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15.試練を与えよ!
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「ごめんね、フローリア」
そう言って抱きしめると、フローリアはわっと泣き出してしまった。
「お姉様、結婚の試練のこと、聞きましたわ。どうか、危ないことはおやめになってください。わたくしなら、アンダーソン公子と婚約……いえ、結婚しても、よろしいですから……」
フローリアは、姉のわたしが言うのもなんだけど、めちゃくちゃ美少女だ。
亜麻色の長い髪。桃色の目。つやつやのくちびる。顔はちっちゃくて、すらっとしている。
だから、アンダーソンは、フローリアとの婚約でもいいって言ったんだろう。
それに、アイツはきっと、王族にさえなれればなんでもいいのだ。
「ダメだよ、フローリア。自分をもっと大切にしなさい」
わたしはやさしくなだめた。
わたしは知っている。
この愛しい妹も、わたしと同じ目にあい、わたしと同じく自由を夢見ていることを。
「わたしが勝ったら、竜倒公爵がわたしのことを女王に推薦してくれるんだって」
これは予想外だった。なんていうか、ついでにこんなことを言ってくれてラッキーって感じ。
「それで、わたしが努力して推薦をたくさんもらってさ。もしわたしが正式にこの国の後継ぎになったら、フローリアがもっと城で過ごしやすくなるようにするからね」
「例えば?」
「自由時間をもっと増やす! 今までは、自由時間も王女の品格を忘れずおしとやかに~なんて言われてたけど、それって自由じゃないじゃん。だから、自由時間には何をしても問題なし! 泥遊びだろうが、木登りだろうが、好きなことをする!」
ふんっと鼻息荒く宣言する。
「まあ、お姉様ったら。泥遊びも、木登りも、お姉様がやっていたことではないですか」
……うん、そうなんだよね。わたし、おとなしいフローリアとは違って、超がつくほど活発だったから。
木から落ちたときは、「お願いだから、あなた様は王女であることを自覚してください!」って教育係に泣きながら叱られたっけ。
フローリアはくすくすと笑っている。よかった。ちょっと元気が出て来たみたい。
「それに……。それにね、フローリアが、どんな人とも自由に結婚できるようにしてあげるから」
フローリアはきょとんとした後、困ったように笑った。
「わたくし、ずっと、お父様のために、……いえ、国のために、決められた人と結婚すると思ってましたわ。だから……、その、『好き』とか、よく分かりませんの」
フローリアの言葉に、胸がしめつけられる。
うん、分かんないよね。だって、わたし自身も、よく分かんなかったもん。
でも、ダンジョン・マンションにいた時は、あっちにトキメキ、こっちにドキドキし……。
心臓が、いくつあっても足りないって思った。
もしかして、わたしって浮気性⁉ なんて、思ったりもして。
……でもね、わたし、出会えたんだよ。
わたしの……、愛する人、ヴァンにね。
だから、これだけは断言できる。
「ふたりが愛し合ってもいないのに、結婚するなんてのは、間違ってるよ。愛って、とても尊いものだと思う。それを踏みにじるようなまねは、父さんにしてもらいたくないな」
「……そうですわね」
そう言うと、フローリアはわたしの顔を見上げ、なんだかもじもじし始めた。
「えーと、その、あの……。お姉様……、わたくし、今日、ここでいっしょに寝ても、よろしくて?」
「もちろん! さ、おいで、フローリア」
手を引いて、ベッドへと向かう。
こうして、試練の日までの二週間は、あっという間に過ぎて行ったのだった……。
そう言って抱きしめると、フローリアはわっと泣き出してしまった。
「お姉様、結婚の試練のこと、聞きましたわ。どうか、危ないことはおやめになってください。わたくしなら、アンダーソン公子と婚約……いえ、結婚しても、よろしいですから……」
フローリアは、姉のわたしが言うのもなんだけど、めちゃくちゃ美少女だ。
亜麻色の長い髪。桃色の目。つやつやのくちびる。顔はちっちゃくて、すらっとしている。
だから、アンダーソンは、フローリアとの婚約でもいいって言ったんだろう。
それに、アイツはきっと、王族にさえなれればなんでもいいのだ。
「ダメだよ、フローリア。自分をもっと大切にしなさい」
わたしはやさしくなだめた。
わたしは知っている。
この愛しい妹も、わたしと同じ目にあい、わたしと同じく自由を夢見ていることを。
「わたしが勝ったら、竜倒公爵がわたしのことを女王に推薦してくれるんだって」
これは予想外だった。なんていうか、ついでにこんなことを言ってくれてラッキーって感じ。
「それで、わたしが努力して推薦をたくさんもらってさ。もしわたしが正式にこの国の後継ぎになったら、フローリアがもっと城で過ごしやすくなるようにするからね」
「例えば?」
「自由時間をもっと増やす! 今までは、自由時間も王女の品格を忘れずおしとやかに~なんて言われてたけど、それって自由じゃないじゃん。だから、自由時間には何をしても問題なし! 泥遊びだろうが、木登りだろうが、好きなことをする!」
ふんっと鼻息荒く宣言する。
「まあ、お姉様ったら。泥遊びも、木登りも、お姉様がやっていたことではないですか」
……うん、そうなんだよね。わたし、おとなしいフローリアとは違って、超がつくほど活発だったから。
木から落ちたときは、「お願いだから、あなた様は王女であることを自覚してください!」って教育係に泣きながら叱られたっけ。
フローリアはくすくすと笑っている。よかった。ちょっと元気が出て来たみたい。
「それに……。それにね、フローリアが、どんな人とも自由に結婚できるようにしてあげるから」
フローリアはきょとんとした後、困ったように笑った。
「わたくし、ずっと、お父様のために、……いえ、国のために、決められた人と結婚すると思ってましたわ。だから……、その、『好き』とか、よく分かりませんの」
フローリアの言葉に、胸がしめつけられる。
うん、分かんないよね。だって、わたし自身も、よく分かんなかったもん。
でも、ダンジョン・マンションにいた時は、あっちにトキメキ、こっちにドキドキし……。
心臓が、いくつあっても足りないって思った。
もしかして、わたしって浮気性⁉ なんて、思ったりもして。
……でもね、わたし、出会えたんだよ。
わたしの……、愛する人、ヴァンにね。
だから、これだけは断言できる。
「ふたりが愛し合ってもいないのに、結婚するなんてのは、間違ってるよ。愛って、とても尊いものだと思う。それを踏みにじるようなまねは、父さんにしてもらいたくないな」
「……そうですわね」
そう言うと、フローリアはわたしの顔を見上げ、なんだかもじもじし始めた。
「えーと、その、あの……。お姉様……、わたくし、今日、ここでいっしょに寝ても、よろしくて?」
「もちろん! さ、おいで、フローリア」
手を引いて、ベッドへと向かう。
こうして、試練の日までの二週間は、あっという間に過ぎて行ったのだった……。
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