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物語の終わり、創造の始まり
守りたい世界
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「三賢者、この世界の理を知った人間。奴らはこの世界を何回もループし、どんどんと強力になっていった。俺ができるのは三賢者の親しいものを殺して精神的に疲弊させることしかできなかった」
ノーランはマルドゥク・リヴェラムの周りを歩きながらそんな独白を続けた。それでも賢しいのか、決してマルドゥク・リヴェラムの結界から外には出なかった。
「ミーナは本来俺が持っているべきスキルの未来予知を持っていた。このゲームのストーリーテラーは俺であるべきなのに」
「……何を言っているの?降参の準備?」
しかし私の問いかけには応じず、そのまま独白は続いた。
「三賢者のせいで本来存在しない基本3属性魔法以外を使い始めるやつも現れた」
ノーランが私を見て、乾いた笑いを漏らした。
「セシルが使ってるオリジナル魔法も本来はアリシアだけのものだ」
ゼフィルレヴィテートを展開しているセシルをにらみつける。
「そして、理外の魔法を使うものも現れ始めた。この世界そのものに作用し物体の形を変えてしまう魔法なんて存在しねぇんだよ」
ノーランはストーンバリアをコンコンとたたき、それからガレンをにらみつけた。
「だから俺は排除していった。テンペストゥス・ノクテムを利用しナディアを、アリシアを利用しミーナとアルドリックを。そしてこれが成功すればすべてこの世界に生まれた異物は取り除けたはずだったんだ」
そしてノーランはテンペストゥス・ノクテムの横で立ち止まり、一つため息をついた。
「それで?だから私たちにどうしろってのよ」
「俺も本当はそんな事したくないんだよ。誰が好き好んで一緒に遊んだ仲間を、俺が守るべきこの愛にあふれた世界を争いで汚さないといけないんだ」
ノーランは目をつむり、胸に手を当て、天を仰いだ。
「でも、俺はゲームマスターとしてこの世界を混乱に陥れる人物を排除した。俺は自分の存在に逆らえなかった」
そしてノーランは目をゆっくりと開いた。頬には涙が伝っていた。
「俺はもう疲れたんだ」
ノーランは私たちに、いや、きっと自分自身に向かってそうつぶやいたのだろう。そして、そのままゆっくりとマルドゥク・リヴェラムの結界から外に――――
――――キュボッ!!
音が聞こえた。その音と共にノーランの上、マルドゥク・リヴェラムから魔力の塊が実紗希に向けて発射された。
「あ……」
油断したわけではない。体を包んでいる防御魔法も緩めていない。会話中も新たにもう一つ魔法陣を仕込むことに成功している。
しかし、それでもノーランに意識を向けすぎていた。
「実紗希!」
私が振り返って叫ぶよりも早く、魔力の塊が実紗希に命中し、巨大な砂煙が舞い上がっていた。
「あはは、だから言ったろ?俺は疲れたんだって。だからおとなしく死んでくれ」
ノーランが笑いながら砂煙に向かって声を上げる。
「実紗希!!」
慌てて砂煙に駆け寄る。
「……大丈夫だよ、レヴィアナ。……いや柚季だっけ?」
煙が晴れると実紗希の前にセシルが立っていた。しかし身を挺してマルドゥク・リヴェラムの攻撃を防いだ体は傷だらけで、特に左の肩からは止めどなく血が流れていた。
「セシル!!」
「はは、よかった、ちゃんと守れたみたいだね」
そう言って実紗希の頭をなでた。しかし、その顔は苦痛にゆがんでいた。
「セシル、セシル……!」
実紗希がセシルに抱き着き、セシルの名前を何度も呼ぶ。
「実紗希……」
セシルは苦痛にゆがんだ顔を無理やり笑顔に変えた。
「僕なら大丈夫だから。だから、そんな顔しないで」
「でも、血が……」
セシルに抱き着きながら実紗希は涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「すまん!油断した!」
ガレンもセシルに駆け寄る。
「ガレン、いいさ、僕が守りたかったんだから。実紗希を守るのは僕の……役目だ」
