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水月の典 前半①
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街の中が、水色や白色の薄い布で彩られている。花を模した飾りや家々を繋ぐリボン。普段、西洋風そのものといった感じの茶や黒い建物が、少しばかり華やかになっていた。
さすがは水の精霊様へのお祭りだ。
周囲へ視線を流していたら、隣を歩くフェルが顔を寄せてくる。
「夜にはランプも灯すんだよ」
そう言って促された先に各家の入り口がある。そこには、いずれも鳥の形をした大きなガラス製の置物があった。
「ランプなんですか?」
「そうだよ。後ろから火を入れられるようになっている。だから夜になると一層綺麗になるんだ」
「そうなんですね」
なんだか少し、ハロウィンみたいだなと思う。カボチャじゃないけど。
ふいに冷たい風が頬を掠める。その風に、桃色の花びらが舞っていくのを視界に捉えて足を止めた。飛んできた方向を見たら、ちょうど芸術団の方が踊りを披露しているところだった。
軽やかな音楽に乗せて、また花びらを振り撒く。ひとときの夢のようなその光景に目を奪われた。するとフェルが手を握り首を傾げる。
「見に行くかい?」
私は首を振って、肩にかけているショールの端をぎゅっとして足を踏み出す。
歩き始めると、フェルも同じように足を進める。
「この後はどこに行こうか? 街の中心……噴水広場の辺りにでも行ってみようか。いろんな店が出てるはずだから」
「でも、調査の方はもういいんですか?」
先日、アンバル様からエリック家の事件の顛末をきいたあと、別途指示を受けた各所の調査依頼。だけど、いざ水月の典に出掛ける日になったらフェルが調査を終わらせてしまっていたのだ。
これではただ、お祭りを楽しんでるだけになってしまうと彼を見上げたけど……大して問題視してない様子で微笑まれた。
「心配しなくていいよ。ろくな情報も出てこなかったしね。それより、どこに行きたい?」
そう言われてしまっては、断ることなど出来なくて、直前に出された答えを選んだ。
「えっと……じゃあ、噴水広場へ」
「了解」
繋がる右手に力が籠る。今じゃこういうのも、ずいぶんと自然になった。私も婚約者としてそれらしくなれたのかな、なんて自惚れてしまう。
道中、互いに交わす話は、お屋敷の皆やアンバル様、メディのこと。共通の話題が増えていることに嬉しくて、それだけの時を重ねたことが確かな絆になっているのを感じた。
「フェル」
「うん?」
「ありがとう」
「それは……今日に対してかな? それとも」
「ふふっ。ご想像にお任せします」
そう言えば、彼は柔らかく笑う。応えるように笑い返して人込みを進んだ。
さすがは水の精霊様へのお祭りだ。
周囲へ視線を流していたら、隣を歩くフェルが顔を寄せてくる。
「夜にはランプも灯すんだよ」
そう言って促された先に各家の入り口がある。そこには、いずれも鳥の形をした大きなガラス製の置物があった。
「ランプなんですか?」
「そうだよ。後ろから火を入れられるようになっている。だから夜になると一層綺麗になるんだ」
「そうなんですね」
なんだか少し、ハロウィンみたいだなと思う。カボチャじゃないけど。
ふいに冷たい風が頬を掠める。その風に、桃色の花びらが舞っていくのを視界に捉えて足を止めた。飛んできた方向を見たら、ちょうど芸術団の方が踊りを披露しているところだった。
軽やかな音楽に乗せて、また花びらを振り撒く。ひとときの夢のようなその光景に目を奪われた。するとフェルが手を握り首を傾げる。
「見に行くかい?」
私は首を振って、肩にかけているショールの端をぎゅっとして足を踏み出す。
歩き始めると、フェルも同じように足を進める。
「この後はどこに行こうか? 街の中心……噴水広場の辺りにでも行ってみようか。いろんな店が出てるはずだから」
「でも、調査の方はもういいんですか?」
先日、アンバル様からエリック家の事件の顛末をきいたあと、別途指示を受けた各所の調査依頼。だけど、いざ水月の典に出掛ける日になったらフェルが調査を終わらせてしまっていたのだ。
これではただ、お祭りを楽しんでるだけになってしまうと彼を見上げたけど……大して問題視してない様子で微笑まれた。
「心配しなくていいよ。ろくな情報も出てこなかったしね。それより、どこに行きたい?」
そう言われてしまっては、断ることなど出来なくて、直前に出された答えを選んだ。
「えっと……じゃあ、噴水広場へ」
「了解」
繋がる右手に力が籠る。今じゃこういうのも、ずいぶんと自然になった。私も婚約者としてそれらしくなれたのかな、なんて自惚れてしまう。
道中、互いに交わす話は、お屋敷の皆やアンバル様、メディのこと。共通の話題が増えていることに嬉しくて、それだけの時を重ねたことが確かな絆になっているのを感じた。
「フェル」
「うん?」
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「ふふっ。ご想像にお任せします」
そう言えば、彼は柔らかく笑う。応えるように笑い返して人込みを進んだ。
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