血術使いの当主様

重陽 菊花

文字の大きさ
12 / 12
深雪の決意

深雪の決意

しおりを挟む
【六月十九日】
「深雪…深雪…」と名前を呼ばれて目を開けると、目眩も治まり日頃より体調が良くなっている。
「深雪、おはよう」
「…おはようございます」
「体調はどうだい?」
「…眠気も目眩も無く、日頃より良くなってます」
「ふふふ…深雪に直接霊力と生命力を流したからね」
「…ありがとうございます」
「これからは毎晩供給しに行くから拒まないでね」
「…よろしくお願いします」
「それと私を常に紫青と人前でも常世常世の者の前でも心の中でも呼んでね」
「かしこまりました」
「昨日みたいに畏まらないで接してね」
「…分かりました」
「双子を呼ぶから身仕度を整えて貰って」
「頼んだよ」
「「かしこまりました」」
紫青は障子を少し開けて外を見ている。
「葵ちゃんと菫ちゃんおはよう」
「「深雪ちゃん、おはよう!!」」
双子ちゃんは化粧と髪の毛を直し始めた。
「新しい三人は元気?」
「元気だけど…額」と化粧直しをしてくれてる葵ちゃんの手が止まってしまった。
鬼女キジョに呪われた、しくじった…女の嫉妬は怖い事を身を持って学んだ、二人も女の嫉妬には気を付けてね…本気マジで怖かった」
「痛い?」と菫ちゃんが額を覗き込んだ。
「痛くは無いし霊力も紫青様の供給で安定してるし何時もより元気、どんな印が付いてるの?」
「うーん、マンジの様な…」
鳥居の様な…」
「後で見て見るわ…気になる」
あっという間にお直しが終わると紫青が二人を屋敷に返した、障子の外を見る紫青の左隣に行き私も外を覗いた。
「この外は常世のお屋敷の庭園ですか?」
「そうだよ、この障子からは私の屋敷の庭園が見える」
「夜見るのと昼間見るのだと雰囲気がだいぶ変わりますね、凄く綺麗…庭園からこちらは見えるんですか?」
「褒めてくれてありがとう。見えないよ、だからこうやって屋敷の様子を見たりしてる」
「屋敷の中も見られるんですか?」
「私の敷地だから何処だって見られる」
「今居る此処は何処ですか?」
「深雪の屋敷の中にある私の異空間寝室だよ」
「…寝室」
「そうだね、深雪はこれからは此処で寝るんだよ?私が霊力と生命力を直接…ね?呪に食われるから」
「…よろしくお願いします」
「反応が可愛いね」
「…紫青様は正室セイシツ側室ソクシツは居るんですか?」
「どうして気になるんだい?私を独占したいのかい?」
「…女の恨みを買いたく無い…昨日は怖かったです」
「私の屋敷のアレは深雪が悪い事をしたからお仕置きだよ、正室も側室も居ないよ。寵愛チョウアイしてるのは深雪だけだよ」
「…ありがとうございます」
「私の屋敷には数匹の雄蛇オスヘビが居るだけだよ」
「昨日の女房の方は…?」
「私に好意を寄せる雌蛇メスヘビを呼んだだけだよ」
「そして燃やして灰にした、怖い…釣殿ツリデンの方は…?」
「アレは私が好き過ぎて私の居る釣殿に来ちゃったのかな?」
「…色男は大変ですね」
「迷惑だけどね、そろそろ屋敷の者に用が有るから移動しよう」

ーーチリンーー
龍神の異空間に飛ばされた、前回とは違う。

檜扇ヒオウギは閉じて持ってるだけでいいからね、隣においで」と畳張りの部屋の真ん中より少し右に座った龍神の左隣に胡座をかくと紫青が十二単の裾を綺麗に整えてくれた。
「今日は御簾ミス越しでは無いんですか?」
「今日は私と深雪との仲の良さを見せないといけないからね」

ーーチリンーー
一段下の畳に着席しコウベを垂れた屋敷の者達が現れた。

 一段下の畳に右側に白蛇ハクジャ・初めて見る蛇・小紫・葵・菫・久松・お染・吉三郎キチサブロウ・お七の順に障子を背にし立て一列に並び、右側には壱捨駒ヒシャコマ弐無月ニナツキ参無月ミナツキ漆蛇ウルチ・式の子供・平井権八ヒライゴンパチ・岩の順で障子を背にし一列並び、向かいの入口の襖を背に左から鬼くん・青髪・白髪兄妹が並んで座り、全員前回同様の礼装を着ている。
鬼くんと白髪兄は黒の紋付袴で、青髪は青系で白髪妹は白系の振袖を着て髪の毛も綺麗に結われている。
 鬼くんは普通の幼い可愛らしい男の子で一本角が額の中心に生えている、まだ人間に擬態が出来ないのだろうがお岩さんに似ている。
青髪はぴっちりとした日本髪を結っていて、眼球が見えない程の切れ長の一重瞼で唇が薄く横に長く人魚と言うよりは蛇女に近い顔をしている。
会合で見た時より大人になっていて顔が変わっている、詐欺に遭った感が凄い。
紫青は気づいているだろうが、他の人達は気がついていないのだろう。
白髪兄弟は色白の肌に真っ白い髪にぱっちり二重で青い瞳をしていて幼いながらに美男美女の原石で兎に角、神々しい雰囲気で兄は長めの髪で妹はぱっつん前髪で後ろ髪は結われている。
「集まってくれてありがとう、昨晩の会合で場を乱した事を謝罪する。それで深雪は連れて帰って来た四人をどうするつもりだい?」
「鬼くんはお岩さんのご子息なのでお岩さんと一緒に暮らす為に連れて来ました。青髪は蔵に眠っている青髪の人魚との血縁を確信した為連れて来ました。白髪の兄妹は取り敢えず戸籍を確認し、まずは学業優先で今後を決めて貰おうと思います」
「鬼の子と岩殿はそれで良いのかい?」
「母上と一緒にいたいです」
わたくしもやっと会えた我が子と一緒に暮らしたいです、深雪様本当にありがとうございます」
「鬼くんを見つけられたのは、たまたまです。弐無月が交渉したので私は何もしてないです。ご子息を見つける約束をしたのに弐無月任せにしてしまった事を反省してます」
「深雪様も弐無月様も本当にありがとうございます」
「紫青様、蔵の青髪の人魚を此処にお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「構わないよ」
「壱捨駒が襲撃した蔵の二階の壁に沿って並んでる箪笥タンスの一番下にニ㍍位の引き出しの中に入ってるから弐無月と一緒に取って来て」
「「承知しました、失礼します」」と壱捨駒と弐無月は部屋を退場した。
「白髪の兄妹は復讐をした後、どうするつもりだったんだい?」
「私達兄妹は殺された父と自害させられた母と殺された姉の仇を打つ為だけに生きていたのでその後は考えていません」
「なら深雪の我儘を聞いてくれるかい?」
「有り難いお話ですが私達には恩を返せるお金も方法もありません、ですが妹には教育を受けて欲しいので妹だけはお願いします。勿論妹の生活費等は払います」
「私は…兄と離れたく無いので…兄について行きます」
「私は孤児のアルビノ兄妹がこのまま放り出されて普通の生活を送れるとは思わないし野垂れ死にされたら夢見が悪いので従者にして自立するまでの学費等の面倒を見ます。呪術師としても呪詛師としても殺し屋としても食べていける様に従者の三人が指導します。一般社会に出たいなら縛りを解きますしそのまま従者をしてくれるなら面倒を見ます。これは決定事項です」
「私の深雪は我儘で気が強いからこれは決定事項だから大人しく従ってくれ」
「ありがとうございます」
「よろしくお願い致します」
二人は嬉しそうに泣いていた、小学校低学年位の人間の子供の面倒を見るのはあの場で無理やり引き取った私の責任だ。
 丁度良いタイミングで壱捨駒と弐無月が蔵の青髪の人魚を連れて戻って来で一段下の私達の前に置いた。
「雪乃助が『仮死状態の美人の人魚が食べられそうだったから持って帰って来たが起きないからどうしよう』って大騒ぎして盗まれない様に蔵の箪笥に入れて封印していた筈だが?」
「…私が無理やりこじ開けました、すみません」
「盗まれなくて良かったね、血縁かい?」
「そうです…兄様アニサマに近付いても良いですか?」
「その乳隠し人魚は男だったんかい」と誰もが言いたい事を私が代表して言った。
「構わないよ」
青髪は人魚に近寄ると「兄様」と泣き崩れてしまったが改めて二人を同時に見ると血縁だが凄く遠い、ギリギリ親戚で人魚と比べたら人魚が二割で蛇が八割でほぼ蛇だ。
「紫青様は仮死状態を解けるのでしょう?解いてくださいませ、昨晩の釣殿での蛇女ヘビジョの襲撃の謝罪を頂かないと」 
「アハハハ…そうだったね、その謝罪をしないとね。それが仮死状態の人魚を起こす事なら起こすよ、深雪は優しいね」
「私は慈悲の化身ですから、それと鬼神キジン様の言い値の金を弐無月と回収しに行きたいです」
「その件は二人で金額を決めて、取りに行く日程はこちらで決める」
「ありがとうございます」
紫青は人魚の前に座り人魚の頬に手を当てて「おはよう」とたった一言だけ言った。
「…良く寝た…おはよう?龍神か久しいな…いつぶりだ?」
「兄様」と青髪が泣きながら擦り寄っている、これはもしや。
「そういえば…何して仮死状態になったんだっけ?まぁ良いや」
「おはよう、久しいね…私の寵愛する深雪がどうしてもお前を起こす様に頼むから」
、礼を言う」
「兄様を人質に取られて返して貰う為に橘家の式に成りましたが兄様の事は嘘でもう会えないかと思って」とまた泣き始めた。
青髪は人魚に恋愛感情を持っている、人魚が私の事を名前を呼び捨ててから私への視線が変わった。
紫青が呼んだ蛇女と同じ嫉妬の視線を感じる、出来る事なら関わりたくない。
「行く所ありますか?」
「無い」
「空いる池が有りますが住みますか?」
「住んでいいなら住まわせて貰いたい」
「人魚は人や妖怪と同じご飯を食べますか?」
「食べるよ…久しく食べてないが」
「でしたら、三食おやつ付きで裏庭の警備をお願いしても良いですか?」
「そんな事でに置いてくれるのか?」
「そんな事では無いですよ、屋敷の外は平井権八さんが警備をしてくれてますが一人では負担が大きいので、屋敷の後ろを警備して欲しいです」
「あい、わかった、警備を引き受ける」
「ふふふ…私の深雪は強引だろ?」
「だが、私には得しか無いから有り難い」
「お名前をお伺いしたいのですが」
「名前は無い」
「では人魚とお呼びしますね」
「普通なら此処で名付けして縛るのに」
「私の式になってくれるんですか?縛られる事が苦手そうな貴方が」
「アハハハ…考えておく」
青髪は「兄様」と慕っているのに対しはそれには答えず存在にも触れず…この二人の関係性が気になる。
「日頃、私の可愛い深雪の面倒を見てくれる者に礼をしたいと思う」と龍神は立ち上がり、壱捨駒の前に立った。
「壱捨駒には死んでも勝手に蘇る呪をかける、寿命には勝てないが」と右手で鳩尾に手を入れてかき混ぜて手を抜くと壱捨駒が鳩尾を押さえて「ありがとうございます」と言い前に倒れた。
次に弐無月と参無月の間の前に立つと「弐無月には私の紫い目、参無月には私の青の目をやろう」と弐無月と参無月の両目にそれぞれ、人差し指と中指を刺して引っこ抜くと双子のオネエ様は両目を抑えて「「ありがとうございます、龍神様」」と言うと体勢を崩して苦しみ始めた。
黒蛇コクジャは今後も深雪の虫除けを命ずる」
「御意」
次に子供達の前に行くと「深雪が弟や妹の様に可愛がる式…お前達が願う妖怪にしてやろう、日付けが変わるまでに私が祀られてる神棚に祈ってくれ」と言い、平井権八の前に移動した。
「平井権八は深雪の屋敷の用心棒をしっかりやっている、顔面をやる」と平井権八の顔面を右手で掴み手を離すと平井権八は顔面を押さえて苦しみながら「ありがたき幸せ」と言い前に倒れた。
私は白蛇の隣に居る黒い狩袴に墨色の狩衣に烏帽子エボシを被った墨蛇ボクジャの前に座った。
「お初にお目にかかります、雪臣ユキオミの妹の深雪と申します。墨蛇様とお見受けしましたがお間違いないでしょうか?」
「私が墨蛇で間違えないですが」
「ゴミ…じゃなくて兄の腐った性根は直りそうですか?」
「…最善は…尽くしてます」
「無理そうなら返品して頂いて構いません、責任を持って焼き殺します」
「…ありがとうございます…でも頑張ります」
「よろしくお願いします、無理はなさらない様に」
「今回はこれにて御開オヒラキ、深雪は今夜ね」

