生者の証明

桃色うさぎ

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 数十分後、二人は電車の中で肩を並べていた。

 木原が、「好きにしろ」と言うと、上総はあの公園からずっと木原の手を掴んで離さず、今も電車の揺れに身体を任せながら、しっかりとその手は木原の手首を握ったままだった。  
 
 そっと上総は木原の横顔をちらりと見た。
 そのキレイな横顔はいつもとはまるで別人のように静かだ。

 君は何を考えている?
 心の中で呟く。

 
 上総が木原に告白したのは、つい最近だった。

 あの時も、「つきあって欲しい」というセリフに、あっさりと、「好きにしろ。」と言われた。 
 笑いもしない、照れもしないそのポーカーフェイスの顔になんとなく腹がたって、引き寄せて唇に口付けしてみた。
 離れてみると、やっぱり木原の顔はそのままで、ただ一言

 「気が済んだか」

 と言われた。 
 ・・・・でもそれから二人は付き合い出した。
 少なくとも上総はそう思いたかった。
 デートに誘うのも上総から。
 キスをするのも上総から。
 上総の行動に、ただ木原は黙々とついてきた。

 もしかして、俺、同情されているのかな? 

 最近ではそんな思いすらでてしまう、ちょっとしたシビレのような違和感のようなものを木原との関係に感じていた矢先の出来事だった。

 「これからどこに行くつもりだ。」

 ふいに木原がそう上総に尋ねてきた。横を向くと、木原が自分の方を見つめている。
 その迷いのない澄みきったいつもの瞳が、今日はすごく愛しく思える。

 「・・・・山だよ。」

 「山?」

 「そう。 
 ・・・・・俺が以前家族と住んでいた田舎だよ。
 何もないところなんだけれどさ。
 眺めがよくて、空気が澄み切っているんだ。
 とても東京の空気とは比べ物にならない所だよ。」

 「そこで何をするつもりだ。」
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