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第5章 勇者と調査クエスト編
第50話 勇者と調査クエスト
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鬱蒼と茂る森の中を、二人の男女が黙々と歩き続けていた。
そこはアルムの町の南に広がる広大な森の中、ヒロとリーシアは斧使いゼノンと殲滅の刃との一件で、ギルドマスターであるナターシャからペナルティーを課せられ、森の中域まで調査するクエストを受ける事になった。
南の森は広く、アルムの町から森の中心である最深部に行き着くまで、三日を要するほどの距離がある。
森の中域までと言っても、日帰りで帰って来られる距離ではない。そのため、危険な森の中で夜を明かさなければならず、ヒロとリーシアの二人は調査に必要な装備と物資を調達し、朝から歩き通しでようやく中域近くにまでやって来ることができた。
ここに来るまでに魔物と何回か遭遇していたが、どれもがランクの低い魔物ばかりで、高くてもFランクのビックフロッグと呼ばれる巨大なカエルくらいにしか遭遇していない。
CランクのリーシアとFランクのヒロにとっては脅威となる魔物ではなく、今の所は問題なく調査を進められていた。
今回の調査依頼は、森の中域手前までに出現する魔物の討伐と、魔物や森に異変がないか確認するのが主なクエスト内容となっている。
森の中域までは、高くてもEランクまでの魔物しか生息して居らず、Dランク以上の魔物に遭遇することはほとんどない。
だが何事にも例外はある……先日のオーガベアーのように森の中心部付近にいる魔物が、森の浅い箇所にまで迷い込む事も考えられるのだ。ランクが低い魔物しか出ない中域までと言っても油断はできなかった。
ヒロとリーシアはそれを想定し、冒険者ギルドでこのクエストを受注した後、すぐにオーガベアーの売却金で万全の準備を整え、このクエストに挑んでいた。
時刻は夕刻に差し掛かり、直に辺りも暗くなり夜の帳が降りてくる。ヒロとリーシアは、日がまだ明るい内に、今日の夜営場所を確保するため、開けた場所を探している時だった。
「何かいますね……」
薄暗い森の中、リーシアが何かの気配に気付き、ヒロに注意を促す。
ヒロは周りを警戒するが、敵の姿は見えない……誰かに見られている気配を感じながら、ヒロはリーシアと背を向かい合わせにするとショートソードを抜き、腰に装備した新装備の投げナイフにスキルで力を溜め始めていた。
「確かに、何かに見られますね……」
「この辺りはもう森の中域付近です、油断しないでください」
リーシアとお互いの死角をカバーしながら警戒していると、周囲の木々が揺れ始め……突然頭上から大きな黒い何かがヒロとリーシア目掛けて襲い掛かって来た!
「上です!」
リーシアの声に、ヒロはその場に留まらず前に跳び出して身を低くすると、さっきまでヒロの頭があった場所を何かが通り過ぎて行った!
リーシアを見ると、同じく前に跳び出して攻撃を回避していた。
「Fランクのジャイアントバットです! 飛行系の魔物は飛び道具か魔法がなければ、ギリギリまで引き寄せて叩くしかありません!」
そう言うと、リーシア目掛けて急降下してきたジャイアントバットの攻撃に合わせて、少女の右ハイキックが見事に決まり、巨大コウモリが地面に叩き落とされた。
だが、地面を落とされたジャイアントバットはまだ生きており、再び空を飛ぼうとして立ち上がった所に、リーシアの踵落としが脳天に決まり絶命する。
リーシアが次の気配に気づき頭上を見ると、今度は二匹のジャイアントバットが、ヒロ目掛けて急降下して来た!
リーシアとヒロの距離が離されており、リーシアの位置から迎撃は難しい。二匹同時の攻撃に危ないと感じたリーシアがヒロに声を上げて警告する。
「ヒロ! 二匹同時に攻めて来ています! 避けて!」
「大丈夫、殺れます!」
ヒロは腰に装備していたナイフを素早く抜くと、空を飛翔するジャイアントバットに向かって投げつけていた。
すでに溜めが施されたナイフは、銀色の軌跡を残してジャイアントバットの胴体に突き刺さり貫通する!