ーーチリンーー
何時もの居間に龍神と白蛇と墨蛇以外は居た。

 壱捨駒・弐無月・参無月・平井権八は動かず前かがみに座っていたが暫くすると動けるようになったのか、皆と同じ様に立ち上がった。
 平井権八と小紫は二人の世界に入って、それに便乗し心中四人組も二人の世界に入っていてアベック熱にあてられそうになったので「すみません、続きはお部屋で」と言ったら六人はさっさと居間を出て行った。
 式の女の子三人が集まって来て、十二単が気になるのか私の周りをウロチョロしてて、とても可愛い。
菖蒲アヤメ「主様は何を着ても可愛いですね」
桔梗キキョウ「とっても似合ってます」
睡蓮スイレン「龍神様の色味ですね」
「三人が着たら可愛いんだろうな…どっかから入手して来るから楽しみにしててね」
女の子「「「ありがとうございます」」」
「男の子達も狩衣絶対可愛い」
男の子「「「漆蛇さんと色が被るのは嫌です!」」」
「あははは、それは配慮するよ!葵ちゃんも菫ちゃんも白髪妹も十二単が絶対似合う!」
葵菫「「そんな事より、鬼女の呪はどうするの!!」」
「あ、そうだった…忘れてた」と前髪を上げて額を見せると全員が黙り込んだ。
「色々あって鬼神の妹君イモウトギミの呪返しをしたら鬼女に呪われちゃった」
弐参「「どうするのよ、それ!」」
人魚「深雪は呪返しが得意なのか」
「呪返しは得意だけど、呪をかけた鬼女は死んでるんだよね」
人魚「解くの難しそうだが解けだら深雪の格が上がるだろう」
「それ、紫青様も言ってた、まぁ自力で解くから大丈夫。多分」
人魚「深雪は強いな、必ず解くのだろう」
「それは勿論。それより壱捨駒は人魚の兄妹を龍神池に連れてってあげて、干乾びちゃう」と言うと壱捨駒が人魚を俵持ちして、青髪を連れて居間を出て行った。
人魚と会話をしている時の青髪の嫉妬の視線が痛すぎて早々に龍神池に移動して貰った。
「弐無月、鬼神の妹君の呪を払ったから言い値を貰えるんだけどいくら取る?常世に取りに行くから弐無月も狩衣だね!」
弐無月「常世の鬼神から金を回収するって事?」
「そう!平安時代の貴族の屋敷だった!」
弐無月「…観光に行くんじゃないんだから」
「凄い楽しかったよ!」
参無月「呪われたのに楽しそうで良かったですわ」
「漆蛇も参無月も行く?子供達も連れて行ってあげたいんだけどね、女の嫉妬は怖いからお留守番ね」
弐参「「何があったのよ」」
「嫉妬した蛇女に檜扇を二本顔面に投げられて、紫青様の屋敷に寵愛を求めて蛇女が乱入して来て、嫉妬の鬼女に呪われて…兎に角怖かった、詳しくは双子ちゃんに聞いて」
参無月「面白そう…アタシも着いてって良いなら行きたいですわ」
「四人で行こう!旅行だね!楽しみだね!そんな事より、葵ちゃんと菫ちゃんこれ脱がせて!漆蛇は私の部屋から体操着持って来て」
漆蛇「わかった」
誰が居ようと関係無く十二単から体操着に着替えさせて貰うと、双子ちゃんは十二単を持って居間を出て行った。
「あ!公開処刑!どうだった?」
弐無月「凄く盛り上がってたわよ」
「他の家は来たの?」
弐無月「加賀夫妻以外全員来たわよ」
「うわぁ行きたかった…動画は?」
弐無月が黙り込んだ。
「ねぇ動画は?」
参無月も黙り込んだ。
「オネエ様方、動画は?」
弐無月「アタシ達も他の家も撮ってたんだけど誰も撮れてないのよ」
「は?何で?」
参無月「ピンク野郎も他の反社も公安も誰一人として撮れてなかったんですの」
「そんな…そんな…見たかったのに」と膝から崩れ落ち泣きじゃくり、畳を拳で叩いていると漆蛇が後ろから私の両手首を掴んだ。
「深雪ちゃん…手を痛めるから駄目」と漆蛇に抱きしめられた。
「公開処刑見たがっだのに」と鼻をすすりながら言うと菖蒲が涙を拭いて、桔梗が鼻もかがせてくれて、睡蓮が髪の毛も整えてくれた、流石女の子。
「菖蒲も桔梗も睡蓮もありがとう、面白かった?」
女の子「「「とっても面白かったです!!」」」
「そっか…良かったね…私が女の嫉妬に震えて呪われてる間に楽しいくて良かったよ」
弐無月「もぉ!その話は終わりよ」
参無月「される方の身になってくださいませ」
「…そうだね、死体はどうしたの?」
弐無月「ピンク野郎が根城に持って帰った、他の人達にも見せるんだって」
「なるほど…春ちゃんの所に行けば見られるのか」
弐無月の懐を漁りスマホを取り出した。
弐無月「ちょっと、返しなさい」
「春ちゃんに電話掛けてくれなきゃ返さない」
弐無月「嫌よ、返しなさい!」
「うわ~ん漆蛇!弐無月がいじめてくる」
漆蛇「紫の方を始末すれば良いのか?」
「…わかったわよ」と言うとスマホの画面を向けると春ちゃんに電話を掛けてくれた、スリーコールで出た。
「もしもし、春ちゃんですか?」
(春ちゃんだよ、深雪ちゃん)
「おっさん二人の死体はまだ有りますか?」
(ごめんね、気持ち悪いからって燃やされちゃったんだよ)
「そうなんですね…わかりました。弐無月に代わります」
スマホを嫌そうな顔をしてる弐無月に渡した。
「そうね…わかったわ、じゃあね」
弐無月は電話を切って懐にスマホをしまった。
弐無月「白髪の兄妹の戸籍の事で昼過ぎに公安が来る」
「やったね!白髪兄妹!これで人間に成れるよ!」
弐無月「二人は元から人間よ」
参無月「それにしても本当に白いのね」
「綺麗だよね…悪口を言う奴は端から呪ってやる」
漆蛇「深雪ちゃんは何時も綺麗だよ」
弐参「「当主様の事が好きねぇ」」
「お腹空いた…お昼ごはんまで三十分…お菓子食べながら調べものするからお昼になったら誰か呼びに来て。それと双子ちゃんと子供達はご飯の準備で忙しいから、白髪兄妹を壱捨駒に任せる。弐無月と参無月も書斎に来て」
 漆蛇に姫抱きされながら書斎に行き定位置に座った、勿論私は漆蛇の膝の上に漆蛇を背にして抱きしめられている。
「当主様の言いたい事はだいたい分かるけど」
「人魚の兄妹ですか?白髪の兄妹ですか?」
「両方。私の霊力と血が混じってる龍神池に居るから体内に私の血液を吸収して、いつでも殺せる。
陸に上がろうと屋敷から逃げようとね、だから問題は無いんだけど、青髪は人魚じゃなくて蛇。
人魚を慕ってるのに人魚は全く相手にしてない…それに青髪は人魚に対して恋愛感情がある、嫉妬に狂う蛇には関わりたくない」
弐参「「本当に躊躇が無いのね」」
弐無月「ならどうして池に置くなんて言ったのよ」
「人魚からは悪意は感じなかったから置こうと思ったんだけど青髪から人魚を取り上げたら祟られると思って」
「「蛇女の嫉妬に怖がり過ぎ」」
「本当に怖かったんだから!裏切り者を許したり見逃したりするのは、血術縛りをしてくれた四人に申し訳が無いし子供達にも申し訳が無いから、そこは慈悲無く殺ろうと思う」
「深雪ちゃんが手を汚さなくても俺が殺る」
「でもこれは連れて来た私の責任だから私が殺る」
「頼もしい当主様ねぇ」
「白髪の兄妹はどうするのですか?」
「問題はそこなんだよ…学校に通わせるとしたら外に出さないと行けないでしょ?外で縛りや呪をかけられるのは解くから良いとして、裏切りられた時も殺す一択で良いとして、守ってあげるには血術縛りをして従者として名付けしたいんだけど…どうしよう」
「さっさと血術縛りと名付けをしちゃえば良いじゃ無い」
「二人もそれは覚悟の上で当主様に着いて来て、屋敷に住むって決めたんだから良いのではないでしょうか?」
「そうなんだけど…タイミングと言い方が思い浮かばない…捨て駒の従者だと思われたくないし此処では心安らかに過ごして欲しい」
「そうねぇ当主様の言いたい事はわかったわ」
「なら、公安が来た時に結ぶのが良いのでは?タイミング的には良いと思います」
「…確かに違和感無く行える、うーん、何か大切な事を忘れてる気がするんだけど」
「橘家と柳田家の事でしょう?」
「そうだ!それだ!思い出した!」
「忘れてたんですね…流石当主様」
「橘家の側近一人、呪術師一人、呪詛師二人と」
「柳田家の側近は全滅で、呪術師二人、呪詛師一人は」
「「仮死状態よ」」
「怖…」
「参無月と壱捨駒の術よ」
「橘家と柳田家に被害者等は居なかったですわ」
「分かった…白髪兄妹の件が終わり次第、見に行く。公安のお兄様方は大人数で来るの?」
「多分…当主様を見に一人で来ると思うわ」
「あの人なら居間で十分ですよ」
「分かった、服装は?体操着で良い?」
「「駄目に決まってんだろ」」
「深雪ちゃんへの口の聞き方を考えろ、クソガキ」
「殺んのかジジイ」
「表出ろやジジイ」
「上等じゃクソガキ」
「ねぇ…よそ行きのワンピースで良い?」
「「それなら良いわよ」」
「昼ごはん食べたら準備する、一旦解散」
 双子のオネエ様は部屋を出て行ったが相変わらず漆蛇はベッタリと抱きついている。
「漆蛇、机を使いたいから向き変えて」
「分かった」と言うと机に向かう様に移動しまた後ろから抱きいた。
「白髪兄妹の名前を書こうと思って、手を伸ばして半紙と書道セット取って」
「分かった」と言い場所を把握してるのか直ぐに取ってくれた。
「昨日からずっと考えてたんだけど、兄がシラナミで妹をイツラウメにしようと思うんだけど、どう思う?」
「二つとも白が共通してて良いと思う」
「ありがとう」
墨池に墨汁を入れて毛氈モウセンの上に半紙を置き、左手首を切り血を墨池に入れて墨汁を筆で混ぜている間に漆蛇が左手首を止血してくれた。
「深雪ちゃんが血術使いなのは百も承知だけど自分を傷付けて血を出すのが悲しい」
「漆蛇は優しいね…誰もそこは心配してくれないから…気が付いてくれて嬉しい、ありがとう」
「深雪ちゃん…泣いてる、こっち向いて」
「なぁに?」と振り向くと漆蛇が涙を唇で掬い目元に沢山キスをして来た、どさくさに紛れて唇の横にも。
「優しくて甘やかしてくれる漆蛇が好き」と言うと触れてるだけのキスをされ、頭を撫でられた。
「本当に龍神から直接霊力と生命力を貰ったんだね…俺は深雪ちゃんに血をあげる」
私の使っている短刀で自身の舌を切り接吻で直接血を流し込んでいた、霊力と生命力は何となく流れて来る程度だったが血は液体で存在するから普通に怖いが拒否したり垂らしたりしたらヤンデレ?メンヘラ?スイッチを押してしまう為、一生懸命飲んだ。
頭を撫でながら「深雪ちゃんは良い子だね…本当に童の頃から可愛い。愛してるよ」と抱きつかれた。
直接血を入れられたから元気いっぱい深雪ウーマンになり半紙二枚に白髪兄妹の名前を書いた。
襖の外から「当主様と漆蛇~ご飯」と壱捨駒に呼ばれて立ち上がった。

