迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

翠月 瑠々奈

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家政婦…もとい、婚約者は見た!④

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 ウフフッ、と私を見ているようで見ていない少女が言う。

「へえ……そう。あんたみたいのが……ふーん……」
「さっきバキって聞こえたけど」
「あたしもねぇ、心配だったのよ」

 なんか雰囲気おかしいんですけど。言葉を遮られるけど負けじと声をかける。

「心配はあなたの方よ、怪我してるんじゃ」
「フェル様ったら、誰が来てもお決めくださらなくってね…一生お独りのつもりかしらって。でも」
「っい!?」

 急にガシッと片腕を掴まれる。顔を覗き込むようにグイッと寄せてきた。

「ようやく、その気になってくださったってことでしょう?」
「ちょっと……! 手離してっ!」
「気分にさせたのがあたしじゃないのは悔しいけど。最後に隣にいられればいいのよ」
「……なにを」

 彼女は耳元へ顔を寄せた。そして囁くように言う。

「あんたがいなくなればその席……空くわよね!!」

 直後、ガラスペンを持っていた方の手を振り上げる。

「ひっ」

 かすかに血が飛んだ。やっぱり怪我してるじゃない。でもそれで刺すのは違うよ!?慌てて空いてる腕でガードする。だけど、反対の腕が掴まれてるから逃げられない。

 思いっきりふり下ろされるのが見えて頭が真っ白になる。焦ってどうすることも出来ずギュッと目を瞑った。

 でも次の瞬間、耳に届いたのはグサッという事件開始の音ではなく、パチンッと肌が叩かれるような音だった。

「……」

 シンと静まり返って、恐る恐る目を開ける。

 そこには寸前のところで少女の手を掴む青年が立っていた。赤褐色の短い髪で穏やかそうな雰囲気。白いシャツに黒のベストとボトム。昨日紹介されたこのお屋敷の使用人A……じゃなくて。

「えっと……セルトンさ……セルトン!」

 彼はぐっと少女を押し返し下がらせる。その空いた隙間に体を滑らせ盾になるように私の前に立った。

「アゼリスお嬢様、この方に手を出されるのはお止めください」
「はあ? 使用人風情がシャシャリ出てくんじゃないわよ! あたしはローゼン子爵家なのよ! 早く手を離しなさい! 不敬でお父様を呼ぶわよ!」

 尚もギャンギャンわめいてる。耳を塞ぎたくなるような暴言まで並べ立てて、セルトンの体をバシバシと殴ってる。

 どうしよう、と困惑していたらセルトンの落ち着いた声が聞こえた。

「ルミ様命じてください。貴女は今、主人あるじの代理。貴女の言葉は侯爵家としての力を持ちます」
「セルトン……あの、じゃあ」

 唐突な話に困惑しつつも咄嗟にフェルが、ガルシアさんに言っていた言葉を思い出す。

「こちらの方にお引き取りを。そして今後一切、近づけないようにしてください」
「承知しました。ルミ様」

 言うや否や彼はお嬢さんを引き寄せ担ぎ上げる。俵持ちよ、細身なのにマッチョなのね。彼はそのままギャーギャー騒ぐ少女を階下へ連れていった。

 一連の状況に心臓がバクバクして落ち着かない。私はヘナヘナとその場に座り込んだ。
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