自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊

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二章 新学期、新たな出会い編

43話 「怖がりの女神様」

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ご飯を食べ、風呂に入り、お互い自室に入って今日の分の課題をやり終え、リビングに集まる。

時刻は夜10時。

柊はさっきからソファの上で姿勢良く座り、ソワソワしている。

対して俺は、柊の家にあったDVDプレイヤーの配線をテレビに繋いでいる。

ビデオを見るかもしれないと思い引っ越しの際に買ったらしいのだが、結局使う事は無かったらしい。

「よし、出来た」

「で、できましたか」

「もう一度確認するが、本当にホラーでいいんだな?」

「は、はい!」

最後の確認をし、俺はDVDプレイヤーにホラー映画のDVDをセットし、柊の隣に座る。

リモコンを操作すると、早速ホラー映画が始まった。

だが、俺はすぐに一時停止を押し、その場で立ち上がった。

横で柊が首を傾げている。

「どうしたんですか?」

「より一層映画を楽しむための工夫だな」

俺は、リビングの電気を消した。

「えっ…!?」

「暗い場所で見ると、ホラー映画はかなり怖くなるんだ」

そう言って、また柊の隣に座り直し、映画を再生した。

画面には、小6の時に見た映画の導入が流れる。

この映画は小6の時以来怖くて見ていないのだが、意外と覚えてるもんだな。

まぁ…それだけ衝撃的だったって事か。

今は10時、大体映画は120分だから、寝るにはちょうど良い時間だな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

映画が始まってから1時間が経った。
映画は中盤、物語として1番面白くなる場面だ。

柊はさっきからずっと隣で震えている。

時折「ひっ…」や「うっ…」などの小さな悲鳴をあげている。

そして無意識に俺の服の袖をずっと掴み続けている事には気づいていないだろう。

だが、柊には悲しいお知らせだが、ここまではまだまだ序の口だ。

本当に怖い、俺がトラウマになるレベルのホラー展開は、物語の終盤だ。

『ぎゃあああああ!!!』

「きゃっ…!」

「いてっ」

中盤の驚かしの場面で、柊がびっくりし、俺の腕に顔を埋めた。

柊はすぐにハッとしたのか、元の位置に戻った。

「す、すみません…!」

「い、いや別に」

ホラーよりこっちの方が心臓に悪いぞ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さぁ来た。
物語も終盤。 あと数分で1番怖い場面がやってくる。

この映画の特徴は、一旦事件が解決し、平和になったと主人公が喜び、そのままエンディングかと思わせてからのホラー展開なのだ。

初見ではまず気づかないだろう。

現に今、画面の中で喜んでいる登場人物達を見て柊はホッとしている。

『じゃあ、帰る…』

『アアアアアアアアアっ!!!!』

「きゃあっ…!!」

作中1番のホラー展開と同時に、柊は今までで1番の悲鳴を上げた。

先程と同じように俺の腕に顔を埋め、さらには両手でしがみついている。
さっきはすぐに離れたのだが、柊はずっと震えたまま離れようとはしない。

画面の中では、エンディングが流れている。

「…柊、終わったぞ?」

「っ…!」

柊は、俺にしがみついたまま首を振る。

「えっと…電気つけたいんだけど…」

柊はまた首を振る。
そして、鼻を啜る音が聞こえた。

…あー…マジか。

柊は泣いていた。
かなり怖かったのだろう。

ずっと震え、泣き続けている。

「っ…! こ、こわ…かっ…」

柊が、涙声になりながら言葉を紡ぐ。
思うように話せないのか、所々言葉が詰まっている。

俺は、そんな柊の頭を優しく撫で続けた。

それから数分後、ようやく柊が自ら離れてくれた。

「…ごめんなさい…まさか泣いてしまうなんて…」

「いや無理もない。 じゃあ、電気つけ…」

立ち上がろうとすると、柊に腕を掴まれ、そのままソファに戻された。

「…まだダメです」

「なんで」

「…顔…泣いてぐちゃぐちゃなので…」

「別にお前の泣き顔なんて見るの初めてじゃないし、気にしないぞ?」

「わ、私が気にするんです」

こうなった柊は頑固だ。
俺は諦め、テレビのリモコンを操作し、普通のニュース番組を見始めた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれから更に数分後、漸く柊の許しが出たので、リビングの電気をつけた。

