倒れていた自称王子様を助けたら異世界を行き来する溺愛生活が待っていました

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曽祖父の後押しと、母へのメッセージ

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 その言葉に、アレクがわずかに息をつく。美麗は隣で、ふっと表情を緩めた。

「さて、では私は一度、自宅に戻るとしよう。やはり正式な手続きを踏む必要があるからな」

 そう言いながら、曽祖父はバルコニーの手すりに片手を添え、夜風を受けて目を細める。

「私はもう、この世界の住人だからな。やはり飛行機で来るのが筋だろう。……魔法は、必要にかられたときしか使っていないんだ」

 肩越しに振り返ったその姿は、どこか名残惜しそうで、それでいて迷いのないものだった。

「明日には、日本支社の視察という名目でこちらに滞在する手筈を整えておこう。幸い、表向きの肩書きもある。滞在期間中の予定は、美麗さんのご家族に合わせるつもりだ」

「ありがとうございます。とても……心強いです」

 美麗がそう頭を下げると、曽祖父は朗らかに微笑んだ。

「礼には及ばないよ。家族の縁とは、こうして受け継がれていくものだからね」

 そして彼はふと、アレクに向き直った。

「アレク、お前に荷物をひとつ届けておく。明日の正午までには届くはずだ。……名刺を用意しよう。挨拶には必要になるだろう?」

 アレクが小さくうなずいた。

「はい。ありがとうございます。……祖父として、名刺をお借りする形で」

「ふむ。祖父ということにしておいた方が無難だろうな。曽祖父などと説明すれば、年齢の辻褄が合わん。あくまで今の世界における話だがな」

 静かに頷くと、曽祖父はゆっくりとバルコニー中央に歩みを進める。金と銀の転移陣が再び浮かび上がり、風がそっと吹き抜けた。

「では、ひと足先に。……再会を楽しみにしているよ、ふたりとも」

 次の瞬間、光が収束し、その姿は静かに夜空へと消えていった。

 残された風だけが、ふたりの頬をそっと撫でて通り過ぎた。

 私はアレクと顔を見合わせる。

「……あっという間だったね」

「ああ。でも、ありがたい」

 アレクの声には、深い安堵がにじんでいた。

 母に連絡しよう。

 紹介したい人がいる。そう、ちゃんと伝えなきゃ。

 ──────

 風が通り過ぎたあとも、しばらくその余韻に包まれていた私たちは、ふと目を合わせ、自然と小さく笑みを交わした。

「……ねえ、アレク。母に連絡してみようと思うの。紹介したい人がいるって」

「ああ。美麗の好きなタイミングで構わない」

 アレクの落ち着いた声に背を押され、私はスマートフォンを手に取る。

 今なら……まだ起きてるはず

 少し緊張しながら、母の連絡先を開いてメッセージを打ち込んだ。

 《メッセージ》
 お母さん、ちょっと話したいことがあるの。
 紹介したい人がいて……近いうちに会ってもらえないかな?

 送信して数秒。すぐに既読がつき、返ってきた返信は予想以上に即答だった。

 《返信》
 もちろんいいわよ!
 お父さん? 別にいいわよね。
 お祖父様が絶対会いたがるだろうし、
 たくさん人がいたら邪魔でしょ?
 なんなら明日でもいいくらいよ。

 思わず、ふっと苦笑する。

「……母、すごく前のめりだった。明日でもいいって」

「ふむ。それは……頼もしいな」

 アレクが小さく笑いながらも、その瞳には覚悟がにじんでいた。

 いよいよ、始まる。

 家族への紹介。
 そして、私たちの婚約を、現実のものとして迎えるための第一歩が。

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