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第一章 運命に抗うドブネズミ
17・死闘の結末
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「おらおらぁ!! 逃げ回るだけか!? クソチビネズミ!!」
ちっ、素早さでは俺が少し上だが、パワーに差がありやがる。ムキムキリスを討伐したおかげで、俺の力も上がってるはずなのによ。それによ、捨てられた松明の明かりは限られてるんだぜ? 夜目のきく俺のが有利なはずなのによ。
「ラットさん……」
そんな不安そうな顔すんなよ。お前にはあとでゴツンとゲンコツくらわせてやらなきゃならねえんだからよ。だが、どうしたもんかね。
「カ……ワ……レ」
ん? ……気配でわかるぜ。もう一人の俺か。わりいな。お前と変わったらよ、メルリごと殺すだろ。お前は黙って俺に力を貸してりゃいいんだよ。って、やべ!
「ぐぼっ!!」
「ラットさん!」
ちきしょう、足がすべりやがった。木に叩きつけられたのか。背中がいてえ……。いや、休んでる暇はねえぞ。すぐ来やがる!
「おらぁ! おらぁ!! どうした? 自慢の逃げ足ももう終わりか? まあ、闇属性にしちゃあ上出来だぜお前!」
「ハ……ヤ……ク……カ……ワ……レ」
うるせえうるせえ! くそっ! 代わるしかねえのか!?
「ぐああ! なんだこりゃあ!」
ん? ドゲスがご自慢の顔面をおさえてやがる。
「今のうちです! ラットさん、逃げましょう!!」
メルリか……。バーカ。お前の足じゃあすぐに追いつかれんだろうが。手負いの俺が抱えて走っても同じだ。だからよ……。もう少しあの部屋に降りてやる。俺の自我が保てる限界まで! ぐっ! くそっ、目の前が赤え……。奴の視界も回復してきたな。だが、行ける!!
「うおりゃあぁ!!」
よし、俺の感覚で動けてる! 奴も剣を振るが……遅え!!
「ぐあ! て、てめえ、まだそんな力が」
「わりいな。こうなっちまったら、もう終いだ」
「バカいってんじゃねえよ。俺はな、タフさには定評があ」
奴は俺の動きだしを全く目で追えてないのがわかった。その証拠に、奴の言葉が終わらねえ内に、ご自慢の顔面凶器はやつの体から離れていた。
「ふう……」
落ち着け。落ち着け。もう敵はいねえ。ゆっくり元に戻るんだ……。
「す、すごい。ラットさん、いったいあなたは?」
「あ? 俺は騎士団に入ってリーシュ国をぶっ潰す、一人の闇属性だ。それだけだ……ぜ」
あれ、なんか体中の力が抜けていきやがる……。おいおい、今倒れんのはマズイ……って。
――。ん? どこだ、ここ。
「ラットさん。目が覚めましたか」
ああ、メルリ……じゃねえな。コリンか。
「おう、ここは?」
「管理所の休憩室です。町まで彼女が運んでくれたんですよ」
ようやくボケてた目が慣れてくると、コリンの奥にメルリが申し訳なさそうに座ってやがる。
「彼女からすべて聞きました。今、盗賊の死体の確認に所長たちが出ています」
「そうか。あのよ、そこのメルリだが」
「彼女は罪人です。罰はしっかりとうけてもらいます」
「いや、だけどよメルリは、いてっ!」
「ほらほら、とにかく後ほど話は聞きますから。この回復薬を飲んで、しばらく休んでください」
ちっ。ドゲス程度の雑魚に手間取っちまった。……いや、あいつは戦いに慣れていやがったからな。雑魚は俺の方だ。あの力を利用するのも最小限にしねえと。もっと魔物と戦ったり、鍛えたりしねえとな。あと上手い飯をたらふく食う。やっぱこれだな。
それから、アンドレが帰ってきて話をすることになった。逃げていた盗賊は無事見つかり、捕まったそうだ。そして、俺はメルリが最終的にはドゲスを倒す手伝いをしてくれたことを話した。だが……。
「罪は罪だ。これは揺るがない」
「まあ、そりゃあそうだけどよ。あいつは俺を殺して逃げることもできたんだぜ? そうすりゃあ盗賊同士で勝手に殺しあったってことになりそうなもんだろ」
「罪は罪! まだ具体的には決めていないが、償いはしてもらうさ。あと……」
「いってぇ!!」
アンドレから思いっきりゲンコツを食らった。さすが風属性、結構きいたぜ。