久しぶりの明かりに最初は目を瞑ったが、徐々に慣れてきた。

「なんか飲むか?」

「だ、大丈夫です」

「分かった」

それにしても今日は色々あったな。

学校では桃井と八神の間に入り、放課後は桃井の恋愛相談、そしてさっきまではホラー鑑賞。

流石に疲れた。

「んじゃ、俺はもう寝るから、おやすみ」

「えっ…」

柊が悲しそうな声を上げた。

「…どうした?」

「い、いえ…なんでも…ないです」

「そうか」

眠れないなら少し話しても良かったが、どうやら勘違いだったらしい。

俺は自室に帰り、ベッドに入った。

身体中の疲れが一気に癒えていくのが分かる。

その時、俺のスマホが振動した。

スマホを見ていると、桃井からメールが来ていた。

『如月先輩! 今起きてますか!?』

『起きてない』

と返信した。

するとすぐに返事が返ってきた。

『起きてるじゃないですか、ちょっと質問なんですけど、私ってどんなタイプの女の子ですかね?』

『ウザい後輩系』

『先輩もジョークとか言うんですねー。 つまらないので真面目に答えて下さいっ』

『そもそもタイプってなんだ』

『ほらあるじゃないですか。 清楚系とかギャル系とかクール系いろいろ!』

『清楚系ではないな』

『うっ…じゃあ、ギャル系?』

『いや、お前ギャルって感じでもないしな』

『じゃあクール系!』

『1番無いだろ』

身近にいる奴で例えるなら、清楚系が柊、ギャル系が神崎、クール系は七海だろう。

となると桃井は…

『…お前何系なんだ?』

『それを今聞いてるんですよ!!!』

怒りの顔文字いっぱいで桃井が言ってきた。

『やっぱり後輩系じゃないか? お前は後輩ってイメージが強いぞ。 いつも敬語だし』

『判断基準敬語ですか…でも、敬語っていったら柊先輩も敬語ですよね?』

『柊は清楚ってイメージが強いだろ』

『確かに…』

『で、お前はこんな事聞いて何がしたいんだ? どうせ八神絡みだろ』

『正解ですっ! いやぁ、八神先輩ってどんな女の子がタイプなのかなぁって』

あー…なるほど、話が読めたぞ。

『で、八神先輩って神崎先輩と仲良いんですよね? 神崎先輩ってギャルっぽいじゃないですか』

『だからお前もギャルっぽくなろうって?』

『凄いですね如月先輩!エスパーですか!?』

やっぱり合ってたか。
好きな人の為に努力する事は素晴らしい事だ。

だが、

『やめとけ』

『えっ』

『さっきも言ったが、お前はギャルっぽくない。 そんなお前が無理してギャルっぽく振舞っても、疲れるだけだぞ』

『んー…そうですかね…?』

『人に好かれようと努力するのは立派だが、自分を犠牲にするやり方は決して立派とは言えない』

『自分を犠牲に…ですか』

『お前が本心からギャルに憧れてて、それを目指すってんなら何も言う事はない。
だが、他人の為に今までの自分を否定する事はしちゃダメだ』

そこまで打つと、俺の部屋の扉がノックされた。

『悪いちょっとやる事が出来たから、返信出来なくなる』

そう返信してスマホを置き

「なんだ?」

と声を出す。

すると、ゆっくり扉が開き、先程と同じくパジャマ姿で、更にクマのぬいぐるみを抱き抱えた柊が、申し訳なさそうに部屋に入ってきた。

「どうした?」

「え…えっと…」

柊は、クマのぬいぐるみをぎゅっと握りしめ、俺をじっと見てきた。

その瞳は揺れていた。

「や、夜分遅くに申し訳ありません…」

「畏まりすぎだろ。 別に気にしてねぇよ。
とりあえず座れ」

柊をベッドに座らせ、俺は椅子に座る。
柊は、ずっと無言でいたが、やがて口を開いた。

「……眠れなくなりました」

「…は?」

時刻は夜中の1時。
いつもの柊なら既に寝ている時間に、俺の情けない声が木霊した。
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