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一章 女神様と同居編
8話 「女神様、初めてのゲーム」
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「え、何これ」
学校に行くと、机の上に大きな袋が置かれた。
置いた人物は、春樹だ。
「開けてごらん」
言われた通り袋を開け、中を覗き、俺は目を見開いた。
中には、最新型ゲーム機のSwitchと、ゲームソフトが3本入っていた。
1つ目は複数の作品の大人気キャラクター達が戦う大人気格闘ゲーム。
2つ目は大人気キャラクター達がカートに乗り、アイテムを駆使しながら1位を目指すレースゲーム。
3つ目は赤と緑の配管工が姫を助ける為に数々のステージをクリアする国民的ゲーム。
が入っていた。
「え、お前コレ…」
「陽太は家が燃えたから、当然ゲームも無くなってしまっただろう? だから退屈だろうなぁってお父様に話したら、くれたんだ」
「えぇ…」
春樹の父親はとあるゲーム会社の社長をしており、ゲーム関係には詳しい。
だがまさかゲームをくれるとは思っても見なかった。
「いや、流石にタダで貰うわけにはいかねぇよ」
そう言って財布を出そうとする俺を、春樹は止める。
「人の善意は素直に受け取っておいた方が良いよ? それに、家が燃えてゲームが出来なかったから~って言い訳されても嫌だからね」
俺と春樹は、よくゲームで対戦をしていた。
勝率は五分五分なのだが、家が全焼してからは当分は出来ないと思っていた。
「…なら、ありがたく貰う。 いつか絶対にお礼はする。 おじさんにもありがとうございますって言っておいてくれ」
「分かったよ」
春樹はそう言って笑うと、自分の席に戻っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何ですかその大きな荷物は」
家に帰ると、先に帰っていた柊が首を傾げた。
俺はリビングのテーブルに袋を置き、中身を出す。
「え、これって…」
「学校で春樹に貰った。 Switch知ってるか?」
「ば、馬鹿にしてますか? CMくらい見るので知ってます! ピコピコするものですよね」
「ぶッ…」
ピコピコという単語に思わず吹き出してしまった。
「ゲームをピコピコって言う奴本当に居るんだな」
「っ…! 今日のご飯は野菜炒めです!!」
「悪かった悪かった」
顔を背けて立ち上がる柊を止め、もう一度ソファに座らせる。
「…ていうか、本当にそのぬいぐるみ気に入ってんだな」
柊は今、昨日俺があげたくまのぬいぐるみを抱き抱えている。
「昨日寝室に持っていってたから、てっきり寝室に置くもんかと思ってたよ」
「こ、これは…ほら、くまさんを1人にすると可哀想じゃないですか」
「くまさん」
くまさんという可愛らしい言葉に危うく笑いそうになったが、なんとか堪えた。
「そうか。んじゃそのくまさんが寂しくならないようにずっと一緒にいてやってくれ」
「…なんか子供扱いされてるみたいなんですが」
「気のせい気のせい」
すると、柊はチラチラとSwitchの方を見ている事に気がついた。
…柊はさっきのピコピコ発言からして、幼い頃からゲームに触れてこなかったのだろう。
そしてゲームが目の前にあるという事で気になっているのだろう。
「ゲームやりたいのか?」
俺の言葉に、柊はビクッと身体を跳ねさせた。
そして、すぐに顔を背ける。
「べ、別に」
「本当か?」
「ほ、本当です」
「そうか。んじゃこのゲームは部屋で俺1人でする事にするかな」
「えっ…」
消え入りそうな声で言う柊に笑いを堪えながら、続ける。
「あーあ、ゲームは複数人でやった方が楽しいのに残念だ」
「…えっ…」
「でも柊がやりたくないんじゃあ仕方ないよなぁ」
「…たいです」
「え?」
柊が小さく言ったが、本気で聞こえなかったので聞き返す。
すると、柊は顔を真っ赤にする。
「…ゲーム…やりたい…です」
頑張って声を絞り出したであろう柊に笑いながら、俺はSwitchを袋にしまう。
すると、柊がまた「えっ…」と悲しそうな声を出す。
「いまやると夢中になっちゃうかもだから、ゲームはご飯食べて風呂入ってからな」
俺が言うと、柊は顔を明るくし、何度も頷いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕飯を食べ終え、お互いお風呂も入り寝巻きに着替え髪も乾かし終え、俺達はリビングのソファに座っていた。
