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男なのに『聖女』になってしまった俺の華麗なる半生

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滑らかに滑り落ちる絹糸のような純白の髪に、深く魅入られるような群青の瞳。
顔立ちこそ母上そっくりと言われるが、不義の子疑惑がかかるほど、その色合いは両親と似ても似つかなかった。

もちろん影でコソコソ言われたし、完璧だと言われている兄姉と比べられては嘲笑されるのは日常茶飯事。
それでも俺が平然としていられるのは多分・・・というか間違いなく、俺が馬鹿にされた瞬間俺を置いて殴り込みに行く家族の存在だろう。

子供に甘い両親はもちろん、一番上の双子の兄姉、騎士を目指す次男、魔法の天才である次女、それはそれは美しい三女。
次いでに最凶と恐れられる魔法学園の学園長である伯父に、書類上の身内である皇帝一家。
それら全てが俺を守るように動いたからか、年頃になる頃には何も言われなくなった。

・・・いや、一番の原因は、である母上の力を、そっくりそのまま受け継いだことが周りに知られたからだ。



俺が生まれた瞬間、誰もが瞠目したと聞く。

なんせ天上から光が降り注ぎ、動物たちが踊るように跳ね、小鳥たちがそれはそれは美しい声で鳴き出し、虫たちが祝福するように宙を舞ったと言うから。

その後引きつった母上は一言、「私の時はお母様がいたから・・・」と呟いたという。

その後生まれた俺が泣けば、局地的な嵐と地震が巻き起こり、笑えば花々が咲き誇り暖かな光で世界が満ちた。

そう、俺は不運な男なのだ。

聖女、と聞くと誰もが華奢で嫋やかな美女を想像する。
俺も想像する。

でも俺は顔こそ母上似だが、成長期に入ると身長は伸びに伸び、兄上達ほどではないが一般男性を頭半分ほど見下ろせる程度になった。
体付きも、着痩せするタイプなので脱ぐと筋肉が付いている。
まあ次兄の訓練を一緒に受けてたからな。

理由としては聖女の力を継いだことが知れた時、おそらく真っ先に狙われるからだ。
結局その通りだったのであの頃地獄だと思っていたことは否定しないが感謝している。

次姉が魔法学園に入学した頃、俺は帝国屈指の規模を誇る大聖堂に向かうことになった。

ものすごく人のいい大司祭・・・母上たちの結婚式で牧師役をやってくれた人が、俺の事を親身になって同情してくれて、とんでもなくいい待遇で迎え入れてくれると言うのだ。

それに飛びついたのは母上たちではなく、俺。
縋る家族を振り切り、神の子として堂々と大聖堂に入った。

この時、俺、リュオン十七歳。
これから怠惰に味をしめた俺は大聖堂に引きこもることになる。
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