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歴史

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 あれはだまされていたのだろうか。

遠い昔、まだ中学校に通っていた頃。
私は先生にある話を聞いた。

それは歴史に関することで、とても興味深かった。
そんなことがあったのか、教科書にも載ってない事実に目を輝かせた。
しかし、それから十数年、ようやく可笑しさに気付いた。
教科書に載ってないどころか、他の誰にきいてもその話はでない。
ネットで検索したって同じことだった。
先生だけが知りえた事実で私だけに伝えた、なんてことはなんの根拠もない空想である。
この現実からみれば、「嘘」という言葉の方が根拠が少なくとも導き出される答えだろう。

 私はだまされたのだろうか。
先生が何のために私を騙したのか、そんなことはわからない。
軽い冗談のつもりだったのかもしれない。
嘘だと気づかない馬鹿だとは思わなかったのかもしれない。

浮かんでは消え、「本当」にはたどり着けない。
ただ、純粋に信じていた自分を懐かしく思う。
気づいたのは今になってからだが、人をあまり信用しなくなってから結構経っている。
別に裏切られたとか、そんな大きな出来事があった訳では無い。
自然とひととの心の距離は開いていった。

今はそう、純粋な感覚を曖昧に思い出すことしかできない。
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