悲劇の令嬢は、巻き戻って悪役令嬢へと変化する

仲村 嘉高

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第43話:フローラ視点 ※胸クソ注意




 私はヤコブと結婚したのよ!

 何?何言ってるの?
 黙んなさいよ!

 何よ、私生児って!
 私は正妃よ!
 将来の王妃で国母よ!!

 卒業が最低条件?
 出産したら結婚できない?
 何よそれ!聞いてないわよ!?

 王宮から出て行けと言われ、パーティー会場から連れ出された。
 連れて行かれたのは小さな家だった。


 ただでさえ狭い家なのに、一部屋は私のドレスで埋まっていた。
 しかも剥き出しで棒に洗濯物のように吊るしてある。
「何よこれ!ちゃんとクローゼットに入れなさいよ!」
 ドレスを運び込んでいたメイドに命令する。
「クローゼットに入れた残りがコレですが、入れ替えますか?」
 この家にはまともなクローゼットも無いの!?

 私の声に驚いたのか、子供が泣き出した。
 うるさいわね。
「ちょっとそこのあなた、この子の世話をしなさい」
 ドレスを並べているメイドに命令したのに、その女は私を見て腕の中の子供を見て、顔を背けた。

「無視してんじゃ無いわよ!」
 怒鳴りつけたら、溜め息をつかれた。
「私は乳母ではないですし、そもそもたかが子爵家の、しかも令嬢に命令されるいわれはございません」
「私は国母になるのよ!アンタなんかクビにしてやる!」
 メイドの目が大きく見開かれた。
 フン!今更謝ってきても許さないんだから。

「低脳だとは思ってたけど、まさか妾の生んだ子供が国王になれると本気で思っているとは」
「思っていなかったら、在学中に妊娠なんかしないわよ」
 クスクスと笑うメイド達は、明らかに私を見下していた。

「どうします?今ならドレスを脱ぐの手伝いますよ?」
 馬鹿にしたように言われて、「いらないわよ!」と怒鳴り返した。


 その後、何時になっても誰も来なくて、私はドレスのまま寝ることになった。
 ミルクの時間になっても、ドレスが脱げないから母乳をあげられなかった。
 台所には母乳が出ない時のための偽乳が置かれていたので、それを与えた。

 ドレスの中が母乳で濡れている。
 気持ち悪い。
 寝室には子供用のベッドも置いてあったから、そこに子供を寝かせた。
 それなのに、子供はすぐに起きては泣く。

 排泄をして、泣く。
 お腹が空いて、泣く。
 意味もなく、泣く。

 今まではほとんど乳母が世話していた。
 私は母乳をあげれば良いだけだった。
 それも私が寝ている時は、乳母が偽乳を勝手にあげていた。

 もう、眠いから、泣いてもほうっておいた。


「何やってるんですか!」
 メイドに叩き起こされた。
 揶揄ではなく、本当に頬を叩かれたのよ。
 何?何なの?

 子供のベッドが排泄物で汚れている。
 けど、原因の子供はいない。

「朝食を届けに来たら、ベッドで赤子は汚物まみれで痙攣まで起こしていたんですよ!」
 知らないわよ、私は寝てたんだから。

「じゃあベッドは掃除しておいてよね。あ、アンタはクビよ」
 いきなり頬を叩かれた。
 しかも往復でよ!?
「何すんのよ!」
 叩いた女を睨みつける。

「私達は王宮メイドです。妾の貴女に仕えているわけではありません。ましてや子爵家よりも立場は上です」
 冷ややかに、また、言われた。
「誰か世話をする人間が欲しいなら、王太子にお願いすると良いでしょう」
 それだけを言うと、メイドは出て行こうとする。
「待って!ドレスを脱がせなさい!」
 声を掛けると、振り返ったメイドは無表情で私に言った。

「昨日、他のメイドが手伝うと言いましたら、いらないと断られたと聞いております。ご自分でお脱ぎください」


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