自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊

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二章 新学期、新たな出会い編

36話 「小悪魔、接触」

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七海達から小悪魔の存在を聞いてから、数日が経った。
相変わらず1年生の柊へのアピールは止む気配がない。

流石に柊もうんざりしているらしく、告白の話題が出る時にたまに笑い方がぎこちなくなる程だ。

昨日なんて2人から告白されたらしいからな…本当に大変だろう。

「…今日もあるのか?」

休み時間中、食堂で食事を取りながら呟くと、柊は頷いた。

「…今朝下駄箱に手紙が1枚入ってました…」

「もう無視したら?」

七海が言うと、柊は笑って首を振った。

「お断りするとは言え、勇気を持って気持ちを伝えてくれている以上、無視は出来ません」

…本人は否定しているが、この優しさも柊が女神と呼ばれる所以なんだろうな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

教室に帰ると、八神に肩を掴まれ、廊下に連れ出された。

「なんだよ八神、急に」

「すまない。 ちょっと君に相談したい事があって…」

「相談?」

八神は周りに人がいない事を確認すると、真剣な顔になった。

「…君は口は硬い方…だよね?」

「まぁ。 自慢だが、言いふらす程友達は多くないぞ」

「そ、そうか…で、相談なんだけど…」

八神は、数秒黙った後、口を開いた。

「…最近、とある子に猛アピールされてるんだ」

「なんだ。モテ自慢か。 見損なったぞ八神」

「違う!話を聞いてくれ!」

冗談を言うと、八神が本気で助けを求めてきたので、改めて向き合う。

「…その子はさ、とても良い子なんだよ。 気が聞くし、礼儀正しいし」

「ほうほう」

「…だけど、問題はその子の周りでさ…その子は男子に人気なんだ。
えっと…人気度で言えば柊さんみたいな人かな」

その瞬間、脳裏に1人の人物が浮かび上がった。

「…小悪魔か」

「あ、知ってたんだね」

「この前七海から聞いた」

「そうか。 …で、その子からアピールされてるから、最近その周りの男子からの目が痛くてさ…」

「あぁ、嫉妬か」

八神程になれば嫉妬はされ慣れてると思っていたが、やはりいくら慣れていてもキツイものはキツイのだろう。

「…まぁ、それには同情するが…俺には何も出来ないぞ?」

「別に何かをしてもらいたい訳じゃない。 俺は君の意見を聞きたいんだ」

「意見…?」

「俺と君は考え方が違うだろう?」

まぁ、たしかに似ている所は少ないと言うか無いな。
性格なんて真逆だしな。

「だから、君の意見を聞きたい。
どうすれば、その子が…」

「あー!八神先輩~!!」

八神の言葉を遮るように、とある人物の声が聞こえた。

その人物は、笑顔で八神の腕に抱きついた。

薄いピンク色の綺麗なウェーブのかかった髪に薄紫色の瞳、程々に着崩した制服。
そして、黄色いカーディガンは袖までの長さで、所謂萌え袖になっている。

…なんとなくだが、俺はこの人物が誰だか分かった気がした。

「こ、小鳥…! こんな場所で抱きついたらだめだろう?」

「え~? 八神先輩もしかして照れてます~?」

小鳥と呼ばれた少女は、人懐っこい笑みを浮かべる。

そして、そいつは八神の前に俺がいる事に気がついたのか、目が合うとバッと八神の腕から離れた。

「き、気づかなくてごめんなさいっ! 私、桃井小鳥(ももいことり)っていいますっ」

そう言って、桃井は俺に笑顔を向けてきた。
まるでアイドルのような笑顔に、俺は一瞬だけ後退りをしてしまった。

「あ、あぁ…」

「そういえば八神先輩って今何してたんですかぁ?」

挨拶をしたらもう用済みだと言わんばかりに八神の方に向き直り、会話を開始した。

あの笑顔に、喋り方。
それと整った容姿。

間違いない。 こいつが小悪魔だ。
逆にコイツじゃなかったらこの学校の顔面偏差値の高さを疑う。

「俺は…今如月と話を…」

「えーそうなんですね! 私も混ぜて下さいっ」

「いや、もう終わったんだ」

流石に桃井の事を話していたからな。
会話に混ぜるわけにはいかないだろう。

八神がそう言うと、桃井は笑顔になり、八神の手を掴んだ。

「なら昼休みが終わるまで私とジュース飲みながらお話しましょ~?」

「いや、えっとね…」

「レッツゴーですっ!」

桃井は、八神を連れて何処かへ行ってしまった。

なるほど…確かにあれは相談したくなる程の猛アピールだな…

八神を気の毒に思いながら、俺は教室に帰った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…では、行ってきますね」

