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第11章 勇者とオーク編
第105話 オークヒーロー先生の闘気講座!
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「リーシア……もう少しだけ頑張ってください……」
「だ、ダメです……ヒロ……」
ヒロとリーシア……二人の声が、牢屋内から聞こえてくる。
「まだ指一本だけですよ……次は二本同時です」
「ま、待ってください! まだムリです! もう少し慣らしてからでないと……」
「ごめん、リーシア……自分のことしか考えていませんでした……二人でやらなければ意味がないのに……」
「ヒロお願いです。ちょっとだけ待ってください……」
「はい。いくらでも待ちます。リーシアの好きなタイミングに合わせますから、ムリしないでください」
「ヒロ、ありがとう……うん、もう大丈夫そうです……いいですよ」
「じゃあ二本同時に行きますよ」
「指一本でこんなになるなんて……私たち本番を迎えられるのでしょうか?」
「頑張りましょう。二人でならきっとできます」
「ですね。ヒロとなら……やれる気がします」
二人は互いの顔を確かめ合うと、再び前を向き合い、目の前で本気の闘気をまとったカイザーと対峙する。
「休憩は終わりか? では行くぞ! 耐えて見ろ」
カイザーの体に陽炎のようなモヤが薄らと立ち登り、体の周りに留まると、牢屋内が重苦しい空気に包まれた。
「クッ! さっきよりさらに重い……指一本動かすのもキツイ!」
「私はもう……動かせません……」
オークヒーローと手を取り合った翌日の朝、ヒロとリーシアはさっそくカイザーから、闘気習得の特訓を受けていた。
当初、カイザーが闘気の扱い方を説明してくれたのだが……。
「闘気とは、体の中から湧き上がる熱いものを『グッ!』として『カッ!』として『バッ!』とするのがコツだ!」
「え? 熱いものを『グッ!』として『カッ!』として『バッ!』? リーシアわかりますか?」
「いえ……何を言っているのかサッパリです」
「これで分からぬとは……やれやれ、これ以上簡単に説明することは我にもできぬぞ?」
ヒロとリーシアの二人はまったく理解できなかった……感覚的なことを理論立てて説明するのが難しいようで、カイザーからは今のでなぜわからないと呆れられる始末……その後、カイザーから30分説明を受けたが、結果は聞くまでもなかった。
「仕方がない。時間は掛かるが、我が習得した方法を試すとしよう」
「そんな方法が?」
「できるかどうかはお前たち次第だがな……まずは構えろ」
カイザーに言われるまま、ヒロとリーシアが構える。
リーシアはいつもの腰の重心を落とした基本の構えを、ヒロはショートソードが無いため、空手で剣を構える。
「我が闘気を覚えたのは、森の中心部に現れたドラゴンを相手にした時のことだった」
「ドラゴン?」
「ヒロ……なんですか? なんでドラゴンなんて言葉が出てきたんですか?」
リーシアがドラゴンの言葉に反応し、ヒロに質問する。
「カイザーが、昔ドラゴンと戦って闘気を覚えたそうです。リーシア、ドラゴンて……強いのですか?」
「強いなんてものじゃありません。Sランクモンスターを超えた天災級ですよ! 出会えば死を意味する、最強種のひとつです!」
「奴は強かった……我も絶対防御スキルがなければ瞬殺されていた。幸いにもドラゴンの攻撃は我には通じず、コチラの攻撃はわずかだが奴にダメージを与えられた。時間を掛ければ倒せただろうが……その時、この闘気を使われて身動きが取れなくなってしまってな」
するとカイザーの目つきが鋭くなり、牢屋内の空気が重いものへと変わる。
昨日よりもさらに重い圧力に、二人は身動きができなくなる。
「なっ! 指一本すら、う、動かせない……」
「これがオークヒーローの本気ですか? 体が……動きません……」