「ラット、気づいた時点でなんで言わなかった? どう考えても俺たちに相談する案件だ。違うか?」
「それはよ」
「いーや! 聞かなくてもわかる。どうせ『勘違いかもしれない。メルリがそんなことをするはずねえ』とか思ってたんだろ」
ちっ、意外と鋭いなこのおっさん。
「……まあいい。説教はここまでだ。ラット、よくやったな」
「お、おう」
ゲンコツを食らった頭はまだいてえが、素直に褒められるとよ、照れるほうが痛みより強くなっちまう。
「よし、とにかく今日はもう休め。報酬は諸々の確認に少し時間がかかりそうだが、それでいいな」
「ああ、当面の金にはこまってねえよ」
「まあ、だったら装備も整えろよ?」
「わーったよ」
なんか、一気に俺の村の連中と話してる気分になっちまった。アンドレか。このおっさんは信用できるな。相談するべきだったかもしれねえ。
「あとな、メルリは管理所の地下で過ごしてもらう。面会がしたければ、声をかけてくれ」
「ああ、わかったよ。ありがとな。アンドレ、あんた思ったよりもいいおっさんだ」
「……お前には今度、礼儀も教えなくてはな。まあいい、おやすみ」
なんかまた怒られた。俺は人を褒めると怒られるようにできてんのか? だが、メルリとの面会ができんなら、一応礼は言っておくか。騙されてるぶん、チャラかそれ以上だと思うけどな。ああ、やべ。流石に今日は疲れたな。
「ラット、大活躍だったみたいだね」
……この、急に闇の部屋に送還されるの、どうにかなんねえかな。心臓に悪いんだよ。だが、呼ばれたってことは何か進展でもあったのか。
「まあ、な。おう、もう一人の俺。今日は随分力を借りちまったな。変わりねえか?」
「……」
「なんだよ、つれねえな。今日は少し喋ったくせによ」
相変わらずだんまりだ。だが、こいつの力がなければ手下の四人すら手こずってただろうよ。まあ、こいつは俺なんだが。
「んで、何か進展はあったのか?」
「うん。さっきラットが気絶している間さ、ぼくちゃんたち、また階段を降りてみたんだ」
「お、また伸びてたのか? 階段」
死闘を演じたわけだからな、おかしな話じゃねえ。それに、タコ助たちも戦った結果を知るために階段を降りたんだろうしな。
「正解。でもね、ちょっと困ったことがあって」
「困ったこと?」
「ま、見たほうが早いから」
俺たちは早速階段を降りた。だが、今までとは違った問題で先へ進めなくなっていやがった。しかも……。
「ね、もどかしいでしょ? 次の部屋が向こうに見えるのに」
タコ助は足をバタバタさせて悔しがるが無理もねえ。階段が途中で途切れてやがる。次の目的地がわかってるってーのに。
「なんとかジャンプしていけねえかな」
「やってみ」
「……タコ助、お前もう一回試したな?」
タコ助は答える代わりに、順番を譲るように手を途切れた階段の方へ差し出した。口で言え、口で。……だが、よーし、やったろうじゃねえか。数段戻って、助走をつけて。
「いた! ……くはねえけど、なんだぁ?」
「なんだろうねぇ」
まるで階段があるところまでしか空間がねえかのように、見えねえ壁に押し戻されちまった。タコ助の方を見ると、お手上げのポーズをしてやがる。
「ちくしょう。俺のスキルはここどまりってことかよ……」
「まあ、体を鍛えることで、さらに強くはなれるだろうけどね」
タコ助はそういうが、正直それじゃあ駄目な気がする。ドゲスにすら苦戦したんだ。あいつは水属性の感じがした。まあ、魔法や術じゃなく力に頼った戦い方だったが。これからもっと強敵に出会っちまったら、首がなくなるのは俺の番だ。なんとかここを渡る方法を探さねえと。文字通りこの先はねえ。
ちっ、素早さでは俺が少し上だが、パワーに差がありやがる。ムキムキリスを討伐したおかげで、俺の力も上がってるはずなのによ。それによ、捨てられた松明の明かりは限られてるんだぜ? 夜目のきく俺のが有利なはずなのによ。
「ラットさん……」
そんな不安そうな顔すんなよ。お前にはあとでゴツンとゲンコツくらわせてやらなきゃならねえんだからよ。だが、どうしたもんかね。
「カ……ワ……レ」
ん? ……気配でわかるぜ。もう一人の俺か。わりいな。お前と変わったらよ、メルリごと殺すだろ。お前は黙って俺に力を貸してりゃいいんだよ。って、やべ!
