悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――

唯野晶

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テンペトゥス・ノクテム

【15歳の頃の私_2】

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夢。夢を見ている。15歳の時の私の夢の続き。

半信半疑で購入して帰り母に見せたところ、このゲームであっていたようだった。

「―――懐かしいわねー。私がやってた時は【運命の星の下で】だったかしら?初代が何もついてなくて【絆を紡ぐ魔法の物語】とか【星々が奏でる魔法の恋物語】とかもあったのよねー」

「―――いろいろあったのよー。初代はバグも多かったみたいで、あ、あとあとデバッグモードに入る裏ワザとかもあったみたいなのよ。あ、私のやってた時代のものは当然そんなものなかったけどね」

「―――あ、そうそう。このゲームやりこみ要素も多くってね。モンスターを1000回倒したらー……とか恋愛シミュレーションなのに男の子がやるみたいなRPGゲームみたいなこともあってー。あー、懐かしいわね。今日はこのゲームで遊ぼうかしら」

久しぶりにこんなに母と話した気がする。
思えばソニックオプティカの使い方を教えてもらって以来かもしれない。

これまでクォンタムアカデミーに向けての受験で忙しかったということもあったけど、受験勉強をする前から母と話すよりもソフィアと話していることのほうが多い。話していても母よりもソフィアのほうがいろいろ知っているし会話も心地よかった。


きっと母も自分のソニックオプティカと話していたほうが私よりも楽しいんだと思う。「このゲームで遊ぼうかしら」というのも、一緒に私が買ってきたこのゲームで楽しむという意味ではない。ソニックオプティカの世界に再現して、その世界の中で自分がヒロインになって遊ぶという意味だ。

当然私は母のおなかからは生まれていない。

「ねぇソフィア?ソフィアでこのゲーム遊べる?」
「はい、セレスティアル・ラブ・クロニクルですね?もちろん大丈夫ですよ。データの内容を確認するので少々お待ちください」
「あ、違う違う。世界を楽しみたいんじゃなくってゲームを楽しみたいの。画面に出して私が操作できればいいの」
「はい、承知しました」

ソフィアは視界に広がる黒い世界に小さな四角い画面を表示してくれた。

「アリシア……の歌懐かしいわねー……」

小さなころ友達の家でやっていたころに何度もこのゲームスタートの画面を見たか知れない。私はずっと友達が遊んでいるところを見ているだけだったけど、自分の知らない世界でかっこいい男の子たちと遊ぶのはとても楽しかったのを覚えている。

『では俺様の事を入学式会場へ連れていくと良い』

モニターの先でイグニスというキャラクターが話している。ゲームの中のキャラクターはあくまでキャラクターのはずなのに、今の私よりも何倍も輝いて見えた。

ソフィアに頼めば私としてこの世界でイグニスと楽しく会話をすることもできるんだろう。
でも、いまはモニター越しの、アリシア越しのこの距離感がとても心地よかった。

『私は…!身分が違うけれど…!イグニスと一緒に居たい!!ずっと!!ずっと!!!!』
『身分…?くっだらねぇ!!運命…?そんなの関係ねぇ!!そんなのが俺たちの前にあったとしても俺様が全部切り開いてやるぜ!』
『うんっ……!!私もっ……!イグニスが好き!!!』

画面の向こうの二人は幸せそうに抱き合っている。
これがゲームのシナリオであることなんて分かっている。それに創られたキャラクターだということも理解している。でもなんだかこんな風に感情を表現できるのがやっぱり羨ましかった。羨ましいと思えた。

いつか、私にも好きな人ができて、こんな風に告白したりして、そうしたらこのアリシアみたいに思いっきり笑えるのだろうか。
もう少しだけこの希望に縋ってみたいと、本当にそう思っていた。


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