穏やかに生きたい悪役令息なのに、過保護な義兄たちが構いすぎてくる~イヴは悪役に向いてない~

鯖猫ちかこ

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伊吹は

9*

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 拗ねないで、と言う声すらもまだ笑っている。
 別に本気で拗ねてる訳ではない。
 実際にふたりより年下で、甘やかされるのは心地好いと思ってる。だけどこども扱いはだめだ。
 だってこどもにこんなこと、しないでしょう。

「……しないの、くち」
「伊吹が欲しくなったらな」
「そんなこと言ってたら今日は玲於さんの出番ないんだからね」

 玲於さんはまだおれに触る気がないらしい。折角こちらから振ってあげたというのに。
 少し腹が立って悪態を吐いて、ふいと視線を逸らし、それから玲於さんの膝を蹴ろうとして……止めた。
 相手は一応自分のところの社長だった。こういうことしてるとどうにもレオンと重なって忘れかけてしまう。
 レオンだって王子だった訳で、蹴っていい相手ではなかったけれど。彼は笑って許すだろうという変な信頼感があった。
 いや、玲於さんだって許すだろうとは思うけど、今考えるとなんだろう、やっぱり現実味がない世界だったな。

「じゃあ伊吹はもう少し僕と遊ぼうか」
「あっ」
「力抜いて」
「……ん、ッ」
「ふふ、玲於さんはいつも特等席いるねえ」
「もう少し足を開いてみな」

 だって、と笑いながら有都さんがぐいとまた足を開く。
 おれの意思は関係ないみたい。
 恥ずかしくて死にそうだし、こんなのおれの趣味じゃない。暴れたら、本気で嫌がったら、きっとふたりとも止めてくれるんだろうけど。

「……あ、」

 ここまで来て全く興奮してないなんてこともないのだ。一回出して終わり、となる程すっきりもしてなかった。
 有都さんの指先がお腹を撫でて、そのままゆっくりと降りていく。おれが吐き出したものを薄く広げるように。
 ぬとぬととした感触が気持ち悪くて、それでも期待してるかのように声が漏れる。

「有都」
「ああ、ありがとうございます」

 玲於さんが投げたものを受け取った有都さんはお礼を言って、それからおれにも、これいっぱい使おうね、とそのボトルを振って見せた。
 これ。
 ぼおっとした頭のままそれをじっと見ると、はい、と手渡された。

「……これ、」
「ん、蓋開けて」
「ふた……」

 ぱち、と蓋を指で上げると、少し甘いにおいがする。
 今自分が手にしてるものが何か分からない程初ではなかった。でも使ったことはない。あの世界で、同じ目的のものは使ったことあるが。

「どこに使うかわかる?」
「……ン」
「伊吹が痛くならないようにこれ、使うの。わかるよね」
「わかる、けど……」
「ここに出して」

 はい、と出されたのは手のひら。中身をその有都さんの手に出せということらしい。
 それはつまりふたりを受け入れる準備をおれが許すということ。それもその通りなんだけど、そう意識すると指先が震えた。
 こわいという訳ではない。いや、少しくらいはやっぱりこわいけど。

「大丈夫、痛いことはしないよ」
「……」
「だからこれ、いっぱい使ってゆっくり慣らそうね」
「んッ……」

 力の抜けた手でぎゅうとボトルを握ると、ぶちゅっと少し下品な音を立ててとろとろとした液体が有都さんの手のひらに垂れる。
 溢れそうになったそれに慌てて自分も手を添えた。
 さらさらぬるぬるしていた香油よりどろどろのねちゃねちゃ、それから甘いにおいは人工的だ、と思った。

 少量の液体を指先で自分の手のひらに遊ぶように広げる。
 あっちの世界にはなかったから、ローションもゴムも初めて手にした。
 魔法があるのって便利だったな、とこんなしょうもないことで実感してしまう。
 いや、あっちの世界でだって潤滑油を使ったし、最後までついていけなくて後処理なんてどうやってたか知らないけど。

「伊吹が自分で慣らしたい?」
「へ」
「いいよ、伊吹が選んで。いちばん大変なのは伊吹だからね」
「え、え、……え?」
「いいなあ、それ」

 柔らかな有都さんの声に割り込むように玲於さんが楽しそうに口を挟む。
 余計なことを言うなと睨みつけるけれど、それにすら満足そうに笑顔で返されるものだから無駄だと悟った。
 酔ってんだ、ふたりとも。いや、有都さんは呑んでなかったけど。

「伊吹が俺も有都もその気にさせてくれるってことだろう?」
「は、あ、何言って」
「ほら、その手で触ったらきっと気持ちいいぞ」
「さわっ……え、や、えっ、だって、」

 その気にさせるって、だってもう有都さんはその気になってるでしょ、わかるし。後ろに硬いもの、当たってるし。
 そりゃあこんなぬるぬるした手で触ればその、気持ちいいだろうな、ってのも想像出来るけど。
 でもまだそこまで頭馬鹿になってない。流石にふたりの前で自慰擬きの行為なんて出来ない。擬きじゃない、そのものだ。
 ……それに、ふたりともいるのに。

「じ、自分ですんの、やだ……」
「嫌なの?」
「選んでいいって、有都さんが言ったあ……」
「ああうん、そうだねえ、玲於さんがいじわるだったね?そうだよね、恥ずかしいしこわいよねえ、ごめんね、大丈夫、優しくするからね」

 有都さんの少し慌てたような声と、目元に何度も落とされた唇に、もしかして自分は泣いてるのか、と気付いた。
 いやだな、こんなことで泣くつもりなんて全然ないのに。こども扱いはいやだと思いながら、そう取られても仕方のないことばかり。
 気持ちいいことされると涙腺が緩んでしまうみたいだ。
 少しバツの悪そうな玲於さんにはちょっとだけ、ざまあみろ、と思ったけれど。
 なんだかんだ言ったって、ふたりがイヴに弱いことは知ってるんだから。同じ見た目のおれにだってそうでしょ。
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