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第11章 勇者とオーク編
第115話 オークと神とマインドコントロール!
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「同志諸君! 我々は遂にこの時を迎える事ができた。ありがとう! 雌伏の時は終わりを告げ、我々は明日、新天地を目指して旅立つ。今宵は家族と最後を迎える者も居るだろう……だがしかし、コレは今生の別れであっても、永遠の別れではない! 死に行く者よ、恐るな! 君達の想いはここにある!」
壇上に上がるヒロが、固く握った手で自らの胸をドンと叩く!
「死にいく者よ、未来を託せ! 生きる者よ、その想いを忘れるな! その想いはひとつとなり、この胸の中で生き続ける。さあ同志諸君、今夜は語り合おう。飲み明かそう。食べ尽くそう。楽しもう。ポーク族の未来のために、ジークポーク!」
「ジークポーク! オーク勇者ヒロ、万歳!」
「ジークポーク! 同志ヒロよ、未来を語ろう!」
「ジークポーク! 偉大なる指導者ヒロ!」
「ジークポーク! 神ヒロよ!」
「ジークポーク!」「ジークポーク!」「ジークポーク!」
「ジークポーク!」「ジークポーク!」「ジークポーク!」
「ジークポーク!」「ジークポーク!」「ジークポーク!」
ついにヒロはやり遂げた!
オークヒーローが憤怒の紋章に、その意識を乗っ取られるまで残りわずか……短い期間でオーク達の心を一つに、人族の手の届かない新天地を目指すエクソダス計画も、万全とは言えないが準備を終えた。
あとは計画を実行するのみとなったヒロ達は、この地に残る者と、旅立つ者達との最後の時を過ごすため、村を上げての大集会を開催していた。
オークの民が壇上に登るヒロに手を振り、熱狂的な声を上げる。
エクソダス計画実行前に、オーク達の心をひとつにする事で、ついにオークの神に上り詰めた!
熱狂するオークの同志達を壇上で見渡し、満足するヒロの心は達成感で満ち溢れていた。
見渡す限り、壇上を埋め尽くすオーク達の顔は、皆が喜びに満ち溢ふれ、希望を胸に高らかにヒロを讃えている。
「見事だヒロ! お前こそがオーク族、族長に相応しい! ジークポーク!」
「あなた、早くその地位をヒロさんにお譲りして!」
族長カイザーと妻アリアも手を振り、ヒロを熱狂的に応援していた。
「ヒロ殿、アナタこそ神だ! 我らの神なのだ!」
「ヒロ、すっげえ! 父上よりすげえよ!」
戦士ムラクと族長の息子ジークもヒロを熱狂的に応援する。
オーク族の誰もかもが、ヒロをどこか虚な目で応援していた。
ヒロが口にする心地よい言葉が、オーク達の心に響き、声を上げて熱狂する。
ヒロの言葉が終わり、熱狂が最高位に達した時、オークの群衆の中から、一人の少女が前に進み出てきた。
金色の長い髪をアップにまとめた小柄な少女が、意思の強い緑の瞳で真っすぐヒロを見据えて近づいて来る。
少女の顔をヒロが見ると、笑顔で少女に手を広げ出迎える。少女も笑顔で答え、壇上のヒロに向かって少女が飛んだ。
「ヒロ!」
「リーシア!」
互いが相手を望み、相手を想った時、二人はいつの間にか惹かれあい求め合っていた。リーシアがヒロの胸に飛び込み、ヒロの手がリーシアを抱きしめた瞬間――
「ヒロの馬鹿!」
「グハッ!」
――リーシアの膝がヒロの腹……鳩尾へとクリティカルヒットしていた。腹パンチ、腹キックに続く第三の腹◯◯◯シリーズ、腹飛び膝が炸裂する!
