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びふぉー①
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セルトンの協力を得て真っ先に向かったのは裏口だった。
昨日メディが言っていた。裏口の鍵が壊れているのよ、と。正直朝になって忘れていたけど、おそらく先程のお嬢さんもきっとそこから来たはず。なら早々に解決するべき案件だ。
サクサク歩きながら確認をする。
「セルトン、お屋敷の見取り図とかあります?」
「あるにはありますが、主人が直接管理しているので早くても明日のご用意となります」
「そっか。なら、あとで私からお願いしておきますね。あと何か布の……端切れのようなものもあると助かるんだけど」
「それなら別棟にあったと思いますよ。俺、取ってきましょうか?」
「あ、ううん。後で一緒につれていってもらってもいい?」
離れかけたセルトンの服の端を咄嗟に掴んで引き留める。まだ一人になるのは怖かった。不思議そうにした彼もすぐ察してくれたのか「分かりました」と答える。
ロギアスタ邸は上から見ると、コの字型をしている。扉は正面を基点として、左右と後方に一ヶ所ずつ。正面扉を除いて計三ヶ所ある。その中で裏口と言われて思い当たるのは南側だそうだ。正面扉の反対側は直接庭に通じているため、街路から入るのは困難らしい。
「こちらになります」
そう案内された扉は水色で比較的小さめ。少し錆びが目立つ。試しにそこから外に出てみると垣根を挟んで街路が見えた。鍵は思った通りかかっていなかった。
開けた扉の鍵穴をセルトンがしゃがみこんで左右から眺める。ドアノブをガチャガチャしながら確認していく。
「ああ、また壊れてますね。ここだけ何度直してもすぐ壊れてしまうんですよ。次の月には商業隊が来る予定なんで、特殊な鍵にでもしようかって話してたんですけど」
「結構出入りする扉なんですか?」
「いえ、滅多に使わない出入口なんで封鎖してもいいんですけどね。ただ、外からの景観的にも内側の周辺にしても板を打ち付けるようなことは避けたくて……」
「なるほど」
振り返ると垣根を挟んでるわりに人の往来や馬車の姿がそれなりに見える。たしかに板で打ち付けたりなんかしたら変に噂されそうだ。
けど何度も壊れてるってことは、確実に狙われてるということ。
ピッキング技術でも持ったお嬢様がいるのかしら? 想像するとなんか嫌なんだけど……。
ま、どちらかといったら、技術者を急かすお嬢様の図の方がしっくりくるけど。
でも今はそんなことどうでもいい。とりあえずしばらくの間、この扉を開かないようにしたい。その商業隊がくるまでの間だけ。
なにが有効か、と考える。中途半端だったらまた壊されるだけだもの。さすがに扉自体を外されるなんてことはないと思うけど。
うーん、と悩んでいたら躊躇いがちにセルトンが聞いてくる。
「ここの修理はまた鍵屋に頼みますから大丈夫ですよ?」
「それだとまた……」
言いかけて思い出す。そういえば……アレがあった。会社のデスクからカバンに突っ込んで忘れてた物。でもそれは完全に扉を使い物にできなくしてしまう。使う前に許可は取らないと、と逆に聞いてみた。
「この扉なんだけど商業隊が来るときに取り替えることになってもいいかな?」
「古いものですからね。問題ないと思いますよ。どちらにせよ、特殊な鍵に合わせることになりそうですし」
「それならよかった」
「なにかされるんですか?」
「少しね。上手くいくといいんだけど」
早速とセルトンに言って自室に戻る。置いてあったカバンを探り小さなチューブを取り出す。
珍しい物でも見るかのようにセルトンが手元を覗き込んでくる。
「それは?」
「接着剤。前に会社の室内履きが壊れてさ、近くのコンビニで……」
他にはなかったかな、とカバンを漁りながら言いかけて言葉を止める。そういえば私、今は侯爵令嬢だったっけ。フェルと身分を合わせるために。
