顔がタイプじゃないからと、結婚を引き延ばされた本当の理由

翠月 瑠々奈

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 ファブラと話をした夜会から数日後、領地へと招く手紙が彼から届いた。ちょうどメルセスからも、しばらく会えないと連絡があったばかりだ。セシリアは準備していた旅行カバンを馬車に乗せ、家を出発した。

 道中、窓から景色を眺める。

 いつもメルセスに会いに行く道。けれど今日は別の人に会いに行く。こんなことが起きるなんて、婚約した当初は思いもしなかった。時期さえ待てば、すぐに結婚できると思っていたのだから。

 しばらく見慣れた道を走り、その後、知らない通りへ向かう。家を出たのが昼過ぎで、到着するのは日が暮れる頃。セシリアは背もたれに寄りかかり、目を瞑った。

「……」

 顔が好みじゃない、と言われて、このまま結婚して生活していくことは考えられない。かといって、破談になったときのことを考えると不安になる。そもそも何故、今のタイミングで明らかにしたのか。もうすぐ一年が経とうとしているのに。理解できないままセシリアは、再び開けた視界に景色を映した。


 *  *  *


「お待ちしておりました」

 セシリアを迎えた執事が言う。後ろに控えていた使用人たちが、荷物を預かり、馬車を誘導していく。かけられた言葉に「ええ、お願いね」と、彼女が返して執事に促されるまま、邸に向かった。

 途中で、ふと執事に声をかける。

「ところでブルーフィグ卿はいないのね」
「申し訳ありません。本日王都より戻る予定でして、そろそろ到着されるかとは思うのですが」
「そう」
「何か急ぎであれば早馬を出しますが」
「いえ、気にしないで。たいした用事ではないから大丈夫よ」

 軽く首を横に振る。セシリアの言葉に執事は「承知しました」と返し「到着し次第、お伝えしますね」と続けた。

 再び歩き出す二人だったが、背後で馬の嘶きが響く。振り返ると、もう一台馬車が到着していた。その扉が開くとファブラが下りてくるところだった。

 彼は王都に行っていたからか、黒の上下に灰色のベストと軽く羽織ったチェスターコートに身を包んでいる。ファブラはゆっくりと顔は上げて、セシリアを見るなり、片手を上げると軽く小走りで駆け寄ってくる。

 そばに来ると、ダークワインレッドの髪を揺らして頭をわずかに傾けた。

「出迎えが出来ずにすまなかった。到着までには戻るつもりだったんだが」
「気にしないで。私も今さっき着いたばかりだもの」

 言いながらセシリアがファブラを見上げる。彼はホッとしたように笑った。

「そうか、よかった。ではここからエスコートさせてもらっても?」
「ええ、もちろん」

 腕を差し出されて、セシリアが手を添える。「まずは夕食に招待しよう」と彼は告げた。

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