後方へ吹き飛び、壇上から叩き落とされるヒロ……突然の事にオークの民が口を開けて唖然とする中、リーシアが吼えた。
「何考えているのですか? いくら何でもやり過ぎです!」
壇上から吹き飛ばされたヒロは、仁王立ちするリーシアを見上げながら、ヨロヨロと立ち上がる。
「イツツ、リーシア……何するんですか!」
「何するじゃありません! ヒロこそ、何しているのですか!」
「何をって……もちろんエクソダス計画の遂行ですよ?」
「それオークの民を救う作戦でしたよね? これ完全にみんなを洗脳して、違う方向に向かってますよね?」
リーシアが壇上から広場に集まるオーク達を指さす。
綺麗に一列で並ぶオーク達……一糸乱れぬ直立不動のその姿に、リーシアは嫌悪感を露わにした。オーク達は口々に熱狂的な声でヒロを讃えるが、目が虚でだった。
「洗脳なんてしてませんよ? マインドコントロールしているだけですよ?」
「マインドコントロール?」
聞いたことのない言葉に、リーシアが怪訝な顔をする。
「リーシアがいう洗脳とは、虐待や拷問、違法な薬物を使い恐怖心を与えた上で、精神的に追い込み、その苦しみから逃れる方法として相手の心を支配する事です!」
「マインドコントロールと何が違うのですか?」
「僕の行ったのは、心に不安を抱えた人に、親身なふりをして近づき、信頼させることで徐々に精神を支配した結果、自らが選択したように見せかけて、相手の行動を意のままに操る方法、それがマインドコントロールですよ!」
「もっとタチが悪いですよ! 本当に何しているんですか!」
自信満々に語るヒロに、リーシアがすかさず突っ込みを入れる。
「エクソダス計画完遂のためには、仕方なかったんですよ! 短時間で準備を終わらせるには、この方法しかなかったんです!」
「だからと言って、みんなをマインドコントロールするなんて、やり過ぎです! アリアさんやジーク君の目が虚で怖いですよ! 元に戻してください!」
「ええ? 上手くコントロールしてますし、エクソダス計画が完遂するまでは、マインドコントロールを外して、元に戻さなくても……それに僕が神として君臨するためにも必要な事ですから!」
「か、神? ヒロ何を言っているのですか?」
「リーシア、僕はオーク族を救うため、必ずエクソダス計画を成功させなくてはなりません。そのためには全てのオーク達の協力が不可欠でした」
ヒロは微笑みながらリーシアに語りだす。
「だから僕はオーク達をまとめ、皆の心を一つにできる象徴を用意するべきだと考えました」
「それが神ですか?」
「そうです。オーク族にも女神の名が知れ渡っていましたし、神の概念がある事は分かっていました。なら後は、僕がオーク族の神となって皆を導けば良いと思ったのです」
「なら、もう神を演じる必要はないですよ! もうエクソダス計画の準備は終わりました。もうみんなを元に戻してください!」
もう必要がないと主張するリーシアは、ヒロの答えを待つが……。
「……お断りします。僕は神としてオーク族を導かねばなりません。そう、導くべきなのです。虐げられたオーク達を連れて逃げた先で力を付け、人族を滅ぼさなければならないのです!」
ヒロの答えはNOだった。
「……な、何言っているんですかヒロ、人族を滅ぼすって?」
「僕はオークの神、オークを救い繁栄させる義務があります。オーク族の同志が安心して暮せる世界に人族は邪魔です。人はオークを家畜だとしか思ってません。現に僕の認識は、オーク達に出会うまで、そう言う認識しかありませんでした」
「ですが、ヒロは分かり合えました。私も言葉は分からないけど、心は分かり合えましたよ」
「全ての人族と、分かり合えるなんてありえません。現に人族はこの村に住むオークを殲滅せんと、1000人を超える人数で討伐に出立しました。一部が分かり合えても、大多数の人とは分かり合えないのです。リーシア……オーク族が幸せに生きるのに人は邪魔です。だから僕はオークの神として、人族の滅亡を望みます」
「め、目を覚ましてくださいヒロ! あなたが目指したのは人とオーク、双方が幸せになれる世界だと言ったじゃないですか! なのになんで? 急に人が変わったみたいに……」
その時、リーシアはヒロの瞳の中に暗い虚な影を見た。
それはマインドコントロールされたオーク達の、虚な目の中で鈍く光る影と同じものだった。ヒロの急な心の変わりように…… ようやくリーシアも気づいた。
「ま、まさか……神を演じようとして、自分自身をマインドコントロールしちゃったんですか? あなた馬鹿ですか!」
「リーシア……君だけは分かってくれると思っていたのに……僕は悲しいです。でも大丈夫です。僕はリーシアならきっと分かってくれると思っています……話し合えば、きっと同志になってくれると! さあ、一緒に話し合いましょう。オーク達の未来を神である僕と一緒に! ジークポーク!」
「これはもうダメです! 手荒くなりますが、仕方ありません。ヒロ……その未来に幸せがあるとは思えません。だから……目を覚ましてもらいます」
リーシアが重心を落とし、ヒロに向かって短距離のダッシュを仕掛ける。
少しキツめのお仕置きが必要と判断したリーシアの肘が、ヒロの胸目掛けて放たれた!