そんなご令嬢が会社の室内履きだの、コンビニだなんて言わないよね。
取り繕うように笑って「下に戻ろうか」と提案した。
昨日メディが言っていた。裏口の鍵が壊れているのよ、と。正直朝になって忘れていたけど、おそらく先程のお嬢さんもきっとそこから来たはず。なら早々に解決するべき案件だ。
サクサク歩きながら確認をする。
「セルトン、お屋敷の見取り図とかあります?」
「あるにはありますが、主人が直接管理しているので早くても明日のご用意となります」
「そっか。なら、あとで私からお願いしておきますね。あと何か布の……端切れのようなものもあると助かるんだけど」
「それなら別棟にあったと思いますよ。俺、取ってきましょうか?」
「あ、ううん。後で一緒につれていってもらってもいい?」
離れかけたセルトンの服の端を咄嗟に掴んで引き留める。まだ一人になるのは怖かった。不思議そうにした彼もすぐ察してくれたのか「分かりました」と答える。
ロギアスタ邸は上から見ると、コの字型をしている。扉は正面を基点として、左右と後方に一ヶ所ずつ。正面扉を除いて計三ヶ所ある。その中で裏口と言われて思い当たるのは南側だそうだ。正面扉の反対側は直接庭に通じているため、街路から入るのは困難らしい。
「こちらになります」
そう案内された扉は水色で比較的小さめ。少し錆びが目立つ。試しにそこから外に出てみると垣根を挟んで街路が見えた。鍵は思った通りかかっていなかった。
開けた扉の鍵穴をセルトンがしゃがみこんで左右から眺める。ドアノブをガチャガチャしながら確認していく。
「ああ、また壊れてますね。ここだけ何度直してもすぐ壊れてしまうんですよ。次の月には商業隊が来る予定なんで、特殊な鍵にでもしようかって話してたんですけど」
「結構出入りする扉なんですか?」
「いえ、滅多に使わない出入口なんで封鎖してもいいんですけどね。ただ、外からの景観的にも内側の周辺にしても板を打ち付けるようなことは避けたくて……」
「なるほど」
振り返ると垣根を挟んでるわりに人の往来や馬車の姿がそれなりに見える。たしかに板で打ち付けたりなんかしたら変に噂されそうだ。
けど何度も壊れてるってことは、確実に狙われてるということ。
ピッキング技術でも持ったお嬢様がいるのかしら? 想像するとなんか嫌なんだけど……。
ま、どちらかといったら、技術者を急かすお嬢様の図の方がしっくりくるけど。
でも今はそんなことどうでもいい。とりあえずしばらくの間、この扉を開かないようにしたい。その商業隊がくるまでの間だけ。
なにが有効か、と考える。中途半端だったらまた壊されるだけだもの。さすがに扉自体を外されるなんてことはないと思うけど。
うーん、と悩んでいたら躊躇いがちにセルトンが聞いてくる。
「ここの修理はまた鍵屋に頼みますから大丈夫ですよ?」
「それだとまた……」
言いかけて思い出す。そういえば……アレがあった。会社のデスクからカバンに突っ込んで忘れてた物。でもそれは完全に扉を使い物にできなくしてしまう。使う前に許可は取らないと、と逆に聞いてみた。
「この扉なんだけど商業隊が来るときに取り替えることになってもいいかな?」
「古いものですからね。問題ないと思いますよ。どちらにせよ、特殊な鍵に合わせることになりそうですし」
「それならよかった」
「なにかされるんですか?」
「少しね。上手くいくといいんだけど」
早速とセルトンに言って自室に戻る。置いてあったカバンを探り小さなチューブを取り出す。
珍しい物でも見るかのようにセルトンが手元を覗き込んでくる。
「それは?」
「接着剤。前に会社の室内履きが壊れてさ、近くのコンビニで……」
他にはなかったかな、とカバンを漁りながら言いかけて言葉を止める。そういえば私、今は侯爵令嬢だったっけ。フェルと身分を合わせるために。
そんなご令嬢が会社の室内履きだの、コンビニだなんて言わないよね。
取り繕うように笑って「下に戻ろうか」と提案した。
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