実紗希は必死に回復魔法をかけていた。しかし傷が深すぎてなかなかふさがらないようだった。
「さてと、これで一人脱落か。どうせ卒業式を終えたら終わる世界なんだし、大してかわんねーけどな」
ノーランは満身創痍のセシルを見ながらにやりと笑った。
セシルの姿がイグニスに重なる。自分の心に沸いてくるのは怒りよりも、冷めた感情だった。
「水の輝きを纏いし結晶、我が手に集結せよ!滴る煌めき、アクアプリズム!」
後方から水魔法が飛んできてノーランとマルドゥク・リヴェラムを飲み込んだ。
「大丈夫か!」
戦いを終えたマリウスとナタリーも合流してきた。2人のその姿から戦闘の激しさは容易に想像できた。
「……ゼニス・アーケインは失敗したのか……。まぁいい、所詮理に縛られた存在か」
「セシルさん!」
ナタリーがセシルに駆け寄り、自分の服を傷口に縛り付ける。
「あ……ありがとう」
「いえ、これくらいのことしかできなくて……。アリシアさんは平気ですか?」
「俺は平気……。でもいいの?俺、マリウスの事……」
「全部終わったら、全部終わったら話しましょう」
「ありがとう、ごめんね」
ナタリーは首を横に振り、それからノーランとマルドゥク・リヴェラムを睨んだ。
「……セシル、ごめん。少し休んでて」
実紗希が立ち上がり、大きく息を吸い込んだ。
「火の精霊たちよ、共に舞い踊り、我が創造の力となれ。炎の息吹をもって、この鍛冶に宿り、武器と防具に力を与えよ―――――!」
ブレイズワークスの声とともに実紗希の全身が炎に包まれ、そしてその中から炎で形どられた一振りの刀が姿を現した。
「俺の仲間に、俺の親友にこれ以上傷つけさせやしない。この世界のヒロインは俺だ」
「実紗希……」
初めて見せる顔。
表情だけでなく、口調も、雰囲気も、そして身にまとう炎のようなオーラも何もかもが別人に見えた。
「この世界は俺が守る」
そのままマルドゥク・リヴェラムに刀を構えて突進した。
「ふざけやがって……!!」
ノーランはマルドゥク・リヴェラムの両手に魔力を込めると、巨大な魔法陣が現れ、そこから高濃度の火魔法が発射された。
しかし実紗希はそれをものともせず、その火炎の奔流の中を突っ切っていった。
「うおおおおおおおっ!」
そしてそのまま刀を振り下ろす。しかしそれは魔力障壁に阻まれる。
「馬鹿が!この障壁を突破できるわけがねぇだろうが!!」
「この世界の中心のヒロインを、なめんなよ」
実紗希は刀を横に振る。そしてその次の瞬間、魔力障壁はガラスが割れるような音と共に粉々に砕け散った。
「なぁ……!?」
マルドゥク・リヴェラムの体は2つに分かれた。そしてそのまま地響きを立て地面に倒れ伏した。
「はぁ……はぁ……」
アリシアは距離を取り、私たちのところに戻ってくる。
実紗希は炎の刀を地面に突き刺してもたれかかり、息を切らせている。
「ふっ……はははは、はっはは!」
ノーランが笑い始める。狂ったようなその声に、思わず背筋が震えた。
「やるじゃねぇか!そうだよな、ヒロインだもんな!最後の最後で覚醒するのがお約束だよな!!」
ノーランが笑う。その笑い声に、嫌悪感しか感じなかった。
「だから、俺も用意させてもらった」
ノーランが手を空に掲げると、そこに魔法陣が展開され、一本の杖が姿を現した。
「それは……ディヴィニティ・エンブレイス……!どうしてお前が!」
「随分と遠くに飛ばされてて探すのに苦労したぜ。さすがはアルドリックだ。だが――――」
ディヴィニティ・エンブレイスと呼ばれた杖の光がマルドゥク・リヴェラムを包み込み、上半身と下半身がそれぞれ動き出し、そして再び立ち上がった。
そして、そのまま今までの4mほどの姿からより巨大に、そしてより禍々しく姿を変えた。
ふわりとノーランが同じようにマルドゥク・リヴェラムの肩に乗り、杖を構えた。
「ディヴィニティ・エンブレイス」
ノーランが道具そのものを名を呼んだ。
その声とともにマルドゥク・リヴェラムの頭上に光球が生み出され放たれた。
光線は私たちから外れ、はるか後方のディスペアリアム・オベリスクを直撃した。
その瞬間、ディスペアリアム・オベリスクは根元から折れ、大爆発を起こした。