リーシアの肘が、ヒロの胸に吸い込まれるが如く綺麗に決まったと思った瞬間……リーシアはバランスを崩し、無防備に宙へと投げ出されていた。
決まると思われたリーシアの肘がヒロの体をすり抜ける。反応が遅れたはずのヒロは、上半身を横に逸らしただけでリーシアの肘を回避していた。最小の動きで避けられ勢いが止まらないリーシアは、足元を払われバランスを崩すと、そのまま投げ飛ばされていた。
「なっ!」
勢いを殺すため、リーシアが地面を転がる。投げ飛ばされた勢いをそのままに、立ち上がる動作にシフトすると、すぐにヒロの方を向いて構える。
「さあリーシア、一緒に幸せな世界に行こう。君もマインドコントロールされれば、きっとこの素晴らしい世界の良さがわかります! 共に叫びましょう、ジークポーク!」
「冗談じゃありません! ヒロ……本気ですか?」
「ええ、本気ですとも、リーシア僕はオークの神に、それを足掛かりに、この世界の神になります! その暁には人やオークも……いや、全ての種族を救ってみせます!」
「オークを救うために人族を滅ぼすクセに、最終的には人族を含めた全ての種族を救ってみせる? ……矛盾していますよ!」
リーシアがヒロに矛盾も言い放つ!
「な、何を、リーシア……矛盾なんて、僕は人を滅ぼしてオークと人を救わないと、そのために人を滅ぼす必要が……なんだコレ? 変だぞ? なんで……」
リーシアの言葉で、ヒロが矛盾する答えに疑問を抱き、混乱していた。
「ヒロ、アナタをその苦しみから解放します。少々痛いですが、我慢してください! 元のヒロに絶対戻してあげますから!」
決意を胸に、リーシアがヒロに構えを取ると、ヒロも腰のショートソードを手に構える。
「リーシア、君は間違っている。さあ構えを解いて、一緒に話し合おう。君の幸せのために! ジークポーク!」
「冗談じゃありません。こんなのが私の幸せであってたまるもんですか! こんな幸せ願い下げです。ヒロ、私の幸せを探すために、今からバカなアナタをぶっ飛ばしてあげますから、覚悟してください!」
〈バカ勇者とバク聖女、二人の戦いが始まろうとしていた……〉
壇上に上がるヒロが、固く握った手で自らの胸をドンと叩く!
「死にいく者よ、未来を託せ! 生きる者よ、その想いを忘れるな! その想いはひとつとなり、この胸の中で生き続ける。さあ同志諸君、今夜は語り合おう。飲み明かそう。食べ尽くそう。楽しもう。ポーク族の未来のために、ジークポーク!」
「ジークポーク! オーク勇者ヒロ、万歳!」
「ジークポーク! 同志ヒロよ、未来を語ろう!」
「ジークポーク! 偉大なる指導者ヒロ!」
「ジークポーク! 神ヒロよ!」
「ジークポーク!」「ジークポーク!」「ジークポーク!」
「ジークポーク!」「ジークポーク!」「ジークポーク!」
「ジークポーク!」「ジークポーク!」「ジークポーク!」
ついにヒロはやり遂げた!
オークヒーローが憤怒の紋章に、その意識を乗っ取られるまで残りわずか……短い期間でオーク達の心を一つに、人族の手の届かない新天地を目指すエクソダス計画も、万全とは言えないが準備を終えた。
あとは計画を実行するのみとなったヒロ達は、この地に残る者と、旅立つ者達との最後の時を過ごすため、村を上げての大集会を開催していた。
オークの民が壇上に登るヒロに手を振り、熱狂的な声を上げる。
エクソダス計画実行前に、オーク達の心をひとつにする事で、ついにオークの神に上り詰めた!