【血術・カイ
綺麗に舌の傷が治った。

「深雪ちゃん、ありがとう」と額にキスをされて書斎を出て居間に向かった。 
定位置に着席していて女の子達の隣に白髪兄妹、男の子の方に青兄妹が座っていた。
「今日も美味しそう…いただきます」
各自「いただきます」を言ってからご飯を食べ始めた。
「人魚は陸でご飯を食べるんですね」
人魚「人間に擬態出来るからな、それより深雪の額の呪濃くなってないか?」
「う~ん…多分漆蛇がキスしたから蛇女の呪も発動したのかな?鬼女七割、蛇女三割かな?」
葵菫「「変態蛇」」
女の子「「「葵さん、菫さん、何時一升瓶に漬けましょうか?」」」
男の子「「「蛇の姿焼きとかどうですか?」」」
弐無月「ふふふ…本当に双子ちゃんと式の子供達に嫌われてるのね」
参無月「でも虫除けには丁度良いから邪険に出来ないのよねぇ」
平井権八「漆蛇殿は愉快で良いな」
人魚「黒蛇は深雪の正室には成れない、成れて側室だろう」
漆蛇「…そんな事は百も承知だ、神には勝てない」
人魚「分かっていれば良いんだ、すまなかった」
青髪「兄様は黒蛇様と面識があるのですね」
人魚「実らない恋に苦しんで欲しく無い。座敷童子よ、飯が旨かった。夕飯も楽しみにしてるぞ」
そう言うと人魚は食器を置きっぱにして居間を出て行った、勿論その後を青髪が着いて行った。音からして龍神池に戻ったのだろう。
弐参「「ねぇ側室にしか成れないってどういう事?」」
「私は紫青様と結婚する事は童の頃から決まっていて、紫青と霊力と生命力を共有してるから紫青が死なない限り私も死なないし…これ以上は老いない。だから確実に五人を看取るのは私だから原型が留まらない位のシワッシワの爺さんと婆さんになるまで長生きて欲しい。子供達も双子ちゃんも平井権八さんも他の住人の妖怪達も永遠では無いから…その時も私が看取る。だから無理をしたりして死に急がないで欲しい、私は家族だと思ってるから」
「深雪ちゃん…俺は?」
「漆蛇は…大っきい赤ちゃん」
「「「大っきい赤ちゃん」」」と壱捨駒・弐無月・参無月が吹き出した、双子ちゃんも子供達も腹を抱えて笑っている、平井権八は優しい目で漆蛇を見ていて、白髪兄妹は笑いをこらえている。
「そろそろ仕度が有るから大っきい赤ちゃんを連れて自室に行く」
「「ママ育児頑張って」」と双子のオネエ様。
 拗ねた漆蛇に姫抱きにされて自室に連れて行かれた。
「深雪ちゃんにとって…俺は赤ちゃんなの?」
自室に連れて行かれ開口一番がそれだった。
「漆蛇は何時も私にくっついてて可愛いから…つい」
「そうか、分かった」と言うと部屋を出て行った、何時もの拗ねているとは少し違う。
この事を人魚に言いに行くのかと考えていると勝手口のドアの開く音がした、当たりだ。
支度に取り掛かりながら漆蛇の行動が気になると考えている、漆蛇は腐っても蛇だし祟る、鬼女の呪と蛇女の呪だけでも厄介なのに此処に漆蛇の祟が追加されたら私は床に伏せるだろう、そうなった場合は紫青に頼むしか無いが、癪に触る。
漆蛇は私に執着してるだけで柊家の事を考えて行動してる訳では無いから感情的に祟る事も有るだろう、座敷童子の時限爆弾より漆蛇の時限爆弾の方が怖い、そもそも二階の封印を解いたのが運の付きなのか?考えれば考えるほど分からなくなる。
化粧と髪の毛が終わり、また黒いワンピースに袖を通して支度は出来た。
書斎に今の私をどうこう出来る書物は無かった、公安が来るまで蔵の書物を漁ろう。
 勝手口から出るのは嫌だったから玄関から出で蔵に入るとバイクが二台止まっていた。バイクに詳しくないが二台ともナナハンだろう、紫と青で双子のオネエ様に似合わってる、双子だから趣味が被るのかな?と思い階に上がり端から書物を読み返した。
呪返しや縛り替えの様に返す相手が居ない場合の事が書いていない、自分では無い誰かに私の呪を少し移して呪返しをすればその誰かに呪が返るのだろうか?縛り替え・死者蘇生・名付けは書物の通りにやってるが、漆蛇の封印の解除や穢を払う事は無意識だし、紫青の封印の解除や結界の張り直しは自己流で、血術はイメージでやっている。
基礎が無いから基礎を踏まえた応用が私には出来ない、現に血術使いは私だけだから誰かに聞く事も出来ないし、そもそも血術使いの私の格が上がる呪の解き方が分かるは存在しない。
紫青も人魚も解除の仕方の大まかなやり方は分かってるだろうが聞いた所で教えては貰えない。
紫青に直接、霊力と生命力を貰ってる内は呪に食われないが他に好いた相手が出来たら供給は止まって私は呪に食われて、紫青は新しい相手と真名を縛り合うのだろう。
もしかしたら…私が邪魔で鬼女に呪わせたのだろうか?供給の終わる恐怖が生まれた、私は時限爆弾を三つ抱えてる状況だ。
仮説を数個立てて成功率が高い方法を一か八かでやるしか無いと結論が出た。
丁度良いタイミングで公安が着たのかエンジン音がした、蔵の窓からは駐車場が見える、一台の黒塗りフルスモークのセダンが止まっている。
蔵を開けて参無月が階段を上がって来た。
「当主様、公安が来ました。居間にお越しください」
「ねぇ参無月、客人を待たせてる状態でする話じゃないんだけど」
「何でしょうか?」
「二人きりで話すのは初めてだね」
「?…そうですね」
「弐無月から我が家の事情は聞いてると思うけど、漆蛇と龍神の封印を解いた事や家業を再開したのは間違いだったんじゃないかって思って…会合に行かなければ青髪も白髪兄妹も私の我儘に巻き込まれる事無く本来の歩むべき道を歩いてたと思うし、壱捨駒も弐無月も参無月も私のせいで本来の人生を変えてしまったと思うと何だか申し訳ない、自分にかけられた呪すら解けない私に何の価値が有るのだろう」
無言になってしまったが後ろから抱きつかれた。
「深雪ちゃんは血術使いで霊力も桁違いで忘れてたけど、この業界ではまだ二週間も経ってない女の子だったね。気付いてあげられなくてごめんね」
振り向くと見た事が無いくらい優しい目で私を抱きしめてくれてた。
「ありがとう…参無月、弐無月と似てるのに青がとっても似合うね。雪臣じゃなくて参無月と弐無月がお兄ちゃんが良かった」
「ありがとう、俺も兄も深雪ちゃんが大好きだからね。だから深雪ちゃんの好きな様にすれば良いと思うよ」
「ありがとう…隠れてるつもりの弐無月も入って来れば良いのに」
弐無月「公安は壱捨駒が対応してるから時間は気にしないで…他にも言いたい事があるんでしょ?」
「鬼女と蛇女の呪の解き方が全く分からないのと、漆蛇に祟られないか不安」
弐無月「解き方が分からないって?」
「柊家に有る書物は呪った相手が生きてる事が前提だから呪った者の死体が有れば別だけど灰すら残ってない相手に呪返しする方法が分からない、大きい赤ちゃんって言ってから漆蛇の様子が変わって拗らせて祟られないか不安」
参無月「呪術師も呪詛師も呪返しの相手が生きているのが前提だからね。でもよく前当主が使用人を惨殺してから使用人の呪で不幸が続くから払ってくれとかは有るよ」
「その場合って?」
