謎の写真

神名代洸

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謎の写真

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僕は知らない…。
そう、こんな事になるなんて全く想像すらしていなかった。

それは一枚の写真から始まった。



その写真は風景画。
ただそれだけのはずだった。
でもね?
それだけじゃなかったんだ。
よく見るとね。
写ってたんだ。
何がって?
光の加減か分からないが、赤い線が入っていた。そしてその線のそばに黒いシミが。
偶然か分からないが、貰った方は霊感とかないからたいして気にもしていなかった。

写真のことも忘れ、どこに行ったのか分からなくなってから数日後の夜、夢を見たんだそう。
翌朝起きた時には夢の内容は忘れていたが、ただ全身にびっしょりと汗をかいていた。
枕元には何故かどこかに行ってしまって忘れていた例の写真が置かれていたと言っていたそう。
疑問に思ったがそれでもまだ写真のせいとは思わなかったともらった友人は言っていたらしい。
だけどそれもそうも言っていられない事態が起きる。
友人が事故に巻き込まれたと僕の元に連絡が回ってきたからだ。
友人間の連絡網だから回ってきたのは夜も遅かったのだが、慌てて次の友達に連絡を入れると運ばれた病院へ急いだ。
そこには先に何人か到着しており、友人の家族と話をしているようだった。
僕も中に入り色々と話を聞くと、昨日様子がおかしかったという。
何でも【黒い影が…黒い影が…。】と言っていたそう。何故そんなことを言ったのか家族はわからないという。そこで友人の一人がボソッと言った。
「あの写真のことじゃねぇ?」
「あの写真…て何の事ですか?」
聞かれて言葉に詰まったが、話さないわけにはいかないと友人の一人が話し始めた。


そう、それはちょうど1ヶ月くらい前の事だった。


皆でワイワイ言いながら有名な人気スポットに行ったのだ。景色は最高!人気の場所の為か人も多い。そこから少し離れた場所にパワースポットがあるというのを聞いていた僕等はみんなでそこに向かう事にした。だってさ~、あやかりたいじゃん。運気に。
そして着いた場所は絶景だった。
だからさ、みんなが各々手にしていたカメラで写真を撮る事にしたんだ。
ただこの場所、あることでも有名だったらしい。らしいというのはこれまた人づてで聞いていたから知っていただけの事。
本当かどうかは分からないよ?
それがここ、…霊が出る場所。
何でこんな場所に出るのかは知らない。
何かあったのか誰も知らないという。

皆が撮った写真には特に変わったところはなかったと思う。それが変わったのは翌日の事だった。
友人の一人がおかしなことを言い出したのだ。
この写真なんかおかしいって。
線が入ってる。

言われて僕らも一緒に見てみるとやっぱり線が入っていた。こんなの昨日は無かったのに…。
それだけじゃないんだ。
線のそばに黒い丸のようなものが…。
たまたま偶然だとは言えない大きさで、僕は引きつっていた。
他の奴らも皆顔色を変えていた。

「おい!どうするんだよ。…誰だよ、あそこで写真撮ろうなんて言った奴は。最悪だよ。」
友人はがっくり肩を落としながらその場を離れた。一人で。

声を掛けたが、聞こえないのか小声でブツブツと何かを喋っていた。この時から少しおかしくなっていたのだろうが、その時は誰一人気づかなかった。
その日から連絡が取れなくなった。
いつもいる場所にも現れない。
どこに行ったんだ?
みんなで探したよ。
そしたらさ、意外なところから見つかった。
普段行かない場所にいたんだ。分かるわけないよ。
たまたま偶然見た奴が知り合いだったので分かったんだ。
そこは写真を撮った場所だった。
なんでまたそんな所に…と思ったのだが、ただボーッと立ってその場でブツブツと何か喋っているらしく、不気味に感じたと言っていたな。
みんなでその場に行った時にも同じ姿で突っ立ってるのを見た。
恐る恐る近づいて何をしゃべっているのかを聞いてみるとやはり【黒い影が…黒い影が…。】と言っている。
片手にカメラを持っていた為そっと引き剥がして見てみるとあの時見たものと同じものが映し出されていた。しかし違ったのは黒い塊。
赤い線らしきものから出てきている感じがしたのだ。
しかも以前より少し大きい。
それはまるで人形の頭のように見えた。

「おい!しっかりしろよ!」そう言いながら両肩を揺すった。頭はグラグラとしていたが、首を動かしてこちらを見ていた。目に光はない。
不安に感じた僕等はすぐに友人を連れてその場を離れた。目的場所は友人の自宅。

怖くてガタガタと震えている自分がいた。
なんでこうなった?なんで…。
頭の中でグルグルと考えるが答えは見つからなかった。

友人の両親に話すわけにもいかないとダチの間で話をしてその日はそのまま友人の家に泊まり込んだ。迷惑だとは思ったけど、友人の事が頭から離れない。
でも翌朝になるといつもの友人に戻っていた為大丈夫だと思いその日別れた。
それから1ヶ月…何をしていたのかはわからない。
精神が壊れてしまっていたのか?
謎しかない。


病院内では携帯は使えない為使える場所まで移動しなくてはいけない。
それは苦にならなかった。
ただ友人のことだけが気がかりだった。

「なぁ、何でこうなったかわかるか?僕ちっともわからなくて…。」
「俺も俺も。」
「私もだよ。分かんない!」

「なぁ、あの写真また見れるか?」
「ああ、一応カメラ借りっぱなしにしてるからあるぜ。見てみるか?」


皆でカメラを覗き込み、写真を見てみるもまた黒い部分が大きくなっている気がして仕方がない。
僕は悪寒が取れない。ダチも皆不安そうな顔色をしている。

「なぁ、この写真神社に持ってってお祓いしてもらうことはできないか?」
「これがホントに霊が関係してるかわからないんだぞ?お祓いなんかしてもらえるわけないって。それにお金はどうするんだよ。対して俺金持ってないぞ?」
「僕もおんなじ。」
「私もそうだよ。」
「ああ~もうわかったよ。ならさ、この写真消しちまえば?どうだ?」
「ならやってみるか?」
「ダメ元でね。」

皆が見守る中写真を消してみることに…。


消えたことを確認して一枚写真を撮ってみる事に。
……うん、普通の写真だ。
友人はどうなったんだろう…。
すぐに友人の元に皆で行く。すると友人は普通だった。
「おい、どうかしたのか?」なんて聞いてくる。
こっちは大変だったのにこの違いは何だ?どっと疲れが来た。

友人があまりに普通だったのでちょっと意地悪したくなったダチの1人がこれまでのことを話して聞かせると友人は真っ青になって聞いていた。
「そ…なのか?そんなの知らなかったよ。俺…大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だと思うぜ。だって写真も無いしな。」


「………。」
「?どうした?」
「黒い影が。」
「え?」
「ほら~、いたぁ~。」ケタケタと笑う友人の顔は恐怖で固まっていた。
僕らもそんな姿を見て怖くなり友人をその場において逃げてしまった。その後、友人がどうなったのかは誰も知らない。音沙汰がなくなってしまっていたからだ。

友人の両親に聞いても言葉を濁して話してもらえない為それ以上聞くこともできなくなっていた。

友人よ、どこにいる?
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