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14話
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ミシェルはレナードとの日々を過ごす中で、彼の意外な一面を少しずつ理解していった。表向きは冷徹で計算高い王子として振る舞う彼だが、実際には人間的な感情に厚い部分があることが分かってきた。それは彼が周囲の人々に対する配慮や、些細な気遣いから垣間見えるものだった。
「ニコルの婚約について考えた」
ある日、レナードが突然切り出した。ミシェルは驚きつつも静かに耳を傾ける。
「近衛騎士と婚約させるのがいいだろう。問題を起こさないよう、目の届くところで監視しておくほうが賢明だ」
「……そうね。確かにその方が安心だわ」
ミシェルは小さく頷いた。ニコルの行動は予測不能であり、放っておくのは危険だと感じていた。しかし、妹のために何か手を打とうとするレナードの姿勢に、彼女は少し驚いた。
「すでに候補も見つけている。近衛騎士の中でも特に問題のある男だ。ニコルとは釣り合いが取れるだろう」
「問題のある男?」
「ああ。酒癖が悪く、金銭感覚も怪しい。しかし、剣の腕は確かで忠誠心もある。そんな男ならニコルを完全に甘やかすこともないだろう。逆に普通の令嬢では幸せになれるとは思えない。だがニコルならどうだ? 選べる選択肢の中では悪くないものだと思うが」
レナードの言葉には冷徹な合理性がありながらも、ニコルやミシェルへの配慮が感じられた。ミシェルは思わず苦笑する。
「情け深いのね、あなたは」
「違う。これは実利だ。ニコルが問題を起こせば我々に迷惑がかかる。それを防ぐための最善策だ」
「そうよね……でも、どこか情が入っているようにも感じるわ」
「情?」
レナードは一瞬不思議そうな表情を見せたが、すぐに小さく笑みを浮かべる。
「君の言う通りかもしれない。だが、情だけでは何も解決しない。私は常に結果を重視する」
「本当にそうなのかしら?」
ミシェルは軽く首を傾げながら微笑んだ。レナードの言葉はいつも冷静で合理的だが、その奥にある小さな温もりに彼女は気づいていた。
「君は鋭いな。だが、それでいい。君のような女性だからこそ、私には必要なのだ」
レナードの言葉にはどこか優しさが含まれている。ミシェルはその言葉に胸が温かくなるのを感じた。
「ありがとう、レナード。あなたのそういうところが愛おしく思えるのよ」
「愛おしいか。ふむ、君の言葉は時に奇妙だな」
彼は少し照れくさそうに視線を逸らす。しかし、その表情には満足感が漂っていた。
「それにしても、ニコルのことまで考えるなんて、本当に優しいのね」
「優しさではない。ただ効率的だと言っているだけだ」
「そうね、分かったわ。でも、その効率の中に少しの優しさを見つけてもいいかしら?」
ミシェルは冗談めかして言った。レナードは小さく息を吐き、それ以上は否定しなかった。
「まあ、好きに解釈すればいい。それが君の自由だ」
「そうさせてもらうわ」
ミシェルは微笑みながら窓の外を見つめた。庭園には穏やかな風が吹き抜け、木々が揺れている。彼女の心もまた、少しずつ晴れていった。
「これからもよろしくお願いするわ、レナード」
「もちろんだ。君が私の伴侶として相応しいことは間違いない」
彼の言葉には自信があり、ミシェルはその姿勢に安心感を覚えた。政略結婚であったとしても、二人の間に少しずつ信頼と愛情が芽生え始めていることを彼女は感じていた。そもそも最初から彼は政略結婚とは思っていなかったのかもしれないと彼女は考えていた。
しかしそれを訊こうとはしなかった。訊いてしまえば今の関係が変化してしまうかもしれない恐れがあった。それに……彼のことを知れば何が本当なのか察することはできる。
レナードの横顔を見つめながら、ミシェルは未来への希望が胸に広がっていくのを感じた。
「ニコルの婚約について考えた」
ある日、レナードが突然切り出した。ミシェルは驚きつつも静かに耳を傾ける。
「近衛騎士と婚約させるのがいいだろう。問題を起こさないよう、目の届くところで監視しておくほうが賢明だ」
「……そうね。確かにその方が安心だわ」
ミシェルは小さく頷いた。ニコルの行動は予測不能であり、放っておくのは危険だと感じていた。しかし、妹のために何か手を打とうとするレナードの姿勢に、彼女は少し驚いた。
「すでに候補も見つけている。近衛騎士の中でも特に問題のある男だ。ニコルとは釣り合いが取れるだろう」
「問題のある男?」
「ああ。酒癖が悪く、金銭感覚も怪しい。しかし、剣の腕は確かで忠誠心もある。そんな男ならニコルを完全に甘やかすこともないだろう。逆に普通の令嬢では幸せになれるとは思えない。だがニコルならどうだ? 選べる選択肢の中では悪くないものだと思うが」
レナードの言葉には冷徹な合理性がありながらも、ニコルやミシェルへの配慮が感じられた。ミシェルは思わず苦笑する。
「情け深いのね、あなたは」
「違う。これは実利だ。ニコルが問題を起こせば我々に迷惑がかかる。それを防ぐための最善策だ」
「そうよね……でも、どこか情が入っているようにも感じるわ」
「情?」
レナードは一瞬不思議そうな表情を見せたが、すぐに小さく笑みを浮かべる。
「君の言う通りかもしれない。だが、情だけでは何も解決しない。私は常に結果を重視する」
「本当にそうなのかしら?」
ミシェルは軽く首を傾げながら微笑んだ。レナードの言葉はいつも冷静で合理的だが、その奥にある小さな温もりに彼女は気づいていた。
「君は鋭いな。だが、それでいい。君のような女性だからこそ、私には必要なのだ」
レナードの言葉にはどこか優しさが含まれている。ミシェルはその言葉に胸が温かくなるのを感じた。
「ありがとう、レナード。あなたのそういうところが愛おしく思えるのよ」
「愛おしいか。ふむ、君の言葉は時に奇妙だな」
彼は少し照れくさそうに視線を逸らす。しかし、その表情には満足感が漂っていた。
「それにしても、ニコルのことまで考えるなんて、本当に優しいのね」
「優しさではない。ただ効率的だと言っているだけだ」
「そうね、分かったわ。でも、その効率の中に少しの優しさを見つけてもいいかしら?」
ミシェルは冗談めかして言った。レナードは小さく息を吐き、それ以上は否定しなかった。
「まあ、好きに解釈すればいい。それが君の自由だ」
「そうさせてもらうわ」
ミシェルは微笑みながら窓の外を見つめた。庭園には穏やかな風が吹き抜け、木々が揺れている。彼女の心もまた、少しずつ晴れていった。
「これからもよろしくお願いするわ、レナード」
「もちろんだ。君が私の伴侶として相応しいことは間違いない」
彼の言葉には自信があり、ミシェルはその姿勢に安心感を覚えた。政略結婚であったとしても、二人の間に少しずつ信頼と愛情が芽生え始めていることを彼女は感じていた。そもそも最初から彼は政略結婚とは思っていなかったのかもしれないと彼女は考えていた。
しかしそれを訊こうとはしなかった。訊いてしまえば今の関係が変化してしまうかもしれない恐れがあった。それに……彼のことを知れば何が本当なのか察することはできる。
レナードの横顔を見つめながら、ミシェルは未来への希望が胸に広がっていくのを感じた。
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