参無月「占い師とかは贄を欠かさずで呪術師は呪の元を絶ち、呪詛師は使い捨てに移して殺すかな」
「呪を断つ…考えたのは呪を贄に少し移して贄を呪の元にして呪返しするとか?失敗したら呪いが自分に返って来ると思うと中々実行出来ない」
弐無月「壱捨駒に呪を移して自然消滅させるのは?」
「確かに…呪い殺されても自分で再生するならやってみようかな…」
「その方法は却下、それと漆蛇は人魚の兄の方に恋愛相談してたから大丈夫」と壱捨駒が階段を上がって来た。
壱捨駒「兎に角、早く来て」
参無月「取り敢えず居間に行こうね」
「白髪兄妹の血術縛りをしないと」
参無月「そうだね、呼んだのに放置は良くないね」
そっと手を出した参無月と手を繋ぎ、四人で階段を下りて蔵を出たで居間に向かった。
 居間に入ると上座に三十歳前後の垂れ目の色白にやや長めの黒髪のパーマに黒スーツのお兄さんが一人居た、テーブルの左側に白髪兄妹が座っている。
「お呼びしたのに遅れてしまい申し訳ありません」
「始めまして、田中と申します、以後お見知りおきを」とお兄さんに挨拶をされた。
「会合の時にいらっしゃいましたよね?」
「部屋の外にいたのですが」
「田中さんはそこそこ霊力が有るので妖怪や幽霊が見えるのでしょう?霊力は個人により癖が有るので視界に入らなくても特定は出来ます」
弐無月「ねぇ当主様には龍眼リュウガンが有るのは聞いていたでしょ?」
参無月「偽名もバレバレよ」
「偽名で活動するのも職業柄仕方が無いと思いますので、お気になさらず」
田中「理解があり助かります」
「小さい頃から「たった一つの真実を見抜く」アニメを観ていたので」
田中「なるほど」
「組織の女優に憧れて大型二輪を取りました」
弐参「「大型二輪の免許を持ってたの?」」
田中「失礼ですが、身長が有る様には見えないのですが」
「バイクは身長ではなく股下だと思います。股下は長い方なので、身長が有る方には分からないと思いますが」
田中「それは失礼しました、青髪の子供を連れて帰った事を心配してたのですが」
「まぁ連れて来てしまいましたし」
田中「あの子供は結構エグい事をしてたけど大丈夫ですか?」
「こちらに不利な動きをしたら即殺すので大丈夫ですよ?」
田中「貴女は強いんですね」
「お褒めのお言葉と受け取ります」
参無月「それでこの白髪の兄妹の戸籍は有りましたか?」
田中「出生届は出されていましたが、三年前に家族五人で事故死した事になってます」
弐無月「新しく戸籍を作る必要があるのね」
「二人の元々の名前は?」
白髪兄「柳田竹と梅です」
「…松竹梅ショウチクバイ
白髪兄「名前は柳田家の当主が適当に付けたので…」
「二人は柳田家と直接血が繋がってるの?」
白髪兄「父が遠縁の親戚で母と結婚をした後に、人手不足で母を人質に取られて呪詛師をしていたと聞いてます」
弐参「「本当に糞な家ねぇ」」
「って事は…松さんは?」
白髪兄「松姉さんは母が自害した後に抗議して殺されました」
「松お姉ちゃん…」と妹が泣き出してしまった、まだ幼い子供に両親と姉の死は受け入れられないだろう。
「泣くな、泣いたって父さんも母さんも姉さんも帰って来ない」とごもっともな事実を言っている、兄は妹を守る為に早く大人になったんだろう、楽しい公開処刑と言った事を少しだけ反省した。
「お母様の旧姓は?」
白髪兄「…宮藤クドウです」
「宮藤竹と宮藤梅を真名にして戸籍上は…」
弐無月「当主様の名付けの名前で良いじゃない」
「それは可哀想だよ!凄い当て字の見た事のないキラキラネームだから可哀想!」
田中「ちなみに名前は?」
「シラナミとイツラウメ」
参無月「良いじゃないですか、漢字は?」
「壱捨駒!書斎の机の上に漢字三文字が書かれた半紙が二枚有るから持って来て」
「承知しました」と飛車駒は部屋を出て行った。
田中「今日はこの前の黒蛇は一緒じゃないんですか?」
弐無月「あの蛇は池で泳いでるわよ、多分」
田中「式の子供達は?」
参無月「台所でおやつを食べてるわ」
田中「他所の家とは式の扱いが全然違いますね」
弐無月「当たり前じゃない」
参無月「この業界の普通を知らない当主様が自由にさせてるんだから」
そこに壱捨駒が半紙を持って戻って来てテーブルの上に半紙を並べた。
【肆羅波】【伍羅梅】
「漢数字は何時も通りで羅で兄妹感をだして波と梅で白を表現した傑作の名前だけど…この漢字、戸籍に受理されるの?」
白髪兄妹「「素敵な名前…これがいいです」」
「え…本気マジで言ってる?いいの?この名前で生きてくんだよ?事有る事にこの画数の多い名前を書くんだよ?」
白髪兄「素敵な名前をありがとうございます」
白髪妹「私…字を書いた事が無いけど…書けるかな…」
弐無月「二人はいくつなの?」
白髪兄「七歳と六歳です」
弐無月「…勉強面の事もあるし一つ二つサバ読んでも分からないわ」
参無月「兄が五歳で来年から小一で妹は四歳で再来年から小一にして今から保育園や幼稚園に通えば自然な形で小学生になれるわ」
弐無月「両親が他界して親戚の当主様が引き取った事にすれば良いのよ」
「なるほど…でもそのからくりをバラす人がいたら…」
壱捨駒「あの会合の焼死体と公開処刑を見ててそんな馬鹿な事をする奴が居ると思う?」
弐無月「居たとして贄としてその家の当主が金と菓子折りと一緒に差し出すわ」
参無月「二人は血術の縛りをしてもいいの?」
白髪兄妹「「勿論です」」
「そしたら肆羅波ではなく肆羅竹シラタケにしよう!」
弐無月「柊肆羅竹ヒイラギシラタケは五歳で柊伍羅梅ヒイラギイツラウメは四歳で戸籍を作ってちょうだい」
田中「分かりました、血術を使う所を見てみたいのですが」
弐無月「血術なんて滅多に見られない物よ、血術使いは当主様しかいないんだから」
参無月「戸籍を作る手数料を抜いたってお釣りが来るわ」
「…血術を見せて戸籍の手数料がチャラになるなら見せようよ…食費の為に」
田中「貴女は欲が有るのか無いのか分からない方ですね」
「?…肆羅波の名前を変えるので少しお時間を頂くんですが」
田中「構いません」
「ありがとうございます。壱捨駒、書斎から半紙と使用中の書道セットを持って来て」
「承知しました」と壱捨駒が居間を出て行った。
「二人には壱捨駒の役を任せたいし、私達四人が留守の時の屋敷の対応をお願いしたい」
白髪兄「かしこまりました」
白髪妹「当主様の役に立てる様に頑張ります」
「急いでは無いし、ゆっくり無理しないで良いから壱捨駒から引き継いでね、パワハラとか嫌な事があったら半殺しにするから遠慮なく言ってね」
「俺にパワハラするのはいいのね」と壱捨駒が戻って来た。
「良いと思ってる、無料の死者蘇生を忘れるなよ」
壱捨駒が半紙と書道セットを準備してくれて、肆羅竹と新しく書き直した。
「二人は真名の縛り方は分かる?」
白髪兄「刃物で頸を切って真名を名乗り忠誠を誓う奴であってますか?」
「あってる、私が真名を与えて、二人が縛りを結び、私が真名を与える方法で行います。痛いです、私も二人も…頑張ろ!」
白髪兄の左手首の動脈を切り私も右手首の動脈を切り、お互いの血を混ぜ合わせた。

