上 下
5 / 47
プロローグ

二度目の人生 4

しおりを挟む

世界が、壊れる。

おかしい。
おかしいのだ。

こんなことは。

叫びたくなった。

なぜこの世界にいないのだと。
そう、慟哭した。





王女の葬儀の日だった。
ぼんやり立って、見ていた。
気がついたら棺はなくなっていた。

でかい国葬だったのに、もう一日経っていた。

ぼんやりしているうちに、棺は燃えたらしい。
そう聞いて、吐き気がした。
気が、狂うかと思った。

ひたすらに立ち続ける俺は恐ろしかったという。
正気を疑うような、今にも死にそうな顔で、目で、食い入るようにその様を見つめていたらしい。



誰も責めなかった。

その日お前はいなかったんだから、仕方ない。

誰も誰も、莉緒の居場所を知らない。

莉緒の、居場所を。



葬儀が終わって、俺は家に帰った。

家の、いつも剣を振っていた裏庭で、ひたすらに素振りした。

楽になると思った。
全然楽にならなかった。

なんで、

剣を振るう手は止まっていた。

ひたすらに、なんで、と。
頭の中で、そう繰り返す。

なんで王女は死んだのか。
なんで王女が死ななければならなかったのか。
なんで王女は暗殺されたのか。
なんで王女の護衛は何もしなかったのか。

その時俺は何をしていたのか。



その日、俺は吐いた。

死ぬほど気持ち悪くて、死ぬほど辛い。
あまりにも苦しくて、生きているのかどうかも謎の中、弟が遠くから駆け寄る姿を最後に、意識は途絶えた。

その二日後、俺は王女の兄に、王女の日記を見せてもらった。
しおりを挟む

処理中です...