柊は相変わらずくまさんを抱えているが、柊は先程からずっと目を輝かせている。
そんな柊を微笑ましいなと思いつつ、Switchをテレビに繋げる。
そして、テレビにSwitchの画面が映る。
「おぉ…!」
柊は思わず声を上げた。
「さて、ここに3つのゲームがあります。 どれをやりますか?」
3つのゲームソフトを柊に見せると、パッケージを手に取り、吟味し出す。
「ちなみに簡単に言うと、これが格闘…いわゆる戦う系のゲーム。
これがレースゲーム。
これが2人で協力してコースをクリアしてくゲームだな」
俺が言うと、柊はふむふむ…と更に悩み出す。
別に全部やっても良いのだが、今は20時で、明日も学校がある為、出来ても精々2時間程度だろう。
だから1つに絞ってそれを2時間楽しんだ方がいい。
「じゃあこれ…やりたいです」
柊が指さしたのは、配管工が姫を助ける為に様々なコースをクリアしていくゲームだ。
難しい操作は求められず、大人気のゲームなので最初のゲームにしては分かりやすいだろう。
俺は頷き、ゲームソフトをSwitchに入れる。
そしてコントローラーを片方柊に渡し、ゲームを起動する。
「わぁ…!」
鳴り響くゲーム音に、柊は更に目をキラキラさせる。
「まずは俺が説明役になるから、柊1人でやってみようか 」
「お願いしますっ」
お馴染みの姫が攫われるムービーが流れる。
「えっ!? さ、攫われちゃいましたよ!? 助けなきゃ…!」
まるで映画でも見ているかのようなリアクションについ笑ってしまった。
ゲームを初めて触る人間はこうなるのか。
「その姫を今からお前が助けに行くんだぞ」
「が、頑張ります」
そしてお馴染みの2Dの画面になる。
1-1はかなり簡単に作られている。
だから教えるにはぴったりだ。
「これで歩く。 このボタンを押しながらでダッシュ。 このボタンがジャンプだ」
「なるほど」
そして、柊は赤い配管工を操作し、まっすぐ進んでいく。
すると、前方に茶色い栗型モンスターが歩いてきた。
「あ、何かいます。 かわい…えっ」
柊は栗型モンスターに激突し、残機を一つ減らした。
「自分以外の生き物は全て敵だから、ああ言う奴は踏んで倒すんだ」
「そ、そんなの聞いてません!」
頬を膨らませる柊に小さく笑い、まぁまぁと宥める。
「ここで…ジャンプ!」
柊は先程やられた栗型モンスターの前でジャンプし、栗型モンスターを踏み潰す。
「あぁ…ごめんなさい」
律儀に謝る柊に笑ってしまう。
そして次は、緑の亀が歩いてきた。
「亀さんです! あれも敵なんですか?」
「敵だぞ」
「じゃあ、倒します。 …え、さっきと違って消えません」
亀は栗型モンスターと違い、踏むと甲羅に閉じこもる。
柊は首を傾げながらその甲羅を蹴り飛ばす。
すると甲羅は前の土管に当たって跳ね返り、赤い配管工に当たった。
「えっ!?」
「甲羅は蹴ると滑っていくんだ。 持つ事も出来るぞ」
「な、なるほど…!」
それからも、柊の大冒険は続いた。
ジャンプのタイミングを間違って栗型モンスターに当たったり、穴に落ちたり、モンスターに囲まれてあたふたして残機を減らしたりと、様々な困難に見舞われてきた。
「…難しいです」
ゲーム開始から30分。 柊はまだ1-1をクリアしていなかった。
だが、柊は諦める事なく挑戦している。
元々負けず嫌いなのだろう。
「…如月くんのお手本が見てみたいです」
「ん?いいぞ」
柊からコントローラーを受け取り、配管工を操作する。
この手のゲームはかなり遊んだので、1-1程度なら万に一つも死ぬ事はない。
「え、は、早…」
慣れた動きで走り、目の前の敵を全て倒していく俺の動きに、柊は目を輝かせていた。
そして俺はゴール前で止まり、ゴールはせずにリセットを押した。
「こんな感じだな」
「す、凄いです! 私の操作するキャラクターとは別人みたいでした!」
「柊も慣れればあのくらいできるようになるよ」
「本当ですか!頑張ります!」
それからは俺のプレイで何かコツを掴んだのか、明らかに動きが良くなった。
そして、数分後、ようやく柊の画面にゴールが映った。
柊のキャラクターがゴールに触れ、コースクリアの花火が上がる。
「やった…やりました! ゴールできました!」
「おめでとう。 初のゲームはどうだった?」
「凄く楽しいです! これでお姫様を救出できましたね!」