【我に忠誠を誓いし男児に宮藤竹と名付ける】
白髪兄は苦しみだして横に倒れた。

「壱捨駒、頼んだ」

次に白髪妹の左手首を切ろうとしたが女の子を傷付ける事に躊躇してしまった。
「弐無月…女の子を傷付ける事は私には出来ない」
「さっきの強気はどうしたのよ」
「野郎は殺せても女の子は殺せないタイプの人間だった」
壱弐参「「「知らんがな」」」
「弐無月が切って」
「情けない当主様ね、ちょっと切るわよ」と躊躇なく白髪妹の左手首の動脈を切った。
「流石殺し屋…怖いよぉ、梅ちゃん弐無月には気を付けようね」
「…さっさと儀式やりなさいよ」
「御意、黒幕の仰せのままに」
梅ちゃんと血を混ぜ合わせた。

【我に忠誠を誓い女児に宮藤梅と名付ける】
兄同様に苦しみ倒れた。

「弐無月頼んだ、竹くんは縛り出来そう?」
「出来ます」

【宮藤竹は柊深雪様に忠誠を誓います】
自身の頸を切り苦しみだした。

「梅ちゃんは縛り出来そう?」
「やります!」

【宮藤梅は柊深雪様に忠誠を誓います】
自身の頸を切り苦しみだした。

「竹くん、名付け出来そう?」
「大丈夫です」
【肆羅竹】と書いた半紙を竹くんの心臓の上に乗せてズレ無い様に持って貰った。

【私に忠義を誓いし者に名を与える私に従え】

ーーパチンーー
両手を叩くと半紙が燃えだした。

柳田家で雑に扱われ父を殺され母が自害し姉が殺される迄の過酷な人生を見て涙が止まらなくなった。
台所からドタドタと足音が聞こえて菖蒲が涙を拭いてくれて、桔梗が鼻をかませてくれて、睡蓮が髪の毛を整えてくれた。
「「コラ!今出て行っちゃ駄目」」と双子ちゃんが飛んで来た。
女の子「「「だって主様が泣いてたから」」」
「…家の子が一番可愛い」
田中「他の家とは式との関係が全く違いますね」
弐無月「これが我が家の当主様よ」
田中「良い関係性なんですね」
「梅ちゃんの名付けもしないと!梅ちゃん竹くんみたいに半紙を持って」
白髪妹「わかりました」

【私に忠義を誓いし者に名を与える私に従え】

ーーパチンーー
両手を叩くと半紙が燃えだした。

竹くんと同じ記憶に美少女ゆえの苦しみも流れて来て号泣しているとまた、菖蒲が涙を拭いてくれて、桔梗が鼻をかませてくれて、睡蓮が髪の毛を整えてくれた。
「あ゛り゛か゛と゛う゛」

【血術・カイ

ーーパチンーー
手を叩くと二人の傷は治った。

弐無月「みっともない当主様ねぇ」
参無月「もっとしっかりして欲しいですわ」
壱捨駒「でもそこが当主様の良い所」
弐無月「田中さん、この事は此処だけの秘密よ」
参無月「広めたら祟るわよ」
「肆羅波と伍羅梅は生きてる?」
壱捨駒「二人とも意識はない」
「壱捨駒は二人を隣の部屋に運んで、双子ちゃんは枕と掛け布団を掛けてあげて」
「では私はこれで失礼してます」と田中さんが席を立った。
「送ります」
「ありがとうございます」
私も立ち上がり田中さんと居間を出て玄関に行った。
「此処で良いです」
「車まで送ります」
「…ありがとうございます」
靴を履き玄関を二人で出た。
「私の見定めはどうでしたか?」
「そうですね…他の家と比べて甘い当主だなと思いました」
「でも壱捨駒も弐無月も参無月も厳しいので鞭は三人に任せて私は飴に徹します」
「従者五人が裏切るとは思わないんですか?」
「血術縛りは私が裏切り行為と判断した場合と、縛り替えをしたら即頸が落ちます。他の家の縛りとはレベルが違います、だからこれで良いと思ってます」
「そうですか、深雪さんに付いて行く五人の気持ちが分かる気がします」
「ありがとうございます」
「これからもよろしくお願いします、私の事はーーとお呼びください」
強い風が吹いて大事な名前の部分が聞き取れなかったが聞き返せる雰囲気では無かった。
「本当に此処までで大丈夫です」と門まで送り引き上げた。
 昼ごはんからずっとモヤモヤしている、龍神池に行くと漆蛇が龍神池に下半身を蛇にして浸かっていたから私も靴を脱いで漆蛇と人魚の間に割り込んで座り脚を突っ込んだ、向かいに下半身を池に浸からせている青髪が居る。
「青髪はどうして私に対して反抗的なの?」
黙りを決め込むと言うよりは私と話したく無いのだろう。
「人魚に恋愛感情があるからでしょう?二人を見て確信したけど貴女はギリギリ人魚と血縁者なだけでほぼ他人で蛇でしょ?何で兄妹のフリをするの?無視されても妹の様に振る舞うの?趣味なの?見てて憐れなんだけど」
「うるさい!うるさい!うるさい!人間のお前に何が分かる」
「人間だから蛇の気持ちはわからない」
「ずっと恋い焦がれてた兄様をお前らが所持していたせいで私は惨めな思いをした」
「青兄の所有の有無も確認もせずに式になる頭の悪い貴女が式にならず惨めな思いをしなくても青兄は見つけられなかったでしょう?八つ当たりも良いところね」
また黙りを決め込んだが返す言葉が無いのだろう。
「そもそも私に悪意を持つ貴女を池に置こうと思った理由も理解してないんでしょ?」
「…理由?」
「白髪兄妹は従者にすると言ったし人魚は式にしたいと言ったけど貴女には何も言ってないし、貴女は人魚の金魚の糞。そもそも式でもない貴女を我が家に置くにはリスクが有るけど置いてあげてる、何故か分かる?」
「…私を喰って永遠に生きる為」
「残念、私は紫青様と真名の血術縛りをしてるから人魚を食べなくても老いないし死なない」
「…ならどうして」
「貴女が浸かってる池には私の霊力と血液が混ざっていてそれを皮膚から吸収してる。池の中に居ようと陸に上がろうと屋敷から逃げようと殺せる。だから人魚は池に入って無いでしょう?」
青髪は陸に居る青兄を確認した、人魚は人間に擬態し胡座をかいている。
「…私を殺すの?」
「殺す価値も無い」そう言うと青髪は悔しそうに私を睨みつけた。
「人魚はどうして私に冷たいの?」と人魚の方を向くと彼も私の方を向き、向かい合った。
「龍神の寵愛を受けているのに何故黒蛇を誑かす?」
「人魚は仮死状態だから知らないと思うけど、私は漆蛇に誑かされて此処ココに紫青様を封印させられたからお互い様、もしかして人魚は漆蛇に恋心があるの?」
「まさか、深雪こそ忘れているのだろう?」
「何を?」
「私の箪笥の引き出しの封印を解いたのは二十年以上前だ、封印を解いてから来る度に私に話し掛けてくれて起こしてくれると約束したのに、実際に起こしたのは龍神だろう?思い出させてやる」と私の腹部に抱きつくと池の中に引き込まれた、この池の中では呼吸が出来る、人魚は水の中で強いは本当で人魚に額を触れると幼い頃の蔵の二階での記憶が流れ込んできた。
「深雪は仮死状態の私にひたすら話し掛けてくれて嬉しかったのに二十年以上、会いに来てくれず屋敷に戻って来てからも話し掛けてはくれなかった。それが気に入らない」
(…ごめんね、その辺の記憶がすっぽ抜けてて)
「龍神を封印した代償だろう」
(知ってるじゃん)
「仮死状態だが屋敷の事は分かる」
(それは本当にごめん)
「このまま池の中に居たらどうなる?」
(溺死する)
「知ってる、龍神の様に風呂に入れてあげる」
(変態…意識飛ぶ…無理)
「おやすみ…深雪」と最後に見たのは人魚の綺麗な顔だった。
 気が付くと服のまま浴槽に入れられて後ろから人魚に支えられている。
「人魚、おはよう」
「おはよう、深雪…私を式にしてくれ」
「人魚を式にするのは良いけど。頭が悪くて態度が悪い雪臣タイプの青髪は要らないんだけど」
「…酷い言い様だね。アイツは私に執着しているし、あそこまで言われたら深雪には懐かないし式にはならないだろうが、私が責任を持って監視するし深雪に悪意有る行為をした時は殺す」
「慈悲がないのね」
「深雪が雪臣に容赦ないのと同じだな」
「わかりやすい説明をありがとう、何時縛りをする?真名はあるの?」
「無いよ」
「本当に無いんだ、それで何時結ぶの?」
「今」
「人魚って何色なの?」
「昔聞いた時は瑠璃色ルリイロと言われた」
「…瑠璃魚ルリオとか?」
「いいよ、血術縛りして」

