自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊

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二章 新学期、新たな出会い編

30話 「女神様と女王様」

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4月ももう後半にさしかかり、明日からは魅惑のゴールデンウィークがやってくる。

ゴールデンウィークは学生にとっては最高の期間だ。
合法的に休めるからな。

早く今日が終わって欲しいと願うばかりだ。

「如月、ちょっと良いかな?」

「…なんだ八神か」

昼休み、昼食を食べ終え教室に戻ると、八神に話しかけられた。

前回の一件から、八神はちょくちょく俺に話しかけてくるようになった。
最初は驚いていた柊達だったが、今ではもういつもの事かという風に無反応だ。

八神に連れられて、俺は廊下に出る。

八神と話す時は、いつも人通りの少ない場所だ。
なぜなら…

「これ俺の走る時のフォームなんだけど…何がおかしいのかな」

話題が陸上関連だからだ。

俺はあれから、ちょくちょく八神の相談に乗せられていたのだ。

「…別に悪くないし、綺麗なフォームだと思うが」

「だけど、なんかいつもしっくり来ないんだよな… 先月よりもタイム落ちてるし…」

そう言って八神は顎を触る。

「陸上の大会が5月だから、なんとかそれまでにこのモヤモヤを晴らしておきたいんだよな…」

「…ちょっと良く見せてくれ」

大会の事で悩んでいる八神からスマホを受け取り、じっくり見る。
何回も何回も繰り返し見ると、ある違和感に気がついた。

「…お前、右足痛めてるだろ」

「えっ」

「まぁ、この分だと、大した痛みじゃないけど気になるなぁくらいなはずだが、違うか?」

「す、凄いな如月。 正解だよ、たしかに俺は今右足を少し痛めてる」

八神は目を見開く。

やっぱりか。 

「…スタートの時、右足を踏み出した時に一瞬だけ動きがおかしかった。 ほんの一瞬だけどな。 だが、その一瞬がお前の走りのリズムを狂わせてる原因だ」

「…なるほど」

「皆自分のペースってのがあるだろ? 陸上競技でもそれは変わらない。
走りの中で自分独自のリズムがあるのは分かるよな?」

「あぁ」

短距離なら尚更、リズムを意識するのが大事になってくる。
皆、自分に合った走り方、リズムを見つけてタイムを伸ばして行く。

「お前は今右足を痛めていて、スタートの踏み出しの時に一瞬だけ動きがおかしくなってるって言ったよな?
…後は分かるか?」

「…その一瞬のせいでリズムが崩れ、全体の違和感に繋がっているって訳か」

「そういう事だ。 まだ気づいたのが早くて良かったな。 この狂ったリズムに慣れ始めたら怪我が治った時にまたリズムが狂うからな」

「…恐ろしいな」

「陸上は0.1秒を争うスポーツだからな。 少しのタイムロスでも致命的だ」

八神は頷く。

「だから、お前がやるべき事は1つだけだ。 休め」

「…やっぱりそれしかないよな」

「このまま練習しても良い事ないからな。 足の怪我も大した事なさそうだし、1日2日何もせずに休めば復活するだろ」

「1日2日か…走れないのキツいな…」

八神は苦笑いする。
陸上部は走るのが大好きな奴が多いが、八神程の奴は稀だろう。

産まれ持った身体能力はもちろんあるだろうが、純粋に努力を惜しまずに出来る事が、八神が陸上部のエースと言われている理由なんだろうなと、今分かった。

「分かったよ。 如月、ありがとう。 やっぱり君は頼りになるよ。 相談して良かった」

「なら良かった」

「教室に戻ろうか」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

八神と共に教室に戻ると…

「はぁ!? 意味わかんないんだけど!」

「それはこちらの台詞です」

柊の声と、違う女子の声が聞こえた。
教室に入り声のした方を見ると…

そこには立ち上がり明らかに不機嫌な顔をした柊と、柊を睨みつけているウェーブのかかった茶髪の女子生徒が居た。

柊は俺の席の近くにおり、七海と春樹は明らかに困った顔をしていた。

あの女子生徒は、俺でも知っている。
なんたって同じクラスだからな…

名前は神崎加奈。
クラス…というか学年の女子のカーストのトップに君臨する女で、所謂陽キャだ。

カーストトップに君臨し続け、その偉そうな性格から、ついたあだ名は女王様。

女神様、毒舌姫、女王様、王子様など、この学校には異名を持つ人間が多い。

だが、そんな女王様と柊が言い合いをしている理由が分からない。

あの2人に接点はなかったはずだが…

「あ!天馬ぁ!」

女王様…神崎はこちらを見ると、笑顔で八神に抱きついた。
八神は苦笑いをしながら神崎の頭を撫でる。

「加奈、これはいったい何の騒ぎかな…?」

困ったように八神が言うと、神崎は俺の方を見て睨んだ。

え、何それこっわ…!
さっきの笑顔からその顔は怖すぎるだろ…

「あのね! 天馬がその…えっと誰だっけ…きさ…」

「如月だ」

「そうだった如月。 コイツを天馬が連れて行った時にさ? 周りの皆と「何の話だろ」みたいな話になったからさ、如月の悪口を言ってたらね? 柊さんが突っかかってきたの!」

