徒然なる恋の話

焔 はる

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十二夜【時を超える花言葉】

12-12

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「・・・占いカフェ、と言っても、僕は目の前に座った方の情報は基本聞きません。」

水晶が転がらないように専用の台に鎮座させ、テーブルの上で両手を組んだ広瀬さんが文字を書き留めたメモを目で追いながら言葉を紡ぐ。

占う・・んじゃなくて、伝える・・・だけです。視えたコト、知ったコトを。なので、信じても信じなくてもそれは構いません、ご本人が知らないコトもありますので。」

広瀬さんが前置きをした上で、俺と椎娜を交互に見やる。


「・・・繰り返す夢は、同じ場面ばかり、目覚めると泣いてる。」


膝の上で椎娜の手が拳を作り、ぎゅっと握られた。

明らかに動揺した表情で瞳は揺れている。


「・・・心当たり、ありますか?」


話してもいいか、聞く勇気はあるのかを問う広瀬さんの言葉。


「・・・・・・あり、ます・・・・・・」


「大丈夫ですか・・・?」


頷く椎娜に、「僕の言葉は、じゃない。昔話・・です。」と笑みを向ける。


「・・・明るい月夜の晩、風は強く、白い花が咲き乱れる森、村の祭りの賑わいに乗じて、貴方の大切な人は背中を刺され、殺され、その体は暗い暗い、夜の湖に沈んだ。伸ばした手も、名を呼ぶ声も届かない・・・それは貴方の目の前での出来事・・・。」


1度言葉を切った広瀬さんは、椎娜にティッシュを差し出す。


「もう1度言います。これは、今の話じゃない、今の貴方ではない、そして」


広瀬さんの目が俺を見た。


「今の彼ではない。だから、引っ張られないで。」


「・・・・・・なぁ、それ、って・・・・・・」

口を閉ざしていた岐津さんが、広瀬さんの話を要約しようと口を開く。

「・・・えぇ。2人は・・・まぁ・・・所謂、悲恋の2人です。立場、身分の差で添い遂げる事が出来なかった。前世なんてものを信じるかどうかは別として、僕が知り得たのは、そういうコトがあったという前世、過去です。それ以外の言葉がないので、人によっては拒否反応を示す方もいらっしゃいますが、前世、という言葉を使わせて頂きます、申し訳ありません。」


広瀬さんの口からサラサラと流れ、紡がれる言葉があまりにも非現実的すぎて頭がついて行かない俺と、今朝と同様にボロボロと涙を流す椎娜。

滝のように、濁流のように、両目から頬を伝い流れて落ちていく。
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