ヒロインはゲームの開始を回避したい(分岐ルート追加)レジュール・レジェンディア王国譚 転

詩海猫(9/10受賞作発売中!)

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火竜 VS ヒロイン

雷撃はドラゴンに直撃したが、ジュッ…、と一瞬肉の焼ける音はしたものの僅かに焦げついた程度で致命傷にはほど遠い。
どころか、くわっと牙を剥いてブレスを吐いてきた。
これは予想していたので張り巡らせていたウォータープール状の水魔法で相殺する。

これに度肝を抜かれたのは王太子達だ。
「なっー…?!」
「メイデン嬢?!」
ドラゴンに攻撃したばかりか、ドラゴンブレスをひとりで受け流したアリスティアに、
「「やはり、伝説の乙女……!!」」
と呟いたのがアッシュバルトとギルバートで、
「へぇ~君といいその猫といい、そんな力秘めてたんだ?」
と軽い調子で突っ込んだのがアルフレッドだ。

先の2人と違い、飄々とした感じを崩さないアルフレッドに少しだけ安堵する。
「えぇ、まぁ。ところで皆さまフルパワーで攻撃する力は残ってますか?」
「「っ?!」」
「長引くほどこちらが消耗して不利になります。今見ていただいた通り、私だけの攻撃では傷つけることは出来ても致命傷を与えるのは無理のようなので」
そんな台詞を『急に雨が降って困りました』程度のテンションで言われた王太子は呻き、ギルバートは絶句というか硬直したように動かないが、
「とーぜんでしょ?そこまでヤワじゃないよ」
口調はいつもと変わらないが、顔色はいつもよりやや悪いアルフレッドだけが即答する。

「ではお願いします」
言いながらドラゴンが視認できない速さでアルフレッドに近づくと、焼けた手に自らの手を重ねた。
瞬間重なった手元が光り、アルフレッドの手の傷が綺麗に拭い去られる。
「おー凄い。しかも体力回復のおまけ付きとか__助かったよ、ありがとう。んで?次の指示は?」
3秒スリーカウントで御三方一斉にフルパワーでやつに攻撃を放って下さい」
「「はぁ?!」」
「あー…うん ワカッタ……」
本当にわかってるかな、なんかカタコトになってるけど。

「議論してる暇はないですよ、次のブレスを吐きそうです。行きますよ!3スリー、」
2ツー、」
アリスティアのカウントにアルフレッドが続き、王太子とギルバートが慌てて攻撃態勢に入る。
1ワン!!」
アルフレッドのカウントが終わると同時に、アリスティアも手を掲げて叫んだ。
相乗効果リライト・オブ・等倍増幅リミテッド!!」
3人の攻撃はアリスティアの放った呪文によって膨れ上がり、凄まじい一撃をドラゴンにくらわせた。



「なっ…!」
「相乗効果魔法だと?!」
「……さーすがアリスちゃん」
 側近や兄の驚愕には構わずにアルフレッドはただアリスティアを賞賛した。

 攻撃はドラゴンの首に直撃し、赤黒い焼け焦げを作った。
「効いた…?!」
ギルバートが喜色半分、疑惑半分の体で叫ぶ。
「いや、効いてはいるが、あれは……」
王太子が唸る。
「まだ動けそうだよね?一応今は止まってるけど。ショックで茫然としてる感じ?」
「……………」
私はじっとドラゴンの傷口を見つめる。再生する様子はない。
(て ことは_……)
「ドラゴンも、火力さえあれば焼けるみたいですね?」

「「はぁ?!」」
「へ?焼く……?」
信じられないという顔と声(?)の3人を無視して、
「もう1度同じ場所に撃っていただけますか?あの傷に追い撃ちならいけるかもしれません」
「いや、だが_…、」
と渋い声を上げたのはアッシュバルトだ。今のが全員のフルパワーだったのだ。
あれで致命傷を負わせられなかったとすれば、
「また同じ攻撃をしても無駄ではないのか……?」
ギルバートが続ける。

「アリスちゃんには、勝算があるんだね?」
アルフレッドの問いに、
「はい」
(まあ、いいとこ五分ですが)とは言わぬが花だろう、ぐだぐだ言い合ってる暇はない。

アリスティアの有無を言わせない笑みに、
「「「……わかった」」」
と答えた3人が再度渾身の一撃を放つ瞬間、アリスティアはもう1度、いやだけ違う呪文を唱える。

相乗効果リライトオブアン制限増幅リミテッド、条件追加!__あのドラゴンを消し炭にするまで!!」

「「なっーー!!」」
「バカな!無茶だ!!」

リ・ライト・オブ ・リミテッドは文字通り放たれた術の効力を倍にする補助魔法だ。
対してリ・ライト・オブ・・リミテッドは質は前者と同じ魔法だが、限界リミットが存在しない。
相乗効果無制限増幅とは、放たれた術の効力を無制限で肥大化させる。それこそ、使い手の魔力も体力も生命力さえ尽きるまで際限なく。
 しかも、彼女は追加条件まで呪文に付与した。
「あのドラゴンを消し炭にするまで」と。
自分達が1人倒れても、2人倒れて1人になっても、彼女は必要な魔力を供給し続ける。
最悪、己の寿命が尽きるまで。
信じられないと口々に叫ぶ兄やギルバートと違い、
「あーんな華奢な身体でこんな術行使しちゃうとか!命知らずすぎっしょ!」
アルフレッドは自分の護符にしていた首飾りを引きちぎり、手元の剣に巻き付けた。
この首飾りには様々な魔法が付与されている。それを剣に吸わせるのだ。
さらにその上から「身体強化、魔獣浄化、攻撃力最大出力……」ぶつぶつと唱えるアルフレッドに合点がいった2人も同じように手にした剣に更なる魔力を注ぎ込みはじめた。

彼女が倒れてしまっては意味がない。
自分達も尽きるまで出し尽くす。

そんな思いが届いたのか、3人が張った結界を崩すことなくパァ、と強烈な光が辺りに満ちたのち、ドラゴンの姿は光に溶け込むように消えた。
文字通り、消滅したのだ。消し炭になるまで焼かれて。
「はっ…、んっとに、やりやがった……はは!」
足元に突き立てた剣に前屈みに寄りかかりながら言うアルフレッド。

放心したようにその場にへたり込むギルバート。

「これが君の……伝説の、乙」
余力を僅かに残しているのか問おうとする王太子に被せるように、
「大丈夫?アリスちゃん」
同じくその場に座り込んでしまっていた私にアルフレッドが手を差し出す。
「はい……何とか」
流石に反動がでかすぎてこの手を跳ね除ける気力は残ってない。しかもまだドレス姿のままだ。
元の大きさに戻ったノエルが膝に乗ってきたのを、感謝をこめて優しく撫でた。

 アレックスとカミラ、ミリディアナが急いで近寄って来るのが見えるが、同時に複数のドカドカした足音も近付いて来るのがわかる。
 援軍が漸く到着したらしい。

 一瞬後、アルフレッドが自身のマントを外しさっとアリスティアをドレスごと覆う。
「えっ…?」
「ごめん、ちょっとだけ我慢して?今の魔法発動者が君だってバレない方がいいと思うから__色々、ね」
 それは確かにそうなので抗議する事は諦めた。



*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*





呪文スペルはフィーリングのみの思いつきで書いてるので突っ込んだらダメです。



感想 92

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