「ぐぼっ!!」
「ラットさん!」
ちきしょう、足がすべりやがった。木に叩きつけられたのか。背中がいてえ……。いや、休んでる暇はねえぞ。すぐ来やがる!
「おらぁ! おらぁ!! どうした? 自慢の逃げ足ももう終わりか? まあ、闇属性にしちゃあ上出来だぜお前!」
「ハ……ヤ……ク……カ……ワ……レ」
うるせえうるせえ! くそっ! 代わるしかねえのか!?
「ぐああ! なんだこりゃあ!」
ん? ドゲスがご自慢の顔面をおさえてやがる。
「今のうちです! ラットさん、逃げましょう!!」
メルリか……。バーカ。お前の足じゃあすぐに追いつかれんだろうが。手負いの俺が抱えて走っても同じだ。だからよ……。もう少しあの部屋に降りてやる。俺の自我が保てる限界まで! ぐっ! くそっ、目の前が赤え……。奴の視界も回復してきたな。だが、行ける!!
「うおりゃあぁ!!」
よし、俺の感覚で動けてる! 奴も剣を振るが……遅え!!
「ぐあ! て、てめえ、まだそんな力が」
「わりいな。こうなっちまったら、もう終いだ」
「バカいってんじゃねえよ。俺はな、タフさには定評があ」
奴は俺の動きだしを全く目で追えてないのがわかった。その証拠に、奴の言葉が終わらねえ内に、ご自慢の顔面凶器はやつの体から離れていた。
「ふう……」
落ち着け。落ち着け。もう敵はいねえ。ゆっくり元に戻るんだ……。
「す、すごい。ラットさん、いったいあなたは?」
「あ? 俺は騎士団に入ってリーシュ国をぶっ潰す、一人の闇属性だ。それだけだ……ぜ」
あれ、なんか体中の力が抜けていきやがる……。おいおい、今倒れんのはマズイ……って。
――。ん? どこだ、ここ。
「ラットさん。目が覚めましたか」
ああ、メルリ……じゃねえな。コリンか。
「おう、ここは?」
「管理所の休憩室です。町まで彼女が運んでくれたんですよ」
ようやくボケてた目が慣れてくると、コリンの奥にメルリが申し訳なさそうに座ってやがる。
「彼女からすべて聞きました。今、盗賊の死体の確認に所長たちが出ています」
「そうか。あのよ、そこのメルリだが」
「彼女は罪人です。罰はしっかりとうけてもらいます」
「いや、だけどよメルリは、いてっ!」
「ほらほら、とにかく後ほど話は聞きますから。この回復薬を飲んで、しばらく休んでください」
ちっ。ドゲス程度の雑魚に手間取っちまった。……いや、あいつは戦いに慣れていやがったからな。雑魚は俺の方だ。あの力を利用するのも最小限にしねえと。もっと魔物と戦ったり、鍛えたりしねえとな。あと上手い飯をたらふく食う。やっぱこれだな。
それから、アンドレが帰ってきて話をすることになった。逃げていた盗賊は無事見つかり、捕まったそうだ。そして、俺はメルリが最終的にはドゲスを倒す手伝いをしてくれたことを話した。だが……。
「罪は罪だ。これは揺るがない」
「まあ、そりゃあそうだけどよ。あいつは俺を殺して逃げることもできたんだぜ? そうすりゃあ盗賊同士で勝手に殺しあったってことになりそうなもんだろ」
「罪は罪! まだ具体的には決めていないが、償いはしてもらうさ。あと……」
「いってぇ!!」
アンドレから思いっきりゲンコツを食らった。さすが風属性、結構きいたぜ。
「ラット、気づいた時点でなんで言わなかった? どう考えても俺たちに相談する案件だ。違うか?」
「それはよ」
「いーや! 聞かなくてもわかる。どうせ『勘違いかもしれない。メルリがそんなことをするはずねえ』とか思ってたんだろ」