「…ん?」
満面の笑顔で言う柊だが、何か勘違いをしている。
どうやら柊は1-1をクリアすれば姫を助けられると思っていたらしい。
そんな柊の前に、様々なコース達が現れる。
柊はそれを見て目をパチクリさせ、俺を見る。
「…今柊がクリアしたのは1-1。 このステージをクリアするには、今出てるコースを全部クリアしなきゃいけないんだ。
因みに、姫様がいるのは8ステージ。
まだまだ先だな」
柊の顔が絶望に変わる。
「姫様を助けた頃には、お前も立派なゲーム好きになってるだろうよ」
「それは腕がなります! 絶対にお姫様を助けて見せます!…ところで、このゲームは2人でプレイはできないんですか?」
「ん?いや、出来るぞ?」
「じゃあ、それでやりたいです!」
「でも、最初は1人でクリアした方が達成感ないか?」
俺が言うと、柊は拗ねたように言う。
「…でも如月くんはゲームは複数人でやった方が楽しいって言いました」
俺は小さく笑い、新しくコントローラーを接続する。
画面に、赤い配管工の他に緑の配管工が映る。
「この緑が俺のキャラな」
「はい!」
柊は笑顔になり、2人でコースを攻略していった。
俺はプレイ済みなので、流石に独断専行はせず、あくまで柊のサポートに徹した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれから時間が経ち、時刻は23時になろうとしていた。
俺と柊は、1-5まで来ていた。
新しいギミックが出る度に目を輝かせる柊を見ていると、全然飽きなかった。
だが、流石にもう時間帯がまずい。
明日が土曜日とかならいいのだが、今日は木曜日で、明日は金曜日だ。
「よし、流石にそろそろ終わりにするか」
「えっ、もうこんな時間なんですか…」
時計を見て、柊は露骨に悲しそうな顔をする。
「柊は夜更かし慣れてないだろうし、ゲームが原因で生活リズムが壊れるのは不味いからな。 また今度しよう」
「はい、そうですね。 またやりたいです」
柊はそう言って笑い、お互いソファから立ち上がる。
そして部屋の前まで行く。
「如月くん、おやすみなさい。 ゲーム教えてくれてありがとうございました」
「おう。おやすみ」
そう言って、柊はくまさんを抱えながら部屋に入っていった。
学校に行くと、机の上に大きな袋が置かれた。
置いた人物は、春樹だ。
「開けてごらん」
言われた通り袋を開け、中を覗き、俺は目を見開いた。
中には、最新型ゲーム機のSwitchと、ゲームソフトが3本入っていた。
1つ目は複数の作品の大人気キャラクター達が戦う大人気格闘ゲーム。
2つ目は大人気キャラクター達がカートに乗り、アイテムを駆使しながら1位を目指すレースゲーム。
3つ目は赤と緑の配管工が姫を助ける為に数々のステージをクリアする国民的ゲーム。
が入っていた。
「え、お前コレ…」
「陽太は家が燃えたから、当然ゲームも無くなってしまっただろう? だから退屈だろうなぁってお父様に話したら、くれたんだ」
「えぇ…」
春樹の父親はとあるゲーム会社の社長をしており、ゲーム関係には詳しい。
だがまさかゲームをくれるとは思っても見なかった。
「いや、流石にタダで貰うわけにはいかねぇよ」
そう言って財布を出そうとする俺を、春樹は止める。
「人の善意は素直に受け取っておいた方が良いよ? それに、家が燃えてゲームが出来なかったから~って言い訳されても嫌だからね」
俺と春樹は、よくゲームで対戦をしていた。
勝率は五分五分なのだが、家が全焼してからは当分は出来ないと思っていた。
「…なら、ありがたく貰う。 いつか絶対にお礼はする。 おじさんにもありがとうございますって言っておいてくれ」
「分かったよ」
春樹はそう言って笑うと、自分の席に戻っていった。
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「何ですかその大きな荷物は」
家に帰ると、先に帰っていた柊が首を傾げた。
俺はリビングのテーブルに袋を置き、中身を出す。
「え、これって…」
「学校で春樹に貰った。 Switch知ってるか?」
「ば、馬鹿にしてますか? CMくらい見るので知ってます! ピコピコするものですよね」
「ぶッ…」
ピコピコという単語に思わず吹き出してしまった。
「ゲームをピコピコって言う奴本当に居るんだな」
「っ…! 今日のご飯は野菜炒めです!!」
