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この先の予感③
しおりを挟む空を仰ぐと雲にうっすら茜色が滲み始めている。
アンバル様とノア様に別れを告げた私達は、帰路につくため馬車の停まる出入り口に集合していた。
メディが周りを見つつ近づいてくる。
「ルー、フェルクス様は?」
「何かを取りに戻ったけど……」
直前まで傍にいた彼は、少し待っていて欲しいと残して鍛練場に戻っていった。
セルトンはすでに馬車の用意していて、もう乗るだけとなっている。それぞれが手持ち無沙汰になる頃ようやく、微かな音が耳を掠めた。
規則的な蹄の音。聞こえた方をたどれば、茶色の毛並みをした馬が見える。それに乗るフェルがいた。
彼も一緒に帰るのだろうか。
疑問もそこそこに、その馬が速度を落として近づいてくる。私も合わせて彼の元へと駆け寄った。
「フェル、一緒に戻りますか? 私たち馬車ですけど…どうします?」
ひとりだけ後から付いてくることになるのかしら、と馬をチラ見しながら言う。ここまで近づいても大人しいのはずいぶん賢い子なのね。
フェルは「そうだね」と応えたあと、セルトンを呼んだ。反応してすぐさま傍にくる。
「お呼びでしょうか、旦那様」
「ルミは私が連れて帰る。手を貸してくれないか」
「かしこまりました」
「え、どういう……っ!?」
最後まで言う間もなくセルトンが「失礼します」と、私の体を横抱きに抱え上げた。
そのままフェルの前に横座りに乗せられる。
「え、え!?」
急に不安定な状態にされて、でも咄嗟にたてがみにしがみついたら驚いて暴れるかもしれない、と頭を掠める。苦肉の策でフェルのベストにしがみついた。
ギューッと服を握りしめてたらフェルがその手を丁寧に解し、自分の腰に回した。その終わりに耳元で囁く声がした。
「しっかり掴まってて」
「ま、待って! 私──」
言葉を遮るように、わずかな嘶きが響く。それと共に前足を上げたかと思うと走り出した。
「!」
急な動きについていけない。乗馬なんてしたことないし、意外と速度がある。驚きと恐怖にぎゅっと目を瞑った。
かすめる風の音にセルトンの「邸でお待ちしてます」と、メディの「またね!」という声が交じって聞こえた気がした。
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