92 / 92
悪役領主はひれ伏さない
第92話 エピローグ
しおりを挟む
「……誰?」
「そなたこそ、何者なのだ? それに、この邪悪なものは……」
「あー、それはアベルだよ」
「アベル……これが?」
この少女が何者かは、わからない。
だが、カインが意識を向けるまで全く気配すら感じなかった。
あまりに異常。
只人ではない。
――殺すか?
カインが魔力を手に集めた時だった。
少女がこちらを見た。
その瞳に宿る虚無に、さしものカインも身構えた。
「これは悪魔ではないか。吾が探しているアベルは、悪魔を倒す方だぞ」
「へぇ……。ところで、君はどうしてここに来たんだい?」
「アベルに言われたのだ。ここに居るって」
「その名前は、誰に聞いたの?」
「もちろん、イングラム王国で、アベル本人から聞いたのだ!」
アベルという名を知っていて、イングラム王国に滞在している、悪魔を倒せる存在。
それで、すぐにピンときた。
「エルヴィンかッ!」
「えるう゛ぃん……?」
(しかし、何故アベルと名乗ったんだ? ――まさかッ!?)
アベルと名乗れば、この女がここを探り当てるだろうことを予想していた?
可能性としては、限りなくゼロに近い。
だが、万が一を想定すると、これほど恐ろしいものはない。
ヒノワの装束、左腰の刀は、報告に上がった通りの姿。
この少女もまたイングラムに居たのだろう――正体不明の、ベリアルにとどめを刺した人物である可能性が高い。
万が一これが偶然ではなく策略だとすれば、エルヴィンは大悪魔を倒せる程の刺客を、この聖域に送り込んだということになる。
(まさかとは思うけど、エルヴィンはこちらの動きに気づいてる?)
(この女は、余計なことをするなという警告か?)
考えを巡らせながら、しかしカインの動きは速かった。
魔力を解放、少女めがけて全力で聖光魔法《ホーリーレイ》を発動。
常人ならば気づかぬうちに蒸発するほどの魔法だったが、少女もさる者、刀で光線を受け流した。
「そのえるう゛ぃんは、ここにはいないのだな?」
「……当然」
「ならば、ここに用はないのだ」
「逃がさないよ?」
聖なる制約を発動。
少女の体に光が巻き付き、動きを止める。
「邪魔をしないでほしいのだ!」
「なっ!?」
カインの神聖魔法が、精神力ではなく腕力で千切られた。
そんな馬鹿なという言葉が、危うく口をついて出そうになる。
こんなめちゃくちゃな人間、見たことがない!
少女の刀に気がこもり、一閃。
カインはギリギリシールドを展開。
次の瞬間、
――ドッ!!
壁や天井もろとも、一瞬にして砂になった。
触れただけで大理石が砂になるほどの強い気を、線ではなく面で飛ばすとは。
砂煙が消えた時にはもう、少女の姿はなかった。
「……ははは。やられたなあ」
乾いた笑いが口から漏れる。
ここまでしてやられたのは、生まれて初めてだ。
「一応、全力で立ち向かったんだけどなあ。やっぱり、神聖魔法は使いづらくてダメだね」
これでは、本来の実力の一割にも届かない。
手を握って開くを繰り返していると、廊下から教皇専属の司祭が現われた。
「きょ、教皇様これは!? 一体なにがあったのですか!?」
「くせ者が現われてね。念のため、ヒノワ装束を纏った女の子を見かけたら、追尾するように伝えて」
「しょ、承知しました」
「あとちょっと、こっちに」
手招きをする。
急ぎ足で近づいてきた司祭に、カインは手をかざした。
バチュッ!
カインが手を握ると、頭が破裂した。
頭部を失った司祭が、ゆっくりと前に倒れ込む。
どくどくと、足下に血が流れる。
その血を、カインの足下にある影が吸い込んでいく。
やはり、暗黒魔法は使いやすい。
初めからこれを使っていれば、あの少女だって簡単にくびり殺せたはずだ。
しかし、己の体面を守る為に神聖魔法にこだわった。
「少し、腹が立ったな」
己の判断ミスもさることながら、エルヴィンにしてやられたことが、許せない。
足下に転がるアベルを蹴って転がし、仰向けにする。
「ねえアベル。さっさと次の大悪魔を生もうか」
「む……むり……もう、むり……!」
「大丈夫、力ならたくさん与えてあげるから」
「ひゃ、ひゃめ……」
血に濡れた手のひらでアベルの顔に触れる。
その手から、大量の黒い塊が溢れ出し、アベルの口へと流れていく。
「がぁぁぁぁああ!!」
ガクガクガク。ビクビクビク。
アベルの体が奇妙に痙攣する。
常人ならばこれで壊れる。だが、カインはやめない。
壊れても、神殿《ここ》には替えがたくさんいる。
どうせこいつは預言の勇者ではなさそうだとわかったばかりだ。
ならば、潰したってかまいはしない。
「さあ早く、元気な大悪魔を生んでね」
そうして悪魔が生まれたら、
「まずはエルヴィンの、大事なものを全部破壊してあげよう♪」
こうしてエルヴィンの預かり知らぬ場所で、再び巨大な力が生み出されるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上で2章が終了です。
あと書き溜めてた分すべてを放出しました。
次回更新は未定です。
「そなたこそ、何者なのだ? それに、この邪悪なものは……」
「あー、それはアベルだよ」
「アベル……これが?」
この少女が何者かは、わからない。
だが、カインが意識を向けるまで全く気配すら感じなかった。
あまりに異常。
只人ではない。
――殺すか?
