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エージェントとカップル
霊感0
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「あんた、この前の使者とか名乗る変なヤツらの仲間なんだろ?俺は絶対行かないからな!」
「仲間ではありますけど、私は使者ではなくて、エージェントです。あなたみたいな困ったさんを担当することになっています。どうです?一緒に問題を解決していきましょうよ。」
「エージェント」という言葉に剛は少しビビった。黒のジャケットにネクタイという姿も相まって、田口を海外ドラマの殺し屋のように見せてしまった。
「どっ…どいつこいつも迎えに来ただの、旅立つだの俺を死んだことにして…!おっ…俺を無理矢理連れて行くのか…?」
剛はビビる一方で抵抗するように聞いた。
「当たり前でしょ?剛さん、あなた死んだんだから。いるべき場所はここじゃない。さっさと旅立ってもらわんと困りますよ。」
「なあに、心配することないですよ。僕は黄泉の国まで安全にエスコートしますから。その為に来たんですよ。」
田口は自信ありげに言った。
「じゃあ、俺が死んだと証明しろよ!俺は綾華とのデートの埋め合わせをしなくちゃいけないんだ。」
地縛霊、それは不本意な死を遂げ、自分の死を自覚していない霊。現世に対して何か執着するものがある。だから旅立つ決心をしない。
田口は少し面倒くさくなってきた。
(う~わ…もう…またこのパターンかよ…)
田口は論破しようと思えば、いくらでも出来たが、整髪料でガチガチに固めた頭をかきながら、
「じゃあ、声をかけてみたらどうです?」
と剛に促した。
「もうずっと話してるさ。でも怒っていて口を利いてくれないだけさ。」
田口は部屋にある鏡をみた。そこにはうっすら剛が映っていた。霊は鏡には映らない。少しでも映るということは…。
剛は綾華の正面に座り、
「綾華…ごめんっ!この前のディナーの約束、俺が時間に間に合わなくて帰っちゃったんだよね。そうだ!駅前の新しいお菓子屋が出来たんだって!帰りに寄って行こうよ…!綾華…?」
これだけ話しても綾華は無反応。剛は思わず綾華の肩に手をかけた。しかし剛の手は透けて綾華に触れることが出来なかった。
「え…?」
剛はいつも一緒に暮らしてきた恋人に触れられなかったことに戸惑いを隠せなかった。綾華は食べ終わった弁当の片付けをしようと立ち上がった。剛は引き止めようと腕を掴もうとしたが、掴めない。
「霊は現世に存在するものに対して触れることが出来ないんです。それがルールとなっています。」
田口が淡々と解説した。
「触れられないって…そんな…。でも床に足がついてるじゃないですか!」
「いいえ、足はついてません。微妙に離れています。気づかないくらいにね。急に何もないのに足音がすると綾華さんがびっくりするでしょう?」
田口は部屋にあるぬいぐるみをわざと床に落とした。綾華は落ちたぬいぐるみに気づいていなかったが、15秒ほどして気づき、タンスの上に戻した。次は剛と綾華のツーショットの写真立てを倒した。しかし今度は気づいていないようだった。
「ほら、やっぱりこうなるんだよなあ。」
田口は全てわかってたような口ぶりだ。
「何だよ?どういうことだよ?」
剛はどういうことなのか分からないようだ。
「綾華さんって霊感全くないんですよ、0なんですよ。そして心霊現象に対してあまりに鈍感過ぎる。剛さんが何かを伝えようとしても伝わらないです。もちろん見えることもない。」
「そんな…。」
「綾華を近くで守る為に残っちゃダメですか?映画とかアニメでよくあるじゃないですか!」
まだ剛は恋人をあきらめきれない。
「それは難しい相談ですよ、剛さん。さっきも同じこと言ったけど、あなた死んだんですよ?ずっとここに留まり過ぎなんです。申し訳ないけど地縛霊扱いになってるんですよ?」
「私たちの姿が見えたり、声が聞こえるほど霊感が強い人間はなかなか珍しいですよ。霊能力者を名乗る人間でも実際は霊感がない方が多いです。まあテレビの世界なんですね。」
「仲間ではありますけど、私は使者ではなくて、エージェントです。あなたみたいな困ったさんを担当することになっています。どうです?一緒に問題を解決していきましょうよ。」
「エージェント」という言葉に剛は少しビビった。黒のジャケットにネクタイという姿も相まって、田口を海外ドラマの殺し屋のように見せてしまった。
「どっ…どいつこいつも迎えに来ただの、旅立つだの俺を死んだことにして…!おっ…俺を無理矢理連れて行くのか…?」
剛はビビる一方で抵抗するように聞いた。
「当たり前でしょ?剛さん、あなた死んだんだから。いるべき場所はここじゃない。さっさと旅立ってもらわんと困りますよ。」
「なあに、心配することないですよ。僕は黄泉の国まで安全にエスコートしますから。その為に来たんですよ。」
田口は自信ありげに言った。
「じゃあ、俺が死んだと証明しろよ!俺は綾華とのデートの埋め合わせをしなくちゃいけないんだ。」
地縛霊、それは不本意な死を遂げ、自分の死を自覚していない霊。現世に対して何か執着するものがある。だから旅立つ決心をしない。
田口は少し面倒くさくなってきた。
(う~わ…もう…またこのパターンかよ…)
田口は論破しようと思えば、いくらでも出来たが、整髪料でガチガチに固めた頭をかきながら、
「じゃあ、声をかけてみたらどうです?」
と剛に促した。
「もうずっと話してるさ。でも怒っていて口を利いてくれないだけさ。」
田口は部屋にある鏡をみた。そこにはうっすら剛が映っていた。霊は鏡には映らない。少しでも映るということは…。
剛は綾華の正面に座り、
「綾華…ごめんっ!この前のディナーの約束、俺が時間に間に合わなくて帰っちゃったんだよね。そうだ!駅前の新しいお菓子屋が出来たんだって!帰りに寄って行こうよ…!綾華…?」
これだけ話しても綾華は無反応。剛は思わず綾華の肩に手をかけた。しかし剛の手は透けて綾華に触れることが出来なかった。
「え…?」
剛はいつも一緒に暮らしてきた恋人に触れられなかったことに戸惑いを隠せなかった。綾華は食べ終わった弁当の片付けをしようと立ち上がった。剛は引き止めようと腕を掴もうとしたが、掴めない。
「霊は現世に存在するものに対して触れることが出来ないんです。それがルールとなっています。」
田口が淡々と解説した。
「触れられないって…そんな…。でも床に足がついてるじゃないですか!」
「いいえ、足はついてません。微妙に離れています。気づかないくらいにね。急に何もないのに足音がすると綾華さんがびっくりするでしょう?」
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