「悪かった悪かった」
顔を背けて立ち上がる柊を止め、もう一度ソファに座らせる。
「…ていうか、本当にそのぬいぐるみ気に入ってんだな」
柊は今、昨日俺があげたくまのぬいぐるみを抱き抱えている。
「昨日寝室に持っていってたから、てっきり寝室に置くもんかと思ってたよ」
「こ、これは…ほら、くまさんを1人にすると可哀想じゃないですか」
「くまさん」
くまさんという可愛らしい言葉に危うく笑いそうになったが、なんとか堪えた。
「そうか。んじゃそのくまさんが寂しくならないようにずっと一緒にいてやってくれ」
「…なんか子供扱いされてるみたいなんですが」
「気のせい気のせい」
すると、柊はチラチラとSwitchの方を見ている事に気がついた。
…柊はさっきのピコピコ発言からして、幼い頃からゲームに触れてこなかったのだろう。
そしてゲームが目の前にあるという事で気になっているのだろう。
「ゲームやりたいのか?」
俺の言葉に、柊はビクッと身体を跳ねさせた。
そして、すぐに顔を背ける。
「べ、別に」
「本当か?」
「ほ、本当です」
「そうか。んじゃこのゲームは部屋で俺1人でする事にするかな」
「えっ…」
消え入りそうな声で言う柊に笑いを堪えながら、続ける。
「あーあ、ゲームは複数人でやった方が楽しいのに残念だ」
「…えっ…」
「でも柊がやりたくないんじゃあ仕方ないよなぁ」
「…たいです」
「え?」
柊が小さく言ったが、本気で聞こえなかったので聞き返す。
すると、柊は顔を真っ赤にする。
「…ゲーム…やりたい…です」
頑張って声を絞り出したであろう柊に笑いながら、俺はSwitchを袋にしまう。
すると、柊がまた「えっ…」と悲しそうな声を出す。
「いまやると夢中になっちゃうかもだから、ゲームはご飯食べて風呂入ってからな」
俺が言うと、柊は顔を明るくし、何度も頷いた。
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夕飯を食べ終え、お互いお風呂も入り寝巻きに着替え髪も乾かし終え、俺達はリビングのソファに座っていた。
柊は相変わらずくまさんを抱えているが、柊は先程からずっと目を輝かせている。
そんな柊を微笑ましいなと思いつつ、Switchをテレビに繋げる。
そして、テレビにSwitchの画面が映る。
「おぉ…!」
柊は思わず声を上げた。
「さて、ここに3つのゲームがあります。 どれをやりますか?」
3つのゲームソフトを柊に見せると、パッケージを手に取り、吟味し出す。
「ちなみに簡単に言うと、これが格闘…いわゆる戦う系のゲーム。
これがレースゲーム。
これが2人で協力してコースをクリアしてくゲームだな」
俺が言うと、柊はふむふむ…と更に悩み出す。
別に全部やっても良いのだが、今は20時で、明日も学校がある為、出来ても精々2時間程度だろう。
だから1つに絞ってそれを2時間楽しんだ方がいい。
「じゃあこれ…やりたいです」
柊が指さしたのは、配管工が姫を助ける為に様々なコースをクリアしていくゲームだ。
難しい操作は求められず、大人気のゲームなので最初のゲームにしては分かりやすいだろう。
俺は頷き、ゲームソフトをSwitchに入れる。
そしてコントローラーを片方柊に渡し、ゲームを起動する。
「わぁ…!」
鳴り響くゲーム音に、柊は更に目をキラキラさせる。
「まずは俺が説明役になるから、柊1人でやってみようか 」
「お願いしますっ」
お馴染みの姫が攫われるムービーが流れる。
「えっ!? さ、攫われちゃいましたよ!? 助けなきゃ…!」
まるで映画でも見ているかのようなリアクションについ笑ってしまった。
ゲームを初めて触る人間はこうなるのか。
「その姫を今からお前が助けに行くんだぞ」
「が、頑張ります」
そしてお馴染みの2Dの画面になる。
1-1はかなり簡単に作られている。
だから教えるにはぴったりだ。
「これで歩く。 このボタンを押しながらでダッシュ。 このボタンがジャンプだ」
「なるほど」
そして、柊は赤い配管工を操作し、まっすぐ進んでいく。
すると、前方に茶色い栗型モンスターが歩いてきた。
「あ、何かいます。 かわい…えっ」
柊は栗型モンスターに激突し、残機を一つ減らした。
「自分以外の生き物は全て敵だから、ああ言う奴は踏んで倒すんだ」
「そ、そんなの聞いてません!」
頬を膨らませる柊に小さく笑い、まぁまぁと宥める。
「ここで…ジャンプ!」
