勇者ですか? いいえ……バグキャラです! 〜廃ゲーマーの異世界奮闘記! デバッグスキルで人生がバグッた仲間と世界をぶっ壊せ!〜

空クジラ

文字の大きさ
163 / 226
第14章 勇者と魔王降臨編

第163話 魔王の狂気

しおりを挟む
 ゲーム……それはゲームにかける情熱から付いた称号ではない。相手に勝つためならばいかなる手段を用いても、必ず勝利をぎ取る情け容赦ないプレイヤーにつけられた忌むべき名……廃ゲーマーの頂点! 最狂にして最凶を冠する魔王の称号である。


「ああ、そうだ……これは、これこそ僕が求めていたゲームだ!」


【ゲーム鬼、魔王英雄ヒーローが真の正体を現した!】


 宙に浮かび触手で形成されたまゆが脈動すると触手は剥がれ、その中の姿をあらわにしてゆく。


「待ってやる義理はない」


 悪魔のように獰猛な顔をしたヒロが、手に持つ黄金色に輝くミスリルロングソードを槍投げ選手のように持ち変えると……。


「先手必勝だ!」


 渾身の力を込めて振りかぶった剣を、容赦なく繭に向かって投げつけた! 金色に光輝く剣身が、光の軌跡を描きながら一直線に触手繭へと突き刺さる!

 ブレイブチャージによって破壊の力を内包された剣が繭に突き刺さるとその力が一気に放出され……その場で大爆発する!

 あらかじめ剣に込めていた闘気が、ブレイブチャージの力と混ざり合い、ありえない規模の爆発を引き起こしていた。

 地上五メートルの位置に滞空していた繭を中心に巻き起こった爆風が、周囲に撒き散らされヒロとリーシアの髪を激しく揺らす。猛烈な爆風に体が動かせないリーシアは、目をギュッとつぶり爆風が衰えるのを待っていた。

 そして少女が次に目を開けたとき、目の前には半径五メートルにも達する深くエグられた巨大なクレーターと、平然と宙に浮く触手繭の姿が飛び込んできた。


『な、な、なにしているんですかヒロ! あれでアリアさんの体が損壊したらどうするんですか!』

「問題ない。あの程度で倒せれば苦労しない」

『え? ヒ、ヒロですよね? いつもと口調が……』


 パーティーチャットで話しかけるリーシアが違和感に気が付いた。さっきまでと明らかに違う口調のヒロに戸惑っていた。


「たいしてダメージが通っていない。あの攻撃でほぼノーダメージだとすると防御を突破するのに、もう一手いるか?」


 そんなリーシアの様子を無視して、ヒロが爆風の中で蠢くものに注意を払い警戒していた……草原に流れた風が爆煙を吹き流すと、中から人のシルエットをした何かが姿を現した。


「滅びよ、人は全て滅び去れ!」


 アリアの口から憤怒の思念が辺りにまき散らされる。


『あれが憤怒ですか⁈』

「みたいだな。鈍重なドラゴン状態の巨体では勝てないと踏んだか?」


 人と変わらない姿のそれは、身長が2メートルにも満たない背丈でヒロ達を見下ろしていた。

 極限まで鍛え抜かれ凝縮された筋肉に見立てた触手が、全身を覆い尽くしどこかオークヒーローを彷彿とさせる。巨大な触手ドラゴン状態より比べるまでもなく小さな体だった。だが大きさを圧縮した分、遥かに存在感が増していた。

 手にするは、同じく触手から形作られた槍……いや、その形状はハルバードに酷似していた。二メートルの身の丈を越す超重量級の武器を憤怒は片手で軽々と振るうと、突風が巻き起こり周囲に漂っていた爆煙を全て押し流した。

 爆煙がなくなり、あらわになる憤怒の姿……そこにはオークヒーローの体格を触手で真似、まるで鎧を身にまとい、ハルバードを手にする出立ちの戦士が浮かんでいた。


「オークヒーローの姿を模してきたか? カイザーの戦闘経験とセンスも真似られていると厄介だ。絶対防御スキルはブレイブチャージでどうとでも出来るが、あの戦闘技術は手を焼く」


 ヒロがいつものように、対策を練るべく頭の中のスイッチを入れ意識を集中しようとするが……。


「痛っ!」


 頭の中に鋭い痛みが走り、強制的にオフにされる。スイッチの連続使用による限界がヒロに訪れていた。


「深淵に触れ過ぎたか? 俺としたことが……フッフッフッフッ、まあいいさ。封印された力が解放された以上、もう誰も俺は誰にも負けやしない。さあ、憤怒よ、二人でこの楽しいゲームを楽しもうじゃないか!」

『ヒロ……さっきから独り言が激しいですが、大丈夫ですか?』


 少し痛い言葉をブツブツと小声で話すヒロ……だが、パーティーチャットを通じてリーシアにはバッチリ聞こえていた!


「黙れ! 僕はボッチじゃないし、中二病の痛いやつでもないぞ!」


 突如リーシアに振り向きヒロは必死に声を上げた!

 本人にとっては至って真面目に情報を分析しているつもりなのだが、他人からしてみれば中二病全開の痛い人に見えてしまう。ヒロは思わず全力で否定していた!


