自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊

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一章 女神様と同居編

2話 「女神様は世話焼き」

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「美味っ…」

同棲が決まったその日の夜。
俺は柊と共に夕飯を食べていた。

メニューは、ハンバーグだ。
なんと柊の手作りで、これがもうプロ級の腕前だったのだ。
手際良し、味よし、見た目よしで、最高の出来だ。

「ありがとうございます」

「正直かなりビックリしてる。凄いな本当に」

「褒めすぎですよ」

照れ臭そうに目を逸らす柊に笑いながら、ハンバーグを食べる。

(ハンバーグは本当に美味しい。だが…これはなぁ…)

目の前には、付け合わせの野菜達がある。
ブロッコリーと、薄く切った人参。

俺は、野菜が大嫌いだった。
足りない栄養は渋い顔をしながら野菜ジュースを飲む事で補うほど、野菜が嫌いだ。

そんな俺の態度で察したのか、柊は冷たい目で俺を見る。

「後は野菜だけですね」

そう。ハンバーグは食べ終わった。
今は凄く幸せな気分だ。
目の前に野菜が無ければだが…

チラチラと野菜と柊を交互に見ると、柊は野菜を指さす。

「ちゃんと食べないと、野菜達が可哀想ですよ?」

まるで子供を相手にしているような口調で言う。

「子供扱いしやがって…」

「あら、では子供じゃないと言うところを見せていただかないと」

「くっ…」

「アレルギーとかではないんでしょう?」

俺は頷き、ゆっくりとフォークで人参を突き刺し、勢いよく口に放り込んだ。

(…あれ、美味いぞ)

前に食べた野菜は食べた瞬間鳥肌が立ったというのに、この野菜は何故か美味い。
噛んだ瞬間に甘みが出てくるし、野菜特有の臭みがない。
ブロッコリーも食べてみるが、こちらもシャキシャキとして美味しかった。

「ご、ご馳走様でした」

「よく食べられましたね。えらいです」

柊は小さく拍手をすると、2人分のお皿を持ってシンクへ持っていった。

「洗い物は俺が…」

「今日は初日ですし、家事の分担は明日ゆっくり決めましょう。 明日はちょうど土曜日でお休みですし」

「分かった。 なんか悪いな…」

「私が提案した事ですので気にしないで下さい」

そう言って、柊はテキパキと食器を洗っていった。よく見ると、キッチンも細かいところまでよく清掃されていた。

いつもコンビニ弁当かカップ麺で済ましていたので、素直に感心してしまう。

時刻は20時を回ったあたりで、まだ寝るには早い時間帯だ。

2人でソファに座りテレビを見ていたのだが、やはり落ち着かない。

「…そういえば、家が全焼したって事は、服とかも全部ないって事ですよね」

「あーそうなるな…服も教科書もまた一から買い直しだ」

財布や通帳などは常に鞄に入れているから無事だったが、失った物は大きい。

「教科書は学校で買えるからいいとして、服はこの休み中に買いにいくしかないですね」

「だな。 まぁ服にこだわりとかはないから、適当に古着屋とかで安いのをいっぱい買ってくるよ」

「その…慣れない環境で不安だとは思いますが、何かあったら相談には乗りますよ」

目を逸らしながらいう柊に、思わず笑ってしまった。

「な、なんで笑うんですか」

「いや、優しいなぁと思って」

「別に、このくらい普通です」

「そっか。でも、ありがとな。正直助かるよ」

もしあのまま1人で次の部屋が見つかるまでホテル暮らしだったら、イライラしてたかもしれない。
だが、期間限定だが、暖かくて美味しいご飯と、綺麗な住居を提供してくれた柊には感謝しなくてはならない。

「……如月くんの寝室に案内します!」

照れているのを隠すように、柊は勢いよく立ち上がり、廊下に向かう。
俺は笑いを堪えながらついていく。

「ここがトイレで、こっちが私の寝室です。さっきも言いましたが…」

「入室禁止だろ?」

「よろしい。 そしてここが如月くんの寝室です」

柊の部屋の隣の扉を開けると、何も置かれてない本棚と、机と、綺麗なベッドが置いてあった。
収納スペースもちゃんとあり、俺が前住んでたアパートよりも良い部屋だった。

「もともとここは客室…家族が来た時用の部屋なのですが、来る事は無いので自由に使ってください」

家族。という言葉を口にする柊は、どこか悲しそうだった。

「部屋の紹介は以上です。 後はお互い自由に過ごしましょう」

そう言って、柊は部屋を出ていった。
まだ21時だが、今日は流石に疲れた。

いつもなら0時過ぎまで起きているが、今日は早めに寝よう。

そう決意してベッドに座ると、部屋の扉がゆっくり開き、柊がひょこっと顔を出した。

「どうした?」

「あ、あの…えっと…」

「ん?」

「お、おやすみ…なさい」

顔を真っ赤にしながら、柊は言った。
そんな柊が可愛すぎて、俺は思わず口元が緩む。

「あぁ、おやすみ。また明日な」

そう言うと、柊は扉を閉めて自室に帰っていった。

俺はそのまま倒れるようにベッドに寝る。
その日は疲れていたからか熟睡出来た。
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