力なく地面に落下して絶命するジャイアントバットを無視して、ヒロは空から襲い掛かってくる別のジャイアントバットにショートソードを振り下ろしていた。
空からの攻撃と言えど、ジャイアントバットの動きは単調で攻撃が当てやすく、高い位置からの強襲は急降下を始めてしまえば、自由落下による速度増加も加わり攻撃の軌道修正は難しくなる。
結果、攻撃が来ると分かっていれば、後はタイミングを見計らって剣を振り下ろすだけで、簡単にジャイアントバットを倒せた。
ジャイアントバットは、ヒロが住む世界で言うならば、フィリピン大コウモリに近い。
1mを超える体長で、羽を広げれば横幅は1.5mほどの巨大なコウモリで、果実や花蜜を主食とする。
その巨大さに驚愕する人は多いが、意外に大人しく人里の軒先に逆さまにぶら下がっている事がよくあるらしい。
だが、決定的にフィリピン大コウモリとジャイアントバットが違う点を挙げるとすれば、ジャイアントバットは肉食であることだ。
ジャイアントバットにとって人間はごちそうであり、森の中にノコノコやって来た二人は格好のエサのはずだったが……その目論見は自らの死を持って終わりを告げてしまった。
鮮やかな動きで、ジャイアントバット二匹を同時に倒したヒロに驚きを隠せないリーシア……その動きはランナーバード戦に垣間見た、素人のむちゃな戦い方ではなく、洗練された戦い方であった。
何年も鍛錬を続け実践を経験すれば可能かも知れないが、ヒロと出会ってまだ一週間しか経っていない。
実力を隠していたとは思えず、そうすると残る答えは一つだけ……たった一週間でここまで成長したと言う事になる。
普通では考えられない成長スピードに、リーシアは驚いていた。
「リーシア! 次が来ます!」
「分かっています。さあドンドン殺りますよ!」
ヒロに負けてはいられないと、張り切るリーシアは、襲いくるジャイアントバットを次々と蹴り殺していく。
「Bダッシュ!」
ヒロは、Bダッシュからの二段ジャンプを用いて、空にいるジャイアントバットに斬り掛かっていた。
上空でホバリングして攻撃のタイミングをうかがうジャイアントバットに、ヒロが地上から強襲する。
空中でジャイアントバットを一振りで斬り殺すと同時に、腰に装備した溜め済みの投げナイフを、別のジャイアントバットに命中させ墜落死させる。
レベルアップと女神の加護によるステータス数値の底上げのおかげで、空中から地上に落ちても問題なく着地できるほどに身体能力が上がっているヒロ……もはやFランク程度の魔物に手こずる事は皆無となっていた。
結局この後、合計八匹のジャイアントバットをリーシアと二人で倒したが、空を飛ぶ魔物と言えど全く脅威にはならず圧勝するのだった。
【レベルが上がりました】
名前 本上 英雄
性別 男
年齢 6才(27才)
職業 プログラマー7
レベル :9
HP:170/170(+80)
MP:100/130(+80)
筋力:114(+80)
体力:134(+80)
敏捷:114(+80)
知力:135(+80)
器用:124(+80)
幸運:109(+80)
固有スキル デバッグ LV 1
言語習得 LV 1
Bダッシュ LV 3
二段ジャンプ LV 1 → LV 2
溜め攻撃 LV 1
オートマッピング LV 1 (New)
所持スキル 女神の絆 LV 1 → LV 2
女神の祝福【呪い】LV 10
身体操作 LV 3
剣術 LV 1 → LV 2
投擲術 LV 1 (New)
気配察知 LV 1 (New)
空間把握 LV 1 (New)
〈南の森で勇者の調査クエストが開始された!〉
そこはアルムの町の南に広がる広大な森の中、ヒロとリーシアは斧使いゼノンと殲滅の刃との一件で、ギルドマスターであるナターシャからペナルティーを課せられ、森の中域まで調査するクエストを受ける事になった。
南の森は広く、アルムの町から森の中心である最深部に行き着くまで、三日を要するほどの距離がある。
森の中域までと言っても、日帰りで帰って来られる距離ではない。そのため、危険な森の中で夜を明かさなければならず、ヒロとリーシアの二人は調査に必要な装備と物資を調達し、朝から歩き通しでようやく中域近くにまでやって来ることができた。
ここに来るまでに魔物と何回か遭遇していたが、どれもがランクの低い魔物ばかりで、高くてもFランクのビックフロッグと呼ばれる巨大なカエルくらいにしか遭遇していない。
CランクのリーシアとFランクのヒロにとっては脅威となる魔物ではなく、今の所は問題なく調査を進められていた。
今回の調査依頼は、森の中域手前までに出現する魔物の討伐と、魔物や森に異変がないか確認するのが主なクエスト内容となっている。
森の中域までは、高くてもEランクまでの魔物しか生息して居らず、Dランク以上の魔物に遭遇することはほとんどない。
だが何事にも例外はある……先日のオーガベアーのように森の中心部付近にいる魔物が、森の浅い箇所にまで迷い込む事も考えられるのだ。ランクが低い魔物しか出ない中域までと言っても油断はできなかった。
ヒロとリーシアはそれを想定し、冒険者ギルドでこのクエストを受注した後、すぐにオーガベアーの売却金で万全の準備を整え、このクエストに挑んでいた。
時刻は夕刻に差し掛かり、直に辺りも暗くなり夜の帳が降りてくる。ヒロとリーシアは、日がまだ明るい内に、今日の夜営場所を確保するため、開けた場所を探している時だった。
「何かいますね……」
薄暗い森の中、リーシアが何かの気配に気付き、ヒロに注意を促す。
ヒロは周りを警戒するが、敵の姿は見えない……誰かに見られている気配を感じながら、ヒロはリーシアと背を向かい合わせにするとショートソードを抜き、腰に装備した新装備の投げナイフにスキルで力を溜め始めていた。
「確かに、何かに見られますね……」
「この辺りはもう森の中域付近です、油断しないでください」
リーシアとお互いの死角をカバーしながら警戒していると、周囲の木々が揺れ始め……突然頭上から大きな黒い何かがヒロとリーシア目掛けて襲い掛かって来た!