「さすがは【創造主の杖】。理外のマルドゥク・リヴェラムの補助があっても、制御しきれないな」
ノーランがにやりと笑う。
「さぁ、第二ラウンドだ!」
ノーランはマルドゥク・リヴェラムの周りを歩きながらそんな独白を続けた。それでも賢しいのか、決してマルドゥク・リヴェラムの結界から外には出なかった。
「ミーナは本来俺が持っているべきスキルの未来予知を持っていた。このゲームのストーリーテラーは俺であるべきなのに」
「……何を言っているの?降参の準備?」
しかし私の問いかけには応じず、そのまま独白は続いた。
「三賢者のせいで本来存在しない基本3属性魔法以外を使い始めるやつも現れた」
ノーランが私を見て、乾いた笑いを漏らした。
「セシルが使ってるオリジナル魔法も本来はアリシアだけのものだ」
ゼフィルレヴィテートを展開しているセシルをにらみつける。
「そして、理外の魔法を使うものも現れ始めた。この世界そのものに作用し物体の形を変えてしまう魔法なんて存在しねぇんだよ」
ノーランはストーンバリアをコンコンとたたき、それからガレンをにらみつけた。
「だから俺は排除していった。テンペストゥス・ノクテムを利用しナディアを、アリシアを利用しミーナとアルドリックを。そしてこれが成功すればすべてこの世界に生まれた異物は取り除けたはずだったんだ」
そしてノーランはテンペストゥス・ノクテムの横で立ち止まり、一つため息をついた。
「それで?だから私たちにどうしろってのよ」
「俺も本当はそんな事したくないんだよ。誰が好き好んで一緒に遊んだ仲間を、俺が守るべきこの愛にあふれた世界を争いで汚さないといけないんだ」
ノーランは目をつむり、胸に手を当て、天を仰いだ。
「でも、俺はゲームマスターとしてこの世界を混乱に陥れる人物を排除した。俺は自分の存在に逆らえなかった」
そしてノーランは目をゆっくりと開いた。頬には涙が伝っていた。
「俺はもう疲れたんだ」
ノーランは私たちに、いや、きっと自分自身に向かってそうつぶやいたのだろう。そして、そのままゆっくりとマルドゥク・リヴェラムの結界から外に――――
――――キュボッ!!
音が聞こえた。その音と共にノーランの上、マルドゥク・リヴェラムから魔力の塊が実紗希に向けて発射された。
「あ……」
油断したわけではない。体を包んでいる防御魔法も緩めていない。会話中も新たにもう一つ魔法陣を仕込むことに成功している。
しかし、それでもノーランに意識を向けすぎていた。
「実紗希!」
私が振り返って叫ぶよりも早く、魔力の塊が実紗希に命中し、巨大な砂煙が舞い上がっていた。
「あはは、だから言ったろ?俺は疲れたんだって。だからおとなしく死んでくれ」
ノーランが笑いながら砂煙に向かって声を上げる。
「実紗希!!」
慌てて砂煙に駆け寄る。
「……大丈夫だよ、レヴィアナ。……いや柚季だっけ?」
煙が晴れると実紗希の前にセシルが立っていた。しかし身を挺してマルドゥク・リヴェラムの攻撃を防いだ体は傷だらけで、特に左の肩からは止めどなく血が流れていた。
「セシル!!」
「はは、よかった、ちゃんと守れたみたいだね」
そう言って実紗希の頭をなでた。しかし、その顔は苦痛にゆがんでいた。
「セシル、セシル……!」
実紗希がセシルに抱き着き、セシルの名前を何度も呼ぶ。
「実紗希……」
セシルは苦痛にゆがんだ顔を無理やり笑顔に変えた。
「僕なら大丈夫だから。だから、そんな顔しないで」
「でも、血が……」
セシルに抱き着きながら実紗希は涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「すまん!油断した!」
ガレンもセシルに駆け寄る。
「ガレン、いいさ、僕が守りたかったんだから。実紗希を守るのは僕の……役目だ」
実紗希は必死に回復魔法をかけていた。しかし傷が深すぎてなかなかふさがらないようだった。
「さてと、これで一人脱落か。どうせ卒業式を終えたら終わる世界なんだし、大してかわんねーけどな」
ノーランは満身創痍のセシルを見ながらにやりと笑った。