熱狂するオークの同志達を壇上で見渡し、満足するヒロの心は達成感で満ち溢れていた。
見渡す限り、壇上を埋め尽くすオーク達の顔は、皆が喜びに満ち溢ふれ、希望を胸に高らかにヒロを讃えている。
「見事だヒロ! お前こそがオーク族、族長に相応しい! ジークポーク!」
「あなた、早くその地位をヒロさんにお譲りして!」
族長カイザーと妻アリアも手を振り、ヒロを熱狂的に応援していた。
「ヒロ殿、アナタこそ神だ! 我らの神なのだ!」
「ヒロ、すっげえ! 父上よりすげえよ!」
戦士ムラクと族長の息子ジークもヒロを熱狂的に応援する。
オーク族の誰もかもが、ヒロをどこか虚な目で応援していた。
ヒロが口にする心地よい言葉が、オーク達の心に響き、声を上げて熱狂する。
ヒロの言葉が終わり、熱狂が最高位に達した時、オークの群衆の中から、一人の少女が前に進み出てきた。
金色の長い髪をアップにまとめた小柄な少女が、意思の強い緑の瞳で真っすぐヒロを見据えて近づいて来る。
少女の顔をヒロが見ると、笑顔で少女に手を広げ出迎える。少女も笑顔で答え、壇上のヒロに向かって少女が飛んだ。
「ヒロ!」
「リーシア!」
互いが相手を望み、相手を想った時、二人はいつの間にか惹かれあい求め合っていた。リーシアがヒロの胸に飛び込み、ヒロの手がリーシアを抱きしめた瞬間――
「ヒロの馬鹿!」
「グハッ!」
――リーシアの膝がヒロの腹……鳩尾へとクリティカルヒットしていた。腹パンチ、腹キックに続く第三の腹◯◯◯シリーズ、腹飛び膝が炸裂する!
後方へ吹き飛び、壇上から叩き落とされるヒロ……突然の事にオークの民が口を開けて唖然とする中、リーシアが吼えた。
「何考えているのですか? いくら何でもやり過ぎです!」
壇上から吹き飛ばされたヒロは、仁王立ちするリーシアを見上げながら、ヨロヨロと立ち上がる。
「イツツ、リーシア……何するんですか!」
「何するじゃありません! ヒロこそ、何しているのですか!」
「何をって……もちろんエクソダス計画の遂行ですよ?」
「それオークの民を救う作戦でしたよね? これ完全にみんなを洗脳して、違う方向に向かってますよね?」
リーシアが壇上から広場に集まるオーク達を指さす。
綺麗に一列で並ぶオーク達……一糸乱れぬ直立不動のその姿に、リーシアは嫌悪感を露わにした。オーク達は口々に熱狂的な声でヒロを讃えるが、目が虚でだった。
「洗脳なんてしてませんよ? マインドコントロールしているだけですよ?」
「マインドコントロール?」
聞いたことのない言葉に、リーシアが怪訝な顔をする。
「リーシアがいう洗脳とは、虐待や拷問、違法な薬物を使い恐怖心を与えた上で、精神的に追い込み、その苦しみから逃れる方法として相手の心を支配する事です!」
「マインドコントロールと何が違うのですか?」
「僕の行ったのは、心に不安を抱えた人に、親身なふりをして近づき、信頼させることで徐々に精神を支配した結果、自らが選択したように見せかけて、相手の行動を意のままに操る方法、それがマインドコントロールですよ!」
「もっとタチが悪いですよ! 本当に何しているんですか!」
自信満々に語るヒロに、リーシアがすかさず突っ込みを入れる。
「エクソダス計画完遂のためには、仕方なかったんですよ! 短時間で準備を終わらせるには、この方法しかなかったんです!」
「だからと言って、みんなをマインドコントロールするなんて、やり過ぎです! アリアさんやジーク君の目が虚で怖いですよ! 元に戻してください!」
「ええ? 上手くコントロールしてますし、エクソダス計画が完遂するまでは、マインドコントロールを外して、元に戻さなくても……それに僕が神として君臨するためにも必要な事ですから!」
「か、神? ヒロ何を言っているのですか?」
「リーシア、僕はオーク族を救うため、必ずエクソダス計画を成功させなくてはなりません。そのためには全てのオーク達の協力が不可欠でした」
ヒロは微笑みながらリーシアに語りだす。
「だから僕はオーク達をまとめ、皆の心を一つにできる象徴を用意するべきだと考えました」
「それが神ですか?」
「そうです。オーク族にも女神の名が知れ渡っていましたし、神の概念がある事は分かっていました。なら後は、僕がオーク族の神となって皆を導けば良いと思ったのです」
「なら、もう神を演じる必要はないですよ! もうエクソダス計画の準備は終わりました。もうみんなを元に戻してください!」
もう必要がないと主張するリーシアは、ヒロの答えを待つが……。
