おお、勇者よ!姫ではなく王を欲するとはなんたることだ!

銀紙ちよ子

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 一国の姫であるのに、俺の甲斐性のなさで生成りのドレスを着ているが、それがまた妖精のようで、控えめに言っても最高に清楚で可愛い!
 そう、俺の娘は最高に可愛い!
 そして性格も最高にいい!

 あんなにちっちゃくて、泣いてばかりだったのに……。
 この混乱と絶望の時代に、こんなにいい子に育つなんて……。
 おおぉおぉぉ、フローラ……。


「あぁ……。約束……約束したな」


 幼い頃から命を懸けて、世界を救うために尽力し、それを果たしたこの青年に、俺は報いなければならない。
 それに、娘を嫁がせるのにこれ以上の男はいないだろう。
 なんたって世界最強だ。
 それに見た目だって良い。

 暑苦しくない程度の筋肉に長い手足。高身長で、何よりその顔。
 気後れするほど整った顔立ちをしているが、柔らかく下がった垂れ目とその下のはっきりとした涙袋が、近寄り難い印象を柔和なものに変えていた。

 報告によると人柄もいいし、歳もまぁ。
 フローラが十五で、アレンが二十二だから……やっぱりもうちょっと待って貰おうかな!?


「王さま」


 アレンが呼びかけてくる。
 わかってる……わかってるさ!


「褒美だよな!」


 俺は泣く泣く、俺の役割を果たそうと口を開いた。


「勇者アレンよ。そなた達は本当によくやった」


 膝をつき頭を垂れる、勇者パーティーの一人一人を視界に入れる。
 彼らの装備には大小様々な傷がつき、旅の過酷さを物語っていた。
 勇者パーティーにうちから応援に出した、騎士のヴォガハムは隻眼になったしな……。


「そなた達の勇気と努力、献身の賜物で魔王は滅び、世界から闇が祓われた。そなた達の功績は永く語り継がれることになろう」


 こんな感じだよな?
 俺は王らしく、威厳ある感じを目指したが、どうにも締らない。
 これ、下りてから言ったほうが良かったのでは?
 アレンの腕の中でもぞもぞする俺に、彼は朗らかに同意した。


「はい、がんばりました。ですので」


 褒美だよな!


「わかっておる。勇者、アレンよ。そなたには我が娘、フローラ姫との――」

「僕に王さまの番の座をください」


 ん?


「たわけぇえええええ!!」

「先程から無礼の数々!」

「それは……」

「あらあらあら」

「まぁ!お父さまを?」


 あ。なんか大広間が荒れてるな?
 えっと……。


「なんて?」

「僕を陛下の番にしてください」


 理解できない状況に俺は大きく瞬いた。
 すいっと近づいたアレンの唇が柔らかく笑み、吐息が触れる。


「あなた、オメガですよね?」

「……!」


 余りの近さに仰け反ると、背中ごと首を支えられて、ホールドされた。


「若を離すのじゃぁあッ!」

「待て待て、落ち着け!」

「ばかたれ!皆の者止めよ!」

「相手は勇者ぞ!陛下がお怪我をされたらどうする!」


 後ろでガチャガチャ金属音がしてるぅ~。
 うわぁ~。


「シィー……集中して」


 首の後ろに添えられた手が俺を引き寄せて、琥珀の瞳が俺を捉えた。
 蜂蜜をとろりと溶かしたような瞳の吸引力に、俺は一瞬言葉を失う。


「返事は?」


 あ、鼻が触れ合いそう。


「どうか!無礼を承知でお願いいたします!」

「へっ?」


 アレンの後ろ、彼の仲間から声が上がった。
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