

「あ、ですよね~~……」

 ニコッと今度は営業スマイルを見せてくれたアンズちゃんを見ていたら、男性器もしょんぼりしたのか勃起はすぐに治まった。

 良かった……。いや、良かったのか? 良かった……はずだ。

「そう言えば、アンズちゃんはアフターって知ってる?」

 話す話題が無くなって、でもまだ時間が余っていたので、俺は思い出したように本題を切り出した。

 そう、忘れてはいけないが、今日の真の目的はアンズちゃんとアフターに行くこと。そしてあわよくば……童貞卒業!

 今日のために、しっかりとアフターとは何か、アフターで気を付けるべきことは何かなどなど、アフターの極意を後輩くんから聞いてきたのだ。これでアンズちゃんがアフターを知っていようがいまいが、恥をかく心配は無い。

「アフター……ですか? はい、店長さんから聞きました。お仕事の後に、お客様とお食事に行ったり遊びに行ったりするのは自由だと」

「それで……急なんだけど、今日はこの後時間ある? 良ければお寿司食べに行かない? あ、勿論、俺が奢るし……!」

 緊張して準備していた言葉が洪水のように溢れ出す。

 後輩くんの話では、相手の反応が悪ければカードを切るように1つ1つ好条件を付け加えていくのがベストだと聞いていたのに、アンズちゃんの反応が怖くて手札を全て晒してしまった。

 俺のターンはこれで終了! アンズちゃんの反応しだいでは、俺は敗北!

「お、お寿司! お寿司屋さんですか! 行きたい、行きたいです!」

 完・全・勝・利!!

 俺の予想とは裏腹に、アンズちゃんはパッと大輪の花が咲き開いたような満面の笑みを浮かべると、ベッドに座ったままぴょんこぴょんこと跳ねて喜んでくれた。

「え、ほ、本当に……い、いいの?」

「はい、勿論! わぁ……お寿司か……! あ、私行ってみたいお店があるんですけど、そこでもいいんですか?」

「あぁ、勿論!」

「うわぁ……! じゃ、じゃ、じゃあ! 行きましょう! すぐに行きましょう! 友達が言ってたんです。あそこは人気でいつも行列が出来ているって……!」

 嬉しそうに急いでホテルを出る準備をするアンズちゃんは散歩に行く前の子犬の様で、もし今、彼女に尻尾が付いていたらブンブンと横に振っていたに違いない。

 まぁ、かく言う俺にも尻尾が付いていたらブルンブルンと尻尾を振って、その力で宙を飛んでいたに違いなかった。

 出会った中で最高に素敵な笑顔を見せながら先を行くアンズちゃんを追いかけるように、俺も浮かれ心を落ち着かせながら一歩一歩を踏み出した。

 ここからが念願のアフター。脱童貞のその日まで、意外とそんなに長くない……?
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