ヒロインはゲームの開始を回避したい(分岐ルート追加)レジュール・レジェンディア王国譚 転

詩海猫(9/10受賞作発売中!)

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火のドラゴン、目覚める 3

すみません、推敲前に一旦公開になってしまいました💦
書き下ろし部分が多かったので時間ずれましたm(_ _)m



*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*


「……………」
この言いたいけど迂闊に口には出来ない、けど確かに縋るように送られている視線は何を意味するのだろう。
あいにく私はテレパシストじゃないので、無言で願われても応えようがないのだが。

一瞬あの魔法の事が頭をよぎったが、知られているはずはないしそもそもあれはまだ完全ではない。
この場面で役に立つほどのものなのかもわからないし、普通の大きさの魔獣で試した事すらないのだ。

 私が戸惑い気味の視線を返すと、
「よしましょう、ミリィ」
「……そうね」
2人が揃って項垂れた。

自分達は間違った。間違ったから彼女と友人にすらなれなかった。
彼女は別に友人を作り、仲間を得て学園内で活き活きと輝き始めた__私達のいない場所で。
責めるべきではない。そんな資格は自分達にはない。
(けれど、)
「どうか、無事で……!」

ミリディアナのその祈りに、逆の力で答えたようにドラゴンがのっそりと立ち上がり、目の前の木立に火を吹いた。
「っ…!!」

結構な距離があるのに、ここまで来る熱風に慌ててアレックスが水魔法で防壁を張った。
見れば礼拝堂の片側だけが丸裸になり、その向こうに立っているのは__アルフレッドだった。
剣の柄を握る手はそのままだが、手袋からは白い煙が上がっている。
王族の手袋は最高レベルの魔法耐性素材で作られている筈だが、耐えきれていないということは__、
「っ!!」
一瞬最悪の未来が予想出来てしまい、私は歯噛みする。
助けてくれた御礼を、まだし終わっていない。

「「アルフ!」」
「殿下!」
カミラ達とアレックスが叫ぶ。
再度くらったらもう終わりだろう事が容易に予測がついて、なりふり構わず声を上げる彼等の傍らで、
「__らしく、ないですねぇ」
と呟くアリスティアに注意を払う余裕は三人彼らにはなかった。

傲慢で、攻撃的で、自己中心的で。
いつだって自信過剰で、自意識過剰なあの人たちが守り一辺倒だなんて、らしくなさすぎて笑ってしまう。
だが、大人びてはいてもまだ少年とさえいえる彼等が必死に婚約者たち(プラス私というおまけがいるが)を、学園を、ひいては国を必死に守ろうとしている様は尊敬に値するものだ。
(て いうか薔薇オトに“皆でドラゴンを倒す“なんてクエストなかったよね?)
そもそもドラゴンなんて出て来なかった__と思う。メインルートでは。
入学式での出会いイベントも発生していないし、自分は誰のルートにも進んでいない__はずだ。
(なら、もうゲームのストーリーは破綻していると考えていい。使っても大丈夫かな?)

ひとつの決意を固めてドラゴンへ目を向けると、「にゃー!」という声とともに黒猫が胸に飛び込んでくる。
「ノエル!あなたどうやってここに__、あ」
見れば、ノエルの首輪に紙が括り付けられており、外して開いてみるとそこには、

*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*

メイデン嬢へ

王子達が全員そっちに行ってしまっているため、私は手薄になっている王城の方で指揮をとることにした。
そちらは任せた。どんなことになっても君に何の責任も問わないと約束する。
急ぐので手短かに言うが、王太子たちは在学中、大きな災厄に見舞われることは予測していたがその内容と時期までは特定出来ていなかった。
そこに、“伝説の乙女“の力を借りて解決すべしとの予言の一文が加わり、彼らはその乙女を探していた。
誰を候補として探っていたかは言わずもがなだろう、だが確信が持てず、君と信頼関係を築くことも出来ず足踏み状態だった。
だからこの件に関し責任があるのは王太子たちで君には一切ない。
逃げるも手を貸すも、君の自由だ。
手を貸すとしても、危険だと感じたらすぐ逃げるんだ。
この黒猫ノエルは既に君を主人と定めているらしい、感じられる魔力がどんどん強くなっていて手に負えないから、君の元に戻すが無茶をしないように。
もしもの時はレイド家を避難所として使うといい、手配しておく。

                                P.S  こちらに向かっていたメイデン男爵には事情を話して領地にお帰りいただいた。伝魔法の使える部下も帯同させた。安心してくれ
            
                                君の共犯者、アルフォンス・レイド
                                 
                                   *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*

「名前を書くなら、わざわざ“共犯者“って付けなくて良いでしょうに……」
本当に有能な元生徒会長だ。
この事があったから、卒業間際に私を生徒会にいれたのだろう。
「それにしても……」
伝説の乙女?薔薇オトの正式タイトルも「伝説の乙女~薔薇の祝福~」だったけど、ドラゴン絡めた話なんて全く出て来なかった。
タイトルだけは共通してるけど、この共通項だけで同一とするには弱いというか……あのゲームに予言による大災厄なんてなかったし。
(そもそもゲーム関係なくこの国の予言とやらの“伝説の乙女“としての役割を私に求めるなら何でもっと早く言わないわけ?)
聖女だとかヒロインだとか言われて喜ぶ子はいるだろうが、『君が伝説の乙女かもしれないと思って調べてたけど、実は違ったみたいだ』と言われたところでアリスティアは気にするような性格たちではない。
敵か味方か、判別がつかなかったというなら別だが__あれ もしかしてそっちだった?

生徒会に始まり、お茶会だろうがパーティーだろうが断りまくって、私が歩み寄る姿勢が全くなかったからだろうか。
「ま、話したくないってんなら別にいっか。ねぇ?ノエル」
足下に座る黒猫ノエルに微笑みかけ、しゃがんで視線を合わせると何か話しはじめた。相手は猫だが。

王太子たちの様子を見るのに必死でアリスティアの方に意識が行ってなかった三人は、いつの間にかしゃがみ込んで猫と会話している姿に一様に訝しむ目線を送るが、
「……ね……、出来る?そう、うん……」
途切れ途切れに風に乗って届く声は何を言っているのかわからない。そもそも相手は猫である。
だが、最後に言ったひと言だけは はっきりと耳に届いた。
「防御だけじゃダメだよね?勝ちたいのなら__、攻撃しないと」
誰もが耳を疑う中、彼女の足元にいた黒猫が巨大化し、ドラゴンほどではないが大型ライオンより大きく、大の大人三人くらいなら余裕で乗れそうな猫__いや、使い魔に変化を遂げた。

ノエルに乗ってドラゴンとミリディアナたちのいる建物のちょうど間くらいに位置する建物の屋上に降り立ったアリスティアは、
「__とりあえず、どの程度効くのか試してみないと」
と呟く。

どこまで通用するかはわからない。
けれど、このまま何もせずに逃げたところで意味はない。

好いているわけではないが、死んで欲しいわけではないから。

距離をとったのは巻き込まないためでもあるが、これから唱える詠唱を聞かれないためでもある。
「“リライト・オブ・リミテッド“、水渦ウォーターホール・トランスフォーム」
水魔法が思った通りに広がったのを感じると、
「“リライト・オブ・リミテッド“、雷撃ライトニング・ストライク

巨大な雷撃が、ドラゴンの頭上にほとばしった。




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