√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道~悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ~

萩鵜アキ

文字の大きさ
68 / 92
悪役領主はひれ伏さない

第68話 怖くて言えない本音

しおりを挟む
 ――それがこの真実の指輪だ。

 うんうん。やっぱ今思い出してもすげぇ良いイベントだわ。
 ニーナの説教シーンはアニメーションだったし、たぶん製作側もこのシーンがめっちゃ好きなんだろうな。

 後ろで流れるテーマソングも良かったし。
 初めて見たとき、マジで泣いたなあ。
 今だって、ちょっと目頭が熱いもん。

 そんなイベントのアイテムをゲットしたのは、勇者と同じく絶対に魔王に操られないためだ。
 もし操られたら、俺がこれまで育んできた信頼とか、家臣が作り上げた街とか、すべて台無しにされるかもしれないからな。

 もし俺が自分の手で、知り合いを傷つけるようなことになったら、たぶん勇者と違って立ち直れないかもしれない。
 立ち直らせてくれる奴もいないだろうからな……。

 ニーナ?
 俺、別に聖女ルート入ってないからな。入るつもりもないし。
 あいつだって、俺のために自分の体に消えない傷作りたくないだろうしさ。

「そういえば……」

 この部屋、プロデニで来た時にあった白骨死体がないな。
 なんのイベントも発生しない、ただのオブジェクトだったから忘れてたわ。

 周りを見回すが、やはりない。

「何を探しているんだ? この部屋にあるのは、それだけだぞ」

 レナードが不思議そうに首を捻る。

「まさか宝物庫だと思ったのか? それならば地上にある」
「……そうか」

 ああ、そうか。
 そうだったな。
 ここはまだ、滅ぶ前のイングラムだ。
 プロデニじゃあ白骨化してた奴が、まだ生きているんだ。

 そしてここは、『王しか知らないシェルター』だ。
 つまり、プロデニで見た白骨死体は……。

【シナリオ理解度が2%増えました――58%】

「ど、どうした?」

 俺の視線を受けて、レナードが後ずさる。
 いや、怯えるなよ。
 なにげに傷つくから……。

 ゲームの中でイングラムは、災害級の悪魔の襲撃を受けて滅んだ。
 おそらく、レナードはこの国が滅ぶとわかった瞬間に、このシェルターに一人飛び込んだ。

 俺が指輪を手にしても、あまり芳しい反応をしないところを見るに、この指輪を敵に渡さないために心中した、という線は薄そうだ。

 ならば何故一人だったのかとか、安全なはずのシェルターでどうして死んでしまったのかとか、いろいろ疑問は尽きない。
 だが疑問を解決する術はない。

 ただ、あの白骨死体がレナードだって想像すると、ちょっとだけ寂しい。

「王は、孤独なのだな」
「……ああ、そうかもな」

 俺のつぶやきに、レナードがため息混じりに同調した。

 俺は、大好きなプロデニの世界を全力で楽しもうと決めた。
 なのに、目の前には寂しい現実が横たわってる。

 寂しい現実これは、邪魔だな。
 だったらやることは一つ。
 処刑ルートを回避したように、俺が未来をねじ曲げるまでだ!

「レナードよ。よく聞け」
「は、はっ!」

 俺の声に、レナードがかしこまって膝をついた。
 そこまでする必要はなかったが、まあいいだろう。
 それらしい形になってるからな。

「エルヴィン・ファンケルベルクは本日より、イングラム王国を併呑する。たとえどのような危機が迫ろうと、俺はイングラムと、レナードを守ると約束する!」
「……えっ、お、俺も?」
「ああ。お前の命もろとも、俺が全力で守り抜く」

 勇者ルートじゃ、レナードは暗く狭い部屋の中で孤独に死に、白骨化した。
 だがエルヴィンルートは違う。レナードはまだ生きている。
 だったら、俺はこいつが白骨化する未来を絶対に阻止してやる。

 知ってるか?
 ファンケルベルクは、身内には甘い。
 不義理を働かない限りは、守ると決めたら守るもんだ。

「レナード、俺はできうる限りお前を守る。だが、一つだけ覚えておけ。俺とファンケルベルクには、決して不義理を働くな。不義理を働いた瞬間、あらゆるものが消滅《きえ》えると知れ」
「わ、わか、わかった……」

 よぉーし、これにて一件落着!
 ……じゃねぇ!!

 なんかさらっと流しちゃったけど、なんでイングラムを併呑することになってんだよ!?
 国なんていらねぇよマジで!

 ――なんて怖くて言えない。
 この状況……どうすりゃいいの?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

処理中です...