4 / 5
1章 鬼退治に参ります
いざ鬼退治へ④
「・・・」
常世の闇は深い。
時間という概念が存在しないこの世界では、木々は常に青々と茂り、花も枯れず、水は滾々と湧き続け、虫や鳥や動物たちも食料として狩り、命を奪ってもすぐに肉を持つものとして其処に生まれ変わる。
闇に支配される<夜>でさえ、月も星も毎日毎日同じ場所で光り輝く。
囚われたこの場所で、死ぬことも出来ず、自由になることも許されぬまま俺は・・・
「あ!起きたのか?!」
静まり返る闇に響いた無駄にけたたましい女の声は、思っていたよりも近く、眠る俺の背中側に居たことにも気づかぬほど熟睡していたことに俺自身が驚いた。
「あっ!どこ行くの??」
「・・・お前に関係ない。帰れ」
「それじゃあ困るの!」
「知らん。俺は生贄だの花嫁だの求めてはいない。どこへなりともさっさと行け。」
裸足で降りた庭の砂がひんやりと足裏をなでる。
住処として与えられた家の裏手を行くと湖があり、俺は朝夕とそこでの水浴びが日課だ。
「ねぇ、私鬼退治に来たの、あなたが鬼神でしょう??」
うろうろちょこまかと後ろを着いてくるくる娘は、言葉を返さない俺にあれこれ質問を続け、
「えッ、ちょっと・・・!なんで脱いで・・・!?」
「・・・・・・水浴びは俺の日課だ。なんでもクソもあるか。」
勝手に着いてきたクセに俺が衣を脱いで岩に引っ掛けると、顔を真っ赤にして両手で顔を覆いながらも指の隙間からしっかりと俺の体を凝視する、人間の娘改め、
「・・・おい、痴女。お前いつまでいる気だ。さっさと帰れ」
「ち・・・??!!」
ザバ・・・
バシャ・・・
身に着けて布を全て脱ぎ、一糸纏わぬ姿の俺が湖に身を沈めるのを、口をパクパクさせ、何かを言いたげに痴女は見つめていた。
暑さも寒さもない世界なのに、ここの水はいつも凍えるほど冷たい。
澄んだ水の底には遠い昔沈んだ村が眠っている。
青く青く澄んだ水の底・・・
「ねぇ、寒くないの?」
「・・・・・・」
・・・目障りな女だ・・・
「あ!待って・・・!」
俺は女を無視して鬱陶しい声から逃れるようにもっと深い場所へ歩みを進めた。
果てが見えないほど巨大な湖の湖面は、風に揺らぐこともなく鏡のように穏やかに月を映している。
バシャッ・・・!
「今度はなんだ・・・」
せっかく声も届かぬほど離れたというのに、派手な水音に振り返れば、
「・・・あいつは阿呆なのか?」
水揚げされた魚のように空気を求めて湖面から顔を上げ、手をバタつかせて水しぶきを上げる阿呆な痴女は、静寂なこの世界においてかなり異質だ。
・・・なぜ1人しかおらぬのに、1人で複数人いるかの如く喧しいしのだ・・・
「おい」
「!!はッ!・・・かは・・・ッ・・・た、す・・・ッけ・・・がぼ・・・ッ」
「・・・はぁぁぁぁぁ・・・・・・」
「・・・・・・申し訳ない・・・本当に・・・なんと言っていいか・・・」
「・・・・・・帰ってくれ・・・・・・」
溺れた娘を引き上げ、夜着を纏い濡れた髪を拭う俺の前に正座をした阿呆な痴女は、小さくなり項垂れているが、この娘がやってきてまだほんの数時間、数時間などと言えないほど僅かな時間でこうも不愉快な事が起こる事に俺は次第に耐えられなくなってきていた。
「あの・・・本当に私・・・」
「いい。何も言うな。ここにいた記憶も消してやるし、居た村に帰れないのであれば他の村に届けてやる。だから去れ。」
「あ、待って・・・ッ」
「口を閉じろ」
右手で顔面を掴み、術を唱えれば一瞬で娘はここで俺に会った事も、会話をした事も、溺れた事も忘れる。
「~~!待ってってば!」
「!!馬鹿!お前・・・!」
俺の手を払いのけた娘はあろう事か俺の両足にしがみつき、両足を封じられた俺はまともな受け身も取れぬまま後方へひっくり返った。
ドタンッッ!!