セシルの姿がイグニスに重なる。自分の心に沸いてくるのは怒りよりも、冷めた感情だった。
「水の輝きを纏いし結晶、我が手に集結せよ!滴る煌めき、アクアプリズム!」
後方から水魔法が飛んできてノーランとマルドゥク・リヴェラムを飲み込んだ。
「大丈夫か!」
戦いを終えたマリウスとナタリーも合流してきた。2人のその姿から戦闘の激しさは容易に想像できた。
「……ゼニス・アーケインは失敗したのか……。まぁいい、所詮理に縛られた存在か」
「セシルさん!」
ナタリーがセシルに駆け寄り、自分の服を傷口に縛り付ける。
「あ……ありがとう」
「いえ、これくらいのことしかできなくて……。アリシアさんは平気ですか?」
「俺は平気……。でもいいの?俺、マリウスの事……」
「全部終わったら、全部終わったら話しましょう」
「ありがとう、ごめんね」
ナタリーは首を横に振り、それからノーランとマルドゥク・リヴェラムを睨んだ。
「……セシル、ごめん。少し休んでて」
実紗希が立ち上がり、大きく息を吸い込んだ。
「火の精霊たちよ、共に舞い踊り、我が創造の力となれ。炎の息吹をもって、この鍛冶に宿り、武器と防具に力を与えよ―――――!」
ブレイズワークスの声とともに実紗希の全身が炎に包まれ、そしてその中から炎で形どられた一振りの刀が姿を現した。
「俺の仲間に、俺の親友にこれ以上傷つけさせやしない。この世界のヒロインは俺だ」
「実紗希……」
初めて見せる顔。
表情だけでなく、口調も、雰囲気も、そして身にまとう炎のようなオーラも何もかもが別人に見えた。
「この世界は俺が守る」
そのままマルドゥク・リヴェラムに刀を構えて突進した。
「ふざけやがって……!!」
ノーランはマルドゥク・リヴェラムの両手に魔力を込めると、巨大な魔法陣が現れ、そこから高濃度の火魔法が発射された。
しかし実紗希はそれをものともせず、その火炎の奔流の中を突っ切っていった。
「うおおおおおおおっ!」
そしてそのまま刀を振り下ろす。しかしそれは魔力障壁に阻まれる。
「馬鹿が!この障壁を突破できるわけがねぇだろうが!!」
「この世界の中心のヒロインを、なめんなよ」
実紗希は刀を横に振る。そしてその次の瞬間、魔力障壁はガラスが割れるような音と共に粉々に砕け散った。
「なぁ……!?」
マルドゥク・リヴェラムの体は2つに分かれた。そしてそのまま地響きを立て地面に倒れ伏した。
「はぁ……はぁ……」
アリシアは距離を取り、私たちのところに戻ってくる。
実紗希は炎の刀を地面に突き刺してもたれかかり、息を切らせている。
「ふっ……はははは、はっはは!」
ノーランが笑い始める。狂ったようなその声に、思わず背筋が震えた。
「やるじゃねぇか!そうだよな、ヒロインだもんな!最後の最後で覚醒するのがお約束だよな!!」
ノーランが笑う。その笑い声に、嫌悪感しか感じなかった。
「だから、俺も用意させてもらった」
ノーランが手を空に掲げると、そこに魔法陣が展開され、一本の杖が姿を現した。
「それは……ディヴィニティ・エンブレイス……!どうしてお前が!」
「随分と遠くに飛ばされてて探すのに苦労したぜ。さすがはアルドリックだ。だが――――」
ディヴィニティ・エンブレイスと呼ばれた杖の光がマルドゥク・リヴェラムを包み込み、上半身と下半身がそれぞれ動き出し、そして再び立ち上がった。
そして、そのまま今までの4mほどの姿からより巨大に、そしてより禍々しく姿を変えた。
ふわりとノーランが同じようにマルドゥク・リヴェラムの肩に乗り、杖を構えた。
「ディヴィニティ・エンブレイス」
ノーランが道具そのものを名を呼んだ。
その声とともにマルドゥク・リヴェラムの頭上に光球が生み出され放たれた。
光線は私たちから外れ、はるか後方のディスペアリアム・オベリスクを直撃した。
その瞬間、ディスペアリアム・オベリスクは根元から折れ、大爆発を起こした。
「さすがは【創造主の杖】。理外のマルドゥク・リヴェラムの補助があっても、制御しきれないな」
ノーランがにやりと笑う。
「さぁ、第二ラウンドだ!」
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