カインが魔力を手に集めた時だった。
少女がこちらを見た。
その瞳に宿る虚無に、さしものカインも身構えた。
「これは悪魔ではないか。吾が探しているアベルは、悪魔を倒す方だぞ」
「へぇ……。ところで、君はどうしてここに来たんだい?」
「アベルに言われたのだ。ここに居るって」
「その名前は、誰に聞いたの?」
「もちろん、イングラム王国で、アベル本人から聞いたのだ!」
アベルという名を知っていて、イングラム王国に滞在している、悪魔を倒せる存在。
それで、すぐにピンときた。
「エルヴィンかッ!」
「えるう゛ぃん……?」
(しかし、何故アベルと名乗ったんだ? ――まさかッ!?)
アベルと名乗れば、この女がここを探り当てるだろうことを予想していた?
可能性としては、限りなくゼロに近い。
だが、万が一を想定すると、これほど恐ろしいものはない。
ヒノワの装束、左腰の刀は、報告に上がった通りの姿。
この少女もまたイングラムに居たのだろう――正体不明の、ベリアルにとどめを刺した人物である可能性が高い。
万が一これが偶然ではなく策略だとすれば、エルヴィンは大悪魔を倒せる程の刺客を、この聖域に送り込んだということになる。
(まさかとは思うけど、エルヴィンはこちらの動きに気づいてる?)
(この女は、余計なことをするなという警告か?)
考えを巡らせながら、しかしカインの動きは速かった。
魔力を解放、少女めがけて全力で聖光魔法《ホーリーレイ》を発動。
常人ならば気づかぬうちに蒸発するほどの魔法だったが、少女もさる者、刀で光線を受け流した。
「そのえるう゛ぃんは、ここにはいないのだな?」
「……当然」
「ならば、ここに用はないのだ」
「逃がさないよ?」
聖なる制約を発動。
少女の体に光が巻き付き、動きを止める。
「邪魔をしないでほしいのだ!」
「なっ!?」
カインの神聖魔法が、精神力ではなく腕力で千切られた。
そんな馬鹿なという言葉が、危うく口をついて出そうになる。
こんなめちゃくちゃな人間、見たことがない!
少女の刀に気がこもり、一閃。
カインはギリギリシールドを展開。
次の瞬間、
――ドッ!!
壁や天井もろとも、一瞬にして砂になった。
触れただけで大理石が砂になるほどの強い気を、線ではなく面で飛ばすとは。
砂煙が消えた時にはもう、少女の姿はなかった。
「……ははは。やられたなあ」
乾いた笑いが口から漏れる。
ここまでしてやられたのは、生まれて初めてだ。
「一応、全力で立ち向かったんだけどなあ。やっぱり、神聖魔法は使いづらくてダメだね」
これでは、本来の実力の一割にも届かない。
手を握って開くを繰り返していると、廊下から教皇専属の司祭が現われた。
「きょ、教皇様これは!? 一体なにがあったのですか!?」
「くせ者が現われてね。念のため、ヒノワ装束を纏った女の子を見かけたら、追尾するように伝えて」
「しょ、承知しました」
「あとちょっと、こっちに」
手招きをする。
急ぎ足で近づいてきた司祭に、カインは手をかざした。
バチュッ!
カインが手を握ると、頭が破裂した。
頭部を失った司祭が、ゆっくりと前に倒れ込む。
どくどくと、足下に血が流れる。
その血を、カインの足下にある影が吸い込んでいく。
やはり、暗黒魔法は使いやすい。
初めからこれを使っていれば、あの少女だって簡単にくびり殺せたはずだ。
しかし、己の体面を守る為に神聖魔法にこだわった。
「少し、腹が立ったな」
己の判断ミスもさることながら、エルヴィンにしてやられたことが、許せない。
足下に転がるアベルを蹴って転がし、仰向けにする。
「ねえアベル。さっさと次の大悪魔を生もうか」
「む……むり……もう、むり……!」
「大丈夫、力ならたくさん与えてあげるから」
「ひゃ、ひゃめ……」
血に濡れた手のひらでアベルの顔に触れる。
その手から、大量の黒い塊が溢れ出し、アベルの口へと流れていく。
「がぁぁぁぁああ!!」
ガクガクガク。ビクビクビク。
アベルの体が奇妙に痙攣する。
常人ならばこれで壊れる。だが、カインはやめない。
壊れても、神殿《ここ》には替えがたくさんいる。
どうせこいつは預言の勇者ではなさそうだとわかったばかりだ。
ならば、潰したってかまいはしない。
「さあ早く、元気な大悪魔を生んでね」
そうして悪魔が生まれたら、
「まずはエルヴィンの、大事なものを全部破壊してあげよう♪」
こうしてエルヴィンの預かり知らぬ場所で、再び巨大な力が生み出されるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上で2章が終了です。
あと書き溜めてた分すべてを放出しました。
次回更新は未定です。
8
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜
ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」
「街の井戸も空っぽです!」
無能な王太子による身勝手な婚約破棄。
そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを!
ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。
追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!?
優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。
一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。
「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——!
今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける!
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
至近相手だと威力爆上がりするメイジとか好物ですわー
毎日楽しく読ませていただいています。出落ちにとばっちり…読んでて、哀れになりました(笑)思わず、コメントしてしまった次第です。
今後も応援しています!頑張って下さい!!
悪役転生系でお約束な『主人公がシナリオから外れた所為で上手く行かなくなる本来の主人公転生者』が毎度毎度シナリオ通りに動かない理由に対して、あまりに考えなし過ぎるなぁって感想を持つんですが、ここの馬鹿クズ…もとい…勇者はイージーモードで楽してイキってただけの愚者という納得のいく理由があってモヤらずに読んでいられます