ヒロとリーシアは、必死にカイザーの気勢に抗い、動こうとするが体はピクリともしない。
「この状態から、体をムリやり動かしたことで、我は闘気を習得した」
「つまり、この状態から自由に体を動かせるようになれば……闘気を覚えられると?」
「コレで闘気が習得できるかどうかは分からぬ。あくまでも我が覚えた状況を再現しているだけだからだ。他にやり方が分からぬ以上、試すしかあるまい」
「わかりました。やって見ましょう……アナタを殺すために!」
「そうだ、我を殺すために死ぬ気で習得しろ」
そして始まった特訓はすでに三時間を越えようとしていた。
ようやく指一本を動かせるようになった二人は、次に指二本を同時に動かす特訓に移っていた。
「ふむ、三時間でようやく指一本か……先は長そうだ。取り敢えずこの辺りで休憩にするぞ」
そうカイザーが話すと、束縛していた闘気が消え、二人は解放される。
「はあっ……はあっ……カイザーどうしましたか?」
「ヒ……ヒロ……はあっ」
肩で息するヒロとリーシア。
「狩りの時間だ。族長として、我は森の中心付近の魔物を定期的に狩らねばならん。今日はその日なのでな。夕方には戻る。それまで休憩だ」
「はい。では夕方にまたお願いします。リーシア、夕方まで休憩ですよ」
「た、助かりました……もう限界です」
その言葉を吐くと、ヒロとリーシアの二人は大の字で寝転んでしまう。
「では、また夕方に来る」
カイザーが牢屋を出て行くと、牢屋内にはヒロとリーシア……二人の荒い息遣いだけが聞こえてくる。
しばらくして二人の呼吸が戻り、ボーと寝転んでいると、不意にリーシアがヒロに話しかけた。
「ヒロ……変な感じですね……数日前まで、殺し合いをしていたオークヒーローに助けを乞われて、今はこうしてオーク達を助けるためにクタクタになるまで特訓を受けて……」
「……」
ヒロは無言でリーシアに答える。
「でも、不思議と私はワクワクしています。ヒロといると気を休める暇がないですよ。いつも普通ではない日常にドキドキしっ放しです」
「……」
「ヒロ……聞いてもいいですか? ヒロは私の幸せが見つかるまで、私とずっと一緒に居てくれるって言いましたが……幸せが見つかった後も……い、一緒に居てはだめですか?」
「……」
ヒロは尚も無言でリーシアに答える。
「え~と、ふ、深い意味はないのですよ! なんというか……そう! ヒロを放っておくと、何しでかすか判らないですから! 誰かが止めてあげないと……だから復讐を終えたら私とずっと一緒に……」
「……」
「ヒ、ヒロ?」
返事がないヒロを不思議に思い、起き上がりヒロの様子をリーシアが見ると……。
「フッ! 甘いですね! それで逃げたつもりですか? ギガドライブ版はプレイヤーが任意にライン移動ができるのです。逃しませんよ。パワーナックゥー!」
何かに夢中なヒロが、仰向けのまま一心不乱に、コントローラースキルで召喚したギガコントローラーを、ガチャガチャしていた。
「ふ~、やはり照之信の『パワーナックゥー!』の叫び声は、最高ですね。気をまとい突撃するこの技は、闘気習得に役立ちそうです! ん? リーシアどうしましたか? 闘気のことを考えていたら、ついつい妄想プレイに没頭してしまいました。何か話し掛けられていましたか?」
「ええ? じゃ、じゃあ……さっきの話は?」
「ん? すみません。聞いていませんでした。もう一度お願いします」
顔を赤くして頭から湯気を出すリーシア……。
「な、な、何も言っていませんよ。本当です」
冷静に考えたら、もの凄く恥ずかしい話を口走っていたことに気づいたリーシアは、トボけていた。
「リーシア……相変わらず嘘が下手ですね。遠慮せずに言ってください」
「う、嘘なんて……」
ヒロはリーシアが遠慮していると勘違いして、リーシアに迫るが……リーシアは顔を赤くして否定する。
「遠慮は無用です。僕とリーシアの仲です。何でも言ってください。さあ!」