【我に忠誠を誓いし瑠璃色の人魚に瑠璃魚と名付ける】

ーーパチンーー
瑠璃魚は私に抱きつきながら苦しみ出した。

 瑠璃魚は龍神池に入って私の血を吸収してるから血を混ぜる必要は無いが左手首の傷口が開いてしまった。
私は血が止まらなくなりアタフタしていると、瑠璃魚は姫抱きをして浴槽から引き揚げて、脱衣所に寝かせてくれた。
扉を開けて「座敷童子!タオル!救急箱!女全員集合!野郎は絶対に来るな!」と叫ぶとタオルと救急箱を持った双子と女の子三人と伍羅梅がすっ飛んで来た、「深雪を頼んだ」と瑠璃魚は脱衣所を出て行った。
葵「深雪ちゃんどうしたの」
菫「何で血が止まらないの」
「浴槽で傷口を開いたから」
睡蓮「血術縛りをしたんですか?」
桔梗「青髪は敵意むき出しだったじゃないですか!」
菖蒲「…主様…辛そう」
伍羅梅「取り敢えず着替えないと…風引きます」
「貧血で動く気力が無いから着替えさせて、睡蓮と桔梗と菖蒲は私の部屋から下着と体操着持って来て…漆蛇に場所聞いて」
「「「行って来ます」」」と三人は脱衣所を出て行った。
「葵ちゃんと菫ちゃんは服を脱がせて、伍羅梅は止血をお願い、兎に角馬鹿力で押さえてて」
菖蒲「持って来ました、桔梗と睡蓮は漆蛇さんと人魚を足止めしてます」
「ありがとう、着させて」双子ちゃんに着替えさせて貰ったが血が止まらない。
「菖蒲、漆蛇か人魚を呼んで来て」
「…分かりました」
「変態二人を呼んでどうするの?」
「運んで貰って止血をして貰う、伍羅梅は壱捨駒達四人を居間に集めといて」
菖蒲が睡蓮と桔梗と漆蛇と瑠璃魚を連れて戻って来た。
「女の子達は男の子達を居間に集めといて」
「「「わかりました」」」
「葵ちゃんと菫ちゃんも居間に行ってて」
「「はぁい!変態蛇と魚、手を出すなよ」」
「瑠璃魚は青髪を連れて居間に行って」
「…分かった」
脱衣所には漆蛇と二人きりになった。
「漆蛇…血をちょうだい…漆蛇から血を貰うのを見ら」ーーチリンーー
言い終わる前に漆蛇の異空間だった、枕を置いて貰い布団に寝かせて貰った。

「深雪ちゃんから求められて嬉しい…いくらでも血をあげる」と自らの舌を切り接吻して血を飲ませて貰った。
回復を待つより漆蛇に血を貰う方が効率良く回復出来るから頼ってしまった、ヴァンパイアになった気分だ。
舌を噛むと出て来る血の量が増えるから強めに噛む、頭を撫でると嬉しそうに抱きしめてくる、軽く胸を押すと唇を話してくれた。
「漆蛇…ありがとう…回復した」

【血術・回】
漆蛇の舌の血が止まり治る

「舌に違和感とか無い?大丈夫?」
「深雪ちゃんも大丈夫?」
「漆蛇のお陰で元気になったから居間に行かないと」
「そうだね、人魚の事を問い詰めないと」

ーーチリンーー
漆蛇の膝の上に乗り漆蛇に寄りかかっている。

呼び出した皆は、定位置に座っている。
「呼んだのに待たせてごめんね」
弐無月「ねぇ当主様、そこの人魚を式にしたとか言わないでしょうね?」
参無月「額に柊蝶が浮かび上がってますけど」
壱捨駒「拗らせ系は漆蛇だけでいいよ~」
「瑠璃魚って名付けたからよろしくね!血で血を洗う事はしないでね!返事は?」
三人は黙りを決め込んだ。
「肆羅竹と伍羅梅は良いよね?」
肆羅竹「当主様の仰せのままに」
伍羅梅「当主様はモテモテですね」
「幼い二人は良い子だね~三十代のおっさん共とは大違い、子供達は?」
睡蓮「変態蛇の次は変態人魚ですか?」
菖蒲「主様は変態が好きなんですか?」
睡蓮「変態ホイホイ」
柏葉カシワバ「変態製造機」
梔子クチナシ「メンヘラ製造機」
露草ツユクサ「ヤンデレ製造機」
「子供達はそんな言葉を何処で覚えたの…葵ちゃんと菫ちゃんは昔から知ってる訳だし…良いでしょ?」
葵「そうですね…封印を破るのは必然と言うか」
菫「ガサツでいい加減な深雪ちゃんはうっかり封印を破ったりするから厄介」
葵「絶対に蔵の井戸は触っちゃ駄目だよ」
菫「封印を破ったら龍神様しか封印出来ないからね!」
「わぁ、何が出て来るか気になる…破ってみるか!」
葵「駄目だってば!」
菫「井戸には大きな鬼女の生首が封印してあるの!」
葵「呪われるか!」
菫「食い殺されるよ!」
「鬼女怖いよぉ…無理」 
青髪「兄様を誑かした悪女め!兄様を返せ」
「瑠璃魚…何とかしておくれ」
瑠璃魚「深雪への口の聞き方を考えろ」
青髪「兄様がその女の式なんて認めない!死ね!糞女!」
「お前は本当に頭が悪いね。今この瞬間も殺せるのにどうしてそんな態度を取るの?下級蛇って頭に蛆虫でも詰まってるの?」
瑠璃魚「深雪…殺して良いよ、元から情も無ければ何も無い」
「可哀想に…私は慈悲深いから大好きな兄様と一緒に居させてあげる、丁度贄の監視役が居なかったからね」

【我に嫌われし憐れな下級蛇に邪蛇ジャジャと名付ける】

ーーパチンーー
手を叩くと邪蛇が苦しんでるが興味は無い。

「橘家と柳田家の贄は何処に居るの?」
壱捨駒「まとめて台所の床下収納に入れてある」
「そう、なら邪蛇を床下収納に縛る」
弐無月「本当に慈悲がないのねぇ」
参無月「伍羅梅の時と大違いねぇ」
葵「深雪ちゃんはどんどん雪乃助様に似てく」
菫「昔、雪乃助様は喧嘩を売られた妖怪を蔵の用心棒として縛ってたね」
弐無月「それでどうなったの?その妖怪」
葵「蔵の井戸の封印を解こうとして雪乃助様に首を刎ねられた」
菫「それで良かったと思う」
「邪蛇は長生き出来ると良いね、私の血術縛りは即頸が落ちるからね。瑠璃魚、台所に運んで」
瑠璃魚「分かった」
壱捨駒「…兄様に運ばせるなるなんて」
弐参「「本当に慈悲がないのねぇ」」
葵菫「「雪乃助様が戻って来たみたい!」」
「肆羅竹も伍羅梅も自分に害をなす者を殺さず役立てる勉強だと思って見学してね。子供達は関係ないから遊んでおいで」
「「「私達も見たいです」」」
「「「僕達は遊んできます」」」と男の子達は逃げるよに居間から出て行った。
菖蒲「意気地なし」
桔梗「玉無し」
睡蓮「根性無し」
壱捨駒と弐無月と参無月が吹き出し、漆蛇と瑠璃魚も吹き出した。
葵「女の子達がどんどん深雪ちゃんに似てく」
菫「伍羅梅ちゃんもこうなるのか」
「梅ちゃんは梅ちゃんのままでいて欲しい」
伍羅梅「よくわかりませんが当主様みたいになりたいです!」
「調子に乗るな!クソ女!」と邪蛇が叫ぶと伍羅梅が自分の簪を髪から抜きゆっくりと邪蛇の隣に行くと、胸ぐらを掴んだ。
「クソガキが!」と邪蛇が叫ぶと開いた口から口内に簪を入れて舌を刺して「黙れ」と言った、びっくりし過ぎて静まり返った。
「主様の真似です!」と六歳の伍羅梅が笑顔で言って震え上がった。
参無月「あらぁ、よく似てるわぁ」
弐無月「ふふふ…将来が楽しみね」
壱捨駒「肆羅竹もこの位は笑顔で出来るようにならないとね」
肆羅竹「妹に負けない様に頑張ります」
女の子「「「私も刺してみたい」」」
「私は怖くて震え上がったよ」
漆蛇「深雪ちゃんは俺が守る」
瑠璃魚「伍羅梅を妹に欲しい」
舌を刺されて言葉が出ない邪蛇が伍羅梅を睨んでいる、年齢問わず女の嫉妬と怨みは怖い。
 私が立ち上がると瑠璃魚と漆蛇も立ち上がり居間を出た。
瑠璃魚が邪蛇を肩に担いで手足をバタバタさせて騒いでいるが全く相手にしない瑠璃魚の方が慈悲が無いだろうと思いながら何時もの様に漆蛇に姫抱きで運ばれてる。
台所の前で「漆蛇…横抱きされると壁とか扉に脚をぶつけるから他の持ち方にして欲しい」
「…今まで気が付かなくてごめんね」と下ろされた。
台所に入るとテーブルの下に床下収納の扉があったが、言われるまで気が付かなかったし何で台所の真ん中に有るのか考えていると「開ければ良い?」と漆蛇が真後ろから抱きつかれ肩に頭を乗せられている。
「何で台所真ん中に床下収納があるの?」
漆瑠「「雪乃助も贄を隠してた」」
「…そう、開けて」
中には両手足を縛られ目隠しに猿轡を嵌めた五人の男と二人の女が雑に並べられている、生きてはいるが微塵も動かず気持ちが悪い。
「本当に仮死状態なんだ、血術縛りいらなくない?壱捨駒と参無月の術なら解けないでしょ?」
参無月「当主様に信用して頂けて嬉しいですわ」
「それにしても…もう色々と後には引けないんだね」
弐無月「そうよ、壱捨駒が死んで警察を呼ばずに死者蘇生した時からもう戻れなかったわ」
「弐無月が壱捨駒を殺さなければ…ね」
弐無月「諦めなさい、従者五人と式が八人居る柊家の当主何だから覚悟を決めなさい」
「分かった…瑠璃魚、邪蛇を中に入れて」
「分かった」と邪蛇を瑠璃魚は床下収納に放り込んだ。