神崎の言葉に、俺と八神は顔が引き攣る。

「あぁそうか…あの日加奈は休んでたもんね…」

八神が言ったあの日と言うのは、きっと柊がブチ切れた日の事だろう。

「あの日ってなに」

「えっとね、柊さんは自分の友達が馬鹿にされるのが嫌いなんだ。 だから今回怒ったんだよ。 あと、如月は俺の友達でもあるから、悪口は言わないでくれると嬉しいかな」

そう言うと、神崎は目を見開き後退りした。

「えぇ!? コイツと友達!? 流石に柊さんも天馬も趣味悪すぎでしょ…!」

うわぁ…これは不味いぞ…
こんな言われ方をしたら…

「…撤回して下さい」

ほら…柊がまたブチ切れた。
柊の冷たい声に、俺と八神は震え上がる。

「…はぁ?」

だが神崎は震えず、柊を睨んだ。

嘘だろコイツなんでビビらないんだよ怖すぎるだろ…

「聞こえませんでしたか? さっきの言葉を撤回して下さいと言ったんです」

「いや、事実でしょ? こんな気持ち悪い奴と友達とか、ありえないし」

「如月さんは気持ち悪くないです」

「…あー、何? 柊さんアンタ、こいつの事好きなの? だからそんなに必死に庇ってるんでしょ」

神崎の言葉に、クラス中がざわつく。

俺の心臓はさっきからバクバクだ。
この2人の言い合いの原因が俺とか本当に心臓に悪すぎる。

対する柊は、神崎の言葉を受け、神崎に冷たい視線を向けた後、嘲笑うように言う。

「物事を好きか嫌いかでしか判断出来ないなんて、可哀想な人ですね」

「…は? 何その言い方ウザイんだけど」

「ウザイ…ですか。 語彙力も考え方も小学生レベルみたいですね」

そう言って柊は笑う。
だが、目は笑っていない。

そんな柊に対し、神崎はプルプルと震えていた。

「いい加減に…!」

「そこまでだ加奈」

柊の方へ踏み出そうとした神崎を、八神がすかさず止める。
八神はアイコンタクトで「柊の方へ行け」と合図をしてくるので、俺は自分の席へ戻った。

「天馬…!なんで止めんの!」

「言い過ぎだよ。 さっきも言っただろう。 如月は俺の友達だ」

「だから! それは趣味悪いって…!」

「誰と友達になろうが、俺の勝手だろう。 加奈にどうこう言う権利はないよね?」

「でも…!」

「そもそも、今回の件は加奈の勘違いが原因だろう?」

八神がそう言うと、先程までの神崎とは別人のようにシュンとなった。

これが王子様パワーか…

「柊さん、加奈が言い過ぎてごめんね。 どうか許してあげてくれないかな。 如月も、気分を悪くさせて申し訳ない」

「いや、俺は別に気にしてない」

「…如月さんが気にしてないなら…私も別に…」

八神は神崎の代わりに謝ると、柊は明らか納得していない言い方をする。

これはまた後でめんどくさい事になるんだろうなぁ…と帰宅した後の事を考える。

八神は神崎と共に席に戻った。
そして、午後の授業開始まで残り数分だ。

…少しだけ柊と話しておくか。

「…柊、さっきは…」

俺が話そうとすると、柊は無視して自分の席へと戻っていった。

えぇ…

七海と春樹を見ると、2人とも困った顔をしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後になると、柊は荷物を鞄に入れ、教室を出て行った。
最近はずっと4人で帰っていたのだが、柊は1人で行ってしまった。

久しぶりに3人で下校していると、七海が口を開いた。

「渚咲が陽太を無視した理由ね、多分だけど、分かるんだ」

「え、なんだ?」

「これに関しては、私とハルも多分同じ気持ち。 だよね?ハル」

「…あぁ。そうだね」

「つまり、渚咲も私達も怒ってるんだよ。 神崎さんにだけじゃなくて、陽太、 アンタに怒ってる」

柊と七海と春樹が俺に対して怒ってる…?
そんなに怒られるような事はしてない筈だが…

「こればっかりは、陽太が自分で気がつかなきゃダメな問題だよ」

「…すまん。全く検討がつかないんだが」

「…じゃあ、ヒントあげる。 私達は、前回のあんたの対応にも同じように怒ってる」

前回…というのは柊ブチ切れの日で間違いないだろう。

前回と同じ理由で俺に怒っている…?
ますます訳が分からないぞ…?

そんな事を考えていると、別れ道に差し掛かってしまった。

「それじゃ、明日からゴールデンウィークだけど、頑張って答え見つけ出してね」

「言っておくけど、柊さんが1番怒ってるからね」

七海と春樹はそう言うと、手をヒラヒラさせながら帰っていった。

俺は、歩きながらも考えたがら3人が怒る理由は何一つ分からなかった。
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