『ボッチ? ちゅ、中二病⁈ なんですかそれ?』


 意味不明の言葉にリーシアの頭上にハテナマークが浮かびまくる。


「何でもない! 少し離れて戦う。リーシアは体が動くようになったらアレをいつでも打てるようにしておけ」

『ん~、分かりました。あとは手筈通りに動きますね』

「ああ、奴を倒すにしても真のエクソダス計画が成功するかは、もはや五分五分……何にせよ、まずはアレをどうにかしないことには成功もクソもない」


 ヒロが宙に浮かぶ憤怒に向かって歩き出した。手ぶらの状態で戦場を歩くヒロを見た憤怒は、警戒しながら地上へゆっくりと下降し大地に降り立つ。

 近い距離で対峙する二人は足を止めると、互いに闘気を高め戦いに備える。
 もはや言葉など必要なかった。やる事はただ一つ……己の全てを懸けて目の前の敵を殺すだけ!

 ヒロが闘気を高めると同時にブレイブチャージを行う。本来なら装備した武具や体から金色の光が溢れ出すはずが、無手の彼の体はどこも光っていなかった。

 ヒロは無手で構える。左足を前に腰を落とし、半身で相対することで、前後左右いかなる方向へも瞬時に対応できる覇神六王流の基本の構え……。
 
 対する憤怒は、触手ハルバードの斧刃を上向きに、腰の位置でハルバードを後ろ手に構える。
 縦横どちらの方向へも攻撃に移れるオークヒーローがもっとも得意とした構え……。


「……」

「……」


 無言の二人……そして草原に流れる風が不意に強く吹きヒロの前髪を大きく揺らしたとき、戦いは始まった!


「滅びよ!」


 憤怒が低い構えから構えを崩さずに前へと飛び出す!
地を這うように腰の位置を崩さず、ハルバードを水平にぐ!


「その言葉、聞き飽きた!」


 ヒロが震脚を踏み爆発的な力を大地から生み出すと、力が体を駆け上る。

 近接戦クロスレンジに弱いハルバードの弱点を突き、懐に潜り込むヒロ……だが憤怒はその動きを予想して、ハルバードの水平に薙ぐ斬撃を無理やり止めると、ハルバードの持ち手側の先端、石突部分を下からすくい上げるようにヒロに放つ。

 避けられないと悟ったヒロは、下から襲い掛かる攻撃に逆らわず、下から手を添えて憤怒の攻撃に加速を加える。

 タイミングをずらされ、ヒロの顔の直前をスレスレで通り抜ける石突き……完全に無防備な姿を晒した憤怒の体に、ヒロがひじをくの字に曲げながら体当たりする勢いでぶつかっていく。

 震脚と闘気……異なる二つの力が混ざり合い憤怒へと解き放たれた……だが、攻撃が決まる直前、憤怒の口元が一瞬吊り上がったのをヒロは見逃さない。


「やはりか!」


 ヒロの肘が決まったと思われた瞬間、その攻撃が弾かれる。息を止めている間のみ、あらゆる攻撃を弾き返す『絶対防御』スキルが発動していた。

 お返しとばかりに、憤怒が振り上げたハルバードの石突をヒロの頭へ振り下ろす。


「Bダッシュ!」


 後ろに弾かれた勢いを利用して、Bダッシュで真後ろへと緊急回避するヒロ……憤怒の攻撃は空振りに終わった。
 
 互いに決定打を打てずに距離を取る二人……初撃は様子見で引き分けたかとリーシアが思った瞬間だった。

 ヒロが右腕を思いっきり引き、左手で目に見えない何かを手繰たぐり寄せる! その動きに警戒した憤怒がハルバードを盾代わり前に構える。そのとき憤怒の脳裏にある光景がぎる。

 息を止め。絶対防御を発動させつつも鎧に見立てた触手に闘気を流し込む憤怒……その判断は間違っていなかった。
 だが、すでに遅すぎた。憤怒の背後から襲いくるやいば! 見えない魔力のワイヤーにつながれたミスリルロングソードが、黄金の輝きを放ちながら憤怒に向かって飛び掛かる。


「ばかな!」


 絶対防御スキルでも弾けず、触手すら切り裂く黄金の輝きが憤怒の左腕を肩から斬り落とした。

 勢いが止まらずヒロの前に回転しながら大地に突き刺さるミスリルロングソード……ヒロが素早く剣を抜き、その剣身にまとわりつく触手を振り払うと、憤怒へとその切先を向ける。


「おのれ! 小細工を」

「ああ、当然させてもらったよ。しかし十一手目から先の攻撃も読めないなんて……六十手先まで攻撃を組んでいたのに全く無駄になったぞ? どうしてくれるんだ? まったくゲームを楽しめないじゃないか?」

「ゲーム?」

「ああ、せっかくゲームを楽しめると思ったのに、弱過ぎて拍子抜けだよ。お前少しは本気をだせよ。まさかこれが全力じゃないだろうな? こんなイージーモードをクリアーしても何も面白くない。もっと難易度を上げろ! 最高難易度ナイトメアに再設定しろ!」

「ヒ、ヒロ……一体何を言って……え?、ええ!」


 リーシアがヒロの次にとった行動に、我が目を疑った。あろうことか……ヒロは自らの剣で自分の左手を貫いていた。

 ドボドボと血が大地に流れ落ち、草原に赤い血が吸いこまれていく。


「このままではつまらないからな。ハンデだ! さあ難易度がこれで少しは上がったか? ああ、これだ! この感じ……命を懸けで難ゲーに挑むのと同じこの感覚、この瞬間こそ生きている事を実感できる。そうだ俺は生きている。いま生きているんだ!」


 リーシアはヒロの瞳に宿る狂気を見てしまった。それは恐るべき渇望……最高の勝利を得るためなら、どんな危険もいとわない狂った価値観と勝利への貪欲さ……人の皮を被った化け物がそこにいた。


「俺を退屈させるな、俺を満足させろ、俺をもっと楽しませろ! 憤怒よ、俺に本気を出させろ!」



〈魔王英雄ヒーローが憤怒を圧倒する〉
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...