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☆つまんない昔話
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ネロが生まれたのは、四人の宰相が治める、国王のいない国だった。
宰相と多くの大臣、騎士や魔法使いが集う城に、玉座は無い。
その代わり、城の中央に水平な、円卓の机と四つの椅子が置いてある。
四人の宰相はそれぞれ四つの公爵家の出身で、城を中心として分けた四つの地区をそれぞれ治めていた。
美しく才能に溢れた、冷酷な公爵、ビエルテは北を。
雄々しく勇猛で、武勇に優れた公爵、ガルドスは東を。
金にがめつく蛇のような、非道な公爵、ルピテウは南を。
優しいが気弱で、平凡な公爵、ヴォイツは西を。
かつては存在していた王家が滅んだ後、国を支え続けた忠臣たちは、今代で大きく差ができた。
最も繁栄するのは、ビエルテが治める北の地。
それに媚びを打って甘い汁を吸おうと当たりを飛びまわるルピテウは、相手にこそされないがビエルテの優秀な采配で仕事を振られ、二番目に繁栄した。
ガルドスはあまり政治に興味は無いが、武勇に憧れる騎士や冒険者の出入りが激しく、そこに目をつけた商人たちもやってきて、結果的に三番目に豊かになった。
そして流されやすく、忠誠心だけが高かったヴォイツは、他の三つの公爵家とは目も当てられないほど落ちぶれ、失敗したものたちが集まる場所となった。
ネロは、そんなヴォイツが治める西の地に生まれ落ちた。
母親は美しい娼婦だった。
父親のことを知っても興味がわかない程度には、情が薄い世界で生きていた。
たまに炊き出しをするヴォイツという公爵が、その薄い、あまり印象に残らない顔を悲しげに、悔しげにしかめて、泣きそうになりながら食料を手渡しするのがよく見る光景だった。
だからヴォイツは好かれていた。
あるものには神のように、救世主のように信仰され、
あるものには呆れた子供を見るように過保護に。
あるものには、仲のいい友人のように好かれていた。
ネロと名付けられた子供も、ヴォイツのことが好きなひとりだった。
ネロは美しい母親よりも、そこらの女よりも、群を抜いて美しかった。
誰もが口を揃えて女なら、いいや、男でも抱いてみたいと言い放ったが、昔から人より強かったネロはその全てを跳ね除けた。
そんなネロにとってヴォイツは実の親より親だった。
周りはネロの血筋を知るものばかりで、なんだかんだ言って一線を引かれていて、ネロに惹かれて近寄るものたちとも、結局対等ではなかった。
だからこそネロはヴォイツが気に入っていた。
ついでに言えばヴォイツの家族である心優しいお人好したちも気に入っていた。
将来偉くなったら助けてやると、そう豪語した。
彼らは夢を語る子供を見るように優しくネロを見て、楽しみにしていると優しく言った。
それがあんまりにむず痒く、ネロは笑った。
ネロなら、不可能じゃない。
ネロにはカリスマ性がある。
それは血筋によるものだ。
天性と言っていい能力だ。
だからネロは己の成功を信じて疑わなかった。
そしてその通り、ネロは『神の子』という素晴らしい存在の片割れとして、あの国を出た。
「いつかあの国に戻って、ヴォイツやヴォイツの領地の奴らを助けてやるのさ」
そう言って、俺はニンマリ笑った。
宰相と多くの大臣、騎士や魔法使いが集う城に、玉座は無い。
その代わり、城の中央に水平な、円卓の机と四つの椅子が置いてある。
四人の宰相はそれぞれ四つの公爵家の出身で、城を中心として分けた四つの地区をそれぞれ治めていた。
美しく才能に溢れた、冷酷な公爵、ビエルテは北を。
雄々しく勇猛で、武勇に優れた公爵、ガルドスは東を。
金にがめつく蛇のような、非道な公爵、ルピテウは南を。
優しいが気弱で、平凡な公爵、ヴォイツは西を。
かつては存在していた王家が滅んだ後、国を支え続けた忠臣たちは、今代で大きく差ができた。
最も繁栄するのは、ビエルテが治める北の地。
それに媚びを打って甘い汁を吸おうと当たりを飛びまわるルピテウは、相手にこそされないがビエルテの優秀な采配で仕事を振られ、二番目に繁栄した。
ガルドスはあまり政治に興味は無いが、武勇に憧れる騎士や冒険者の出入りが激しく、そこに目をつけた商人たちもやってきて、結果的に三番目に豊かになった。
そして流されやすく、忠誠心だけが高かったヴォイツは、他の三つの公爵家とは目も当てられないほど落ちぶれ、失敗したものたちが集まる場所となった。
ネロは、そんなヴォイツが治める西の地に生まれ落ちた。
母親は美しい娼婦だった。
父親のことを知っても興味がわかない程度には、情が薄い世界で生きていた。
たまに炊き出しをするヴォイツという公爵が、その薄い、あまり印象に残らない顔を悲しげに、悔しげにしかめて、泣きそうになりながら食料を手渡しするのがよく見る光景だった。
だからヴォイツは好かれていた。
あるものには神のように、救世主のように信仰され、
あるものには呆れた子供を見るように過保護に。
あるものには、仲のいい友人のように好かれていた。
ネロと名付けられた子供も、ヴォイツのことが好きなひとりだった。
ネロは美しい母親よりも、そこらの女よりも、群を抜いて美しかった。
誰もが口を揃えて女なら、いいや、男でも抱いてみたいと言い放ったが、昔から人より強かったネロはその全てを跳ね除けた。
そんなネロにとってヴォイツは実の親より親だった。
周りはネロの血筋を知るものばかりで、なんだかんだ言って一線を引かれていて、ネロに惹かれて近寄るものたちとも、結局対等ではなかった。
だからこそネロはヴォイツが気に入っていた。
ついでに言えばヴォイツの家族である心優しいお人好したちも気に入っていた。
将来偉くなったら助けてやると、そう豪語した。
彼らは夢を語る子供を見るように優しくネロを見て、楽しみにしていると優しく言った。
それがあんまりにむず痒く、ネロは笑った。
ネロなら、不可能じゃない。
ネロにはカリスマ性がある。
それは血筋によるものだ。
天性と言っていい能力だ。
だからネロは己の成功を信じて疑わなかった。
そしてその通り、ネロは『神の子』という素晴らしい存在の片割れとして、あの国を出た。
「いつかあの国に戻って、ヴォイツやヴォイツの領地の奴らを助けてやるのさ」
そう言って、俺はニンマリ笑った。
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