俺の恋路を邪魔するなら死ね

ものくろぱんだ

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駆込み訴え

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「リュオン!匿ってたも!」

大聖堂の天井を震わせ、駆け込んできたのは第一皇女ウェングリンだった。

美しく整えられた碧銀の髪は乱れに乱れ、青緑の瞳はうるみきっている。

実の姉では無いが、身内として認識している彼女の、普段なら有り得ない様子に俺は眉をはね上げた。



「つまり、ラナーシュと喧嘩したと」
「うむ!そうじゃ、そうなのじゃ!」

次兄ラナーシュは幼き頃から騎士を目指し、先の戦いで英雄騎士として名を挙げ、ウェングリン皇女直属の護衛騎士になった。
体つきこそ雄々しい英雄像の如きであるが、その顔はどんな女も見惚れるほどに美しい。
そのふわふわとした灰銀色の髪や、少しタレ目がちの薄い翠の瞳が母性本能を引き起こすのだろうか、いつも女性に囲まれている。
それがラナーシュの印象だった。

幼い頃は共に訓練を受け、暑苦しいほどに構ってくれた兄だが、口に出すことと言えば訓練か家族かウェングリンのことだけ。
割合的には3:3:4くらいだろうか。

いつも元気で明るく、両親に適度に甘え、その甘えが消える頃には立派な色男になっていた兄。

そんな兄の唯一の例外がウェングリンだった。

皇太子妃譲りの碧銀色の髪に、猫のようなつり目がちの青緑の瞳のそれはそれは美しい皇女様。
幼い頃から母上にべったりで我が家に入り浸っていた彼女は、俺たち兄弟はもちろん、ラナーシュにとっての特別だった。

いつも喧嘩ばかりだが、ウェングリンの来訪を知ると訓練すら放り出し忠犬のように駆け寄る兄をみんな微笑ましく見ていた。

・・・まさかこの歳になっても初恋を自覚していないなんて誰も思っていなかったが。

「ウェングリン皇女もそろそろ結婚適齢期・・・ラナーシュ、あなたはどうするの?」
「え?俺?ウェングリンが結婚したら相手探すかなぁ、別に独身のままでもいいけど・・・どうしたの?」

ラナーシュが紡いだ言葉は家族のみならず皇帝一家にも衝撃を与えた。
一番動揺していたのはランスロット皇太孫だったが。

「・・・ウェングリンも自覚してないんだが・・・どうすればいいんだ・・・?」

そう呟いたランスロット皇太孫に、その場にいた全員が真っ青になった。



「で、喧嘩の理由は?」

いつもみたいに馬鹿げた理由だろうと決めつけ、とりあえず聞き出す。

そんな俺に帰ってきたのはちょっと予想だにしていない言葉だった。

「聞いてくれるか!酷いのじゃ、ラナーシュのやつ!わらわが隣国に嫁ぐと言ったら怒り出して!」
「うんうん・・・うん?」
「ラナーシュだって会ったことがあるならわかっているはずなのだ・・・あの人は多分いい人だと!」
「たぶん・・・」

そうか・・・ウェングリンはまだ気持ちを気付いてないのか。
それで結婚の話をして・・・ラナーシュはやっと気持ちに気付いたのか?遅くね?

次いでに多分って・・・心配すぎる。
ウェングリンは見る目ないから多分ろくでもない奴だろ(断言)。

また馬鹿みたいな戯言に俺は頭を悩ますことになった。
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