【我が式の邪蛇に贄の番人を命じ、扉を封印する】

ーーパチンーー
手を叩くと収納庫の奥から縄が飛んで来て邪蛇の首に巻き付き勝手に扉が閉まり【封】と床と扉を縛る様に赤字で現れた。

「家宅捜索されても余裕だね」
弐無月「まず家宅捜索なんてされないわよ」
「何で?」
弐無月「公安の庇護下にある唯一の血術使いを敵に回す馬鹿が何処に居るのよ」
「さっきまで居た青奴」
弐無月「そうね、馬鹿だったでしょう?」
「凄い頭が悪かった」
「深雪ちゃん…夕飯までお昼寝しよう」と正面から抱きしめられそのまま持ち上げられて台所を出た。
「やる事が有るからお昼寝出来ないし、書斎じゃなくて蔵の二階に行く」
「…嫌だ」
「瑠璃魚…助けて」
瑠璃魚「深雪は蔵の二階に何しに行くんだ?」
「鬼女の呪を調べてるけど分からない…瑠璃魚は常世の鬼神の屋敷に行けないの?」
瑠璃魚「俺も黒蛇も行こうと思えば行けるけど…な」
漆蛇「深雪ちゃんを連れて常世に行く事は龍神が許さない」
「紫青に頼んでも連れてって貰えないと思うんだよね、自力で解くって言ったけど…呪を返す相手が居ないから失敗したら即死だよ」
瑠璃魚「龍神と真名を縛ってるなら大丈夫だろ」
「それは悔しい、自分の実力だと死ぬけど紫青のお陰で死なないのは気に食わない」
弐参「「当主様は本当に気が強いのねぇ」」
「弐無月と参無月も一緒に考えてよ、肆羅竹と伍羅梅も慈悲を持たない事も大切だよ」
肆伍「「わかりました」」
「壱捨駒、二人に簡単な事から教えて」
「了解~二人とも行くよ~」
肆伍「「よろしくお願いします」」と三人で居間に入って行った。
「突き放したと思われないかな…?」
弐無月「そんな事は無いわ」
参無月「側近レベルの呪術師や呪詛師はこの位の歳から仕込まれます」
瑠璃魚「深雪は黒蛇に持ち上げられてる状態で良いのか?」
「言っても下ろしてくれないし諦めた」
弐無月「この光景は馴れて」
参無月「漆蛇が当主様を抱き上げて移動するのは何時もの事なので」
瑠璃魚「深雪が良いなら良いんだ」
「早く蔵の二階に連れてって」
漆蛇「…分かった」
「弐無月と参無月は適当に、瑠璃魚も来る?」
瑠璃魚「…行く」
「夕飯の時に呼びに来てね」と言うと漆蛇に抱き抱えられたまま廊下を進み玄関を出て蔵に入った。
「そこの井戸本当にヤバいの?」
「ヤバいよ、開けちゃ駄目だよ」
「瑠璃魚は開けてみたくない?」
「開けてみたくない」
「そっか…他の人を誘うね」
「「駄目だ」」
「人魚…分かるだろう?深雪ちゃんを野放しにすると余計な事をするから監視の役割もあり抱き上げてる」
「理解した」
蔵の二階へ続く階段を登り始めた。
「常に余計な事をしてる訳ではないし…瑠璃魚は呪の解き方を知っての?」
「…呪には詳しくない、人魚は水の中で強いだけで陸に上がると人間と変わらない」
「なら水中に居ないと…でも、もしもの時は私が守るからね」
「ありがとう、深雪は優しいね」
「深雪ちゃんが優しいのはお前が仮死状態の時から変わらない」
「知ってるよ、見てたから」
「二人は仲が良いんだね、鱗があるから?漆蛇も蛇の姿なら水の中を泳げるんでしょ?」
「泳げるよ」
「ウミヘビとか居るもんね、ウツボとかチンアナゴとは何が違うんだろう?」
「…なぁ深雪はどうして呪い解除を急ぐ、龍神が生きてる限り死なないんだろ?」
「…紫青に直接霊力と生命力を貰えば呪に食われないけど、心変わりして私が邪魔になったから鬼女の呪をかけられた気がして、慌ててる」

ーーチリンーー
「そんな風に私の事を思ってたのかい?」

後ろから紫青に腹部を抱きしめられて、漆蛇から引き離されて脚が床に着かずブランと垂れ下がっている。
「そんな風に思ってたなんて悲しいよ、お仕置きが必要だね」
「漆蛇…瑠璃魚…助」

ーーチリンーー
「助けて」と言い終える前に紫青に常世の屋敷に連れて行かれた。

「双子、前回と同じく着替えを頼む」
「「かしこまりました」」
前回同様に双子ちゃんと入れ替わる様に紫青が消えた。
「やぶぇ怒らせちゃった」
「凄い怒ってた」
「何したの?」
「分からないから困ってる」
「何に対して怒っているか分からないのに謝罪は駄目だよ」
「ちゃんと考えて、思い出して」
「ごもっともでございます、お姉様方。生きてる年数が桁違い」
「「私達は三百年以上生きてるからね」」
「お婆」
「「あぁ?」」
「何でもございません…大変聞きにくい事何だけどさ」
「「なぁに?」」
「小紫さんが平井権八の墓の前で自害したのを見つけたのはどっちなの…?答えたくなかったら良いんだけど」
「私…小紫太夫タユウの帰りが遅いから迎えに行ったらお墓の前で冷たくなってて、その帰り道に川に身投げをしたら」
「それを見たから葵を助けようと川に飛び込んだけど助けられず、そのまま二人で溺死」
「元々菫とは姉妹と間違えられる位に似てたから双子として妖怪になったんだと思う」
「生前同様に葵は垂れ目で私は吊り目」
「二人で幽霊として彷徨ってると小紫太夫の幽霊と会えて」
「江戸には平井権八との思い出があるから」
「反対方向に行こうってなって長い時間を彷徨ってた所を」
「「雪乃助様に拾われた」」
「…そうなんだ、気になってた事を教えてくれてありがとう。着付けお願いします」
二人が着付けを始めてくれた。
「葵ちゃんと菫ちゃんは小紫さんの禿カムロなのに離れちゃっていいの?初めて会った時はまだ小紫さんは花魁だったし、禿が花魁の支度をするんでしょう?」
「小紫太夫が隠世カクリヨに行く際は深雪ちゃんの屋敷で着付けをして行ってたから」
「客を取らなくても有名な小紫花魁が店先に居るだけで繁盛するから客を取らなくても置いて貰えたんだって」
「それに、花魁道中でしか見られない花魁が無料で見られるから観光地化して凄かったんだって」
「見てみたかったな、隠世は江戸時代の町並みなの?」
「そうだよ!歌舞伎座もあって現世で歌舞伎役者をしてた妖怪が役者だったりで大盛況だったり…でも私は隠世は江戸時代で止まってるから現世の方が好きだな~」
「菫ちゃんは現代っ子感あるもんね」
「私は?」
「葵ちゃんは良い意味で昔の子、二人は最初から座敷童子なの?」
「「…何で?」」
「小紫さんが妖狐なら普通は二人も妖狐なのかなって、同じ日に同じ近辺で他界してるから」
「まぁ色々有るのよ」と菫ちゃん流されてしまった。
「あ、そうだ…夕飯、瑠璃魚の分もお願いね」
「「はぁい」」
瑠璃魚で思い出した、実質封印した邪蛇の事を。
何かを言いたそうに涙目の姿をしてた、でも雪臣みたいな演技だったら腹立つけど少し後味が悪い。
「深雪ちゃん終わったよ!」
「今度は捨てられないでね」と菫ちゃんから檜扇を受け取った。
「「色々と頑張ってね」」

ーーチリンーー
双子ちゃんと入れ替わる様に紫青が現れた。

やぶぇのが召喚されたから檜扇を開き顔を隠した、檜扇の有り難さを身を持って実感していると檜扇を両手で持ったまま二の腕辺りを抱きしめられて場所が変わり脚がブランと垂れ下がっている、先程は蔵で脚ブラをされたから下は床だったが、釣殿で脚ブラをされ下は池だ。
貴族の屋敷の庭の池は船が浮く…船が浮く深さの池に落とされたら溺れて十二単も相まって確実に沈むが呪に食い殺されるまでは死ねない。
檜扇を開いて両手で持った事が運の付きだ、墓穴を掘るってこういう事を言うんだ勉強になったと現実逃避してみたが怖い物は怖いが掛ける言葉が見つからない。
抱きついて少しでも生存率を上げたいが下手に動いて落とされる可能性も有る、そもそも何故紫青が何故この状況を作ったのか考えたが性格が悪いからしか思い浮かばない。
そもそも二十八年しか生きてない私が千年以上生きてる龍の考えが分かる訳がない。
「龍神様…」と女の声がした、このやぶぇ時に寵愛頂戴蛇チョウアイチョウダイヘビが来てしまった。
「龍神様…何故お返事をして頂けないのでしょうか?」
この修羅場でよくノコノコの声かけられるな、灰にされるぞ…灰にされるならこの寵愛頂戴蛇に呪を移せば良いのでは?
「ふふふ…正解、寵愛頂戴蛇とは面白いね。刃物が無いと術が使えないね」と左腕で私を支えて右手で狩衣の下に手を入れ狩袴をゴソゴソと漁っている。
「紫青様落ちる…落ちる…落ちる」
「愛おしい深雪を落とすなんて事はしないよ」
「…うっかり手が滑ってとか」
「ふふふ…それは振りかい?ほら右手で持って檜扇に隠して」と鞘から抜いた短刀を渡された。
「何か仰ってくれましたか?」と寵愛頂戴蛇が近付いて来た、「嫉妬系は怖いから無理」と言うと紫青が後ろを向き、私を頂戴頂戴蛇と向かい合わせた。
こんの糞邪龍ジャリュウがと思っていると話し掛けられてしまった。
「人間のお前が龍神様の屋敷で何をしてる」
「貴女こそ、口も聞いて貰えないのに紫青様のお屋敷で何をなさってるの?」
「そもそも人間の癖に何故常世に居る」
「ふふふ…紫青様に連れて来て頂いたの」
「お前が…龍神様の寵愛を受けている人間か」
「寵愛を受けてる私と紫青様の逢瀬中によく割って入ってこれるわね?下品な人間ね。失礼、口すら聞いて貰えない蛇だったわ」
悔しそうに睨み付ける寵愛頂戴蛇から目を話さず受け取った短刀の刃で自身の頸の動脈を切り血を刃に付けた。
「私はお前より龍神様をお慕いしている」
「本当に面白い方ね、お慕いなんて…口を聞いて貰える様になってから仰ったら?」
「龍神様…わたくしは幼い頃から貴方様をお慕いしております、私を寵愛くださいませ」
「紫青様、そちらの寵愛頂戴蛇様は真剣ですのに笑っては失礼ですよ?」
「このクソ女」と寵愛頂戴蛇は下半身が蛇になり私との距離を一気に詰めて両手で私の首を絞め下半身を立ち上げた。
檜扇の下に隠し持っていた私の血が付いた短刀を喉に刺したら、更に両手で首を締め上げられた。