柊は先程やられた栗型モンスターの前でジャンプし、栗型モンスターを踏み潰す。
「あぁ…ごめんなさい」
律儀に謝る柊に笑ってしまう。
そして次は、緑の亀が歩いてきた。
「亀さんです! あれも敵なんですか?」
「敵だぞ」
「じゃあ、倒します。 …え、さっきと違って消えません」
亀は栗型モンスターと違い、踏むと甲羅に閉じこもる。
柊は首を傾げながらその甲羅を蹴り飛ばす。
すると甲羅は前の土管に当たって跳ね返り、赤い配管工に当たった。
「えっ!?」
「甲羅は蹴ると滑っていくんだ。 持つ事も出来るぞ」
「な、なるほど…!」
それからも、柊の大冒険は続いた。
ジャンプのタイミングを間違って栗型モンスターに当たったり、穴に落ちたり、モンスターに囲まれてあたふたして残機を減らしたりと、様々な困難に見舞われてきた。
「…難しいです」
ゲーム開始から30分。 柊はまだ1-1をクリアしていなかった。
だが、柊は諦める事なく挑戦している。
元々負けず嫌いなのだろう。
「…如月くんのお手本が見てみたいです」
「ん?いいぞ」
柊からコントローラーを受け取り、配管工を操作する。
この手のゲームはかなり遊んだので、1-1程度なら万に一つも死ぬ事はない。
「え、は、早…」
慣れた動きで走り、目の前の敵を全て倒していく俺の動きに、柊は目を輝かせていた。
そして俺はゴール前で止まり、ゴールはせずにリセットを押した。
「こんな感じだな」
「す、凄いです! 私の操作するキャラクターとは別人みたいでした!」
「柊も慣れればあのくらいできるようになるよ」
「本当ですか!頑張ります!」
それからは俺のプレイで何かコツを掴んだのか、明らかに動きが良くなった。
そして、数分後、ようやく柊の画面にゴールが映った。
柊のキャラクターがゴールに触れ、コースクリアの花火が上がる。
「やった…やりました! ゴールできました!」
「おめでとう。 初のゲームはどうだった?」
「凄く楽しいです! これでお姫様を救出できましたね!」
「…ん?」
満面の笑顔で言う柊だが、何か勘違いをしている。
どうやら柊は1-1をクリアすれば姫を助けられると思っていたらしい。
そんな柊の前に、様々なコース達が現れる。
柊はそれを見て目をパチクリさせ、俺を見る。
「…今柊がクリアしたのは1-1。 このステージをクリアするには、今出てるコースを全部クリアしなきゃいけないんだ。
因みに、姫様がいるのは8ステージ。
まだまだ先だな」
柊の顔が絶望に変わる。
「姫様を助けた頃には、お前も立派なゲーム好きになってるだろうよ」
「それは腕がなります! 絶対にお姫様を助けて見せます!…ところで、このゲームは2人でプレイはできないんですか?」
「ん?いや、出来るぞ?」
「じゃあ、それでやりたいです!」
「でも、最初は1人でクリアした方が達成感ないか?」
俺が言うと、柊は拗ねたように言う。
「…でも如月くんはゲームは複数人でやった方が楽しいって言いました」
俺は小さく笑い、新しくコントローラーを接続する。
画面に、赤い配管工の他に緑の配管工が映る。
「この緑が俺のキャラな」
「はい!」
柊は笑顔になり、2人でコースを攻略していった。
俺はプレイ済みなので、流石に独断専行はせず、あくまで柊のサポートに徹した。
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あれから時間が経ち、時刻は23時になろうとしていた。
俺と柊は、1-5まで来ていた。
新しいギミックが出る度に目を輝かせる柊を見ていると、全然飽きなかった。
だが、流石にもう時間帯がまずい。
明日が土曜日とかならいいのだが、今日は木曜日で、明日は金曜日だ。
「よし、流石にそろそろ終わりにするか」
「えっ、もうこんな時間なんですか…」
時計を見て、柊は露骨に悲しそうな顔をする。
「柊は夜更かし慣れてないだろうし、ゲームが原因で生活リズムが壊れるのは不味いからな。 また今度しよう」
「はい、そうですね。 またやりたいです」
柊はそう言って笑い、お互いソファから立ち上がる。
そして部屋の前まで行く。
「如月くん、おやすみなさい。 ゲーム教えてくれてありがとうございました」
「おう。おやすみ」
そう言って、柊はくまさんを抱えながら部屋に入っていった。
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