放課後になり、告白を受けに行く柊を見送ると、俺達3人はいつものように向かい合った。

「渚咲の事、やっぱりなんとかしなきゃダメだよね」

「そうだねぇ…流石にストレスも溜まるだろうし」

なんとかしたい気持ちはあるが、実際どうすれば良いのか分からないからなぁ…

「柊さんの話かい?」

と、そんな所に八神が話しかけてきた。
周りを見れば、もう教室に残っているのは俺、七海、春樹、八神だけだった。

七海はチラッと俺を見る。
お前が話せって事か。

「あぁ。 柊最近ずっと男子達に絡まれてるだろ。 それで柊は疲れてるんだ」

「あぁなるほど…確かに気持ちは分かるよ…」

「だが、なんとかしようにも方法が見つからなくてな。…てかお前部活は?」

「今日は休み。 でもそれは確かに厄介だね…もし良かったら俺も…」

「あー!八神先輩いましたー!!」

また、昼休みの時のように八神の言葉を遮り、可愛らしい声が聞こえてきた。

扉の方を見ると、やはり桃井だった。
桃井は、笑顔で教室に入ってくる。

「八神せーんぱいっ!今日部活ないんですよね? 良かったら私と一緒に帰りませんか?」

「気持ちは嬉しいんだけど、今日は早く帰らなきゃいけないんだ…! ごめんね…!」

そう言うと、八神は逃げるように教室を出て行った。

最初は追おうとしていた桃井だったが、流石に八神には追いつけないと思ったのか、俺達の方を見る。

そして、ある一点で視線が止まった。
視線の先には、七海がいた。

「あー! もしかして、貴女が女神様ですかぁ?」

「えっ」

七海が目を丸くしている。
桃井は、七海の両手を掴み、七海に笑顔を向ける。

七海は人見知りが発動し、目線が右往左往している。

「噂には聞いてましたけど、凄く綺麗ですねー! あ、化粧品とかどこの使ってます?」

「え…あ、えっと…」

「あ!ごめんなさいっ! 私、桃井小鳥っていいますっ!」

「あ…え…」

まずい。七海がパニックになってる。
助けてやるか。

「七海は女神様じゃないよ。君の勘違いだね」

俺が言おうとすると、先に春樹が七海と桃井の間に入った。
七海は春樹が介入した事に安心したのか、胸を撫で下ろした。

「えっ…人違い…? てっきり女神様かと…こんなに可愛いのに」

「七海の異名は毒舌姫だ」

「あ、貴女が!?」

俺が言うと、桃井は驚いた。

「えぇ…この人が女神様じゃないなら、本物の女神様ってどれほど…」

「すみませんっ!遅くなりました!」

そんなタイミングで、柊が帰ってきた。
急いできたからか、少し息が上がっている。

ただ…タイミングは最悪だろう。

桃井は、柊の声を聞いた瞬間、後ろを振り向いた。

「…あ、貴女が…女神様…ですか?」

「…はい?」

柊は首を傾げる。
柊からしたら訳が分からないだろうな。

「…いや、聞くまでもないですね。 はじめまして。 私、桃井小鳥っていいます」

桃井は、冷静に柊をまっすぐ見て自己紹介をした。

「は、はじめまして。 柊渚咲…です」

柊は訳が分からないまま自己紹介をする。

…おいなんだこれ。
なんでこの場に女神様、毒舌姫、小悪魔の3人がいるんだ。
皆顔面が整いすぎてて居心地悪いんだが…

「ふむ…確かにこれは女神様と呼ばれるのも納得ですね…」

桃井は柊の事をジッと見て呟く。

「…柊先輩!」

「は、はい!?」

突然名前を呼ばれてびっくりしたのか、柊の声が上ずる。

「私、貴女には負けませんから! 同じクラスだからって、油断しない事ですね!」

「は、はい…?」

桃井の訳が分からない言動に、柊は首を傾げる。

「貴女に、八神先輩は渡しませんっ! 八神先輩と付き合うのは私なんですから!」

「えぇ!?」

桃井の爆弾発言に、柊は思わず声を出した。
やはり、桃井は柊をライバル視してたか…

八神を狙っている時点でそうなるかもしれないとは思ってはいたが、まさか本当になるとは…

「私と貴女はライバルですっ」

「いや…ちょ…何か勘違いを…」

「絶対に負けませんからね! それでは!」

そう言うと、桃井はお辞儀した後、教室を出て行った。

「…えぇ…?」

出て行った桃井を見て、柊は困惑の声を出した。
その後、柊は俺たちの方を見る。

柊からしたら1つも分からないだろうからな。

「…まず、あいつは桃井小鳥。この前話してた小悪魔って奴だ」

「あの人が…」

柊が知りたいであろう情報を全て伝えてやろう。

「桃井は、柊も八神の事を好きだと思い込んでるんだろう。
桃井は八神に猛アピールしてるらしいからな」

「私が八神さんを…? 確かに八神さんは魅力的だとは思いますが、そう言った感情はないですよ…」

「…まぁ、ライバル視されちまった以上、これからも何かしらの接触はあるかもな」

「そんなぁ…」

柊は肩を落とす。
七海は、そんな柊の肩を掴む。

「大丈夫。 もしもの時は私達もサポートするから」

「「さっきは人見知り発動してたくせに」」

俺と春樹が同時に言うと、七海にガチで睨まれたので、目を逸らした。

「さっきは急に来られてビックリしただけだし。 …とにかく、渚咲。 何かあったらすぐに相談しなね?」

「は、はい」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…客観的に見ると、私は八神さんを好きなように見えるのでしょうか?」

帰宅し、柊は料理を作りながら口を開いた。
突然の質問に一瞬思考が止まったが、俺はすぐに口を開いた。

「どうだろうな。 ただ、学年1のイケメンと美少女ってだけで絵になるからな。 付き合ってると思う奴は居るんじゃないか?」

「絵になるって…私は別に美術品じゃないのに」

拗ねたように言う柊に俺は小さく笑う。

「まぁ、七海も言ってただろ。 何かあったらサポートくらいはしてやるよ」

「…ご迷惑じゃないですか?」

「そんなんで迷惑になるならここに居候してる俺は大迷惑どころの騒ぎじゃないぞ」

「わ、私は別に迷惑だなんて思ってないです!」

否定する柊に笑い、俺はまた口を開く。

「それと同じだ。 俺や七海や春樹も、別に迷惑だとか思ってねぇよ。 遠慮すんな」

そう言うと、柊は照れ臭そうに俯いた。

「如月くん。 今日のだし巻き卵の数増やしてあげます」

「え、マジ? 嬉しいけど、急にどうした?」

「内緒です」

柊は、嬉しそうに笑いながら、料理を開始した。
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