「上です!」
リーシアの声に、ヒロはその場に留まらず前に跳び出して身を低くすると、さっきまでヒロの頭があった場所を何かが通り過ぎて行った!
リーシアを見ると、同じく前に跳び出して攻撃を回避していた。
「Fランクのジャイアントバットです! 飛行系の魔物は飛び道具か魔法がなければ、ギリギリまで引き寄せて叩くしかありません!」
そう言うと、リーシア目掛けて急降下してきたジャイアントバットの攻撃に合わせて、少女の右ハイキックが見事に決まり、巨大コウモリが地面に叩き落とされた。
だが、地面を落とされたジャイアントバットはまだ生きており、再び空を飛ぼうとして立ち上がった所に、リーシアの踵落としが脳天に決まり絶命する。
リーシアが次の気配に気づき頭上を見ると、今度は二匹のジャイアントバットが、ヒロ目掛けて急降下して来た!
リーシアとヒロの距離が離されており、リーシアの位置から迎撃は難しい。二匹同時の攻撃に危ないと感じたリーシアがヒロに声を上げて警告する。
「ヒロ! 二匹同時に攻めて来ています! 避けて!」
「大丈夫、殺れます!」
ヒロは腰に装備していたナイフを素早く抜くと、空を飛翔するジャイアントバットに向かって投げつけていた。
すでに溜めが施されたナイフは、銀色の軌跡を残してジャイアントバットの胴体に突き刺さり貫通する!
力なく地面に落下して絶命するジャイアントバットを無視して、ヒロは空から襲い掛かってくる別のジャイアントバットにショートソードを振り下ろしていた。
空からの攻撃と言えど、ジャイアントバットの動きは単調で攻撃が当てやすく、高い位置からの強襲は急降下を始めてしまえば、自由落下による速度増加も加わり攻撃の軌道修正は難しくなる。
結果、攻撃が来ると分かっていれば、後はタイミングを見計らって剣を振り下ろすだけで、簡単にジャイアントバットを倒せた。
ジャイアントバットは、ヒロが住む世界で言うならば、フィリピン大コウモリに近い。
1mを超える体長で、羽を広げれば横幅は1.5mほどの巨大なコウモリで、果実や花蜜を主食とする。
その巨大さに驚愕する人は多いが、意外に大人しく人里の軒先に逆さまにぶら下がっている事がよくあるらしい。
だが、決定的にフィリピン大コウモリとジャイアントバットが違う点を挙げるとすれば、ジャイアントバットは肉食であることだ。
ジャイアントバットにとって人間はごちそうであり、森の中にノコノコやって来た二人は格好のエサのはずだったが……その目論見は自らの死を持って終わりを告げてしまった。
鮮やかな動きで、ジャイアントバット二匹を同時に倒したヒロに驚きを隠せないリーシア……その動きはランナーバード戦に垣間見た、素人のむちゃな戦い方ではなく、洗練された戦い方であった。
何年も鍛錬を続け実践を経験すれば可能かも知れないが、ヒロと出会ってまだ一週間しか経っていない。
実力を隠していたとは思えず、そうすると残る答えは一つだけ……たった一週間でここまで成長したと言う事になる。
普通では考えられない成長スピードに、リーシアは驚いていた。
「リーシア! 次が来ます!」
「分かっています。さあドンドン殺りますよ!」
ヒロに負けてはいられないと、張り切るリーシアは、襲いくるジャイアントバットを次々と蹴り殺していく。
「Bダッシュ!」
ヒロは、Bダッシュからの二段ジャンプを用いて、空にいるジャイアントバットに斬り掛かっていた。
上空でホバリングして攻撃のタイミングをうかがうジャイアントバットに、ヒロが地上から強襲する。
空中でジャイアントバットを一振りで斬り殺すと同時に、腰に装備した溜め済みの投げナイフを、別のジャイアントバットに命中させ墜落死させる。
レベルアップと女神の加護によるステータス数値の底上げのおかげで、空中から地上に落ちても問題なく着地できるほどに身体能力が上がっているヒロ……もはやFランク程度の魔物に手こずる事は皆無となっていた。
結局この後、合計八匹のジャイアントバットをリーシアと二人で倒したが、空を飛ぶ魔物と言えど全く脅威にはならず圧勝するのだった。
【レベルが上がりました】
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レベル :9
HP:170/170(+80)
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敏捷:114(+80)
知力:135(+80)
器用:124(+80)
幸運:109(+80)
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身体操作 LV 3
剣術 LV 1 → LV 2
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〈南の森で勇者の調査クエストが開始された!〉
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