ちっ、意外と鋭いなこのおっさん。
「……まあいい。説教はここまでだ。ラット、よくやったな」
「お、おう」
ゲンコツを食らった頭はまだいてえが、素直に褒められるとよ、照れるほうが痛みより強くなっちまう。
「よし、とにかく今日はもう休め。報酬は諸々の確認に少し時間がかかりそうだが、それでいいな」
「ああ、当面の金にはこまってねえよ」
「まあ、だったら装備も整えろよ?」
「わーったよ」
なんか、一気に俺の村の連中と話してる気分になっちまった。アンドレか。このおっさんは信用できるな。相談するべきだったかもしれねえ。
「あとな、メルリは管理所の地下で過ごしてもらう。面会がしたければ、声をかけてくれ」
「ああ、わかったよ。ありがとな。アンドレ、あんた思ったよりもいいおっさんだ」
「……お前には今度、礼儀も教えなくてはな。まあいい、おやすみ」
なんかまた怒られた。俺は人を褒めると怒られるようにできてんのか? だが、メルリとの面会ができんなら、一応礼は言っておくか。騙されてるぶん、チャラかそれ以上だと思うけどな。ああ、やべ。流石に今日は疲れたな。
「ラット、大活躍だったみたいだね」
……この、急に闇の部屋に送還されるの、どうにかなんねえかな。心臓に悪いんだよ。だが、呼ばれたってことは何か進展でもあったのか。
「まあ、な。おう、もう一人の俺。今日は随分力を借りちまったな。変わりねえか?」
「……」
「なんだよ、つれねえな。今日は少し喋ったくせによ」
相変わらずだんまりだ。だが、こいつの力がなければ手下の四人すら手こずってただろうよ。まあ、こいつは俺なんだが。
「んで、何か進展はあったのか?」
「うん。さっきラットが気絶している間さ、ぼくちゃんたち、また階段を降りてみたんだ」
「お、また伸びてたのか? 階段」
死闘を演じたわけだからな、おかしな話じゃねえ。それに、タコ助たちも戦った結果を知るために階段を降りたんだろうしな。
「正解。でもね、ちょっと困ったことがあって」
「困ったこと?」
「ま、見たほうが早いから」
俺たちは早速階段を降りた。だが、今までとは違った問題で先へ進めなくなっていやがった。しかも……。
「ね、もどかしいでしょ? 次の部屋が向こうに見えるのに」
タコ助は足をバタバタさせて悔しがるが無理もねえ。階段が途中で途切れてやがる。次の目的地がわかってるってーのに。
「なんとかジャンプしていけねえかな」
「やってみ」
「……タコ助、お前もう一回試したな?」
タコ助は答える代わりに、順番を譲るように手を途切れた階段の方へ差し出した。口で言え、口で。……だが、よーし、やったろうじゃねえか。数段戻って、助走をつけて。
「いた! ……くはねえけど、なんだぁ?」
「なんだろうねぇ」
まるで階段があるところまでしか空間がねえかのように、見えねえ壁に押し戻されちまった。タコ助の方を見ると、お手上げのポーズをしてやがる。
「ちくしょう。俺のスキルはここどまりってことかよ……」
「まあ、体を鍛えることで、さらに強くはなれるだろうけどね」
タコ助はそういうが、正直それじゃあ駄目な気がする。ドゲスにすら苦戦したんだ。あいつは水属性の感じがした。まあ、魔法や術じゃなく力に頼った戦い方だったが。これからもっと強敵に出会っちまったら、首がなくなるのは俺の番だ。なんとかここを渡る方法を探さねえと。文字通りこの先はねえ。
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