「・・・・・・あぁぁぁッ・・・もう・・・ッ・・・なんなんだお前は。威勢よく来たくせになぜさっさと俺を切らない。持っているのだろう刀を。」
大層な鬼切りの刀を・・・
忌々しい気配を纏ったその刀は、忘れもしない・・・かつて俺の愛しい女を切った刀だった。
常世の闇は深い。
時間という概念が存在しないこの世界では、木々は常に青々と茂り、花も枯れず、水は滾々と湧き続け、虫や鳥や動物たちも食料として狩り、命を奪ってもすぐに肉を持つものとして其処に生まれ変わる。
闇に支配される<夜>でさえ、月も星も毎日毎日同じ場所で光り輝く。
囚われたこの場所で、死ぬことも出来ず、自由になることも許されぬまま俺は・・・
「あ!起きたのか?!」
静まり返る闇に響いた無駄にけたたましい女の声は、思っていたよりも近く、眠る俺の背中側に居たことにも気づかぬほど熟睡していたことに俺自身が驚いた。
「あっ!どこ行くの??」
「・・・お前に関係ない。帰れ」
「それじゃあ困るの!」
「知らん。俺は生贄だの花嫁だの求めてはいない。どこへなりともさっさと行け。」
裸足で降りた庭の砂がひんやりと足裏をなでる。
住処として与えられた家の裏手を行くと湖があり、俺は朝夕とそこでの水浴びが日課だ。
「ねぇ、私鬼退治に来たの、あなたが鬼神でしょう??」
うろうろちょこまかと後ろを着いてくるくる娘は、言葉を返さない俺にあれこれ質問を続け、
「えッ、ちょっと・・・!なんで脱いで・・・!?」
「・・・・・・水浴びは俺の日課だ。なんでもクソもあるか。」
勝手に着いてきたクセに俺が衣を脱いで岩に引っ掛けると、顔を真っ赤にして両手で顔を覆いながらも指の隙間からしっかりと俺の体を凝視する、人間の娘改め、
「・・・おい、痴女。お前いつまでいる気だ。さっさと帰れ」
「ち・・・??!!」
ザバ・・・
バシャ・・・
身に着けて布を全て脱ぎ、一糸纏わぬ姿の俺が湖に身を沈めるのを、口をパクパクさせ、何かを言いたげに痴女は見つめていた。
暑さも寒さもない世界なのに、ここの水はいつも凍えるほど冷たい。
澄んだ水の底には遠い昔沈んだ村が眠っている。
青く青く澄んだ水の底・・・
「ねぇ、寒くないの?」
「・・・・・・」
・・・目障りな女だ・・・
「あ!待って・・・!」
俺は女を無視して鬱陶しい声から逃れるようにもっと深い場所へ歩みを進めた。
果てが見えないほど巨大な湖の湖面は、風に揺らぐこともなく鏡のように穏やかに月を映している。
バシャッ・・・!
「今度はなんだ・・・」
せっかく声も届かぬほど離れたというのに、派手な水音に振り返れば、
「・・・あいつは阿呆なのか?」
水揚げされた魚のように空気を求めて湖面から顔を上げ、手をバタつかせて水しぶきを上げる阿呆な痴女は、静寂なこの世界においてかなり異質だ。
・・・なぜ1人しかおらぬのに、1人で複数人いるかの如く喧しいしのだ・・・
「おい」
「!!はッ!・・・かは・・・ッ・・・た、す・・・ッけ・・・がぼ・・・ッ」
「・・・はぁぁぁぁぁ・・・・・・」
「・・・・・・申し訳ない・・・本当に・・・なんと言っていいか・・・」
「・・・・・・帰ってくれ・・・・・・」
溺れた娘を引き上げ、夜着を纏い濡れた髪を拭う俺の前に正座をした阿呆な痴女は、小さくなり項垂れているが、この娘がやってきてまだほんの数時間、数時間などと言えないほど僅かな時間でこうも不愉快な事が起こる事に俺は次第に耐えられなくなってきていた。
「あの・・・本当に私・・・」
「いい。何も言うな。ここにいた記憶も消してやるし、居た村に帰れないのであれば他の村に届けてやる。だから去れ。」
「あ、待って・・・ッ」
「口を閉じろ」
右手で顔面を掴み、術を唱えれば一瞬で娘はここで俺に会った事も、会話をした事も、溺れた事も忘れる。
「~~!待ってってば!」
「!!馬鹿!お前・・・!」
俺の手を払いのけた娘はあろう事か俺の両足にしがみつき、両足を封じられた俺はまともな受け身も取れぬまま後方へひっくり返った。
ドタンッッ!!
「・・・・・・あぁぁぁッ・・・もう・・・ッ・・・なんなんだお前は。威勢よく来たくせになぜさっさと俺を切らない。持っているのだろう刀を。」
大層な鬼切りの刀を・・・
忌々しい気配を纏ったその刀は、忘れもしない・・・かつて俺の愛しい女を切った刀だった。
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。