「……お断りします。僕は神としてオーク族を導かねばなりません。そう、導くべきなのです。虐げられたオーク達を連れて逃げた先で力を付け、人族を滅ぼさなければならないのです!」
ヒロの答えはNOだった。
「……な、何言っているんですかヒロ、人族を滅ぼすって?」
「僕はオークの神、オークを救い繁栄させる義務があります。オーク族の同志が安心して暮せる世界に人族は邪魔です。人はオークを家畜だとしか思ってません。現に僕の認識は、オーク達に出会うまで、そう言う認識しかありませんでした」
「ですが、ヒロは分かり合えました。私も言葉は分からないけど、心は分かり合えましたよ」
「全ての人族と、分かり合えるなんてありえません。現に人族はこの村に住むオークを殲滅せんと、1000人を超える人数で討伐に出立しました。一部が分かり合えても、大多数の人とは分かり合えないのです。リーシア……オーク族が幸せに生きるのに人は邪魔です。だから僕はオークの神として、人族の滅亡を望みます」
「め、目を覚ましてくださいヒロ! あなたが目指したのは人とオーク、双方が幸せになれる世界だと言ったじゃないですか! なのになんで? 急に人が変わったみたいに……」
その時、リーシアはヒロの瞳の中に暗い虚な影を見た。
それはマインドコントロールされたオーク達の、虚な目の中で鈍く光る影と同じものだった。ヒロの急な心の変わりように…… ようやくリーシアも気づいた。
「ま、まさか……神を演じようとして、自分自身をマインドコントロールしちゃったんですか? あなた馬鹿ですか!」
「リーシア……君だけは分かってくれると思っていたのに……僕は悲しいです。でも大丈夫です。僕はリーシアならきっと分かってくれると思っています……話し合えば、きっと同志になってくれると! さあ、一緒に話し合いましょう。オーク達の未来を神である僕と一緒に! ジークポーク!」
「これはもうダメです! 手荒くなりますが、仕方ありません。ヒロ……その未来に幸せがあるとは思えません。だから……目を覚ましてもらいます」
リーシアが重心を落とし、ヒロに向かって短距離のダッシュを仕掛ける。
少しキツめのお仕置きが必要と判断したリーシアの肘が、ヒロの胸目掛けて放たれた!
リーシアの肘が、ヒロの胸に吸い込まれるが如く綺麗に決まったと思った瞬間……リーシアはバランスを崩し、無防備に宙へと投げ出されていた。
決まると思われたリーシアの肘がヒロの体をすり抜ける。反応が遅れたはずのヒロは、上半身を横に逸らしただけでリーシアの肘を回避していた。最小の動きで避けられ勢いが止まらないリーシアは、足元を払われバランスを崩すと、そのまま投げ飛ばされていた。
「なっ!」
勢いを殺すため、リーシアが地面を転がる。投げ飛ばされた勢いをそのままに、立ち上がる動作にシフトすると、すぐにヒロの方を向いて構える。
「さあリーシア、一緒に幸せな世界に行こう。君もマインドコントロールされれば、きっとこの素晴らしい世界の良さがわかります! 共に叫びましょう、ジークポーク!」
「冗談じゃありません! ヒロ……本気ですか?」
「ええ、本気ですとも、リーシア僕はオークの神に、それを足掛かりに、この世界の神になります! その暁には人やオークも……いや、全ての種族を救ってみせます!」
「オークを救うために人族を滅ぼすクセに、最終的には人族を含めた全ての種族を救ってみせる? ……矛盾していますよ!」
リーシアがヒロに矛盾も言い放つ!
「な、何を、リーシア……矛盾なんて、僕は人を滅ぼしてオークと人を救わないと、そのために人を滅ぼす必要が……なんだコレ? 変だぞ? なんで……」
リーシアの言葉で、ヒロが矛盾する答えに疑問を抱き、混乱していた。
「ヒロ、アナタをその苦しみから解放します。少々痛いですが、我慢してください! 元のヒロに絶対戻してあげますから!」
決意を胸に、リーシアがヒロに構えを取ると、ヒロも腰のショートソードを手に構える。
「リーシア、君は間違っている。さあ構えを解いて、一緒に話し合おう。君の幸せのために! ジークポーク!」
「冗談じゃありません。こんなのが私の幸せであってたまるもんですか! こんな幸せ願い下げです。ヒロ、私の幸せを探すために、今からバカなアナタをぶっ飛ばしてあげますから、覚悟してください!」
〈バカ勇者とバク聖女、二人の戦いが始まろうとしていた……〉
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