【我を呪いし鬼女の呪を差し上げ申す】

ーーパチンーー
手を叩くと寵愛頂戴蛇の額に私の額にあった呪の模様が浮かび上がった。

それでも尚、私の首を締め上げている、両手の親指を目玉に刺して【血術・エン】と唱えると顔面が燃え始めたが、首の手を離そうとはぜず、我慢比べが始まった。
紫青の様な火力が無い為、全く燃えなく私の意識が飛びそうだがよく見ると蛇では無く龍だと言う事に気が付いた。

【紫青に嫌われし憐れな寵愛頂戴蛇チョウアイチョウダイリュウよ燃えて塵になられよ】
聞いた事の無い甲高い悲鳴を上げながら顔面から首や腕や上半身や下半身へと炎が燃え移って行くが一向に私の首を離そうとはしない。

私の自己流の血術は状況や対象相手の情報を正確に唱えれば効果が上がる事に気が付いた。
自身の死を悟り私を道連れにする気だが、紫青が居る限り私は死なないがそれは癪に触る。
自らの手で殺さないと気が済まない、雪臣の時は頭蓋骨を割る勢いで手を叩いたが、頭蓋骨の硬さが違うからそれは不可能。
もう物理的に手を離して貰うしか無いと思い喉に刺さっている短刀を右手で引っこ抜き私の首を締めていていて重なっている寵愛頂戴龍の手と手が重なっている部分と自分の頸を一突きして、相手の上半身に両足で蹴りを数回入れてやっと離れてそのまま落ちて尻を木の橋に叩きつけられたが上半身は起きている状態だ。

【血術・せろ】
寵愛頂戴龍の逆鱗と手の甲に私の血が付いている為、喉元と前足が爆発して頸が飛んだ。

元の龍の姿になり後頭部が転がりながら燃えていて、首から下の本体も燃えている。
「本物の龍…初めて見た、これは何色なんですか?暗くて見えなくて」
「興味が無い、確認する気も無い」
「…そうですか、お仕置きとやらが終わったなら私の屋敷に戻りたいのですが」
「お仕置きはこれからだよ、これは深雪の呪を解くだからね」と言い私を姫抱きした。
「体力を使い過ぎたので寝たいんですけど」

ーーチリンーー
場所が変わった、現代の靴箱が並んでいるが古そうな建物の中だ。

「此処は何処ですか?」
現世ウツシヨの二条城だよ」
「え…不法侵入して良いんですか?」
「私は人間では無いから問題無い」
「私は問題大あり何ですが…」
「常世の十二単を着ているから人間とは少し違う」
「何だか…奥が深いんですね」
「深雪のお仕置きは女の嫉妬に晒す事だよ」
「本当に怖いから嫌だ…紫青様は側に居てくれるんですか?」
「それは当たり前だよ、深雪が怪我をしたら嫌だからね」と姫抱きされたまた廊下を歩き出した。
「…寵愛頂戴龍で怪我をしたんですが」
「ほら、治したから大丈夫」
「…檜扇どっか行っちゃったんですが」
「顔を隠す必要は無いから大丈夫、此処だよ」と入って行った場所は大政奉還が行われた畳の部屋で蝋人形が並ぶ場所だった。
 畳の一段上に連れて行かれ紫青が座った左側に降ろされ、胡座をかくと十二単の裾を綺麗に整えてくれた。
そこに一人の女性が入って来て、畳の一段下に座ったが暗くて顔が見えない。
「久しいな…」
「お久しぶりでございます。龍神様、そちらのお方はどなたでしょうか?ご紹介して、頂けませんか?」
「私の寵愛する紅八塩姫クレナイヤシオヒメだ」
「…そうですか、正室の方ですか?私は牡丹姫ボタンヒメと申します。普段は牡丹の間の障壁画の前に居るので牡丹姫と呼ばれて居ます」
「前々から牡丹姫から恋文を貰っていたが金輪際は辞めて頂きたい」
「何故でしょうか?わたくしは龍神様をお慕いしてますのに…」
怖いよ…雲行きが怪しくなってきたよ、女の嫉妬は見学だけにしてくれ。
「私が寵愛するのは紅八塩姫だけだ、娶るのも紅八塩姫以外は無い。此処に来るのも金輪際で終わりだ、屋敷に来るのも止めてくれ。それを伝えに来た」
「何故ですか…私は…私は」
こりゃぁやぶぇと本能が言っている、膝たちで紫青の後ろにそそくさと逃げ隠れした。
この牡丹姫の異空間に飛ばされたら死ぬと察した私は紫青に抱きついてピッタリくっついて両腕で抱きついた。
「私の姫を怖がらせる事は止めてくれ」
「ですが…わたくしは…わたくしは…龍神様を諦められません…側室でも構いません…側に置いてくださいませ」
「断る」
「…理由をお聞かせください」
「元々興味が全く無いのと、しつこい。分を弁えろ、自分の顔を鏡で見てから物を言え。醜女シコメ
そこまで罵倒するとは思わず震えてきた、八つ当たりを受けるのは私だ。
「紅八塩姫の皮を被れば寵愛を頂けるのですね」
ほら来た!瓜子姫と天邪鬼の下りじゃねぇか!最後は鳥になるのか私は!
「どうやら牡丹姫を殺さなければならなくなった」
「人間の癖に…その女さえいなければ」と定番の言葉を言った後に巨大な芋虫になった、とろろみたいな名前の実写版映画で見たトラウマの巨大な芋虫に変身した。
「嫌゛た゛ぁ゛マ゛シ゛で゛無゛理゛気゛持゛ち゛悪゛い゛」と両手で紫青を締め上げた。
「怖゛い゛無゛理゛帰゛り゛た゛い゛嫌゛た゛」と両足を龍神様の骨盤に絡ませて締め上げた。
紫青の後ろで大号泣していると「ちょっと意地悪が過ぎたね、ごめんね」と右手を巨大芋虫に向けると恐ろしい火力で燃えて塵になった。

ーーチリンーー
龍神の屋敷に戻った。

龍神に手足を締め上げたまま「…今度は何が出てくるんですか」と聞いた。
「此処は私の屋敷の寝殿だよ」
「アレがトラウマ過ぎて寝られないので一緒に寝てください、お願いします。紫青様」と泣きながら言った。
「勿論そのつもりだけどまずは何で私が怒っているかを理解しないとね、それと手と脚を離してくれないかい?」
「怖いから嫌です、絶対離れません」
「可愛いね…私の膝の上においで」
「…分かりました」と言い両手は話さず膝立ちで紫青の膝の上に向き合った形で座り脚を腰に巻きつけた。
「情熱的に抱きしめられて嬉しいよ。でもはしたないこら駄目だよ」と片手で抱きしめて頭を撫でてくれた。
「深雪は私が何で怒ってると思う?」
「…何で怒ってるか分からないから、怒られてます」
「一つ目は漆蛇から接吻で血を貰った事、私の霊力と生命力の供給が止まり鬼女の呪に殺させると言った事、私の霊力と生命力を使って呪を解くのは癪に触ると言った事、私ではなく黒蛇と人魚に頼った事、二人に常世に連れて行って貰おうとした事かな、上げれば切がないけどね。でも私を常に紫青と呼んでくれてる事はご褒美をあげないとね」
「なるほど…常に紫青様にはお見通しでヤキモチを妬いてくれてるって事ですね」
「そうだね、私が真名を縛ると自害も強要出来るが深雪の力が強いからそれは出来ないし、深雪を裏切ったり縛りを切ったりすると私の頸が落ちる、深雪が私を裏切ったり縛りを切ったら深雪の頸も落ちる。千年以上、生きてきたが深雪以外に寵愛を与えた事は無いしこれからも無い。だからもっと私を信用して欲しいし敬語も辞めて様も付けないで欲しい」
「…分かった…紫青」
「それと、私と居ると心も読めるからね」
「…気持ち悪い」
「そう言わないでくれ、私は本気だから」
「深雪が黒蛇や人魚を側に置く事は虫除けになるから許すし側室にする事は許すが子供を作る事は絶対に許さない。私以外に抱かられる事も許さない」
「紫青は独占力が強いね」
「そうだよ、やっと手に入れた深雪だからね。そろそろ限界みたいだから寝ようか、こっちにおいで」と床に畳が敷かれて入口に網戸みたいな布が釣るってある所に連れて行かれた。
「それだと寝づらいでしょう?」と十二単をシワとか気にせずに袴まで脱がされ小袖一枚にされ、龍神も同じ姿になり龍神の腕枕でぐっすり寝た。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...