リーシアにズズっと迫るヒロ……相変わらず変な所で空気が読めない男だった。
「な、な、何でもないって言っているじゃないですか! ヒロのバカ!」
次の瞬間、ヒロに腹キックが打ち込まれたのは、いうまでもなかった。
〈電光石火の蹴りが、鈍感男の腹に炸裂した!〉
「だ、ダメです……ヒロ……」
ヒロとリーシア……二人の声が、牢屋内から聞こえてくる。
「まだ指一本だけですよ……次は二本同時です」
「ま、待ってください! まだムリです! もう少し慣らしてからでないと……」
「ごめん、リーシア……自分のことしか考えていませんでした……二人でやらなければ意味がないのに……」
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「はい。いくらでも待ちます。リーシアの好きなタイミングに合わせますから、ムリしないでください」
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「じゃあ二本同時に行きますよ」
「指一本でこんなになるなんて……私たち本番を迎えられるのでしょうか?」
「頑張りましょう。二人でならきっとできます」
「ですね。ヒロとなら……やれる気がします」
二人は互いの顔を確かめ合うと、再び前を向き合い、目の前で本気の闘気をまとったカイザーと対峙する。
「休憩は終わりか? では行くぞ! 耐えて見ろ」
カイザーの体に陽炎のようなモヤが薄らと立ち登り、体の周りに留まると、牢屋内が重苦しい空気に包まれた。
「クッ! さっきよりさらに重い……指一本動かすのもキツイ!」
「私はもう……動かせません……」
オークヒーローと手を取り合った翌日の朝、ヒロとリーシアはさっそくカイザーから、闘気習得の特訓を受けていた。
当初、カイザーが闘気の扱い方を説明してくれたのだが……。
「闘気とは、体の中から湧き上がる熱いものを『グッ!』として『カッ!』として『バッ!』とするのがコツだ!」
「え? 熱いものを『グッ!』として『カッ!』として『バッ!』? リーシアわかりますか?」
「いえ……何を言っているのかサッパリです」
「これで分からぬとは……やれやれ、これ以上簡単に説明することは我にもできぬぞ?」
ヒロとリーシアの二人はまったく理解できなかった……感覚的なことを理論立てて説明するのが難しいようで、カイザーからは今のでなぜわからないと呆れられる始末……その後、カイザーから30分説明を受けたが、結果は聞くまでもなかった。
「仕方がない。時間は掛かるが、我が習得した方法を試すとしよう」
「そんな方法が?」
「できるかどうかはお前たち次第だがな……まずは構えろ」
カイザーに言われるまま、ヒロとリーシアが構える。
リーシアはいつもの腰の重心を落とした基本の構えを、ヒロはショートソードが無いため、空手で剣を構える。
「我が闘気を覚えたのは、森の中心部に現れたドラゴンを相手にした時のことだった」
「ドラゴン?」
「ヒロ……なんですか? なんでドラゴンなんて言葉が出てきたんですか?」
リーシアがドラゴンの言葉に反応し、ヒロに質問する。
「カイザーが、昔ドラゴンと戦って闘気を覚えたそうです。リーシア、ドラゴンて……強いのですか?」
「強いなんてものじゃありません。Sランクモンスターを超えた天災級ですよ! 出会えば死を意味する、最強種のひとつです!」
「奴は強かった……我も絶対防御スキルがなければ瞬殺されていた。幸いにもドラゴンの攻撃は我には通じず、コチラの攻撃はわずかだが奴にダメージを与えられた。時間を掛ければ倒せただろうが……その時、この闘気を使われて身動きが取れなくなってしまってな」
するとカイザーの目つきが鋭くなり、牢屋内の空気が重いものへと変わる。
昨日よりもさらに重い圧力に、二人は身動きができなくなる。
「なっ! 指一本すら、う、動かせない……」
「これがオークヒーローの本気ですか? 体が……動きません……」
ヒロとリーシアは、必死にカイザーの気勢に抗い、動こうとするが体はピクリともしない。
「この状態から、体をムリやり動かしたことで、我は闘気を習得した」
「つまり、この状態から自由に体を動かせるようになれば……闘気を覚えられると?」
「コレで闘気が習得できるかどうかは分からぬ。あくまでも我が覚えた状況を再現しているだけだからだ。他にやり方が分からぬ以上、試すしかあるまい」
「わかりました。やって見ましょう……アナタを殺すために!」
「そうだ、我を殺すために死ぬ気で習得しろ」
そして始まった特訓はすでに三時間を越えようとしていた。
ようやく指一本を動かせるようになった二人は、次に指二本を同時に動かす特訓に移っていた。
「ふむ、三時間でようやく指一本か……先は長そうだ。取り敢えずこの辺りで休憩にするぞ」
そうカイザーが話すと、束縛していた闘気が消え、二人は解放される。
「はあっ……はあっ……カイザーどうしましたか?」
「ヒ……ヒロ……はあっ」
肩で息するヒロとリーシア。
「狩りの時間だ。族長として、我は森の中心付近の魔物を定期的に狩らねばならん。今日はその日なのでな。夕方には戻る。それまで休憩だ」
「はい。では夕方にまたお願いします。リーシア、夕方まで休憩ですよ」
「た、助かりました……もう限界です」
その言葉を吐くと、ヒロとリーシアの二人は大の字で寝転んでしまう。
「では、また夕方に来る」
カイザーが牢屋を出て行くと、牢屋内にはヒロとリーシア……二人の荒い息遣いだけが聞こえてくる。
しばらくして二人の呼吸が戻り、ボーと寝転んでいると、不意にリーシアがヒロに話しかけた。
「ヒロ……変な感じですね……数日前まで、殺し合いをしていたオークヒーローに助けを乞われて、今はこうしてオーク達を助けるためにクタクタになるまで特訓を受けて……」
「……」
ヒロは無言でリーシアに答える。
「でも、不思議と私はワクワクしています。ヒロといると気を休める暇がないですよ。いつも普通ではない日常にドキドキしっ放しです」
「……」
「ヒロ……聞いてもいいですか? ヒロは私の幸せが見つかるまで、私とずっと一緒に居てくれるって言いましたが……幸せが見つかった後も……い、一緒に居てはだめですか?」
「……」
ヒロは尚も無言でリーシアに答える。
「え~と、ふ、深い意味はないのですよ! なんというか……そう! ヒロを放っておくと、何しでかすか判らないですから! 誰かが止めてあげないと……だから復讐を終えたら私とずっと一緒に……」
「……」
「ヒ、ヒロ?」
返事がないヒロを不思議に思い、起き上がりヒロの様子をリーシアが見ると……。
「フッ! 甘いですね! それで逃げたつもりですか? ギガドライブ版はプレイヤーが任意にライン移動ができるのです。逃しませんよ。パワーナックゥー!」
何かに夢中なヒロが、仰向けのまま一心不乱に、コントローラースキルで召喚したギガコントローラーを、ガチャガチャしていた。
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「ええ? じゃ、じゃあ……さっきの話は?」
「ん? すみません。聞いていませんでした。もう一度お願いします」
顔を赤くして頭から湯気を出すリーシア……。
「な、な、何も言っていませんよ。本当です」
冷静に考えたら、もの凄く恥ずかしい話を口走っていたことに気づいたリーシアは、トボけていた。
「リーシア……相変わらず嘘が下手ですね。遠慮せずに言ってください」
「う、嘘なんて……」
ヒロはリーシアが遠慮していると勘違いして、リーシアに迫るが……リーシアは顔を赤くして否定する。
「遠慮は無用です。僕とリーシアの仲です。何でも言ってください。さあ!」
リーシアにズズっと迫るヒロ……相変わらず変な所で空気が読めない男だった。
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